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肺がんの手術-肺がんの手術方法や術後のサポートとは?
肺がんの治療では、手術によってがんを切除することができれば、患者さんの生存率の向上につながります。肺がんでは、実際にどのような手術が実施されているのでしょうか。外科医として肺がんの治療に携わって...
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肺がんの手術-肺がんの手術方法や術後のサポートとは?

公開日 2017 年 08 月 30 日 | 更新日 2018 年 10 月 17 日

肺がんの手術-肺がんの手術方法や術後のサポートとは?
梶 政洋 先生

東京都済生会中央病院 呼吸器外科 部長

梶 政洋 先生

目次

肺がんの治療では、手術によってがんを切除することができれば、患者さんの生存率の向上につながります。肺がんでは、実際にどのような手術が実施されているのでしょうか。

外科医として肺がんの治療に携わっていらっしゃる東京都済生会中央病院の梶 政洋先生は、「肺がんの手術では安全性と確実性が何よりも重要である」とおっしゃいます。それはなぜなのでしょうか。

今回は、同病院の梶 政洋先生に、肺がんの主な手術方法から、安全で確実な手術に向けた取り組みにいたるまでお話しいただきました。

肺がんの手術の種類

リンパ節に転移がない比較的早期の肺がんであれば、近年、従来の開胸手術よりも胸腔鏡(きょうくうきょう)(先端に小型のカメラを装着した内視鏡)が用いられることが多いでしょう。私たち東京都済生会中央病院でも、胸腔鏡を用いた肺がん手術を広く実施しています。

以下は、一般的に肺がんに適応される主な手術の方法になります。

開胸手術

従来から実施されてきた開胸手術では、15〜20cmほどの切開を肩甲骨の下から加え、広背筋、前鋸筋(ぜんきょきん)と呼ばれる背中の筋肉を切り、さらに場合によっては肋骨を1・2本切除し大きな術野(じゅつや)(手術を行っている目で見える部分)を確保することで手術を実施します。

この手術では、手術を執刀する医師は、開胸創(手術のための切開によって作られた傷)からの視野を頼りに手術を行います。この開胸手術のメリットは、大きな術野を確保できるため安全で確実な手術を行うことができる点です。

一方、短所は、手術による傷が大きいために身体への負担が大きく、術後の回復に時間を要する点が挙げられます。

完全鏡視下による手術

完全鏡視下による手術とは、全ての行程を胸腔鏡の操作により実施する手術を指します。胸部に小さな切開を加え、そこから径5〜10mmの胸腔鏡を胸腔内に挿入します。さらに、手術操作を行う道具を挿入するため、長さ1cmほどの小さな切開を2〜3か所追加します。

この完全鏡視下手術では、手術の操作を完全にモニターだけを見て行うため、術野を肉眼で(のぞ)くことはありません。操作も全て胸腔鏡のみを用いて行うため、手術中に胸腔内に指を入れ直接触るようなこともありません。

しかし最終的に、この完全鏡視下手術でも、腫瘍を含んだ肺組織を摘出するために6〜10cmほどの切開を加えます。

開胸と胸腔鏡を併用した手術

また、「ハイブリッド手術」や「胸腔鏡補助下手術」と呼ばれる開胸と胸腔鏡を併用した手術があります。これは、径5〜10mmの胸腔鏡を胸腔内に挿入したのち、6〜10cmほどの切開を加え開胸する手術法です。

主に切開した開胸創から術野を確保すると共に、そこから手術操作を行います。この手術法では、胸腔鏡は、あくまで術野を見るための補助的な役割を果たします。

胸腔鏡を用いた肺がん手術のメリットは、手術による傷が小さいために身体への侵襲(しんしゅう)(負担のこと)が少なく済むということです。術後の痛みが少ないことに加え、術後の回復も早いことがわかっています。

完全鏡視下の手術と比べて痛みや体力の回復に関してはほとんど変わりありません。平均では術後1週間弱で退院されます。事務的なお仕事でしたら退院日からでも従事可能な場合がほとんどです。

「胸腔鏡手術」の定義とは?

肺がんにおける胸腔鏡手術の定義は定まっていない

胸腔鏡を用いる胸腔鏡手術は、肺がんの治療において一般的に広く実施されている治療です。近年、胸腔鏡を用いた肺がん手術が広く普及してきました。しかし、胸腔鏡手術の定義は、いまだ定まっていません。医療機関によっては、全ての行程を胸腔鏡で行う完全鏡視下手術のみを胸腔鏡手術とみなすこともあります。

私たち東京都済生会中央病院の呼吸器外科では、お話ししたような完全鏡視下手術と、開胸と胸腔鏡を併用した手術を総称し、胸腔鏡手術と呼んでいます。

肺がん手術の考え方

お話しした手術法の中で、当院がほぼ全ての肺がん手術で適応しているものが、開胸と胸腔鏡を併用した手術です。

術中の不測の事態に対応するためには開胸は大きいほうがよい

胸腔鏡による手術は、お話ししたように手術による傷が小さい点が特徴です。これは、痛みの軽減や術後早期の回復などのメリットがある反面、術中に予期せぬ緊急対応が発生した場合に初動を遅らせる可能性があります。

肺がんの手術中にもっとも注意しなくてはいけないことは肺動脈からの出血です。術中に突然、肺動脈からの出血が起こった場合、緊急で止血しなければなりません。

大きく開胸されている状態であれば、両手が入るため即時に止血することができます。このように、術中に予期せぬ事態が発生したときのことを考えると、手術の(きず)は大きければ大きいほどよいと考えています。

完全鏡視下手術では不測の事態に対応できない

一方、開胸を必要としないために小さな穴のみで手術を実施することができる完全鏡視下手術の場合には、直接指を入れることができず止血が遅れてしまうことがあります。

たとえば、完全鏡視下手術の術中に肺動脈からの出血が発生した場合、止血を図りながら止血のために開胸することになり、処置には遅れが生じてしまいます。

なるべく小さな傷に抑えることはメリットもありますが、術中のリスクを避けるという面では、このようなデメリットもあると考えられます。

胸腔鏡と開胸を併用することのメリット

安全性と確実性を保つことができる

肺がんの手術において開胸と胸腔鏡を併用するメリットは、開胸手術の安全性と確実性を保ったまま、手術による傷をなるべく小さく抑えることができる点であるでしょう。

胸腔鏡を用いることによって、細かいところまで確認することができる点はメリットですが、あくまで二次元の情報に過ぎません。安全で確実な手術を実施するためには、肉眼でしっかりと見ることも同じくらい重要であると考えています。

さらに、直接肺の病巣を触り腫瘍がどこまであるのか確認することができるよう、三次元の情報を得ることも大切です。CT検査によって、ある程度腫瘍の大きさを把握することはできますが、実際に触ることで、どこまで切除することができるか確認することが可能になります。

また、リンパ節を切除し、がんがリンパ節に転移しているか調べるリンパ節郭清(かくせい)を行う際や、細かい作業が必要な手術であれば、胸腔鏡を用いる場合にも開胸することが効果的であると考えています。

肺がん手術の入院期間

一週間ほどで退院することが多い

近年は高齢化が進行していることもあり、特に合併症をもつ肺がん患者さんが少なくありません。そのため、術後には、合併症が悪化しないようケアすることが重要になります。

肺がん手術の術後の回復には個人差がありますが、一般的には一週間ほどで退院されることが多いです。早い方であれば4日ほどで自宅に戻られる方もいらっしゃいます。

肺がん手術後に痛みはある?

痛みが少ない手術を採用

私たち東京都済生会中央病院では、標準的な肺がんの手術である場合には、広背筋や全胸筋、肋骨を切ることなく開胸する方法を採用しています。この方法を採用することで、痛みが少なく回復も早くなるからです。また、呼吸機能が温存されるというメリットがあるため、採用しています。

胸腔鏡の操作のために3〜4か所の切開をする場合には、穴を開けるだけなので筋肉を切ることはありません。肋骨を切ることもないため、痛みも少なくすみます。

開胸をしない完全鏡視下手術のほうが痛みも少なく回復も早いと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私がこれまで診てきた患者さんの痛みの度合いの様子からは、完全鏡視下手術と、開胸と胸腔鏡を併用する手術では、術後の痛みはほぼ変わらないと考えています。

肺がん手術後に起こる可能性のある合併症

肺炎の発症や間質性肺炎の悪化が起こる可能性

肺がんの手術後には、合併症が生じる可能性があります。たとえば、術後には、肺炎が起こったり、間質性肺炎が悪化したりする可能性があるといわれています。

間質性肺炎とは、肺の組織である肺胞の壁に炎症が生じた結果、肺胞の壁が硬くなり(線維化)、酸素を取り込みにくくなる病気です。肺気腫などによって、もともと間質性肺炎を起こしている場合、肺がんの手術によって急速に悪化し重症化する可能性があります。また、肺動脈に血栓(血液の塊)が詰まってしまう肺塞栓症、肺から空気がもれる肺瘻(はいろう)や、気管支を切除した断端を縫合したところに穴があく気管支断端瘻(きかんしだんたんろう)が起こることもあるでしょう。

肺気腫:タバコの煙など有害物質の吸引によって肺の組織が壊れた状態

肺がん手術後の生活

術後は体を動かすことも可能

退院後の注意事項はほとんどありません。たとえば、手術後1~2日までにドレーン(体内に溜まった水分や血液、リンパ液などを体外に排出するために用いられる管)などの装置は全て外しますし、帰宅後の傷の消毒も必要ありません。

私たち東京都済生会中央病院では、入院中にシャワーも浴びてもらいますし、食事も手術の翌日から通常通りとっていただいています。また、手術翌日から廊下を歩いていただきます。日常生活のリハビリを進めながら入院生活を送ってもらうので、退院直後から常識的な範囲で体を動かすことも可能です。

ゴルフなどのスポーツが可能な例も

術後も傷のせいで手が上がらなくなったり、重いものが持てなくなったり、スポーツができなくなったりすることはまずありません。

患者さんの状態によっては術後にゴルフをする方もいらっしゃいますし、呼吸機能に余裕がある方の中には術後にフルマラソンを何回も走っている方もいらっしゃいます。

ゴルフをする男性

術後に再発のリスクがあれば化学療法を実施

肺がんでは、早期の方であれば術後の再発はそこまで多くありません。しかし、再発のリスクが高い進行がんと判断した患者さんに対しては、術後に抗がん剤による治療を行うケースがあります。

私たちの病院では、術後の化学療法は呼吸器内科が主体となり行います。呼吸器外科も患者さんの経過を常に把握し、連携をとり相談しながら治療にあたっています。

梶政洋先生からのメッセージ

手術を必要以上に怖がらないでほしい

胸腔鏡が登場してから、肺がんの手術による体の負担はかなり軽減されるようになりました。お話ししたように、術後一週間程度で退院することが可能なケースがほとんどです。退院後は、重い基礎疾患があるなど重症化している方を除いて、QOL(生活の質)が大きく低下することは少ないでしょう。そのため、手術を必要以上に怖がらないでほしいと思います。

また、肺がんの患者さんの中には、肺がんの他に糖尿病や心筋梗塞などの基礎疾患があること、高齢であることなどを理由に手術することができないと判断されるケースがあります。しかし、当院で患者さんにお話をお伺いし、状態を確認した結果、他院では手術できないと判断された方が手術にいたるケースもあります。そのため、他の病院で受けた治療方針に納得できない場合にも、お気軽にご相談いただきたいと思います。

 

1990年より名古屋市立大学及びその関連病院にて一般外科を習得。1994年より専門を呼吸器外科に定め、国立がんセンター中央病院にて肺がんを中心とする修練を開始した。修練は外科手術のみではなく、画像診断学、病理細胞診、化学療法など多岐にわたり、各方面の一流レベルの先輩医師に鍛えられ、大いに啓蒙された。1999年、大学帰局後は学位取得のため肺がんの臨床と基礎の懸け橋となるテーマを選び、臨床を行いながら研究にも勤しみ、2002年に学位を取得。その後は臨床の現場一筋に打ち込み、2005年より東京都済生会中央病院に赴任し現在に至る。

「肺がん」についての相談が6件あります

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