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乳がんの転移・再発 転移で痛みはあらわれる?

公開日 2018 年 01 月 11 日 | 更新日 2018 年 01 月 11 日

乳がんの転移・再発 転移で痛みはあらわれる?
花立 史香 先生

まつなみ健康増進クリニック 院長

花立 史香 先生

乳がんは、ほかの部位のがんと比べると「予後がよい」がんだといわれます。

しかしなかには手術後に再び同じ乳房にがんを発症してしまったり、乳房以外の臓器にがんが発症してしまったりするケースがあります。これらは「再発」や「遠隔転移」とよばれます。乳がん手術を受けた患者さんでは、再発や転移が起こるかどうかということを非常に心配に思われる方もいらっしゃいます。

転移や再発にはどういったタイミングで気付くことができるのでしょうか。本記事では、再発・転移のメカニズムや、転移しやすい部位、転移がおきたときにみられる症状、検査方法などについて、社会医療法人 蘇西厚生会 まつなみ健康増進クリニック クリニック長の花立 史香先生にお話を伺いました。

乳がんの転移とは?

がんの転移とは、がん細胞が発生した臓器に留まらず、ほかの臓器にまで移動していくことをいいます。

乳がんでは、乳房のリンパ節、または骨や肺などの部位に転移がみられることが多いです。骨や肺など乳房から離れた臓器で転移がみられることは「遠隔転移(えんかくてんい)」とよばれます。

転移は、検査でもわからない微細ながん細胞のかたまりが、血管やリンパ管などを通して全身をめぐっていくことが原因となって引き起こされるものだと考えられています。こうしてがんが全身へ転移し、体のどこかの臓器でがん細胞が大きくなってしまうと、乳房以外の臓器でもがんを発症してしまいます。

転移は病期の進行した乳がんの方でみられることが多いです。これはがんが進行して大きくなり、がん細胞が血管やリンパ管のなかに入りこむためです。乳がんが血管やリンパ管にまで達すると、血液やリンパ液にのってがん細胞が全身へ流れ始めることから、転移が起こりやすい状況になると考えられています。

こうした遠隔転移は、がん細胞が微細であることから手術前に検査を行ってもわからない場合があります。

遠隔転移しやすい部位 肝臓・骨・脳

最も乳がんが転移しやすい部位は「骨」

乳がんは下記のような部位に転移がみられることが多いです。

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  • 骨(特に背骨や肋骨)
  • 肝臓

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このなかでも最も転移しやすいとされているのは骨です。日本臨床腫瘍学会 骨転移診療ガイドラインによると、進行した乳がんにおける骨転移の罹患率は65~75%とされています。

転移が起きたときの症状 胸の痛みはある?

実際に転移が起きていると、どのような症状があらわれるのでしょうか。

転移の症状は人それぞれで、症状があらわれる場合もあれば、あらわれない場合もあります。最も多くみられる症状は「転移している臓器で生じる痛み」です。たとえば肋骨に転移している場合では胸のあたりの痛み、肝臓であればみぞおちあたりの痛みを感じることがあります。

また、転移した臓器ごとにさまざまな症状がみられると考えられます。たとえば肺であれば息切れや咳、肝臓であれば右側の腹部の張りやみぞおちの圧痛、脳であれば頭痛やめまい、手足の麻痺がみられる可能性があります。

転移・再発の見落としを防ぐために ―どのような精密検査を行うか?

治療前は患者さんにあわせてさまざまな検査が行われる

がんの転移をみつけるための検査には下記のようなものがあります。

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【画像検査】

  • MRI検査
  • CT検査
  • PET検査
  • 骨シンチグラフィ

【血液検査】

  • 腫瘍マーカ―

【病理検査】

  • 穿刺吸引細胞診
  • 針生検(組織診)
  • センチネルリンパ節生検

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乳がんの治療を行う前には、こうした画像診断や血液検査、または穿刺吸引細胞診や針生検(組織診)といった病理検査を行って、転移の状態を調べていきます。必ずしもすべての検査を行うというわけではなく、患者さんの状態にあわせ、医療従事者が必要な検査を判断していきます。

手術後には定期的な検査によって再発を発見する

また手術を終えて退院したあとには、定期的な検査によって転移がないかどうか、再発がないかどうかを確認していきます。

一般的には退院後、半年に1度乳腺MRI検査や全身CT検査を行うことで全身の状態を確認していきます。なかでも乳腺MRI検査はがんをみつける能力に優れた検査だと考えられます。こうした精密検査によって定期的に状態を確認し、転移や再発がある場合には早期に気付いていくことが大切でしょう。

リンパ節転移を手術中に明らかにする「センチネルリンパ節生検」

手術中に乳房内の転移を確認する「センチネルリンパ節生検」

また手術中に行われる検査としては「センチネルリンパ節生検」という病理検査があります。この検査は、乳房内のリンパ節への転移の状況を明らかにするものです。

乳がんの手術をするときには、脇の下のリンパ節まで切除するのかどうかを判断する必要があります。患者さんのなかにはリンパ節にがんが転移している方と、していない方がいらっしゃいますので、きちんと見極めて手術を行うことが必要です。

しかし、手術の前の検査ではリンパ節への転移をきっちり正確に判断することは難しいとされています。そのため近年では手術をしている間に実施され、転移の有無の指標となる「センチネルリンパ節」というリンパ節の病理検査を行うことで、確実に転移の状況を調べることができるようになりました。センチネルリンパ節生検で、リンパ節の転移をしっかりと判断することで無用なリンパ節の切除を防ぐことができるため、乳がん手術中のセンチネルリンパ節生検は、現在ほとんどの医療機関で実施されています。

▼センチネルリンパ節生検については記事4『センチネルリンパ節生検 適切な「乳がん手術」のための検査』をご覧ください。

乳がんの生存率・余命

国立がん研究センターがん情報サービスのganjoho.jpによると、乳がんのステージごとの生存率は下記のように記載されています。

【乳がん ステージごとの5年生存率】

ステージI                  99.9%

ステージII                 95.4%

ステージIII                80.3%

ステージIV                33.0%

全症例         93.0%

※ 症例数(件):ステージⅠ…7,029、ステージⅡ…6,923、ステージⅢ…1,710、ステージⅣ…699、全症例…16,466、臨床病期にはUICC(Union Internationale Contrele Cancer:国際対がん連合)のTNM分類を活用、全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査 KapWeb(2016年2月集計)による

乳がんは比較的予後がよいがんとして知られています。患者さんのなかには「再発=死」と捉えられている方もいらっしゃると思います。しかし乳房内再発の場合は必ずしもそうではありません。切除という選択肢が残されていれば、また手術を行うことで治る可能性が残されています。ですから、乳がんの手術では一度目の手術で残せる乳房は残し、もし再発した場合には、二度目の手術で乳房切除を行うという方法を実施することができます。

このように治療の選択肢が多く残されていることは、乳がんならではの特徴といえるでしょう。

転移・再発リスクが低い段階で「乳がん」に気づくために

立 史香先生

前項でもお話した通り、乳がんは発症したとしても5年生存率が約90%とされている疾患です。しかし、その数字は術後に化学療法や放射線療法などをしっかりと行って、はじめて達成されるものです。ですから手術後、きちんとした治療を受けていただくというのが大事だと思います。きちんとした治療を行っていくことで再発率は大きく抑制できます。適切な治療が再発を防ぐということをよく知っていただき、患者さんそれぞれにあった治療を医療従事者と相談をしながら、しっかりと落ち着きをもって病気に向き合っていくことが大切だと思います。

また、転移や再発のリスクはがんが進行するほど高まります。そのためやはりがんに気付き、早期に治療を行うことが大切でしょう。たとえば自己検診や集団検診など、いくつか検診の機会が設けられています。

乳がんはしこりが自覚できるため「自分で発見できるがん」といわれることもありますが、本来であればしこりとして自覚ができる前の状態で発見できることが望ましいです。ですから40歳になりましたら、検診を積極的に受診して、適切な検査を受けていくことをさらに意識していただけたらと思います。

 

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