インタビュー

子どもの熱中症の症状-「吐き気がする」「お腹が痛い」は熱中症のサイン?

子どもの熱中症の症状-「吐き気がする」「お腹が痛い」は熱中症のサイン?
萩原 佑亮 先生

東京都立小児総合医療センター 救命救急科 医長

萩原 佑亮 先生

この記事の最終更新は2017年10月17日です。

夏や急に暑くなってきた季節に子どもが体調を崩し、熱中症のような症状を訴えることがあります。熱中症の症状にはどのようなものがあり、熱中症と診断されるのはどのような症状のときなのでしょうか。熱中症の症状について、引き続き東京都立小児総合医療センターの萩原佑亮(はぎわら ゆうすけ)先生に解説していただきます。

子どもの熱中症は、保護者や大人が周りにいるため、早期の段階で発見されるので重症化することは多くはありません。ですが、万が一、熱中症が重症化してしまうと生命に危険がおよぶ可能性も出てくるので注意が必要です。熱中症の代表的なサインは次の通りです。

  • 頭痛を訴える
  • 嘔吐した、吐き気を訴える
  • 熱が出ている・寒気を訴える
  • いつもより元気がない、しんどそうにしている
  • ふらふらしている・目がまわる(めまい)という・からだの痛みを訴える
  • 鼻血
  • 手足のしびれ

また腹痛や下痢の症状が出ることもあります。

さらに重度の熱中症の場合は、下記のように誰がみても明らかな異常を示します。

  • 意識がない
  • からだが痙攣(けいれん)している

特に炎天下で遊んだときなどは周囲が子どもの様子に変化がないかを確認し、異常があればなるべく早期に対処することを心がけましょう。熱中症は対策が何より大切です。しかし、いくら対策をしても熱中症にかかるときはかかってしまいます。万が一、熱中症になってしまった場合、保護者の方・大人がなるべく早期に気づいてあげることが重要なのです。

子どもはボキャブラリーが不足しているので、体調が悪いことや、のどが渇いたなどということを的確に訴えることができません。たとえば「吐き気がする」ときに「お腹が痛い」と訴えたりします。保護者の方は子どもをよくみておくことが重要になります。

熱中症の重症分類はわかりやすいように下記の3つにわけて考えることがあります。

めまい、大量の発汗、失神、筋肉痛こむら返り(ふくらはぎの筋痙攣、一般的には足がつるといわれる)

頭痛、嘔吐、倦怠感(けんたいかん:からだがだるい)など

意識がない、痙攣など

しかし、この分類はあくまでもわかりやすく理解するための分類で、明確に3つに分かれるわけではありません。つまり、この分類にこだわる必要はないのです。

熱中症の初期症状としては次のものがあります。

子どもが頭痛になると、「頭が痛い」や「ガンガンする」「ズキズキする」「ドクドクしている」などと訴えケースが多いです。まだ幼く、自分の症状をうまく伝えられない子どもの場合、泣き出してしまうこともあります

子どもに吐き気があると、「気持ち悪い」「おなかが痛い」と訴えるケースが多いです。また、実際に吐いてしまうこともあります。

体に熱がこもると、体がほてったり、発熱や体温が高くなったりすることがあります。また、大量に汗をかくことがあります。

熱中症にかかると倦怠感が生じるので、子どもも普段と比べると元気がなくなり、しんどそうにします。また、ぐったりとすることもあります。

その他、

  • めまい
  • からだが痛む
  • 目の焦点があっていない

などの症状が現れることがあります。

重度の熱中症の場合、「意識がない」「からだが痙攣している」と一目みておかしいとわかります。こうした症状が見られた場合、急いで医療機関へ行くことをおすすめします。

重症化すると怖い熱中症ですが、実は子どもの熱中症で重症化するケースはほとんどありません。記事1でご説明したとおり、子どもは体質上、熱中症になりやすく、高温の環境にいるときには重症化もしやすいといわれていますが、保護者や大人が子どもを見守っているので早期の段階で発見されることが多く、重症化することが少ないのです。

しかし、子どもは運動に集中していると水分補給を適切にできないことがあり、その結果、重度の熱中症になってしまうケースもあります。そうならないためにも、保護者の方・大人の注意が必要といえるでしょう。

  • スポーツに熱中している子ども(特に炎天下のなかで運動に集中している場合、水分補給を忘れがち)
  • 炎天下、乳幼児を車内に長時間置き去りにする

など、特別なケースです。こういうケースでは、重症化しやすく命の危険もあります。

熱中症は熱を体内に溜め込んでしまうことが原因なので、夏に多くみられます。しかし、夏にしか熱中症にかからないわけではありません。

たとえば季節外れにもかかわらず、急に暑くなった場合です。この場合、からだが急な暑さに慣れず、熱中症になってしまうのです。これには、子どもが熱中症になりやすい理由の一つである、暑さにからだが順応することに時間がかかることと関係している部分もあります。

子どもの重症熱中症の頻度はとても少ないです。

というのも、子どもは常に保護者や周りの大人たちに見守られており、熱中症の症状が早期の段階で見つかり、治療できるからです。むしろ、熱中症で重症化する可能性は独居の高齢者のほうが高いといわれています。

子どもの熱中症については、過度な重症化の心配は必要ないと言えるでしょう。また、子どもの熱中症は自宅でも治療し、治癒することが可能です。記事3『子どもの熱中症-自宅でできる処置・対処法とは?』では家庭で行える熱中症の治療を解説いたします。

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