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膵臓がんとはー症状・検査・治療について
消化器がんのなかで最も予後不良のがんとして知られる膵臓がん。検査で発見しづらく、また悪性度が高いために、自覚症状が現れたときには手術ができないほど進行しているケースが多いという特徴から、生存率の...
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膵臓がんとはー症状・検査・治療について

公開日 2017 年 10 月 01 日 | 更新日 2018 年 09 月 21 日

膵臓がんとはー症状・検査・治療について
寺嶋 宏明 先生

北野病院消化器センター長・消化器外科主任部長

寺嶋 宏明 先生

八隅 秀二郎 先生

北野病院消化器内科主任部長

八隅 秀二郎 先生

目次

消化器がんのなかで最も予後不良のがんとして知られる膵臓がん。検査で発見しづらく、また悪性度が高いために、自覚症状が現れたときには手術ができないほど進行しているケースが多いという特徴から、生存率の低いことが問題になっています。

しかし実際には、膵臓はがんが生じた時点である「サイン」を出していることがあるといいます。果たしてその「サイン」とはどのようなものなのでしょうか。

今回は膵臓がんの病態と原因、注意すべき症状について、北野病院消化器センター長・消化器外科主任部長の寺嶋宏明先生と、同センター消化器内科主任部長の八隅秀二郎先生にお話をいただきました。

膵臓の機能と膵臓がんについて

膵臓の構造

膵臓の構造

膵臓は食道や胃、腸と並ぶ消化器官のひとつで、胃の後ろに位置し、平べったく(扁平で)細長い形をしています。胃や腸のように直接食物を消化する機能はありませんが、食べ物を消化するために必要な膵液を産生し、この膵液が膵管を通って十二指腸に排出されます(外分泌)。また、血糖を調節するホルモン(インスリンやグルカゴン)を血液のなかに分泌し(内分泌)血糖のコントロールを行っています。

一般的に膵臓がんは膵液が通る膵管に発生するがん(膵管がん)のことをいいます。

膵臓がんは数あるがんのなかで最も予後不良のがんとして知られており、悪性度が高いことが特徴です。自覚症状がすぐには生じないので検査でもみつけにくく、治療の手立てがないほど進行してはじめて発見されるため、生存率が非常に低くとどまっているのが現状です。

膵臓がんの疫学と予後について

患者数(罹患数)

がん 罹患予測図

本邦における膵臓がんの患者数は増加傾向にあります。

その理由は複数考えられますが、まず日本人が長寿化していることが挙げられるでしょう。やはり、寿命が長くなればがんに罹患する方は自然と増えてしまいます。

次に、日本の画像診断の発展も関係しているのではないかと推察します。

日本の画像診断の技術は世界的にもトップクラスで、たとえば今のCT検査の画像と10年前(2007年頃)のものを比較すると段違いに鮮明です。これに加えて読影技量が進歩したことによって、これまで見落とされていた膵臓がんが発見できるようになっています。

このような理由から患者数が増加しているとはいえ、膵臓がんの発症の頻度は胃がん、大腸がんや乳がんと比較すると5分の1~4分の1程度とまだまだ少ないことは押さえておきたいポイントです。

それにもかかわらず膵臓がん患者さんの死亡数は、すべてのがんのうち4番目と非常に多いのです。つまり膵臓がんは極めて予後(治療後の経過)が悪く、膵臓がんの5年生存率は7~8%と極めて低い数値になっています。(下図参照)

がん死亡予測図

がん 部位別5年生存率

膵臓がんの一般的な症状

一般的な症状としては

  • 腹痛(心窩部〜左季肋部にかけて)
  • 背部痛(特に左背部痛)
  • 食思不振
  • 腹部膨満感
  • 体重減少
  • 黄疸(おうだん)
  • 睡眠障害

など、漠然とした消化器症状が挙げられますが、一般の消化器疾患でも同様の症状を認めることがあるので、膵臓がんのリスク因子が多ければ多いほど、膵臓の疾患を除外する必要があります。

糖尿病の発症や血糖コントロールが悪くなったら要注意!

正常な膵臓の一部が腫瘍に変わると、腫瘍より尾側の膵管が拡張することが多く、尾側の膵実質は膵液を分泌できなくなり、結果、血糖をコントロールするインスリン分泌能が低下してしまいます。このために糖尿病が発症したり、糖尿病のコントロールが悪化したりすることがあります。

血縁者に糖尿病の患者さんがいないにもかかわらず、50~60歳以降に急に糖尿病を発症した場合や、理由もなく血糖コントロールが悪化した場合、膵臓がんの可能性を除外するためにもエコーなどの画像検査を行うようにしてください。

原因不明の急性膵炎は要注意!

一般的に急性膵炎の原因は飲酒と総胆管結石(胆嚢結石の落下)です。しかし、思い当たる節がないのに急性膵炎を繰り返す方は、膵臓がんが主膵管を巻き込むことで尾側の膵液排出障害から急性膵炎を起こすことがあるので、画像検査をおすすめします。

膵臓がんを早期発見し、治療につなげるためには、漠然とした症状に加えて膵臓がんのリスクファクターを持つ患者さんを認識して、採血や腹部超音波検査のスクリーニングで拾い上げ、精密検査を行うことが重要です。(膵臓がんの早期診断については記事2『膵臓がんのステージと診断の課題―「早期膵臓がん」を発見するためには』で詳しく述べます)

膵臓がんになりやすい人は? 遺伝、慢性膵炎、膵管拡張および嚢胞などリスク因子について

死に至る可能性が高く、早期発見が求められる膵臓がん。膵臓がんは遺伝・既往歴など下記のリスクファクターが指摘されています。

遺伝と膵臓がん

膵臓がん患者さんの3~10%に家族歴があります。たとえば血縁関係者(親、兄弟、子など)に2人以上膵臓がんを発症した人がいる方の場合、家族性膵臓がんとされ膵臓がん発症のリスクが高くなります。3人以上いる場合、50歳以下の若年発症の場合はさらにリスクが高くなります。

また、遺伝性乳がん卵巣がん症候群や家族性大腸ポリポーシスなどでも膵臓がんが発症することが知られており、遺伝性膵癌症候群として分類されています。膵臓がんの患者さんにおいて家族歴、既往歴はとても大事なので、確認することを忘れないでください。

アルコール、慢性膵炎と膵臓がん

アルコールを多量摂取すると慢性膵炎に罹患しやすいことが統計的に明らかになっています。そして、慢性膵炎の患者さんは膵臓がんのリスクが診断から4年以内は14.6倍、5年以降は4.8倍とされています。

慢性膵炎の患者さんすべてが膵臓がんを発症するわけではありませんが、慢性膵炎になると膵臓がやせて薄くなるため、膵臓がんを発症した場合は健康な方よりも容易に膵臓の外側へ浸潤するので、診断時には進行していることが多くなります。ですので、年に1~2回程度の定期検診を受けておくとよいでしょう。

膵管内乳頭粘液性腫瘍と膵嚢胞

膵管内乳頭粘液性腫瘍は主膵管型と分枝型に分類され、膵臓がんが発生することが知られています。主膵管型は主膵管径が10mmを超えてくると膵臓がんを伴う確率が高いとされ、分枝型では年に1.1~2.5%に膵臓がんが発症するとされています。また、膵嚢胞を指摘された患者さんは約3倍膵臓がんの発生率が高いとされています。そのため、嚢胞の大きさ、結節の有無、主膵管の拡張などに応じて年に1~2回程度の採血および画像による評価を行うことが望ましいです。

具体的なリスクファクターは以下のとおりです。

膵癌診療ガイドライン2016より

膵癌診療ガイドライン2016より

膵臓がんの一般的な検査と診断

膵癌診療ガイドライン2016より

膵癌診療ガイドライン2016より

膵臓がん高リスクの方に臨床上で腹痛や背部痛、食思不振、腹部膨満感などの漠然とした症状がみられる場合、詳しい検査を行います。

まず行われる検査の内容は血中膵酵素の確認、腫瘍マーカー、腹部超音波検査です。血中膵酵素のなかでも半減期が長いエラスターゼ1が有用であると報告されています。

膵癌診療ガイドライン2016より

膵癌診療ガイドライン2016より

一般に膵臓がん患者さんにおいてCA19-9の感度は70~90%とされていますが(表1)、CA19-9は進行がんにならなければ陽性になりません(偽陰性も高い)。さらに、他の悪性腫瘍(肺がん、胃がん、大腸がんなど)や良性腫瘍(卵巣のう腫、膵のう胞など)、そして糖尿病や気管支拡張症などの良性疾患でも上昇することも問題といえます(偽陽性も高い)。

腹部超音波検査は、侵襲性のない安全な検査として多く用いられています。ただし、肥満の方や腹部にガスが溜まっている方の場合、膵臓の一部が上手く映し出されないことがあり注意が必要です。腹部超音波検査(US)においても腫瘤が1㎝以下の場合は描出率が半分程度にとどまります。

これらの検査を膵臓がんの高リスク群の方に対して行い、膵嚢胞性病変、膵管拡張や腫瘤が疑われる場合にCT、MRCPによる精密検査を行うことが勧められています。さらに膵臓がんの可能性があると判明したら、超音波内視鏡検査(EUS)を行い、膵臓の腫瘤の有無を調べます。

腫瘤をみつけた場合はEUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法)で、腫瘤がなければERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)で狭窄部の擦過細胞診を行い、ENPD(内視鏡的経鼻膵管ドレナージ)という管を膵管内に留置し、細胞診を実施して診断を確定させます。

細胞診とは膵臓に針を刺して腫瘍の組織を採取したり、膵液を採取して膵液に含まれている細胞の悪性度を調べたりする検査です。膵臓がんの検査では、可能な限りこの細胞診を行うことが大切です。

膵臓がんの予後はなぜ悪いのか

膵臓がんの予後が悪い主な理由は下記のとおりです。

1)特徴的な症状や強いリスクファクターがなく、特異的な検査法も存在しません。スクリーニングの採血検査で使われる膵酵素やCA19-9に代表される腫瘍マーカーは腫瘍が大きくならないと上昇してこないことが多く(偽陰性)、さらに膵臓がん以外の原因でもしばしば上昇します(偽陽性)。

2)膵臓は解剖学的に平べったく(1-2cm程度)、血流が豊富な臓器で、そして大事な血管に隣接しています。つまり、膵臓が平べったいという事は膵臓がんがTS1 (2cm以下)でも膵外に露出して腹腔内転移や局所再発の原因になり、血流が豊富という事はがんが血流に乗って転移しやすく、そして大事な血管を膵臓がんが巻き込んでしまうと外科切除ができなくなり、予後が悪くなる原因とされています。

3) ある程度の大きさにならないと画像検査で腫瘍として認識できません。つまり腫瘍径が5mm以下だとほとんどの画像検査で認識できず、1cm前後だと超音波内視鏡で認識できるようになります。1~2cmでthin sliceのdynamic CTでようやく認識できることが多いです。膵癌取扱規約第7版に撮影条件が記載されていますので、参照してください。

2~3cm以上になると通常の造影CTを始め多くの画像検査で腫瘍として認識できるようになります。この頃になって自覚症状が現れ、腫瘍マーカーも上昇してきますが、すでにリンパ節や他臓器に転移しており、手術ができない状態でみつかることが多くなります。このように、膵臓がんの予後が悪い理由は、膵臓がんの特徴に由来する部分が非常に大きいです。

膵臓がんの治療法

膵臓がんの根治的治療法は外科的切除であり、切除可能病変であれば外科切除を行うことが予後の改善につながります。また、切除可能境界病変では、術前に放射線療法や化学療法を選択することも試みられています。切除不能病変と診断された場合は、局所進行例であれば放射線化学療法が行われることがあります。切除不能病変で遠隔転移があれば化学療法が選択されます。一方で切除不能の局所進行膵臓がんと判断されていた患者さんに放射線と抗がん剤の併用治療を行った結果、がんが縮小して手術での切除が可能となった症例も増えてきています。(詳細は記事4『膵臓がんの治療法―ステージごとの方針と手術適応・化学療法(抗がん剤、放射線治療)の進歩』

切除できるまで縮小させたい膵臓がんに術前放射線治療を行う場合、手術が可能になるまでには少なくとも半年~8か月の期間を要します。長い時間がかかりますが、実施する施設は年々多くなってきています。

しかし膵臓がんの場合、一般病院の切除率は1~2割程度、専門病院でも3割程度にとどまり、大半は切除不能の段階でみつかります。

そこで、現段階では「早期発見」が最大のテーマになります。いかにして早期にスクリーニングし、疑いのある方に病院へ来院いただくかが重要です。

「早期発見を目指すために」という広い観点から、膵癌取扱規約が変更され、膵臓がんのステージが細かく分類されました。これにより膵臓の実態に即した診断が可能になりました。

膵臓がんのステージについては記事2『膵臓がんのステージと診断の課題―「早期膵臓がん」を発見するためには』をご覧ください。

また、地域単位で膵臓がんに取り組み、患者さんを見逃さない仕組みを作る事例も登場しつつあります。

北野病院の取り組みについては記事3『膵臓がんの早期発見は可能?症状や検査でみる『早期膵がん』と『大阪早期膵がんプロジェクト』をご覧ください。

本記事内の症例画像やグラフは全て北野病院ご提供のものです。

 

 

肝臓がん・胆道がん・膵臓がんの外科治療を専門とし、これまでに数多くの消化器がん患者さんを救ってきた消化器外科のスペシャリスト。高い技術での執刀はもちろん、術前化学療法による肝胆膵領域悪性腫瘍の切除適応の拡大についても研究・導入を進めてきており、患者さんの身体的負担ができる限り少ない治療を心掛けている。

胆膵領域の内科的治療の専門家。炎症性腸疾患部門の部長も兼任しており、消化器内科一般から膵がん・胆管がんまで幅広い疾患の治療に携わる。北野病院就任後、2013年より「早期膵がんプロジェクト」の一員として、大阪市北部における膵臓がん早期発見のための啓発を行うなど社会活動にも積極的に携わる。

「膵臓がん」についての相談が8件あります

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