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脳梗塞や脳動脈瘤の脳血管内治療 - そのリスクと対策
脳梗塞や脳動脈瘤、頸動脈狭窄症などの低侵襲な治療法として近年実施施設が増えている脳血管内治療。脳血管内治療は太ももから頭頸部へカテーテルを通して手術を行う治療法です。開頭手術と比べて術後の回復が...
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脳梗塞や脳動脈瘤の脳血管内治療 - そのリスクと対策

公開日 2017 年 10 月 11 日 | 更新日 2018 年 01 月 30 日

脳梗塞や脳動脈瘤の脳血管内治療 -  そのリスクと対策
渡邉 貞義 先生

南東北グループ副理事長/医療法人財団 健貢会 理事長/ 総合東京病院 院長

渡邉 貞義 先生

目次

脳梗塞脳動脈瘤、頸動脈狭窄症などの低侵襲な治療法として近年実施施設が増えている脳血管内治療。脳血管内治療は太ももから頭頸部へカテーテルを通して手術を行う治療法です。開頭手術と比べて術後の回復が早いなどそのメリットが注目されますが、リスクもゼロではありません。今回は脳血管内治療の適応疾患や術式、リスクと対策について、総合東京病院 院長 同院脳血管内治療センター長の渡邉 貞義先生にお聞きします。

脳血管内治療とは

 

脳血管内治療とは、手術によって開頭をせずに脳の血管内から治療を施す方法です。従来の開頭手術は最もスタンダードな脳神経外科手術のひとつであり、世界中で実績がありますが、皮膚や頭蓋骨などを切開する必要があるために術後の回復に時間を要します。そのため、入院期間が長くなる、患者さんの心身の負担が大きい、開頭では手術が難しい場所では手術が実施できないというデメリットがありました。

そこで登場した新たな治療法が脳血管内治療です。脳血管内治療は頭にメスを使わず、カテーテルと呼ばれる医療用の細い管を脚の付け根から挿入します。そして大動脈を通って、脳の血管に到達させます。患部までカテーテルが届くと、次にカテーテルを通して治療に必要な器具や薬剤を挿入し、治療を実施します。

脳血管内治療について詳しくはこちら

脳血管内治療の種類と適応疾患の一例

脳血管内治療の適応疾患で代表的なものとして、脳動脈瘤、脳梗塞、頸動脈狭窄症、頭蓋内血管狭窄症、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻などが挙げられます。

脳動脈瘤

脳動脈瘤とは脳の動脈の一部が風船のように膨らんだものです。実際に風船と同じく、膨らんだ部分は正常部よりも血管壁が薄くなっており、何らかの拍子に破裂する可能性があります。この脳動脈瘤が破裂していないものを「未破裂脳動脈瘤」、破裂してしまった状態を「くも膜下出血(破裂動脈瘤)」といいます。

未破裂脳動脈瘤では通常、自覚症状がありません。そのため脳ドックなどの検診や、他の病気の疑いで脳のCTやMRIを撮った際に初めて発見されることがあります。

未破裂脳動脈瘤が破裂してしまうと、くも膜下出血を引き起こします。くも膜下出血は死亡率や後遺症の残る確率が高いため、未破裂脳動脈瘤が発見された場合の対応が重要になってきます。すべての脳動脈瘤が破裂するかというとそうではありません。UCAS Japanという未破裂脳動脈瘤のスタディで、日本人の破裂率がおおむねわかってきました。

破裂率は、部位別・大きさ別(さらには形状ごと)に異なります。そのため、破裂しやすい動脈瘤をいかに治療するかが肝要です。

未破裂脳動脈瘤に対するコイル塞栓術

コイル塞栓術

 

小さな未破裂脳動脈瘤では経過観察を行うこともありますが、脳動脈瘤が大きく破裂のリスクが高い場合は治療を実施します。未破裂脳動脈瘤に対する脳血管内治療では、「コイル塞栓術」という未破裂の脳動脈瘤のなかにコイルを詰める治療を行います。コイルを詰めることで血液が脳動脈瘤に流れなくなり、破裂のリスクがなくなるというものです。ほかに、上記のイラストのようなくびれがないタイプの脳動脈瘤では、コイルが血管内へはみ出ないようにステント(血管などを広げるために使われる、金属製で網目状の筒のようなもの)を併用することもあります。

 

近年ではフローダイバーターステントというコイルを用いない塞栓術も行われるようになりました(一部、コイルも併用)。これは、ステントに特殊な加工を施すことで、ステントを留置した本幹以外には血液がいかず、脳動脈瘤内の血液を血栓化させ破裂を防ぐというものです。

これらのデバイスの登場によって、以前では良好な結果を得ることができなかった症例に対しても、治癒を期待することができるようになってきました。しかしながら、治療後の合併症などのリスクが低いと断言するにはまだまだ不十分です。今後さらなる改良が期待されるところです。

当院では、いかに安全に治療を完遂させるかということを第一に考え、開頭手術や脳血管内治療、あるいはその両方を組み合わせた治療や保存的治療といった選択肢のなかから、患者さんやご家族へそれぞれのリスクについてご説明し、相談のうえで治療法を決定しています。

未破裂脳動脈瘤について詳しくはこちら

脳梗塞

脳梗塞は、何かしらの原因で脳の血管が詰まってしまい、その先の脳組織に血液が行き渡らなくなることで脳が損傷を受ける病気です。脳梗塞は脳卒中のひとつと分類され、脳卒中で病院に運ばれてくる患者さんのおよそ7割が脳梗塞であるといわれています。

脳梗塞は「時間との勝負」といわれるほど、発症後から治療を実施するまでの時間が予後に大きな影響を与えます。発症後4.5時間以内であればt-PA療法(血栓溶解療法)という、詰まった血栓を溶かす薬剤を投与することで回復が見込めます。t-PA療法が適応とならない場合、t-PA療法だけでは十分な効果を得られない場合に、脳血管内治療が選択されます。

急性期脳梗塞に対する血栓回収療法

血栓回収療法

 

急性期脳梗塞では血管に詰まった血栓を取り除く手術を実施し、血管の再開通を試みます。ワイヤーのようなもので血栓を絡め取り回収するタイプや、血栓を砕いて吸引するタイプ、ステントで血管内を広げて血栓を回収するタイプなど多くの回収デバイスがあります。

以前は、ウロキナーゼによる局所線溶療法やバルーンによる血栓破砕などを行っていましたが、現在では、ほぼ行われていません。2010年以降、我が国において血栓回収機器(MERCI,Penumbra)が使用可能となりました。

当時は、かなり脚光を浴びましたが、残念ながら良好な結果が得られませんでした。しかしステント型血栓回収機器の登場により、脳梗塞の治療が大きく変わったのは事実です。2015年以降、これらのデバイスの使用による臨床試験が次々に報告され、脳梗塞に対する脳血管内治療の有用性が示されました。現在では、rt-PAに加えて、脳血管内治療との併用により、目覚ましい結果が得られるようになりました。

脳梗塞について詳しくはこちら

頸動脈狭窄症

頸動脈は首に存在し、脳に血液を送る太い動脈です。この部分が狭くなってしまった状態を頸動脈狭窄症といいます。この狭くなった部分に血栓などができ、それが突然脳の血管へ飛んでしまうと脳梗塞を引き起こします。そのため、この狭窄を改善し脳梗塞を防ぐことが頸動脈狭窄症の治療の目的のひとつであるといえます。

頸動脈狭窄症に対する頸動脈ステント留置術

頸動脈ステント留置術

 

頸動脈狭窄症の脳血管内治療では、血管内にステントを置いて狭くなった血管を再拡張します。

頸動脈狭窄症について詳しくはこちら

頭蓋内血管狭窄症

この病気は、脳の動脈が細くなる病気です。TIAを含む脳梗塞患者の約3~5割に頭蓋内狭窄病変があるといわれています。治療法として心臓の血管や頸動脈の病変に対して行われるようにバルーン(風船)で膨らませて、ステントを留置すればいいのではと思うかもしれません。しかし脳の動脈は心臓などの血管(体血管)などとは異なり、血管の壁が薄く、穿通枝という物凄く細い血管が枝分かれして形成されています。そのため、ステント留置により、血管破裂や、穿通枝の閉塞(脳梗塞)が起こりやすいのです。したがって通常はカテーテル治療ではなく、内科的治療が優先されます。内科的治療に抵抗性の場合は、カテーテル治療やバイパス術の対象となります。

日本では、2013年に頭蓋内ステント(Wingspan stent)が認可されましたが、2011年に報告されたSAMMPRISというスタディで、ネガティブな結果が出たことにより、頭蓋内狭窄病変に対する頭蓋内ステント適応は、かなり限局されたものとなりました。

脳動静脈奇形

脳動静脈奇形は先天性の脳血管障害です。胎内での発育時に脳血管の一部がうまく形成されず、通常はわかれるはずの動脈と静脈がつながってしまいます。すると脳動静脈奇形を起こした部分を流れる血液は酸素と栄養の交換をうまく行えないばかりか、動脈の強い圧力が静脈や弱い血管に加わることで出血し、脳出血やくも膜下出血を引き起こすリスクが高まります。

脳動静脈奇形に対する塞栓術

脳動静脈奇形に対する塞栓術

 

脳動静脈奇形は、脳動静脈奇形とそれに血液を送っている血管を閉塞して治療します。具体的にはカテーテルを通して血管を閉塞するための薬剤を注入します。ただし、血管内治療のみで治癒することはほとんどなく、手術や放射線治療との組み合わせで根治を目指します。

脳動静脈奇形について詳しくはこちら

硬膜動静脈瘻 

脳の一番外の膜である硬膜あるいは、その近傍に異常な動静脈短絡を示す病態です。

この病気は、稀な病気ではありますが、血管内治療が第一選択となることが多い病気のひとつです。発生頻度は10万人あたりに年間0.29人と報告されています。くも膜下出血の場合は10万人あたり約20人前後といわれ、くも膜下出血の100分の1くらいの頻度です。そのため、一般の医師の間でもあまり知られていません。

発生場所によりいろいろな病態を呈します。発生頻度の高い場所は、海綿状脈動部といって目に近いところです。頻度は約50%弱とされます。眼に症状が出るので、患者さんは眼科を初診とすることが多く、早期治療のためにもこの疾患の啓蒙が重要です。症状は、眼が真っ赤になって飛び出し、まぶたが下がってきます。脳圧が亢進してくると頭痛、意識障害などの症状が現れます。MRI、MRAで疑い診断は可能ですが、確定診断のためには、脳血管撮影検査が必要です。脳に逆流するような所見の場合は、出血などのリスクが高いため、治療が必要になってきます。ほとんどの場合は、カテーテルでの治療となります。

脳血管内治療で懸念される合併症やリスクとその対策

脳梗塞

脳血管内治療は開頭を伴わないため患者さんへの負担が少ない手術です。しかしながら、合併症やリスクもゼロではありません。

脳血管内手術治療で起こりうる合併症

1)手術中、手術後の脳梗塞、脳動脈瘤破裂の可能性

正常動脈の塞栓を生じ、脳梗塞の危険性(文献上3~10%)があります。もし起これば、合併症のなかで最も重篤な状態になると考えられています。その原因は2つ挙げられます。血管内に機材を留置していることで血栓が形成されるためとコイルが正常血管を逸脱して狭窄を起こすためです。特に、バルーンカテーテルを併用して手技を行う必要がある脳動脈瘤において、その血栓塞栓性合併症の発生頻度は増加する可能性があります(血管内皮が損傷し、血栓が形成されやすくなり、それが末梢の血管に飛んでいくため)。この血栓塞栓性合併症を予防するために術前から抗血栓剤を内服し、術中に抗凝固療法を行います。しかし、これらの対策を行っても血栓塞栓性合併症により脳梗塞が発生する可能性があります。あらゆる技術を用いてもこれらの状況が回避できない場合は、この治療法を中止し、開頭手術を含めた他の方法に委ねることもあります。
手術後にもう一度血栓を形成しないように点滴で抗凝固療法を行いますが、それでも血栓が形成されることがあり、また血管内手術終了後にコイルが移動し、動脈が狭くなって閉塞してしまうこともあります。このような場合は、適切な処置を行うことで改善しますが、後遺症(運動機能障害、感覚障害、失語症、認知障害、空間失認などの高次機能障害)が残ることもあります。
脳動脈瘤の壁は薄く破れやすい状態にありますが、治療のためにはマイクロカテーテルや金属のコイルを瘤内に入れなければなりません。しかし、この操作によって術中に破裂することがあります。破裂すれば当然、くも膜下出血となり、場合によっては致死的になることがあります。治療中に破裂した場合には、出血が止まらなくなり急いで開頭手術をしなくてはならない可能性があります。しかし、開頭術を行っても、脳腫脹が激しく、脳動脈瘤の処置が不可能なことがあります。

2)コイルの問題点について
脳血管内治療における塞栓術の長期成績が、ようやく報告されるようになってきました。脳動脈瘤が完全に塞栓(閉塞率の目標は約20%程度です)されたとしても、その効果が永久に続くかについては、今のところ100%ではありません。動脈瘤の大きさが大きい(10mm以上)ほど、瘤内に留置したコイルは、血液が当たる圧によって縮小をしていきます。コイルの縮小によって再び脳動脈瘤が出現し、再治療を必要とする可能性が出てきます。現在、10mm以上の脳動脈瘤の患者さんの約1割が、もう一度脳血管内治療を必要とします。

3)放射線による障害の可能性
脳血管内手術治療はX線の透視のもとで行う方法であり、通常の血管撮影と異なり長時間の透視が必要となります。このために放射線の被ばく量が多くなり、頭部の脱毛や皮膚炎、神経炎、更に希ですが眼球に及ぶと白内障、視力障害を起こすことがあると考えられています。

4)感染や大きな皮下血腫
本来、生体は皮膚、粘膜などに被われていることで外からの微生物の侵入を防いでいます。しかし患者さんの場合は一概にそうとは言えません。手術室では、無菌手術を心がけていますが、微生物の侵入を100%ゼロにすることは現在の医学水準においても困難です。従って、患者さんには必要に応じて微生物を殺す薬剤すなわち抗生物質を投与します。多くの場合、術後感染の問題は生じませんが、患者さんの抵抗力が弱かったり、抗生剤の効き目が悪かったりすると、術後に、皮下膿瘍、敗血症などの感染性合併症を生じる可能性があります。
この手術法では、大きな管を血管に挿入するために、術中に足に穿刺した管の横から、術後の止血法(抗凝固療法)や術後に安静が保てないことによって穿刺部に大きな皮下血腫を作ることがあります。皮下血腫を生じると疼痛が持続するため、場合によってはその血腫を取り除く手術が必要になることもあります。アンギオシールという止血機材を使用した場合は、皮下血腫の形成が少なくなり、術後の安静においても、患者さんの負担は随分軽くなりますが、その部分に感染するという報告もあります。ただし抗生剤を使用することで、予防することが可能であるといわれています。

5)薬剤、麻酔などによるショックなどの危険性
脳血管内手術では通常全身麻酔はおこないませんが、カテーテル穿刺部の局所麻酔、患者さんの不安や時に頭痛を軽減するために鎮静剤、鎮痛剤等の薬剤を使用します。また血管撮影用の造影剤を使います。これらの薬剤は高い安全性が確立されていますが、人によっては使用した薬剤に対し過敏な反応性ショック、薬剤アレルギーや予想しえない副作用を生じることがあります。また状態に応じて全身麻酔が必要なことがありますが、この場合には麻酔によるさまざまな危険性があります。

6)多臓器の合併症
糖尿病、高血圧、胃潰瘍などこれまで顕在化していなかったいろいろな疾患が手術を契機として発症することがあります。また患者さんがこれまで既往疾患として持っている病気がより重くなることもあります。喘息を持っている方は、上記5)でも示したように、造影剤の影響を強く受ける可能性があります。造影剤により喘息が誘発された場合は、喘息重積発作により重篤な状況となる可能性があります。

コイル塞栓術では、コイルを脳動脈瘤の中に留置するために、複数のカテーテルなどのデバイスを用います。血管の中に異物があると、そこに血栓ができやすくなります。そのため、それらを防止するために、術前から、抗血小板剤という血液がサラサラになる薬を内服してもらいます。術中においても、ヘパリンという薬を用いて、血液をサラサラにしています。薬の効きやすさには、個人差があり、血栓を生じてしまうケースもゼロではありません。さらに最近では、ステント支援下のコイル塞栓術も増えてきており、ステントを併用することでの術中、術後の血栓症や、出血などの問題もあり得ます。

したがって、動脈瘤の場所や形のほか、患者さんの状態などを見極めて、すべての場合で脳血管内治療を実施するのではなく、よりリスクが低いと判断すれば開頭手術など別の治療を選択します。

リスクも含めて事実をすべて伝える姿勢―総合東京病院の理念

一昔前に比べれば、脳血管内治療の合併症は格段に少なくなりました。しかし合併症を含めたリスクをゼロにすることはまだ実現できていません。未破裂脳動脈瘤では年間の破裂率をきちんと患者さんにお伝えし、リスクを伝えています。確かに脳動脈瘤で合併症が起こる確率は数%、死亡率に至っては1%以下です。統計学的にはまれといえるかもしれませんが、もし合併症が起きた場合、その患者さんにとってはもはや統計など関係ありません。その一方で、脳動脈瘤が破裂することなく生涯を終える方もいます。

私たち総合東京病院では、リスクも含めて事実をお伝えすることを最重要視しています。そのうえで、患者さんとそのご家族に心から納得してもらい治療を受けていただきたいと考えています。

総合東京病院の脳血管内治療センター

総合東京病院外観

徹底的にリスクを排除した治療を提案し、中野区や練馬区の患者さんを受け入れ

当院は、脳血管内治療が適応可能なすべての脳血管障害に対応するため、脳血管内治療センターを設置しています。前述した脳動脈瘤に対するコイル塞栓術、コイル塞栓術では治療が難しいと判断した場合の開頭によるクリッピング術、脳梗塞の血栓回収療法、バイパス手術、頸動脈狭窄症に対する頸動脈ステント留置術や頸動脈内膜剥離術といった、脳血管内治療だけではなく、直接的手術方法など、あらゆる方法を駆使して、患者さんにとって最良の結果を残せるよう日々努めています。

しかし、とても残念でありますが、治療を受けたすべての患者さんが快方に向かうわけではありません。特に「時間との勝負」ともいわれる超急性期の脳梗塞に対するt-PA治療は、発症から4.5時間以内に施す必要があります。それを過ぎてしまうとこの治療を行うことができなくなってしまい、全脳梗患者の約数%にしか適応されていないという現実があります。もしt-PA治療を受けることができたとしても、その効果は約4割弱に留まり、残りの半分以上の患者さんには効果がありません。主幹動脈といって、脳の大きな動脈の閉塞の場合には、効かないということもすでにわかってきました。

またこのようなケースにおいては、カテーテルでの治療が非常に有効だということも知られるようになってきました。当院において、主幹動脈閉塞(大きな動脈の閉塞)の場合、t-PAを打つと同時に、カテーテル室に向かい、カテーテルで脳血栓を回収します。

この治療の大きな問題は、どこの施設でも受けられるわけではないということです。設備だけでなく、専門医が必要です。つまり、脳梗塞で救急搬送されるとき、搬送先の病院がt-PA治療だけでなく、カテーテル治療も可能な施設であるかどうかがとても重要になってきます。このことについて、まだまだ認知度が低いため、救急隊の方との勉強会や市民公開講座を定期的に開催し、啓蒙活動に力を入れています。

診療圏は中野区、練馬区、杉並区、新宿区、板橋区が中心です。要請があればより広範囲の地域の患者さんを受け入れています。救急車での搬送受け入れのみならず、患者さんからの直接の連絡も受け付けています。

脳血管内治療センターを含む当院脳神経外科の年間の手術件数は約500件で、そのうち脳血管内治療は約60件弱の実績があります。

超急性期脳梗塞の治療―t-PA療法、血栓回収療法、脳血管バイパス術などに対応

脳梗塞は一刻を争う疾患です。脳梗塞を発症したら早期に受診し、治療を開始すれば治療の選択肢もあり、予後も向上します。

総合東京病院脳血管内治療センターでは、発症から4.5時間以内であれば血管の再開通が期待できるt-PA療法だけでなく、血栓回収療法、脳血管バイパス術などあらゆる脳梗塞の治療が可能です。もちろん、病状によってこれらの治療法を複数組み合わせることもできます。脳梗塞に対して、このように幅広い治療アプローチを持っている点は当院の強みであるといえるでしょう。

脳梗塞は、一般の方にとっては単に脳血管が詰まる病気だと捉えられがちです。しかし、実際は動脈硬化が原因で徐々に血管が狭窄して詰まったのか、身体のどこかから血栓が飛んできて突如詰まったものか、発症の経緯は大きくふたつに分類できます。後者であればt-PA療法や血栓回収療法で詰まった血栓を取り除けばそれで治療は終わりです。しかし、前者であれば大元の狭窄を解決しない限り、再発の可能性も否定できません。そこで私たちはt-PA療法や血栓回収療法で血栓を除去したあとに、脳血管バイパス手術を行っています。このように脳血管内治療と脳血管バイパス手術を組み合わせて行える点も当院の特長といえます。

脳動脈瘤の治療―クリッピング術を選ぶとき、コイル塞栓術を選ぶとき

脳動脈瘤に対して、近年はコイル塞栓術を用いた脳血管内治療が盛んに行われています。しかしながら、脳動脈瘤の場所や大きさなどによっては開頭によるクリッピング術のほうがより確実・安全に施術できることもあります。

頸動脈狭窄症の治療

治療法には、1.内科的治療 2.頸動脈内膜剥離術 3.頸動脈ステント留置術があります。狭窄率やプラークの性状、患者さんの状態などを考慮し、一番安全な治療法を選択します。

頸動脈ステント留置術では、手術中に血栓が頭部へ飛んでいかないよう、はじめに頸動脈にエンボリックプロテクションデバイス(EPD)というものを設置します。エンボリックプロテクションデバイスには、細かな網目状のフィルタで血栓をキャッチするフィルタプロテクション、バルーンを膨らませ一時的に血管を塞ぐバルーンプロテクション、カテーテルを使わずに閉塞可能なプロキシマルプロテクションの3種類があります。

当院では、確実に遠位塞栓を防止するため、虚血耐性のことも考慮して、原則、全身麻酔下にバルーンプロテクションという方法を選択しています。必要あれば、プロキシマルバルーンプロテクションも併用します。 

患者さんが正しい知識を持って、心から納得できる治療を

渡邉 貞義先生

脳血管内治療は、低侵襲でさまざまな頭頸部疾患に対応できる治療法です。一方で今回ご紹介したように、低確率ではありますが合併症のリスクもあります。できるだけ合併症を減らし、安全な治療を受けるためには医師の技量のみならず、患者さんやご家族もご自身の病気や治療法について正しく理解することが大切です。

また、たとえば脳動脈瘤の治療が得意である、中でもコイル塞栓術の手術件数において実績があるというように、病院ごとに強みとしている疾患や治療法があります。患者さんは自分の状態を理解したら、次は自分にとって最適な治療を受けられる病院や医師を探すことが求められます。そのためには各病院が公表している診療実績や、所属医師が保持している資格(専門医・認定医など)もぜひ参考にして病院や医師を選んでください。もし「今治療を受けている医師以外の意見も聞きたい」と感じたら、セカンドオピニオンを利用することもひとつの方法です。

現在は脳梗塞ひとつとっても、実にさまざまな治療法がある時代です。本当に自分の病状にあった治療を受けられるかどうかで予後が変わることもあります。

当院はスタッフ全員が「すべては患者さんのために」を信条に、合併症のリスク対策など病院の努力で解決できることであれば努力し、より患者さんに安全で納得できる治療を受けていただけるよう尽力しています。皆さんも、ぜひ正しい知識を持っていただき、心から信頼できる病院を受診してください。

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