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インタビュー

脊柱管狭窄症の治療は薬物療法が中心-手術適応となる場合とは?

脊柱管狭窄症の治療は薬物療法が中心-手術適応となる場合とは?
メディカルノート編集部 [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

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加齢による背骨の変化に伴い足腰に神経症状が現れる脊柱管狭窄症は、人口の高齢化とともに増えている病気です。脊柱管狭窄症の治療は、基本的に薬やコルセットなどを用いて行いますが、症状が重い場合は手術適応となることもあります。脊柱管狭窄症の手術には具体的にどのような方法があるのでしょうか。

様々な薬剤

脊柱管狭窄症の治療の中心は薬物療法です。消炎鎮痛剤(痛み止め)や血流改善作用のある薬剤、筋弛緩薬などを、患者さんの重症度に応じて処方します。

脊柱管狭窄症の原因が圧迫骨折ヘルニアである場合は、薬物療法とあわせてコルセットなどの装具を用いることもあります。

ただし、コルセットを長期間使うと筋力が低下してしまうため、処方するのはあくまで急性期のみです。

脊柱管狭窄症の診断を受け、すぐに手術適応となる患者さんは基本的にいらっしゃいません。前項でも述べたように、この病気の治療は基本的に薬剤や装具を用いて行います。

当科では、患者さんの症状が進行し、以下の二点に該当するようになった段階で、手術を考慮しています。

1・日常生活動作に支障をきたしているとき

(就業中の患者さんの場合、仕事に支障をきたしているとき)

2・保存的治療が無効なとき

脊柱管狭窄症の治療選択の際には、症状だけでなく、その患者さん個々人の背景を考えます。たとえば、一人暮らしをされており、症状による支障を取り除かねばご自宅では生活ができない場合は手術をおすすめします。

痛み止めなどを処方するときには、まず弱い薬剤から処方し、症状の進行にあわせて強い薬へと変えていきます。段階を踏み、あらゆる薬剤を用いても効果が得られなくなってしまったときに、はじめて手術を考えます。ですから、これまで処方されていた薬で効果が得られなくなったとしても、すぐに手術を受けなければならないわけではありません。

腰部脊柱管狭窄症の代表的な除圧術である拡大開窓術は、神経を圧迫している椎骨の一部と肥厚した靭帯を後方から取り除く手術です。

手術箇所(※神経が圧迫されている部分)が1か所の場合にかかる時間は、約1時間です。

腰椎が不安定な状態になっている脊柱管狭窄症には、除圧と固定を目的とした手術、腰椎後方椎体間固定術(PLIF/TLIF)を行います。

この手術では、後方アプローチにより椎間板を取り除き、スクリューなどの固定器具と自家腸骨の移植により、背骨の安定性を高めます。一般的な手術時間は2時間半~3時間弱です。

脊柱管狭窄症の手術の方法(術式)は多数ありますが、その多くは筋肉の多い背中側からアプローチするものです。このような「後方アプローチ」では、背骨から周囲の筋肉を剥離する操作が加わることから、筋肉の少ない「前方アプローチ」に比べ、負担(侵襲)が大きくなるというデメリットもあります。

本項でご紹介するOLIF(Oblique Lumbar Interbody Fusion:オーリフ)とは、前方アプローチにより、腰椎が不安定になっている脊柱管狭窄症を治療する非常に新しい低侵襲手術です。

この手術では、腹部側から骨を固定するケージを挿れるため、背中側にある靭帯を除去する必要も、骨を削る必要もありません。また、腹部につくる傷は一か所3~4cmほどと小さいことも、この術式のメリットです。

脊柱管狭窄症の原因となる靭帯の肥厚は、椎間板の変性により椎骨が不安定な状態になったときに、生体の防御反応として起こります。そのため、固定器具により骨のぐらつきを抑えることができれば、肥厚した靭帯は徐々に薄くなっていき、神経の圧迫は自然に改善していくのです。

下肢の症状が軽度で、腰椎の不安定性が原因の腰痛が主症状である場合にOLIFが非常に有効です。(詳しくは、記事3『すべり症が原因で起こる脊柱管狭窄症について』をご覧ください。)

一方、坐骨神経痛など、下肢の症状が強く現れている場合は、前述した拡大開窓術(かいそうじゅつ)あるいは腰椎後方椎体間固定術(PLIF/TLIF)など、従来から用いられてきた一般的な脊柱菅狭窄症手術の適応となります。

骨を削る手術では、高回転ドリルなどの器具を用います。手術では神経の入った硬膜嚢の付近にアプローチするため、合併症として神経の損傷や髄液漏などが考えられます。当科では、このようなリスクを回避するため、骨を削るすべての手術を顕微鏡下で行っています。

顕微鏡下手術のメリットは、私たち人間の肉眼ではみることのできない精緻な三次元画像をみながら手術を進められることです。

手術用ルーペのように主治医自身が首を動かさずとも、ボタンひとつでフォーカスを合わせることができるうえ、ルーペを遥かに超える明るい視野を得ることができます。

たとえば、肉眼ではみることのできない微細な血管から出血がある場合にも、どの血管が傷ついているのか素早くわかるため、出血量を最小限に留めることができます。

また、現行の内視鏡下手術では二次元の映像をみながら手術を行いますが、顕微鏡下手術の場合、術者には三次元の映像が映し出されるため、奥行きなども正確に把握でき、より安全な手術ができると感じています。

患者さんには原則的に当科外来で術前検査を受けていただき、手術の前日に入院していただきます。

脊柱管狭窄症の患者さんには高齢の方が多いため、通常の採血検査、心電図、肺機能検査、胸部X線撮影などのほかに心エコー検査を行ない、心疾患の有無を確認します。

治療が必要な心疾患がみつかった場合は、当院の循環器センターでより精密な検査と専門的な治療を行ったうえで、当科に戻ってきていただきます。

また、脊柱管狭窄症の患者さんは高齢者が多いことから、脳梗塞の既往や心房細動などの患者さんが多く、血液が固まって血栓症を起こしてしますリスクがあります。そのため、血液が固まらないように、抗血小板薬や抗凝固薬などいわゆる血液をサラサラにする薬を服用していることが多々あります。このような薬を服用している患者さんの場合、手術中に血液がなかなか固まらず、出血が持続してしまうリスクがあります。そのリスクを抑えるためには薬を中止すればよいのですが、ワーファリンなどの薬は半減期が長く、手術の前から服用を中止する必要があります。しかしながら、抗血栓薬のない状態が数日続くだけでも、その間に脳梗塞を発症してしまう危険性があります。そのため、ヘパリン置換(ヘパリン化)が必要となり、手術の1週間前から入院となるケースもあります。

喜んで退院していく高齢の方

術前検査で異常がみつからなかった場合は、翌日に手術を実施します。患者さんが高齢の場合はHCU(準集中治療室)で術後管理を行い、翌日に入院されていた部屋に戻っていただきます。ほとんどの患者さんは、術後1週間で退院されています。

以上は一般的な脊柱管狭窄症の入院期間ですが、もともと強い麻痺症状や筋力の問題などを伴っておられる患者さんは、1週間の急性期治療を終えた後、回復期リハビリテーション病棟に移っていただき、集中的なリハビリテーションを行ったのちに退院となります。

脊柱管が狭窄している箇所は、1か所のみとは限りません。脊柱管に2か所以上の狭窄がみられる患者さんも多々いらっしゃいます。

ただし、狭窄により圧迫が生じているすべての箇所に対し、手術を行なうわけではありません。私たちは、手術が必要なほど神経を圧迫している部分のみに的を絞り、その時点では保存的治療で対応できる部分には手を付けないことを信条としています。たとえば、4か所の狭窄がみられたとしても、手術で骨を削る箇所は重い症状の原因となっている2か所のみ、といったイメージです。

なぜなら、患者さんは術後も歳を取り続けるため、脊柱管狭窄症の再発はごく自然な現象として起こり得ることだからです。これは、初回の手術ですべての狭窄箇所に手を付けていても変わりません。

たとえば、初回の手術時の年齢が70歳代の患者さんの場合、その後の人生のなかで2回~3回目の手術が必要となることもよくあります。

あらゆる疾患の手術に共通していえることですが、一度手術を行った部分は癒着が強くなるため、再手術時のリスクや難易度が高くなるという問題があります。

私たちは、このリスクを回避するために初回の手術箇所を最小限にとどめ、2回目以降の手術のときには、手を付けていない部分からアプローチすることで安全性を確保しているのです。

脊柱管狭窄症の手術では、このように2歩も3歩も先を読んで治療計画を立てることが大切です。

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