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胃の内視鏡検査とバリウム検査の選択について

胃の内視鏡検査とバリウム検査の選択について
高橋 大介 先生

財団法人同友会 ライフメディカル健診プラザ  院長

高橋 大介 先生

目次
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記事1『胃の内視鏡検査(胃カメラ)とは――検査内容や検査で分かることとは』では、胃がんの内視鏡検査の目的や検査までの手順についてお話しいただきました。

内視鏡検査は、従来のバリウム検査よりさらに高い精度で検査を行うことができるといわれています。またライフメディカル健診プラザでは患者さんの苦痛軽減のために、経鼻挿入を中心とした内視鏡検査を行っています。

引き続きライフメディカル健診プラザ院長の高橋大介先生に、内視鏡検査とバリウム検査の違いや経鼻挿入のメリットについてお話しいただきました。

健康診断における胃がんの検査といえば、バリウム検査であると認知されている方は多いのではないでしょうか。しかし、実は胃の内視鏡検査はバリウム検査よりも高い精度で胃がんの検査をすることができます。厚生労働省でも以前は胃がん検診として年に1回のバリウム検査を推奨していましたが、2016年には内視鏡検査の有用性が認められ、2年に1度の内視鏡検査を推奨するようになりました。ほとんどの施設がバリウム検査か内視鏡検査のどちらかを選択するような仕組みになっていますが、自治体によっては、患者さんがバリウム検査と内視鏡検査から希望するほうを選択できる地域もあります。

内視鏡検査のメリットは何といっても、胃の形状・凹凸・色を視覚的に見ることができるところです。バリウム検査では形状・凹凸を把握することは可能ですが、色までは見ることができません。胃がんは必ずしも腫瘍(しゅよう)になっているわけではありません。赤みの出ているものや、逆に色味が抜けて白くなってしまっている退色性がんなどもあります。このようなものを逃さずに察知できる内視鏡検査は、胃がんの早期発見にも役立っています。

また、検査中に何か気になる点があった場合にはその場で対象の部位の組織を採取し、生体検査(生検)に出すことができる点も1つの魅力でしょう。

記事1『胃の内視鏡検査(胃カメラ)とは――検査内容や検査で分かることとは』でもご説明したように、胃の内視鏡検査には、がんそのものの発見という目的のほかに、胃がんの原因となるピロリ菌の発見という目的があります。

実はバリウム検査でも、ピロリ菌による胃炎の有無を見ることはできるのですが、その精度は内視鏡のそれと比較するとどうしても劣ってしまいます。またその胃炎が、今ピロリ菌があることによって起きているのか、それとも過去にピロリ菌があったことで胃炎が残っているのか、そこまではバリウム検査では分かりません。そのためバリウム検査で胃炎が発見されると、再度精密検査として内視鏡検査を受けなければ、ピロリ菌の有無を明確にすることができません。

ですから、胃がんの発見だけでなく、その原因となるピロリ菌の発見を行うためにも、内視鏡検査がバリウム検査よりも有用であることは明らかです。

このように内視鏡検査はその有用性が少しずつ認知されはじめているところです。しかしながら、バリウム検査と比べると検査費用がやや高価になることや、「内視鏡検査(胃カメラ)はつらい!」という固定観念があるために、内視鏡検査を選択しない患者さんもいらっしゃるのが実情です。当院でも内視鏡検査を希望する患者さんは全体の3分の1程度で、そのほかの患者さんはバリウム検査を希望されます。

しかし、昨今は開業医の先生もバリウム検査の機器よりも内視鏡の機器を導入しています。そのため将来的には、内視鏡による検査がスタンダードになってくるのではないでしょうか。

胃の内視鏡検査には経鼻挿入・経口挿入という2つの手法があります。それぞれにメリット・デメリットがありますが、当院では経鼻挿入を中心に検査を行っています。理由は経鼻挿入の方が経口挿入よりも苦痛が少なく楽であるといってくださる患者さんが多いからです。

記事1『胃の内視鏡検査(胃カメラ)とは――検査内容や検査で分かることとは』でも述べましたように胃がんの内視鏡検査のつらさとは、咽頭反射(いんとうはんしゃ)による苦痛がほとんどです。咽頭反射とは、喉に異物が迫ってきたときに「オエッ」と反射的にその異物を吐き出す作用です。経鼻挿入はこの苦しさを軽減するため、口からではなく、鼻から内視鏡スコープを挿入し検査を行います。また、より苦痛の少ない検査を目指し、下記のことに着目し開発されています。

咽頭反射は舌根の部分に刺激が加わることによって強く反応します。経口挿入では、スコープの先端が舌根を通過し、その奥にある喉の壁に当てることで先端の向きを曲げていくので、どうしても咽頭反射が強く起こり、患者さんは苦しいと感じてしまいます。

しかし経鼻挿入の場合には、鼻の奥にスコープが入った段階で、スコープの先端がすでに食道に向かってまっすぐ入っていますので、舌根や喉の壁を刺激することなく奥まで挿入することができます。

そのため、経鼻挿入のほうが経口挿入よりも楽に感じる患者さんが多いというわけです。

スコープを持つ先生

従来の経口挿入用の内視鏡スコープは直径9〜10mmの管を挿入していました。これに対し、経鼻挿入用の内視鏡スコープは直径5mm程度とかなり細く作られています。これにより挿入部分に感じる圧迫感が軽減され、患者さんもより快適に検査を受けることができます。

以前は内視鏡スコープの直径が細くなった分、経鼻挿入用のスコープは画質が悪いといわれることもありましたが、現在はそれもかなり改善されています。また、レーザー光を使って胃の内部を照らすため、光も以前より明るくなり、さらに光の波長を切り替えるなど、見たい所見に合わせて光学的なコントロールができるようになり、より鮮明に内部を観察できるようになりました。

前述のとおり、経鼻挿入は苦痛の少ない理想的な内視鏡検査ととらえられることも多いのですが、デメリットもあります。

それは、鼻の中が狭い方だとスコープが入りづらく、入れる際に痛みが生じてしまうことです。鼻の中は粘膜から軟骨までの距離が近いため、圧迫されると痛みが生じやすいという特徴があります。

またスコープの構造上、スコープの一部に小さな段差があり、鼻の中が狭い方だと、スコープを抜去するときにそこに粘膜が引っかかって鼻血が出てしまうこともあります。そのため、経鼻挿入を考える際は鼻の形状をきちんと事前に確認する必要があります。

また経鼻挿入のスコープの直径は経口挿入のスコープの半分程度と大変細いので、使い慣れた医師でなければ取り扱いが難しいという課題があります。スコープが細いと管にたわみができやすく、経験の少ない医師は胃の中でうまくコントロールができません。

当院で内視鏡検査を行っている医師は皆、消化器内視鏡専門医の資格を持ち、経鼻挿入にも熟練した技術を持つ医師たちなので、安心して検査に臨むことができます。

経口挿入は一般的な胃がんの内視鏡検査方法として普及しています。近年は咽頭反射を弱めて楽に検査を受けていただくために鎮静剤を用いた検査も行われています。

経口挿入は一般的な内視鏡検査方法なので汎用性が高く、比較的多くの施設で受けることができます。また、鉗子孔(かんしこう)が経鼻用と比べて広いため、検査だけでなく、ポリペクトミー(ポリープなどの病変を内視鏡によって切除・治療する方法)などの処置を行うことに適しています。

一方で経口挿入は前述のとおり、咽頭反射の影響を受けやすいため苦痛を感じる患者さんが多いというデメリットがあります。その苦痛を和らげるために使われるのが鎮静剤です。

鎮静剤による内視鏡検査とは、咽頭反射を薬によって和らげ患者さんがぼんやりとした意識のうちに検査を行うことで、主に経口挿入の場合に用いられます。鎮静剤を使うことによって、かなり楽に経口挿入の内視鏡検査を受けることができる患者さんもいらっしゃいます。しかし、鎮静剤は人によって使用する薬の量、効き方、覚め方に大きな差が出ます。その分コントロールも難しく、以前は血圧や酸素濃度の低下などの事故も発生していました。

昨今は、鎮静剤の使用に対する知見も深まり、事故が起きることも減りましたが、それでも100%安全とはいえないのが現状です。鎮静剤を用いた内視鏡検査を行う医療機関もありますが、検査を受ける際の一番のポイントはやはり医師の技量です。鎮静剤がなくとも苦痛を少なく検査を行え、ちゃんと観察可能できるのかを見極めることが重要です。

これまで主に胃がん検診の機器として内視鏡のお話をしてきましたが、内視鏡は実に幅広い可能性を持った医療機器です。たとえば、超音波検査と内視鏡検査を組み合わせた超音波内視鏡という機器もあり、この機器では下記のようなことを調べることができます。

  • 早期胃がんの深達度を調べる
  • 筋腫などの粘膜下腫瘍(ねんまくかしゅよう)(粘膜の下にある腫瘍)の正体を調べる
  • 胃に入れた内視鏡から超音波を用いて膵臓(すいぞう)の様子を調べる

超音波内視鏡は普通の内視鏡検査で所見があり、精密検査が必要となった患者さんに受けていただくことがあります。超音波内視鏡の機器を保有している施設はそう多くはないため、必要に応じて適切な病院を紹介します。また、近年は単に検査・診断をするためだけでなく、それを応用して治療を行う際にも超音波内視鏡が用いられることがあります。

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