インタビュー

ギラン・バレー症候群の原因や症状とは?

ギラン・バレー症候群の原因や症状とは?
進藤 克郎 先生

倉敷中央病院 神経内科 主任部長

進藤 克郎 先生

この記事の最終更新は2017年11月01日です。

ギラン・バレー症候群とは、末梢神経に障害が生じるために、手足のしびれや筋力の低下などの症状が現れる疾患です。軽症であると疾患に気づかないという意見もありますが、どのような徴候が現れると疾患を疑うべきなのでしょうか。

また、ギラン・バレー症候群の原因は解明されていないといいますが、なんらかの感染症がきっかけで発症すると考えられています。どのようなメカニズムで、感染症が発症につながるのでしょうか。

今回は、倉敷中央病院の進藤 克郎先生にギラン・バレー症候群の原因や症状についてお話しいただきました。

末梢神経とは全身に分布している神経をさし、身体の動きを司る運動神経、感覚を伝える感覚神経、循環器や消化器、呼吸器などの活動を調整する自律神経から成り立っています。ギラン・バレー症候群とは、この末梢神経に障害が生じるために、脱力、しびれなどの症状が現れる疾患です。

ギラン・バレー症候群の発症率は、国内統計では年間10万人に一人程度といわれています。

しかし、私は、一概に10万人に一人の発症率とはいえないと考えています。後ほど詳しくお話ししますが、ギラン・バレー症候群は何らかの感染症を原因として発症するといわれています。このため、感染症が流行しているか否かによって発症の頻度は変動すると考えたほうがよいのではないでしょうか。

ギラン・バレー症候群は、高齢者に多い疾患です。この理由は明らかになっていませんが、日本では加齢とともに増加する疾患であることがわかっています。

ギラン・バレー症候群の原因は解明されていませんが、なんらかの感染症がきっかけで発症すると考えられています。感染症に罹患した3〜4週間後に発症する方が多いでしょう。

実際に、このような先行感染がギラン・バレー症候群の約8割に認められています。先行感染は、呼吸器感染が多く、最も多いものは風邪の一種といわれています。たとえば、風邪をひいた3〜4週間後に、ギラン・バレー症候群を発症する方が多いでしょう。

また、よく知られている感染症に、カンピロバクター腸炎があります。このカンピロバクター腸炎は、嘔吐や下痢などの症状が現れる感染性腸炎です。実際にギラン・バレー症候群の患者さんのうち、1割程度は、このカンピロバクター腸炎が原因となり発症しているといわれています。

なぜ感染症が原因となりギラン・バレー症候群を発症してしまうのか、そのメカニズムは明確には解明されていません。

しかし、発症には、免疫システムが関係していると考えられています。免疫システムとは、細菌やウイルスなどの異物を排除し体を守るようはたらくシステムのことです。

何らかの細菌やウイルスに感染し、この免疫システムが活発になると、ギラン・バレー症候群の発症につながると推測されています。細菌やウイルスと神経には似ている部分があり、免疫システムが誤って神経を攻撃してしまった結果、ギラン・バレー症候群の発症につながると考えられています。

ギラン・バレー症候群は、脱髄(だつずい)型と軸索障害(じくさくしょうがい)型に分けられます。

神経とは、情報を伝える電線のようなものです。電気を伝える電線の中心部分を軸索と呼びます。神経には、この軸索が髄鞘(ずいしょう)と呼ばれる鞘で包まれている有髄神経と、髄鞘に包まれていない無髄神経があります。

脱髄型とは、有髄神経の髄鞘がはがれてしまうために神経が障害される病態を指します。

一方、軸索障害型とは、中心部分である軸索が障害されるためにギラン・バレー症候群が生じる病態を指します。

このうち、脱髄型のほうが予後は良好であるといわれています。また、お話ししたようなカンピロバクター腸炎を原因として発症した場合には、軸索障害型が多いといわれています。

ギラン・バレー症候群は、すべての患者さんに一律に同じような症状が現れるわけではありませんが、典型的な初期症状は、ピリピリとした手足の先のしびれといわれています。このしびれが現れてから数日中に、手足の力が入りにくくなることが多いでしょう。

ギラン・バレー症候群の症状の程度は、軽症の方から重症の方までさまざまです。軽症の手足のしびれであれば、発症に気づかない方もおられるかもしれません。

一方、重症化する方のなかには、立ち上がれず、歩行が困難になる方もいます。さらに、話すことができず、水も飲み込めなくなるケースもあります。

最も重症なタイプであると、全身がピクリとも動かなくなるために寝たきりになり、瞬きすらできなくなることもあります。筋力が低下すると呼吸機能が低下するため、全体の10〜20%程度の方には、人口呼吸器が使われます。

ベッドに横たわる女性

最初に手足にピリピリとしたしびれが生じてから疾患のピークにいたるまでは、だいたい一週間から10日ほどといわれています。最短で3〜4日、最長で3週間ほどといわれており、4週間を超えることは少ないでしょう。

症状のピークを過ぎると、徐々に回復に向かいます。治り方には個人差がありますが、ピークを過ぎると基本的には治癒の方向に向かいます。

ギラン・バレー症候群は、気づきにくい疾患であるといわれています。軽症であれば、疾患に気づくことなく日常生活を過ごす方も少なくありません。

たとえば、もともと握力が40キロあった方が20キロになったとしても、気づかないケースも多いでしょう。それは、握力20キロあれば日常生活を難なく過ごすことができる可能性が高いからです。

しかし、握力14〜15など20以下になると、日常生活に不自由が生じはじめます。たとえば、ペットボトルやプルタブの缶の蓋が開けられなくなって初めて、多くの方は疾患に気がつきます。

また、階段の上り下りが困難になったり、座った状態から立ち上がったりすることが困難になることで疾患に気づく方も多いでしょう。

ほかにも、ゴミを運ぶことができなくなったり、布団を押入れにしまうことができなくなったり、力仕事に不自由が生じて気づくことも少なくありません。このため、力仕事をする機会があまりないような方であると、疾患に気づきにくいと考えられます。

日常生活に不自由が生じて初めて病院を受診する方が大半であるため、疾患が判明した時にはけっこう進行していることはまれではありません。たとえば、受診した段階では、すでに筋力が通常の2分の1〜3分の1程度まで低下しているケースもあります。

*ギラン・バレー症候群の治療と予後に関しては、記事2『ギラン・バレー症候群の治療と予後-後遺症や再発はあるの?』をご覧ください。

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