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公開日 : 2017 年 10 月 11 日
更新日 : 2017 年 10 月 12 日

目次

脳梗塞脳動脈瘤、頸動脈狭窄症などの低侵襲な治療法として近年実施施設が増えている脳血管内治療。脳血管内治療は太ももから頭頸部へカテーテルを通して手術を行う治療法です。開頭手術と比べて術後の回復が早いなどそのメリットが注目されますが、リスクもゼロではありません。今回は脳血管内治療の適応疾患や術式、リスクと対策について、総合東京病院 院長 同院脳血管内治療センター長の渡邉 貞義先生にお聞きします。

脳血管内治療とは

 

脳血管内治療とは、手術によって開頭をせずに脳の血管内から治療を施す方法です。従来の開頭手術は最もスタンダードな脳神経外科手術のひとつであり、世界中で実績がありますが、皮膚や頭蓋骨などを切開する必要があるために術後の回復に時間を要します。そのため、入院期間が長くなる、患者さんの心身の負担が大きい、開頭では手術が難しい場所では手術が実施できないというデメリットがありました。

そこで登場した新たな治療法が脳血管内治療です。脳血管内治療は頭にメスを使わず、カテーテルと呼ばれる医療用の細い管を脚の付け根から挿入します。そして大動脈を通って、脳の血管に到達させます。患部までカテーテルが届くと、次にカテーテルを通して治療に必要な器具や薬剤を挿入し、治療を実施します。

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脳血管内治療の種類と適応疾患の一例

脳血管内治療の適応疾患で代表的なものとして、脳動脈瘤、脳梗塞、頸動脈狭窄症、頭蓋内血管狭窄症、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻などが挙げられます。

脳動脈瘤

脳動脈瘤とは脳の動脈の一部が風船のように膨らんだものです。実際に風船と同じく、膨らんだ部分は正常部よりも血管壁が薄くなっており、何らかの拍子に破裂する可能性があります。この脳動脈瘤が破裂していないものを「未破裂脳動脈瘤」、破裂してしまった状態を「くも膜下出血(破裂動脈瘤)」といいます。

未破裂脳動脈瘤では通常、自覚症状がありません。そのため脳ドックなどの検診や、他の病気の疑いで脳のCTやMRIを撮った際に初めて発見されることがあります。

未破裂脳動脈瘤が破裂してしまうと、くも膜下出血を引き起こします。くも膜下出血は死亡率や後遺症の残る確率が高いため、未破裂脳動脈瘤が発見された場合の対応が重要になってきます。すべての脳動脈瘤が破裂するかというとそうではありません。UCAS Japanという未破裂脳動脈瘤のスタディで、日本人の破裂率がおおむねわかってきました。

破裂率は、部位別・大きさ別(さらには形状ごと)に異なります。そのため、破裂しやすい動脈瘤をいかに治療するかが肝要です。

未破裂脳動脈瘤に対するコイル塞栓術

コイル塞栓術

 

小さな未破裂脳動脈瘤では経過観察を行うこともありますが、脳動脈瘤が大きく破裂のリスクが高い場合は治療を実施します。未破裂脳動脈瘤に対する脳血管内治療では、「コイル塞栓術」という未破裂の脳動脈瘤のなかにコイルを詰める治療を行います。コイルを詰めることで血液が脳動脈瘤に流れなくなり、破裂のリスクがなくなるというものです。ほかに、上記のイラストのようなくびれがないタイプの脳動脈瘤では、コイルが血管内へはみ出ないようにステント(血管などを広げるために使われる、金属製で網目状の筒のようなもの)を併用することもあります。

 

近年ではフローダイバーターステントというコイルを用いない塞栓術も行われるようになりました(一部、コイルも併用)。これは、ステントに特殊な加工を施すことで、ステントを留置した本幹以外には血液がいかず、脳動脈瘤内の血液を血栓化させ破裂を防ぐというものです。

これらのデバイスの登場によって、以前では良好な結果を得ることができなかった症例に対しても、治癒を期待することができるようになってきました。しかしながら、治療後の合併症などのリスクが低いと断言するにはまだまだ不十分です。今後さらなる改良が期待されるところです。

当院では、いかに安全に治療を完遂させるかということを第一に考え、開頭手術や脳血管内治療、あるいはその両方を組み合わせた治療や保存的治療といった選択肢のなかから、患者さんやご家族へそれぞれのリスクについてご説明し、相談のうえで治療法を決定しています。

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脳梗塞

脳梗塞は、何かしらの原因で脳の血管が詰まってしまい、その先の脳組織に血液が行き渡らなくなることで脳が損傷を受ける病気です。脳梗塞は脳卒中のひとつと分類され、脳卒中で病院に運ばれてくる患者さんのおよそ7割が脳梗塞であるといわれています。

脳梗塞は「時間との勝負」といわれるほど、発症後から治療を実施するまでの時間が予後に大きな影響を与えます。発症後4.5時間以内であればt-PA療法(血栓溶解療法)という、詰まった血栓を溶かす薬剤を投与することで回復が見込めます。t-PA療法が適応とならない場合、t-PA療法だけでは十分な効果を得られない場合に、脳血管内治療が選択されます。

急性期脳梗塞に対する血栓回収療法

血栓回収療法

 

急性期脳梗塞では血管に詰まった血栓を取り除く手術を実施し、血管の再開通を試みます。ワイヤーのようなもので血栓を絡め取り回収するタイプや、血栓を砕いて吸引するタイプ、ステントで血管内を広げて血栓を回収するタイプなど多くの回収デバイスがあります。

以前は、ウロキナーゼによる局所線溶療法やバルーンによる血栓破砕などを行っていましたが、現在では、ほぼ行われていません。2010年以降、我が国において血栓回収機器(MERCI,Penumbra)が使用可能となりました。

当時は、かなり脚光を浴びましたが、残念ながら良好な結果が得られませんでした。しかしステント型血栓回収機器の登場により、脳梗塞の治療が大きく変わったのは事実です。2015年以降、これらのデバイスの使用による臨床試験が次々に報告され、脳梗塞に対する脳血管内治療の有用性が示されました。現在では、rt-PAに加えて、脳血管内治療との併用により、目覚ましい結果が得られるようになりました。

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頸動脈狭窄症

頸動脈は首に存在し、脳に血液を送る太い動脈です。この部分が狭くなってしまった状態を頸動脈狭窄症といいます。この狭くなった部分に血栓などができ、それが突然脳の血管へ飛んでしまうと脳梗塞を引き起こします。そのため、この狭窄を改善し脳梗塞を防ぐことが頸動脈狭窄症の治療の目的のひとつであるといえます。

頸動脈狭窄症に対する頸動脈ステント留置術

頸動脈ステント留置術

 

頸動脈狭窄症の脳血管内治療では、血管内にステントを置いて狭くなった血管を再拡張します。

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頭蓋内血管狭窄症

この病気は、脳の動脈が細くなる病気です。TIAを含む脳梗塞患者の約3~5割に頭蓋内狭窄病変があるといわれています。治療法として心臓の血管や頸動脈の病変に対して行われるようにバルーン(風船)で膨らませて、ステントを留置すればいいのではと思うかもしれません。しかし脳の動脈は心臓などの血管(体血管)などとは異なり、血管の壁が薄く、穿通枝という物凄く細い血管が枝分かれして形成されています。そのため、ステント留置により、血管破裂や、穿通枝の閉塞(脳梗塞)が起こりやすいのです。したがって通常はカテーテル治療ではなく、内科的治療が優先されます。内科的治療に抵抗性の場合は、カテーテル治療やバイパス術の対象となります。

日本では、2013年に頭蓋内ステント(Wingspan stent)が認可されましたが、2011年に報告されたSAMMPRISというスタディで、ネガティブな結果が出たことにより、頭蓋内狭窄病変に対する頭蓋内ステント適応は、かなり限局されたものとなりました。

脳動静脈奇形

脳動静脈奇形は先天性の脳血管障害です。胎内での発育時に脳血管の一部がうまく形成されず、通常はわかれるはずの動脈と静脈がつながってしまいます。すると脳動静脈奇形を起こした部分を流れる血液は酸素と栄養の交換をうまく行えないばかりか、動脈の強い圧力が静脈や弱い血管に加わることで出血し、脳出血やくも膜下出血を引き起こすリスクが高まります。

脳動静脈奇形に対する塞栓術

脳動静脈奇形に対する塞栓術

 

脳動静脈奇形は、脳動静脈奇形とそれに血液を送っている血管を閉塞して治療します。具体的にはカテーテルを通して血管を閉塞するための薬剤を注入します。ただし、血管内治療のみで治癒することはほとんどなく、手術や放射線治療との組み合わせで根治を目指します。

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硬膜動静脈瘻 

脳の一番外の膜である硬膜あるいは、その近傍に異常な動静脈短絡を示す病態です。

この病気は、稀な病気ではありますが、血管内治療が第一選択となることが多い病気のひとつです。発生頻度は10万人あたりに年間0.29人と報告されています。くも膜下出血の場合は10万人あたり約20人前後といわれ、くも膜下出血の100分の1くらいの頻度です。そのため、一般の医師の間でもあまり知られていません。

発生場所によりいろいろな病態を呈します。発生頻度の高い場所は、海綿状脈動部といって目に近いところです。頻度は約50%弱とされます。眼に症状が出るので、患者さんは眼科を初診とすることが多く、早期治療のためにもこの疾患の啓蒙が重要です。症状は、眼が真っ赤になって飛び出し、まぶたが下がってきます。脳圧が亢進してくると頭痛、意識障害などの症状が現れます。MRI、MRAで疑い診断は可能ですが、確定診断のためには、脳血管撮影検査が必要です。脳に逆流するような所見の場合は、出血などのリスクが高いため、治療が必要になってきます。ほとんどの場合は、カテーテルでの治療となります。

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