【疾患啓発(スポンサード)】

クリップする
URLを入力して
記事をクリップしましょう
指定された URL のページが見つかりません
S664x430 c8a61490 2a37 45ec ab79 d297268b374c
膵臓がんの治療ー手術・抗がん剤治療・放射線治療について
膵臓がんの治療の第一原則は、「切除できるものは切除する」という考え方です。つまり、手術ができる場合は手術を行い、がんを切除することで治癒を目指します。膵臓がんの治療成績は、手術による切除・手術以...
クリップに失敗しました
クリップ とは
記事にコメントをつけて保存することが出来ます。検索機能であとで検索しやすいキーワードをつけたり、読み返し用のメモを入れておくと便利です。
また、記事を読んで疑問に思ったこと、わからないことなどをコメントに書き、「医療チームのコメントを許可する」を選んで頂いた場合は、医師や看護師が解説をメールにてお送りする場合があります。
※ クリップ内容は外部に公開されません

膵臓がんの治療ー手術・抗がん剤治療・放射線治療について

公開日 2017 年 10 月 02 日 | 更新日 2018 年 09 月 21 日

膵臓がんの治療ー手術・抗がん剤治療・放射線治療について
寺嶋 宏明 先生

北野病院消化器センター長・消化器外科主任部長

寺嶋 宏明 先生

八隅 秀二郎 先生

北野病院消化器内科主任部長

八隅 秀二郎 先生

目次

膵臓がんの治療の第一原則は、「切除できるものは切除する」という考え方です。つまり、手術ができる場合は手術を行い、がんを切除することで治癒を目指します。

膵臓がんの治療成績は、手術による切除・手術以外の薬物療法ともに向上してきており、少しずつ患者さんの生存率も延びてきています。膵臓がんの治療はこれからどのように発展していくのでしょうか。膵臓がんの治療について、手術による切除・抗がん剤治療・放射線治療、そして新しい治療法の開発に至るまでを、北野病院消化器センター長・消化器外科主任部長の寺嶋宏明先生と、同センター消化器内科主任部長の八隅秀二郎先生にお話しいただきました。

ステージごとの膵臓がんの治療方針―治療の第一選択は?

がんが手術で切除できる場合は切除が基本になる

メス

通常のがんの治療は「切除」と「非切除」の2種類に大きく分類できます。そのなかで、消化器がんに対する治療の標準的な考え方は、「切除できるものは切除する」です。実際に、切除するか否かによって膵臓がんの治療成績と患者さんの生存率はそれぞれ大きく異なります。非切除で抗がん剤と放射線による治療を行った場合の生命予後は、抗がん剤治療が大きく進歩した昨今であっても最長2~3年といわれています。

記事1『膵臓がんとは―自覚症状や原因、なぜ早期診断が難しい?』で述べたように、膵臓がんの腫瘍は非常に悪性度が高く、大腸がんや胃がんの進行速度とは大きく異なると考えなければなりません。同じ5ミリの大きさの腫瘍でも、膵臓がんは他のがんに比べると腫瘍進展速度が速く、周囲の血管や神経へ早期に浸潤します。ただし、早期の段階でがんをみつけられれば、顕微鏡レベルの浸潤部位も含めて、確実に手術で切除でき、治療成績の向上が期待できます。

たとえば胃がんの場合、粘膜にがんがとどまっていれば浸潤が起こっていないので、内視鏡で粘膜を切除することで治療できます。膵臓がんも胃がんと同様、上皮内にとどまっている状態のものをみつけられれば、理論的には膵臓の部分切除でほとんどのがん細胞を取り除くことができます。ですから、「いかに早く発見するか、そしていかに早く切除に持って行くか」が膵臓がん治療における重要な課題ですし、それ故に外科的切除は膵臓がん治療での中心的な役割を果たしています。

なお、近年では高齢の方もお元気であることが多く、手術を受ける年齢の幅も広がっています。2007年頃まで、手術が実施できる年齢の目安は70代前半だったのですが、現在は80代後半の患者さんでも、患者さんが長時間の手術に耐えられる体力をお持ちで、切除が適応できる症例に対しては手術を行っています。

画像でみる膵臓がんと手術適応の基準

患者さん 画像

この患者さんの腫瘍径は約18ミリでした。膵臓の厚みは2cm程度で、この場合はすでに膵臓の組織からはみ出るような形でがんが大きくなっていますから、早期の膵臓がんではなく進行期の膵臓がんと診断されます。こうなると周囲の臓器に浸潤していくので、手術で切除できても、術後再発の可能性が高くなります。

この患者さんは急性膵炎を繰り返していたために膵臓がんを疑われ、当院を受診されました。検査を行ったところ膵臓に10mmの腫瘤ができており、膵管も拡張している状態です。

※膵臓の尾部の膵管拡張から膵臓がんを発見できることがある

このように、膵管が急に拡張している場合、拡張が始まっている部分に何らかの変化が起こっていると疑うことができます。

この画像では膵臓の実質の部分が消失し、脂肪組織に置き換わっています。このような場合、膵管の中にがんの前段階にあたる細胞が潜んでいて、がんが浸潤することで流れてくるはずの膵液が流れなくなり、膵臓の実質が萎縮したと考えられます。

CTでこの膵臓をさらに詳しくみてみると、膵臓の輪郭に変形がみられます。このような異常がある場合も、変形した輪郭の部分に何らかの変化が起こっていると考えられます。

膵臓がんの治療―手術治療

膵頭十二指腸切除

膵頭部にがんがある場合の手術では、十二指腸、胆管、胆のうを含めて膵頭部を切除します。複数の血管や臓器とつながっているため、切除後に膵臓、胆管、消化管の再建(切除した部分をつなぎ直す)が必要になり、患者さんにとってはより負担の大きい手術となります。

手術が複雑になるぶん、術後の合併症の頻度は高くなり、特に膵臓と消化管をつなげた部分の縫合不全が発症すると、膵液が漏れる状態(膵液瘻)が発症し、状況によっては重症化することもあります。

膵体尾部切除

膵臓の体部と尾部を切除する方法で、消化管の再建が不要であるため、膵頭十二指腸切除よりも術式はシンプルになりますが、膵頭十二指腸切除に比べて膵液瘻の発生頻度は高く、それをいかに抑えるかが外科的な課題です。

膵全摘

膵臓全体にがんが拡がっている場合やまれですが一か所だけではなく多発している場合では、膵全摘という膵臓をすべて取り除く手術が適応になります。その他、膵頭十二指腸切除術や膵体尾部切除を行った患者さんの残った膵臓に、後になって新たにがんが発生した場合も膵全摘が行われる場合があります。

一度膵臓がんの手術をしたにもかかわらず数年後に再びがんが発生した場合、最初の段階からがんの「芽」が存在していた可能性が高く、その患者さんが膵臓がんを発症しやすいというベースを持っていると考えられます。

バイパス術

がんを切除することができない場合でも、腫瘍のために十二指腸が塞がって食事ができない、胆汁の流れが塞がって黄疸が発生しているなどの場合に、胃と小腸や胆管と小腸をつなぐバイパス手術を行うことがあります。

なお、現在は内視鏡治療が大きく進歩しているため、膵臓がんで黄疸や十二指腸の狭窄がある場合でも、胆管や十二指腸の狭くなった場所に内視鏡的にステントを留置することで、黄疸は改善され、食事を摂ることもできるようになりました。

手術で膵切除を行った場合は術後もフォロー(経過観察)を行う

もともと膵臓がんで手術を受けた方は、残っている膵臓(残膵)に新たな膵臓がんが発生するリスクが高いのですが、膵臓がん以外の疾患(胆管がんや十二指腸がんなど)で膵頭十二指腸切除を受けた患者さんも、残膵(この場合は膵体尾部)に膵臓がんが発生することがあります。したがって、膵切除を行った場合は、術式にかかわらず残膵の状況を定期的にフォローする必要があります。

具体的には、CT・MRCP・超音波内視鏡などで、残膵に腫瘤や膵管拡張などがないかを定期的に確認しています。

膵臓がん切除例の生存率の推移(膵癌全国登録)

膵がん切除例の生存率

膵がん切除例の生存率

上記のように、1981年~1990年の膵臓がん切除例の1年生存率は40%、5年生存率は11%で、約10か月が術後の生存期間の目安とされていました。それから徐々に生存期間は延長し、1991年~2000年の生存期間中央値は12か月、2001年以降は21か月になっています。また、現在はさらに生存期間が延びていると予測できます。

膵臓がん切除例の生存率・生存期間が延びている原因は?

膵臓がんの生存率が上がっている原因としては、主に下記の3点が挙げられます。

1)抗がん剤の進歩

術前化学療法(抗がん剤のみ)や術前化学放射線療法(抗がん剤+放射線治療)が導入されるようになり、かつては切除できない段階の高度進行膵臓がんの腫瘍サイズを切除可能なレベルにまで小さくし、実際に切除を行う症例が増えてきました。

また、切除後に抗がん剤治療を追加する術後補助化学療法によって長期的な治療成績向上も得られていますし、万が一再発しても、従来よりも治療効果の高い抗がん剤治療を導入することで再発後の生存期間も延長しています。

2)ハイボリュームセンター化の実現

膵臓がんの手術は難易度が高いため、手術の実施数によって成績に大きな差が生じます。たとえば、年間5例の膵臓がん手術を行っている施設と30例の施設では、成績に明確な違いがあるのです。このため、膵臓がんのハイボリュームセンターを設定してそこに患者さんを集約すれば、治療成績は上がることになります。

現在、こうしたハイボリュームセンター化が進んできており、集約化による治療成績の向上が生存期間にも影響を及ぼしていると考えられます。

当院では、2017年現在で年間10例以上の膵臓がん手術を実施しています。がんセンターや大学病院ほど症例数は多くありませんが、10年前の年間4例に比べると、この10年間で切除症例が倍増しています。

ただし、腫瘍を切除できなかった症例は年間で約50例と、切除例よりも圧倒的に多いのが現状です。

3)早期膵臓がんの切除例の増加

当然ながら、早期段階で手術を行えば、進行の膵臓がんよりも治療効果が高いため成績も上がることになります。当院も地道に行ってきた早期膵がんプロジェクトの取り組みがようやく実を結んできて、早期膵臓がん症例の診断治療例が徐々に増えてきています。

詳細は記事1『膵臓がんとは―自覚症状や原因、なぜ早期診断が難しい?』をご覧ください。

私たちが北野病院に着任する以前は、切除を行った膵臓がんの患者さんの術後生存期間の中央値は18か月でしたが、この10年間で36か月にまで延ばすことができました。これは手術手技の進歩もありますが、先程述べた抗がん剤の進歩に大きく依存しています。今後、膵臓がんの早期発見が進み早期切除例が増えていけば、膵臓がんの治療成績はさらに向上していくでしょう。引き続き記事1『膵臓がんとは―自覚症状や原因、なぜ早期診断が難しい?』でご紹介した早期膵癌プロジェクトをより一層推進させ、早期膵臓がんの切除件数を増やしたいと考えます。

膵臓がん治療の集約化の重要性

寺嶋先生

そもそも切除適応症例が少なく、しかも症例数が治療成績に影響する膵臓がんにおいては、今後は患者さんを各地域の特定の大病院/基幹施設への集約化を進める必要があると考えます。欧米や一部のアジア諸国ではすでに集約化が実施されており、なかには大多数の手術を一都市の病院で行っている国もあります。

日本の場合、各都道府県にレベルの高い大病院/基幹施設があるので、首都である東京にすべて集約化をする必要はありません。これは地域の患者さんにとってメリットといえます。各都道府県の大病院/基幹施設に症例を集約化し、さらに膵臓がんの治療を進歩させていくことで、患者さんの予後を改善できれば理想的です。

膵臓がんの手術の適応は慎重に判断する

検査では膵臓がんが疑われる所見があるものの、確定診断に至らないケースについては、手術に関して非常に慎重に判断を行います。膵臓がんの手術はさまざまな点で患者さんの負担が大きく、術後の合併症のリスクもあります。ですから、確実にその膵臓にがん細胞があるという根拠がない限り我々は手術を行いません。

実際のところ、当院では膵臓がんの疑いで手術を行い、実際にはがんがなかったケースはありませんが、膵臓がんであるか否かの判断が難しい場合や、一定間隔を開けた再検査で状態の改善がみられる場合は経過観察とする場合もあります。

内科的な観点からみると、膵管の変化などの早期段階で手術をすれば上皮内がんの時点で治療できる可能性もあるのですが、外科的な観点からするとやはり、それががんであるという信頼に足るデータがない限り手術はできません。

膵臓がんの治療―化学療法(抗がん剤治療)

膵臓がんの治療は手術と抗がん剤を組み合わせて行われる

膵臓がんに対する抗がん剤は近年進歩を遂げており、抗がん剤をあらかじめ投与することで、最初は腫瘍の切除が不可能であった状態の患者さんが手術を受けられるようになるケースも増えてきました。

このため最近では、切除不可能な症例や切除可能境界領域でもより進行した症例では、まずは抗がん剤や放射線で術前化学療法を行い、がんを小さくして、切除可能と判断した時点で手術を行うことが推奨されています。切除する範囲を狭められれば、より安全かつ確実にがんを取り除くことができるからです。

現在の膵臓がんの治療は総合的に行われる

膵臓がんの早期発見の重要性が意識される前までは、がん細胞を徹底的に体から取り除くことが最も重視されてきました。そのため、周辺の組織や血管を含めた広範囲の切除を行っていたのです。開腹して膵臓を切除してから、その部分に放射線を照射して、その後に消化管の再建を行うという方法が用いられていたこともあります。

しかしこの方法では、がん細胞は確かに切除できても術後に合併症が起こるケースが非常に多く、治療成績も優れませんでした。

その後膵臓がんにおける治療のあり方は見直され、現在では「手術前後の抗がん剤による化学療法や、再発した場合の治療などを総合的に考えて手術を行い、生存率の向上につなげる」という考え方へ変化しました。

近年は手術手技や研究開発が進み、手術もより効率的で侵襲性の少ない方法に変化してきています。さらに術前・術後の化学療法の発展によって、手術をしなくても化学療法だけである程度生存期間を延ばすことのできるケースも増えてきており、「手術が治療のすべて」

という考え方はもはや通用しない時代となってきました

北野病院における膵臓がんの総合的治療のあり方

当院では、膵臓がん切除症例においては、採取したがん組織の病理検査を行ったうえで、外科医や内科医、放射線技師、臨床検査技師、病理医などが集まって検討会を開きます。

この検討会によって、内科医/放射線科医はより早い段階での診断はできなかったのか、外科医は手術を含めた治療で何をすればさらに効果がみられたのか、今回の治療で何が足りなかったのか、などといった点を振り返ります。また検査技師の方々には検査で着目すべきだった点を、病理医の先生方には病理診断の際の重要点をそれぞれ振り返ってもらい、次の膵臓がん治療に活かしています。

こうした検討会を毎回積み重ねていくことで、膵臓がんの早期発見の可能性は徐々に高まっていくと考えます。

膵臓がんに対する放射線治療

患者さんの病態によっては、抗がん剤と併用する形で、放射線による治療がなされる場合があります。

手術が行われた場合か、切除不能で化学療法のみで治療が行われた場合かに関わらず、一般的には抗がん剤単独による治療よりも、抗がん剤に放射線を加えた治療のほうが効果は高いとされています。

放射線治療はあくまで局所的なコントロールのみを目的とした治療法であり、基本的にはがんが局所の重要な血管に広範囲に浸潤していて手術ですべてを取りきれないときに行われます。ただし、切除不能の膵臓がんと判断されていた患者さんに抗がん剤と放射線治療を併用して行った結果、がんが縮小したために手術で切除が可能となった症例も増えてきていますし、そこで切除した腫瘍を検査したところ、がん細胞が完全に消えてなくなっていた例もあります。

切除できるまで縮小させたい膵臓がんに術前化学放射線治療+化学療法を行う場合、手術が可能になるまでには少なくても半年~8か月の期間を要します。長い時間がかかりますが、放射線治療期間にがんの進行がみられないか、腫瘤が小さくなっていることがわかれば、手術の適応を前向きに検討できます。

こうした治療法はまだ現在の膵臓がん治療ガイドラインには載っていませんが、その効果の実感からトレンドとなってきており、実施する病院が年々多くなってきています。

膵臓がんの術後の再発率は高い

膵臓がんの再発率は約80%と非常に高く、半年で再発する方もいれば、5年以上経ってから再発する方もいらっしゃいます。治療の効果は次第に弱くなっていってしまうため、治療途中にも少なくない数の方が亡くなってしまうのが現状です。

もちろん、手術や抗がん剤治療によって膵臓がんを完治できれば理想的であり、私たちはそこを目指して研究を進めていますが、これと同時に、再発後に起こるさまざまな問題を一つ一つ解決していく姿勢も重要だと考えます。

ですから私たちは、膵臓がんの患者さんが生きる希望を失わないように、できる限り最後まで患者さんに寄り添った医療を行います。

膵臓がんの治療―新しい治療の可能性は?

これまで治療の施しようがないとされた腹膜転移のある膵臓がんに対して、関西医科大学を中心に、新しい治療の開発が進められている最中です。

この治療はお腹の中に特殊な抗がん剤を入れて、他の抗がん剤と併用する形で腹膜に転移したがん細胞を叩くという方法で、実際に腹膜転移が消失したため、手術で切除が可能になった症例の報告もされています。

現在のところ限られた症例にしか適応とならず、なおかつ保険適用の問題も残されていますが、治療成績は非常に良好で今後に期待できる治療法といえるでしょう。

膵臓がんの予後―早期発見できた場合、そうでない場合

膵臓がんは根治できる病気?

「がんの根治」の定義を「手術してがんをとり、再発も起こらなくなった状態」と考えた場合、膵臓がんがその領域に達するまでの道のりはまだまだ遠いといえます。

当院で治療を行った患者さんのうち、手術後5年以上生存できている方の数は、過去20年(1997年~2016年)遡ってわずか11名にとどまります。そのうち、再発も起きていない方は7名です。このように膵臓がんは、治療を行っても予後不良ながんではあるものの、再発なく長期生存できている患者さんがいることは確かです。

最近は抗がん剤の進歩により、がん再発後も5年以上にわたり元気に過ごされている方もおられますし、再発がそのまま「手の施しようがない状態」を意味する時代ではなくなってきました。

ただし、どれほど挑戦的な手術を行っても、どれほど強力な抗がん剤を投与しても、病態が改善しないケースはやはり少なからず存在します。ですから、我々が患者さんに特定の治療を強制することは一切ありません。あくまで患者さんやご家族と話し合ったうえで、選択肢として提示するのみであり、治療を受けるか否かは患者さんの価値観や人生観に基づいて決定していただくのです。

これからの膵臓がん治療

八隅秀二郎先生、寺嶋宏明先生

ここまで、膵臓がんの早期発見の重要性と治療の流れについてご紹介してきました。

膵臓がんの治療の考え方は国によって大きく異なり、欧米では最初から切除をしないケースもあります。これは膵臓がんがもともと予後不良ながんであるため、切除しても大きくは改善しないという考えに基づいています。一方、日本を含めたアジア諸国は積極的に切除を行っている傾向にあります。

進行膵臓がんに対して、どのような治療を行うべきかについては世界的に議論が行われている最中ですが、わが国の現状としては下記のような考え方が主流と思われます。

  • 転移のある切除不能進行膵臓がん

抗がん剤治療を行い、効かなくなればレジメン変更を行う。

  • 転移のない切除不能の局所進行膵臓がん

まず抗がん剤と放射線の併用療法を行い、その後抗がん剤治療を追加。半年以上経過をみて、切除が可能と判断されれば手術を行う。

  • 切除可能境界領域の膵臓がん

まず抗がん剤と放射線の併用療法、または抗がん剤治療を行うのが望ましいが、手術のタイミングは施設の考え方による。なお、手術をまず行う症例もある。

  • 切除可能な膵臓がん

手術でがんを切除する。

なお、切除可能な膵臓がんに対して術前治療をするべきかについても臨床試験が進められています。現在のところまだ試験結果が出ていませんが、数年後には試験結果が出され、切除できる場合にはすぐに手術をすべきか、術前化学療法を行ったうえで手術をすべきかが判明する見込みです。

膵臓がんになった段階で手術を受けるべきではないという一部の意見もありますが、何も治療をしなければ遠くない未来に死が待っています。膵臓がんの治療は楽なものではありませんが、私たちは医師として、何もしないことも含めたすべての選択肢を患者さんに提示する必要があります。早期の膵臓がんの段階でも、何もしないという選択をされる患者さんもいらっしゃいます。これもご本人の意志決定ですから、その思いを最優先したいと考えます。そして、もしも私たちを信頼していただき、当院で治療を受けることを選択されるのであれば、内科・外科・放射線科・病理診断科の医師、看護師、検査技師など多職種が一丸となり協力して、全力で患者さんの治療にあたり、一生を支えていきたいと考えます。

本記事内の症例画像やグラフは全て北野病院ご提供のものです。

 

膵臓がん (寺嶋宏明先生・八隅秀二郎先生)の連載記事

肝臓がん・胆道がん・膵臓がんの外科治療を専門とし、これまでに数多くの消化器がん患者さんを救ってきた消化器外科のスペシャリスト。高い技術での執刀はもちろん、術前化学療法による肝胆膵領域悪性腫瘍の切除適応の拡大についても研究・導入を進めてきており、患者さんの身体的負担ができる限り少ない治療を心掛けている。

胆膵領域の内科的治療の専門家。炎症性腸疾患部門の部長も兼任しており、消化器内科一般から膵がん・胆管がんまで幅広い疾患の治療に携わる。北野病院就任後、2013年より「早期膵がんプロジェクト」の一員として、大阪市北部における膵臓がん早期発見のための啓発を行うなど社会活動にも積極的に携わる。

「膵臓がん」についての相談が8件あります

関連記事