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労作性狭心症には記事3『狭心症(労作性狭心症)の検査と治療-継続的な治療薬の服用が必要となる』で述べた薬物療法のほか、狭窄部分を内側から広げ補強するステントを用いた「心臓カテーテル治療(PCI)」や、狭窄部分に別の部位の血管を移植する「心臓バイパス手術」によって治療されることもしばしばあります。心臓カテーテル治療や心臓バイパス治療はそれぞれ治療方法や適応、メリット・デメリットが大きく異なるため、患者さんに合わせて検討されています。

今回は総合東京病院副院長兼心血管インターベンション治療センター長の村松先生に心臓カテーテル治療と心臓バイパス手術についてお話しいただきました。

心臓カテーテル治療(PCI)とは?

カテーテル

心臓カテーテル治療とはカテーテルという細い管を血管内に入れ、冠動脈の狭窄部分を内側から広げる治療方法です。心臓カテーテル治療にはいくつかの種類がありますが、総称してPCIと呼ばれています。

心臓カテーテル治療は1977年に生まれ、今日までに大きな発展をしてまいりました。まずは、その歴史についてお話しします。

心臓カテーテル治療(PCI)の歴史

従来のカテーテル治療(PTCA)とは

以前のカテーテル治療はカテーテルを心臓まで進め、狭窄部分を内側からバルーンをふくらませることによって押し広げる「PTCA」という手法で行われていました。

PTCAは1977年、スイスのグルンチッヒ先生が初めて行なった治療方法です。血管の内側からバルーンをふくらませて狭窄を押し広げることで、まるで「雪を足で踏み固めるように」血管内に溜まった錆びである粥腫(じゅくしゅ)を潰し、血管を広げるというコンセプトで行われました。

一見理想的な治療方法のように思われますが、PTCAには2つのデメリットがありました。

<PTCAのデメリット>

  • 再狭窄のリスクが高い
  • 血栓ができやすくなり、直後に心筋梗塞が起きる

まず、PTCAは再狭窄の確率が高く、およそ40%の方が同じ場所に再び狭窄を引き起こしてしまいます。なぜなら粥腫には柔らかいものから、カルシウムの沈着によって石灰化し硬くなってしまったものまであり、特に硬くなった粥種を無理に押し広げた際は血管の壁そのものが傷んでしまうからです。内側からバルーンで無理に押し広げられた血管は壁がひび割れ、それを再生するために「かさぶた」のように細胞が盛り上がってきてしまいます。そしてかさぶたが治るのと同時に、押し広げた狭窄も元に戻ってしまうのです。これを「再狭窄」といいます。

また、血管の壁にひび割れが生じると出血が生じ、その部分の血管内に血栓ができやすくなってしまいます。そのため以前はPTCAの治療直後に心筋梗塞を起こしてしまうケースを懸念し、この治療は必ずバイパス手術がすぐにできるよう外科医のスタンバイができる状況で行われていました。

ステントを使った心臓カテーテル治療の登場

1980年代後半、「ステント」という器具が登場したことにより再狭窄のリスクが20%ほどにまで削減されました。ステントとは網状の金属の筒で、血管を補強するために使われるパイプのようなものです。ステントは縮んだ状態でカテーテルを使って冠動脈まで運ばれ、バルーンで広げた狭窄部分で筒の径を広げ、留置することによって狭窄を抑えます。この技術の登場によって、ひとまずカテーテル治療は以前のように治療時に外科医がスタンバイしなければならないような危険度の高い治療ではなくなってきました。

しかしそれでも20%の確率で再狭窄が起こってしまいます。その理由はステントの網目から再生しようと盛り上がった細胞が侵食してしまうからです。

ステントとは?

ステントは金属でできた網状の筒です。ステントという名前は、19世紀にこの器具を発明した医師、チャールズ・ステント先生に由来しています。心臓カテーテル用のステントですと冠動脈の太さや狭窄の範囲に合わせ、径は2mm〜5mmまで0.25mmおきに、長さは8mm〜40mmまで5mmおきにラインナップがあります。狭窄部分に到達するまでは小さく縮まった状態で血管を進んでいくため、血管を傷つけずに狭窄しているところまで運ぶことができます。

実際のステント(広げた状態)

画像:実際のステント(広げた様子)

再狭窄を抑制する「薬剤溶出型ステント」の登場

2000年代に入ると再狭窄を抑制する薬剤を塗ったステントが登場し、再狭窄の確率が5%にまで減少しました。このステントは「薬剤溶出型ステント」と呼ばれ、現在日本で行われている心臓カテーテル治療のほとんどに使用されています。

薬剤溶出型ステントが再狭窄を引き起こしにくい理由はステントに免疫抑制剤を塗っているからです。免疫抑制剤により細胞の新生サイクルを止めてしまうことによって、狭窄部分を広げた際に生じる細胞の強い反応を抑え、かさぶたのような盛り上がりができないようにします。

しかし、薬剤溶出型ステントにもデメリットはあります。それはこのステント自体の価格が高価であることです。薬剤溶出型ステントは日本円に換算すると1本30万円ほどと非常に高価で、さらに複数本同時に入れる方も多いため、患者さんの金銭的負担が大きくなりがちです。

幸い、薬剤溶出型ステントは日本では2004年より保険適用として認められ、国の補助を受け多少安価に治療を受けられます。しかし、国民皆保険制度のない海外では、未だに費用が高価で、この治療を受けたくても受けられないというケースもみられています。