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がん検査「センチネルリンパ節生検」とはーリンパ節切除の判断に
乳がん手術では、リンパ節を切除することがあるため、術後に「リンパ浮腫」という腕がむくんでしまう症状がみられることがあります。リンパ浮腫は症状が深刻になると、むくみで腕が膨れ上がり、日常生活に大き...
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がん検査「センチネルリンパ節生検」とはーリンパ節切除の判断に

公開日 2018 年 01 月 11 日 | 更新日 2018 年 02 月 21 日

がん検査「センチネルリンパ節生検」とはーリンパ節切除の判断に
花立 史香 先生

まつなみ健康増進クリニック 院長

花立 史香 先生

乳がん手術では、リンパ節を切除することがあるため、術後に「リンパ浮腫」という腕がむくんでしまう症状がみられることがあります。リンパ浮腫は症状が深刻になると、むくみで腕が膨れ上がり、日常生活に大きな支障をきたすこともある症状です。

このリンパ浮腫は、以前まで乳がん手術を受けた患者さんの約半数にみられる症状でした。しかし、近年では「センチネルリンパ節生検」という検査方法が普及したことによって、リンパ浮腫に苦しむ患者さんを大幅に少なくすることができるようになってきました。

多くの乳がん患者さんを救うことになった「センチネルリンパ節生検」とは、いったいどのような検査方法なのでしょうか。センチネルリンパ節生検を以前より積極的に取り入れてきた社会医療法人 蘇西厚生会 まつなみ健康増進クリニック クリニック長の花立 史香先生に解説いただきました。

基礎知識:センチネルリンパ節とは?

乳がんの転移が最初にたどりつく場所 「センチネルリンパ節」

センチネルリンパ節とは、悪性腫瘍(がん)が進行してリンパ管に流れ出たときに、がん細胞が初めてたどりつくリンパ節のことです。

乳がんの発症初期の状態は「非浸潤がん」といわれます。非浸潤がんでは、がんが乳腺(乳管)のなかに留まっている状態です。

しかし進行していくと、がんが乳腺の外側にも広がっていく「浸潤がん」となります。浸潤がんでは病変が大きくなるため、がんが乳管の外側を走る「リンパ管」にも触れるようになっていきます。すると微細ながん細胞がリンパ管を通って流れていくようになり、徐々に全身へと運ばれていくようになります。こうして全身へと運ばれた微細ながん細胞は、リンパ節やそれぞれの臓器で大きくなり、その場所でがん腫瘍として大きくなっていきます。こうした状態が「がんの転移」とよばれるものです。

このようにがんはリンパ管にのって全身へ流れていきますが、その際、リンパ液にのって最初にたどりつく場所となるのが「センチネルリンパ節」です。センチネルリンパ節はそれぞれの部位のがんの周囲にあるもので、乳がんの場合では脇のあたりに存在しています。

センチネルリンパ節生検とは?

手術中に行われる「リンパ節転移」の病理検査

センチネルリンパ節生検とは、がんが最初にたどりつくリンパ節である「センチネルリンパ節」を手術中にみつけだして病理検査にまわすことで、リンパ節を切除すべきかどうかを手術中に正確に判断することができる検査です。

この検査を行うことで、手術を行っている間にリンパ節転移の有無を明らかにできます。その結果、転移があるとわかった患者さんだけに絞ってリンパ節切除を行うことができるようになります。

 

「リンパ節に転移があるかどうか」について、手術の前におおよその推測をすることは可能ですが、正確に判断することは難しいといえます。たとえばリンパ節が明らかに腫れている場合には、リンパ節に転移があるようにみえるかもしれませんが、実際に転移があるかどうかは、この手術中のセンチネルリンパ節生検を行わないとわかりません。なかには大きな腫れがあっても転移がない場合や、リンパ節になんの変化もみられないにもかかわらず転移が明らかになるケースがあります。そうしたことからも、センチネルリンパ節生検は非常に重要な検査です。

リンパ節の温存は「リンパ浮腫」を防ぐことにつながる

昔はすべての方で切除されていた乳房リンパ節

昔は、「すべてのリンパ節を切除する手術」が一般的に行われていました。しかし実際には、腫瘍の大きさが2cm以下ならリンパ節に転移のある方は約20%です。つまり約8割の方は転移がないにもかかわらずリンパ節切除が行われていました。

現在ではこう不要なリンパ節切除が行われないよう、センチネルリンパ節生検によって切除が必要な方だけにリンパ節郭清を行うことができるようになりました。このことは非常に大きなメリットといえます。

センチネルリンパ節生検は、多くの患者さんを救うことができる検査

不要なリンパ節切除を回避することは、乳がん患者さんにとって非常に大きな特徴です。なぜならばリンパ節の切除は、さまざまな障害を引き起こすリスクがあるからです。不要なリンパ節切除を減らすことができれば、リンパ節切除によって手術後に苦しむ患者さんを大きく減らしていくことが可能になります。

「リンパ節の切除」によって引き起こされる障害とは?

実際にリンパ節切除はどのような障害を引き起こすリスクがあるのでしょうか。

リンパ節の切除によって引き起こされるリスクとしては下記のようなものが挙げられます。

---

  • 肩が上がりにくくなる
  • 腕の感覚が鈍くなる
  • リンパ浮腫が引き起こされる など

---

特にリンパ浮腫は、深刻な症状を引き起こすことが多くあります。リンパ浮腫とは、体の全身をめぐっているリンパ液の流れが滞ることで、一部にリンパ液がたまって腫れてしまう病態です。このリンパ浮腫によって、日常生活がままならない状態になってしまう方もいらっしゃいます。

リンパ浮腫の発生率

では乳がん手術によってリンパ節をすべて切除した場合、どれくらいの確率でリンパ浮腫が起きてしまうのでしょうか。

研究により数値が異なりますが、多い割合を示している研究では、リンパ節全切除の患者さんのうち約50%がリンパ浮腫を引き起こすということが示されています。つまりリンパ節を切除した患者さんの多くでリンパ浮腫があらわれてしまうと考えられます。

こうしたことから、センチネルリンパ節生検でリンパ節の転移をしっかりと判断していくことには非常に大きなメリットがあるのです。

センチネルリンパ節生検の進め方

センチネルリンパ節生検は下記のようなステップで行われています。

薬剤の注射

センチネルリンパ節生検は、乳がんの手術の際に行われます。

まずはセンチネルリンパ節を的確に見つけ出すために特殊な薬剤を注射します。この薬剤には

  • 微量の放射性同位元素(微量の放射線を発する物質)
  • 色素

などが含まれています。

注射された薬剤はリンパ管を通じてセンチネルリンパ節へと集まっていきます。

センチネルリンパ節の摘出

薬剤を注射してしばらくするとセンチネルリンパ節に薬剤が集まってきています。そのため乳房に放射能を感知する医療機器(ガンマプローブ)を当てて調べていくと色素に染まったセンチネルリンパ節を見つけることができます。

こうして場所を正確に把握することができたセンチネルリンパ節を摘出し、早急に院内の病理検査室へと運びます。

病理検査

病理検査室に運ばれたセンチネルリンパ節は病理医によって、転移があるのかどうかを判断するために調べられます。検査で得た結果は、早急に手術室へと伝えられます。

「転移あり」の場合にリンパ節を郭清する

検査の結果、センチネルリンパ節に転移があることがわかれば、リンパ節の郭清を行います。転移が認められなければリンパ節を郭清することなく、乳がんの手術を終えていきます。

センチネルリンパ節生検の普及は、多くの患者さんを救う

センチネルリンパ節生検は非常に有用な検査ですが、保険適用となったのは2010年4月からで、最近のことです。

しかし、非常に有用な検査であることから一部の医療機関ではそれ以前からセンチネルリンパ節生検が行われていました。当院でもその有用性に注目し、保険適用前から取り組んでいました。乳腺外科医はこれまでたくさんのリンパ浮腫で悩まれる患者さんをみてきました。ですからこのセンチネルリンパ節生検の重要性を非常に強く感じていました。

そして保険適用になったことで、2017年現在ではほぼすべての医療機関でセンチネルリンパ節生検が行われるようになりました。いまではセンチネルリンパ節生検を行うことができなければ、乳がんの手術をやってはいけないというほど、必須の検査となっています。

このように乳がんの手術をよりよくするために、近年でもさまざまな改善が進められています。これからも手術後の患者さんがよりよい人生を歩んでいけるように、乳がん治療のあり方を考えていきたいと思っています。

 

乳がん(花立 史香先生)の連載記事

1985年金沢大学医学部卒業後、1990年金沢大学大学院を卒業し医学博士取得。その後1991年より国立静岡病院外科、1996年より厚生連高岡病院外科、1998年より小松市民病院外科医長をつとめる。そして2005年に松波総合病院外科部長、2017年に まつなみ健康増進クリニック院長に就任する。乳腺外科を専門とし、日々多くの乳がん患者さんの診療にあたっている。

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