インタビュー

ギラン・バレー症候群の検査と治療-予後に後遺症や再発はあるの?

ギラン・バレー症候群の検査と治療-予後に後遺症や再発はあるの?
進藤 克郎 先生

倉敷中央病院 神経内科 主任部長

進藤 克郎 先生

この記事の最終更新は2017年11月02日です。

ギラン・バレー症候群とは、手足のしびれや筋力の低下などの症状が現れる疾患ですが、どのような診断によって疾患は確定されるのでしょうか。

また、治療によって症状は大きく改善されるといいますが、後遺症や再発の可能性はあるのでしょうか。

今回は、倉敷中央病院の進藤 克郎先生にギラン・バレー症候群の診断から治療、予後にいたるまでお話しいただきました。

*ギラン・バレー症候群の原因や症状に関しては、記事1『ギラン・バレー症候群の原因や症状とは?』をご覧ください。

診断

ギラン・バレー症候群は、主に病歴と診察から診断を行います。病歴では、主に3〜4週間前に何らかの感染があったかどうかを問診によって確認します。

さらに、足を叩いたときに反応して動くかどうかなど、体の反射反応があるかを確認します。また、筋力が低下していないかどうかを確認します。

さらに、あらゆる検査を実施していきますが検査の結果が揃ってから治療をスタートさせると、その間に疾患が進行してしまいます。

そのため、ギラン・バレー症候群では、お話ししたような診察と病例で診断をつけ、治療に入ることが多いでしょう。

ギラン・バレー症候群の検査には、主に以下のようなものがあります。ギラン・バレー症候群の疑いがあると、5〜6時間ほどをかけ、これらの検査を実施していくケースが多いでしょう。

検査室

筋電図検査とは、筋繊維の電気活動を調べる検査です。ギラン・バレー症候群における筋電図検査では、神経伝導検査が一番のポイントになります。神経伝導検査では、筋肉に電気をかけ、筋肉が動くかどうかを検査します。この検査によって、筋肉の動きが鈍いようであれば、どこかの神経が障害されている可能性があるといえるでしょう。

血液検査では、ギラン・バレー症候群にみられる抗ガングリオシド抗体や抗糖脂質抗体などが検出されることがあります。

髄液検査は腰から長い針を刺して髄液を調べる検査です。ギラン・バレー症候群では、髄液におけるタンパクの値が向上するため、髄液検査によってタンパクの値を確認します。

徒手筋力テストでは、一つ一つの筋肉の筋力を検査します。この検査では、圧力をかけた状態で力をいれてもらい、どれくらい筋力があるかを確認していきます。

ほかにも、ギラン・バレー症候群の治療には点滴や薬剤をたくさん使用するので、心臓や腎臓の機能に問題がないかどうかを、検査によって確認します。

ギラン・バレー症候群の治療法には、主に免疫グロブロン大量静注療法と血液浄化療法があります。

ギラン・バレー症候群の治療の第一選択は免疫グロブリン大量静注療法です。免疫グロブリン大量静注療法とは、ヒト免疫グロブリンを5〜6時間ほどかけて点滴し、免疫のはたらきを調整する治療法です。

この免疫グロブリン大量静注療法の効果が現れないケースや、副作用で適応できないケースでは、血液浄化療法が適応されます。

血液

血液浄化療法とは、血液のなかの液体成分である血漿(けっしょう)を遠心分離や半透膜などを用いて分離し、血漿のなかに含まれている有害物質を除去してから体内に戻す治療法を指します。

1回の治療では3〜4時間程度を要し、足の付け根から入れた管を通して全身の3分の2程度の血液を抜き、有害物質を除去した後に再度体内に戻していきます。

血液浄化療法は、連続して毎日行うこともありますが、一日おきのケースもあります。疾患のピークを過ぎたら治療をやめることが一般的です。

さまざまな方法がありますが、最も安全とされている血液浄化療法は、血液を抜きながら濾過(ろか)を行い、そのまま血液を戻す方法です。この方法であると、使用する管が一本ですむために比較的トラブルが少ないといわれています。

血液を抜いてからまた戻す場合、管が2本必要になってしまい、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。

血液は、人間の血管のなかを流れているときに固まることはありませんが、異物と接触すると固まる性質があります。そのため、ヘパリンなど血液の凝固を防ぐ薬を使いながら治療を行います。

また、免疫グロブリン大量静注療法と血液浄化療法を同時に使うケースもあります。これらは同時に使用しても特に弊害はなく、人工呼吸器の導入率が下がるといわれています。どちらかの治療を用いた場合には人工呼吸器が約20%に必要となるといわれていますが、両方使用すると約15%まで下がるというデータがあります。

しかし、1年後の治療成績をみるとほぼ変わらないというデータもあり、両方の治療を使った場合には、あくまで短期的な治療成績が向上するということがいえるでしょう。

ギラン・バレー症候群の再発は、非常に少ないといわれています。

一度治癒すると薬の服用などもなく、通常通りの生活を送る方が多くおられます。疾患に罹患する以前のような社会生活を送るには、寝たきり程度まで進行した場合には、短くても3〜4か月程度を要するといわれています。長いケースであると、脱髄型の場合は約半年、軸索障害型の場合は2〜3年を要します。
ギラン・バレー症候群の患者さんの7〜8割の方は、もとの筋力に戻ると考えられます。残りの2〜3割は筋力が低下したりわずかな手足のしびれが残ったりするケースもありますが、日常生活に影響を及ぼさないケースが大半です。しかし、たとえば筋力を必要とする仕事に就いている方であれば、仕事に影響がでるケースもあるかもしれません。

2017年現在、私たち倉敷中央病院では、ここ20年の間にギラン・バレー症候群で亡くなった患者さんはいらっしゃいません。しかし、統計上では、数%の死亡率が認められています。

死亡理由は、不整脈が最も多いといわれています。記事1でお話ししましたが、ギラン・バレー症候群を発症すると、運動神経、感覚神経、自律神経など、さまざまな神経が機能しなくなります。このうち、自律神経が機能しなくなると心臓の調整ができなくなるために不整脈が発生し、死亡するケースが認められています。

また、自律神経が障害され胃腸が機能しなくなった結果、腸閉塞(腸管の癒着や血流障害により、腸管の内容物が流れなくなる状態)とよばれる状態が重症化し、亡くなった方もいます。さらに、人工呼吸器を適応するケースでは、人工呼吸器に関連した肺炎によって亡くなったケースも報告されています。

進藤先生

お話ししたように、ギラン・バレー症候群は、解明されていない部分も多い疾患です。多くの方は、治療によって改善が可能ですが、なかには重症化してしまう方もいます。軽症であると気づきにくい疾患ではありますが、手足にピリピリとしたしびれが現れたり、何らかの感染症に罹患したりした方は注意が必要でしょう。

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