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髄膜腫における放射線治療―画像でみる治療の流れ

髄膜腫における放射線治療―画像でみる治療の流れ
周藤 高 先生

横浜労災病院脳神経外科 部長

周藤 高 先生

目次
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髄膜腫の多くは良性の腫瘍で増殖のスピードが遅いため、小さいものであれば手術の必要はなく放射線で治療できることが多くなってきました。今回お話しいただく、周藤 高先生のいらっしゃる横浜労災病院でも、髄膜腫の患者さんの半数は放射線治療を実施しているということです。放射線治療は髄膜腫にどの程度効果があり、またどのような放射線治療装置が使われ、適応条件はどのようなものなのでしょうか。髄膜腫における放射線治療の実際について、引き続き横浜労災病院 脳定位放射線治療センター長兼脳神経外科 部長の周藤 高先生におうかがいします。

髄膜腫とは

頭蓋の構造

髄膜腫とは、脳の表面を覆う髄膜のうちのひとつ、「くも膜」という膜から生じる腫瘍です。その多くは良性です。まれに、良性より悪性度の高い、異型性髄膜腫や悪性髄膜腫が生じることもあります。

髄膜腫が発生する原因はいまだにわかっていません。しかし、女性が罹患しやすいことや、妊娠中、子宮筋腫などの女性特有の疾患と併発することがあることから、性ホルモンとの関係があるのではないかといわれています。

一部、遺伝性の髄膜腫もあります(神経線維腫症2型)。この場合はがんの増殖を抑制する遺伝子が正常に働かないことにより、頭蓋内に髄膜腫が多発します。

中年以降の方に比較的起こりやすいといわれ、年齢があがるとともに発症率も上昇します。

髄膜腫の治療の目的

手術などで完全に摘出することが望ましいものの、多くは良性であることから、完全に腫瘍を取り除けなくてもこれ以上増大させず、今出現している症状を改善することが治療の目的です。

髄膜腫における放射線治療の適応条件

髄膜腫は良性腫瘍であるため腫瘍を完全に摘出すれば完治が望めます。ですから、基本的には手術が第一の選択です。しかし最近では脳ドックや各種検査によって早期に発見できることが増えてきました。早期に発見でき、小さな腫瘍であれば、手術のリスクや患者さんの負担を考慮して放射線治療が第一の選択になる例も増えてきています。ただ,小さな腫瘍で無症状であればまずは経過観察がよいでしょう。画像検査を定期的に行い,腫瘍が大きくなってくるようであれば,その時点で放射線治療を行えばよいのです。

髄膜腫に対する放射線治療のリスクや副作用

認知症

髄膜腫の放射線治療を検討する方にとって気になるのはリスクや副作用でしょう。病態によって正しく治療の選択を行えば、副作用を最小限に抑えることができます。

放射線治療というと「認知症になるのではないか」と不安を覚える方もいます。しかし髄膜腫における放射線治療の多くは、定位放射線治療といって腫瘍にのみピンポイントで放射線を当てる方法です。基本的に脳全体に放射線を照射する(全脳照射)は行いませんから、認知機能の低下のリスクはありません。

しかし、腫瘍が大きい場合は以下のリスクがあります。

脳浮腫

大きな腫瘍の場合は、放射線を照射したあとに一時的に脳浮腫(脳のむくみ)が生じ、麻痺やけいれんの症状が強くなることがあります。この脳浮腫は多くの場合,数ヶ月の経過で軽快します。

放射線壊死

放射線照射が周囲の神経組織にとって過度な負担になった場合,脳浮腫を伴った壊死を来たすことがあり,麻痺などの症状が起きることがあります。

その他,放射線治療後の長期合併症としてのう胞形成(水分を含んだ袋状の病変ができてくること)などが治療後数年から十年以上経過して生じてくることがありますが,まれです。

髄膜腫の定位放射線治療で使われるガンマナイフとノバリス

髄膜腫には、腫瘍にのみピンポイントで照射可能な定位放射線治療が選択されます。

髄膜腫の定位放射線治療で用いられる定位放射線治療装置はさまざまなものがありますが、横浜労災病院で使用しているものはガンマナイフとノバリスです。

病院によってはサイバーナイフを用いるところもあります。

ガンマナイフとは

ガンマナイフとはガンマ線という放射線を用いて、病巣部に集中的にビームをあてることで治療効果を発揮する定位放射線治療装置です。周辺の正常組織への悪影響は非常に少なく、病巣をナイフで切り取るかのように治療できます。ただし、同じ場所に何度も照射することはできません。

ノバリスとは

ノバリスはX線を照射することで治療を行う定位放射線治療装置です。ガンマナイフと異なり、ピン固定が不要で頭部だけでなく体幹部にも照射が可能です。また、分割での照射にも対応しています。そのため比較的大きな病変、視神経や脳幹など、デリケートな部分に生じた病変の治療が得意です。治療時間が1回あたり15〜20分と短い点もメリットでしょう。

サイバーナイフとは

多方向からX線を照射できるロボットアームを用いて放射線治療を行う装置です。ノバリスと同様、頭だけでなく体幹部にも使用できます。また、ノバリスと同じくピン固定が不要でマスクで頭部を固定します。

髄膜腫におけるガンマナイフとノバリスの各適応

患者に説明する医師

それぞれの定位放射線治療装置の特性と、髄膜腫の状態をみながら使い分けをします。

髄膜腫の大きさ

ガンマナイフでは3〜4cm程度であれば照射可能です。それ以上の大きさの髄膜腫であっても、ノバリスで分割照射を行えば対応できます。

髄膜腫の発生部位

おおよそ3〜4cm 以下であればほとんどの部位でガンマナイフ治療が可能です。しかし視神経や脳幹など、脳のなかでも非常にデリケートな部分に接している髄膜腫では、ノバリスの分割照射で1回あたりの放射線量を小さくしながら分割照射を行います。

髄膜腫の定位放射線治療の制御率(有効性)や治療期間

髄膜腫の定位放射線治療の局所制御率(病変の成長を抑え込んで大きくならない確率)はおよそ80〜90%(5〜10年単位)で、良好です。

治療期間は患者さんによって変わりますがおおよそ、ガンマナイフであれば2泊3日、ノバリスの分割照射で5分割であれば1週間、30分割であれば6週間かかります。なお、ノバリスは1回あたりの照射時間が短いため通院での治療も可能です。

画像でみるノバリスでの定位放射線治療

ノバリスによる定位放射線治療ー頭部の固定
周藤 高先生ご提供

1.頭部を固定するマスクを作成しているところです。このマスクは3層構造で、固定性に非常に優れています。

ノバリスによる定位放射線治療ー最終チェック
周藤 高先生ご提供

2.マスク作成の最終段階です。

ノバリスによる定位放射線治療ーマスクの完成
周藤 高先生ご提供

3.マスクができあがりました。

ノバリスによる定位放射線治療ーCT画像の撮影
周藤 高先生ご提供

4.専用のツールを用いて、治療用のCT画像を撮影します。

ノバリスによる定位放射線治療ーセッティング
周藤 高先生ご提供

5.治療前のセッティングで頭部を固定し、特殊な装置をセットします。

ノバリスによる定位放射線治療ーテーブルの移動
周藤 高先生ご提供

6.いよいよ照射です。診療放射線技師が患者さんのテーブルを動かしています。

転移性脳腫瘍のレントゲン画像 
周藤 高先生ご提供

7.照射前にレントゲン撮影し、位置を補正したうえで極めて正確な照射を行います(画像誘導放射線治療)。

ノバリスによる定位放射線治療ー診療放射技師
周藤 高先生ご提供

8.照射中も診療放射線技師が注意深く治療室の中を観察しています(プライバシー保護のため、一部画像を加工しています)。

髄膜腫の定位放射線治療を受ける方へ

髄膜腫はそのほとんどが良性の脳腫瘍ですので、あまり心配する必要はありません。今回お話ししたように、最近では放射線治療もどんどん進歩しており、場合によっては手術を行わなくても放射線治療のみで改善する例もあります。放射線治療は開頭をしないため、入院期間が短く、あるいは通院も可能です。仕事や家庭と両立しながら治療できる点もメリットです。

どのような治療を行うのかは、しっかりと主治医と相談したうえ、納得のいく治療が受けられるようにしてください。