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肺がんの治療ー手術の種類や適応について知る
がんの根治的治療のひとつに手術があります。手術によりがんを切除することができれば、患者さんの生存率は向上します。肺がんにおいても、それは例外ではありません。肺がんでは、実際にどのような手術が実施...
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肺がんの治療ー手術の種類や適応について知る

公開日 2017 年 08 月 29 日 | 更新日 2017 年 10 月 17 日

肺がんの治療ー手術の種類や適応について知る
梶 政洋 先生

東京都済生会中央病院 呼吸器外科 部長

梶 政洋 先生

目次

がんの根治的治療のひとつに手術があります。手術によりがんを切除することができれば、患者さんの生存率は向上します。肺がんにおいても、それは例外ではありません。肺がんでは、実際にどのような手術が実施されているのでしょうか。

外科医として肺がん治療に携わっていらっしゃる東京都済生会中央病院の梶 政洋先生は、「肺がんの手術では安全性と確実性が何よりも重要である」とおっしゃいます。それはなぜなのでしょうか。

今回は、同病院の梶 政洋先生に、肺がんの主な治療から安全で確実な手術の実施に向けた取り組みをお話しいただきました。

肺がんの主な治療法

肺がんの治療は、疾患の病期(ステージ)に従い、ガイドラインでは以下のように定められています。基本的に、IA期からⅢA期においては、がんの切除を目的とした手術が適応されます。手術に加え、IB期からⅢA期においては、術後に抗がん剤治療が実施されるケースもあります。また、患者さんの状態によっては、放射線治療を適応することもあるでしょう。

疾患が進行したⅢB期において手術を実施するケースは少なく、放射線治療と抗がん剤を組み合わせた治療が一般的な治療になっています。

肺がんの治療方法

治療は、上記のように単純に疾患のステージのみで決定されるものではありません。記事1『肺がんの初期症状・分類ごとの症状とは? 肺がんの基礎情報と診断方法』でお話ししたような肺がんの分類(非小細胞肺がん、小細胞肺がん)や全身の状態や年齢、心臓や肺など主要な臓器の機能、患者さんが有する合併症などを含め総合的に判断し、肺がんの治療は決定されます。

高齢者や合併症を有する方への手術の適応

近年は、高齢化の進行とともに、肺がんにおいても高齢の患者さんが増加しています。昔は、患者さんが75歳以上である場合、身体的負担を考慮し手術を適応しないという時代もありました。しかし、現在は、75歳以上であっても手術ができる状態であれば適応するケースが一般的になっています。

逆に75歳以下であっても、手術の結果著しくQOL(生活の質)が落ちてしまうようであれば手術を適応しないこともあります。

年齢で手術の適応を判断するのではなく、手術後に家族などによる周囲のサポートを受けることができるかなどを含め、総合的に判断するようにしています。原則として、手術の結果、患者さんの身体的機能や生活の質が低下しないようであれば、年齢に関係なく手術を適応するようにしています。

肺がんの手術の種類-開胸手術から完全鏡視下手術まで

肺がんの治療において、手術は重要な役割を果たします。リンパ節に転移がない比較的早期の肺がんであれば、近年、従来の開胸手術よりも胸腔鏡(きょうくうきょう:先端に小型のカメラを装着した内視鏡)が用いられることが多いでしょう。

私たち東京都済生会中央病院においても、胸腔鏡を用いた肺がん手術を広く実施しています。以下は、一般的に肺がんに適応される主な手術の種類になります。

通常の開胸による手術

従来から実施されてきた開胸手術では、15〜20センチほどの切開を肩甲骨の下から加え、

広背筋、前鋸筋(ぜんきょきん)と呼ばれる背中の筋肉を切り、さらに場合によっては肋骨を1・2本切除し大きな術野(じゅつや:手術を行っている目で見える部分)を確保することで手術を実施します。

この手術では、手術を執刀する医師は、開胸創(手術のための切開によって作られた傷)からの視野を頼りに手術を行います。この開胸手術のメリットは、大きな術野を確保できるため安全で確実な手術を遂行することができる点です。一方、短所は、手術による傷が大きいために身体への負担が大きく、術後の回復に時間を要する点が挙げられます。

完全鏡視下による手術

完全鏡視下による手術とは、すべての行程を胸腔鏡の操作により実施する手術を指します。胸部に小さな切開を加え、そこから径5〜10ミリの胸腔鏡を胸腔内に挿入します。さらに、手術操作を行う道具を挿入するため、長さ1センチほどの小さな切開を2〜3か所追加します。

この完全鏡視下手術では、手術の操作を完全にモニターだけを見て行うため、術野を肉眼で覗くことはありません。操作もすべて胸腔鏡のみを用いて行うため、術中に胸腔内に指を入れ直接触るようなこともありません。

しかし最終的に、この完全鏡視下手術においても、腫瘍を含んだ肺組織を摘出するために6〜10センチほどの切開を加えなければなりません。従って、手術創の大きさについてお話しすると、次に述べるハイブリッド手術と同等ということになります。

開胸と胸腔鏡を併用した手術

また、ハイブリッド手術や胸腔鏡補助下手術と呼ばれる開胸と胸腔鏡を併用した手術があります。これは、径5〜10ミリの胸腔鏡を胸腔内に挿入したのち、6〜10センチほどの切開を加え開胸する手術法です。主に切開した開胸創から術野を確保するとともに、そこから手術操作をします。この手術法では、胸腔鏡は、あくまで術野を見るための補助的な役割を果たします。

胸腔鏡を用いた肺がん手術の最大のメリットは、手術による傷が小さいために身体への侵襲(しんしゅう:負担のこと)が少なく済むということです。術後の痛みが少ないことに加え、術後の回復も早いことがわかっています。

完全鏡視下の手術と比べて痛みや体力の回復に関してはほとんど変わりありません。平均では術後1週間弱で元気に退院されます。事務的なお仕事でしたら退院日からでも従事可能です。

肺がんにおける胸腔鏡手術の定義は定まっていない

胸腔鏡を用いる胸腔鏡手術は、肺がんの治療において一般的に広く実施されている治療です。近年、胸腔鏡を用いない肺がん手術はほぼないといってもよいでしょう。よほど特殊なケースでない限り、肺がんの手術では胸腔鏡が用いられます。

しかし、胸腔鏡手術の定義は、未だ定まっていません。医療機関によっては、すべての行程を胸腔鏡で行う完全鏡視下手術のみを胸腔鏡手術と見なす医療機関もあります。

私たち東京都済生会中央病院の呼吸器外科では、お話ししたような完全鏡視下手術と、開胸と胸腔鏡を併用した手術を総称し、胸腔鏡手術と呼んでいます。

開胸と完全鏡視下手術のデメリットとは?

お話しした手術法のなかで、当院がほぼすべての肺がん手術で適応しているものが、開胸と胸腔鏡を併用した手術です。

術中の不測の事態に対応するためには、開胸は大きいほうがよい

胸腔鏡による手術は、お話ししたように手術による傷が小さい点が大きな特徴です。これは、痛みの軽減や術後早期の回復などのメリットがある反面、術中に予期せぬ緊急対応が発生した場合に初動を遅らせる危険性があります。

肺がんの手術中に最も危険なのは肺動脈からの出血です。術中に突然、肺動脈からの出血が起こった場合、緊急で止血しなければなりません。

大きく開胸されている状態であれば、両手が入るため即時に止血することができます。このように、術中に予期せぬ事態が発生したときのことを考えると、手術の創(きず)は大きければ大きいほどよいのです。

完全鏡視下手術では不測の事態に対応できない

一方、開胸を必要としないために小さな穴のみで手術を実施することができる完全鏡視下手術の場合には、直接指を入れることができず止血も遅れてしまうことがあります。

たとえば、完全鏡視下手術の術中に肺動脈からの出血が発生した場合、止血を図りながら止血のために開胸することになり、処置には遅れが生じてしまいます。

なるべく小さな傷に抑えることはメリットもありますが、術中のリスクを避けるという面では、このようなデメリットもあるのです。

胸腔鏡と開胸を併用することで安全性と確実性を保つ

肺がんの手術において開胸と胸腔鏡を併用する最大のメリットは、開胸手術の安全性と確実性を保ったまま、手術による傷をなるべく小さく抑えることができる点であるでしょう。

胸腔鏡を用いることで細かいところまで見ることができる点は大きなメリットですが、あくまで二次元の情報に過ぎないからです。安全で確実な手術を実施するためには、肉眼でしっかりと見ることも同じくらい重要であると考えています。

直接肺の病巣を触り腫瘍がどこまであるのか確認することができる三次元の情報を得ることも、安全で確実な手術のためには重要であるでしょう。もちろんCT検査によってある程度、腫瘍の大きさを把握することはできるのですが、実際に触ることで、どこまで切除することが可能であるかもわかるようになります。

また、リンパ節を切除し、がんがリンパ節に転移しているか調べるリンパ節郭清(かくせい)行う際や、細かい作業が必要な手術であれば、胸腔鏡を用いる場合にも開胸することが効果的であるでしょう。

より痛みの少ない肺がんの手術を可能に

私たち東京都済生会中央病院では、標準的な肺がんの手術である場合には、広背筋や全胸筋、肋骨を切ることなく開胸する方法を採用しています。この方法を採用することで、痛みが少なく回復も早くなるからです。また、呼吸機能が温存されるというメリットがあるため採用しています。

胸腔鏡の操作のために3〜4か所の切開をする場合には、穴を開けるだけなので筋肉を切ることはありません。肋骨を切ることももちろんないため、痛みも少なくすみます。

開胸をしない完全鏡視下手術のほうが痛みも少なく回復も早いと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私がこれまで診てきた多くの患者さんの痛みの度合いの様子からは、完全鏡視下手術と開胸と胸腔鏡を併用する手術では、術後の痛みはほぼ変わらないと考えています。

私どもが主に採用している開胸と胸腔鏡を併用する手術でも手術翌日から廊下を歩いていただきますし、術後も傷のせいで手が上がらなくなったり、重いものが持てなくなったり、スポーツができなくなったりすることはまずありません。術後にゴルフができるかどうかという質問を多くの男性からお受けしますが、ゴルフはもちろんのこと、呼吸機能に余裕がある方では術後にフルマラソンを何回も走っている方が何人もいらっしゃいます。

ゴルフをする男性

安全性と確実性を確保した肺がん手術を目指して

繰り返しになりますが、肺がん手術において胸腔鏡を用いる際には、安全性と確実性を確保することが重要になります。

開胸手術と変わらない安全性や確実性を可能にしながら、開胸手術ほどの傷が残らない点が開胸と胸腔鏡を併用する大きなメリットであるでしょう。

*記事3『肺がん治療はどう変わる? 分子標的薬など新たな治療の可能性とは』では、分子標的薬など肺がん治療の新たな治療の可能性についてお話しいただきます。

 

肺がん(梶 政洋先生)の連載記事

1990年より名古屋市立大学及びその関連病院にて一般外科を習得。1994年より専門を呼吸器外科に定め、国立がんセンター中央病院にて肺がんを中心とする修練を開始した。修練は外科手術のみではなく、画像診断学、病理細胞診、化学療法など多岐にわたり、各方面の一流レベルの先輩医師に鍛えられ、大いに啓蒙された。1999年、大学帰局後は学位取得のため肺がんの臨床と基礎の懸け橋となるテーマを選び、臨床を行いながら研究にも勤しみ、2002年に学位を取得。その後は臨床の現場一筋に打ち込み、2005年より東京都済生会中央病院に赴任し現在に至る。

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