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疾患啓発タイアップ

公開日 : 2018 年 01 月 11 日
更新日 : 2018 年 01 月 11 日

大腸がんの手術 術後の合併症・治療についても解説

大腸がんの患者数は年々増加の一途を辿っており、いまでは多くの方にとって非常に身近な疾患となってきました。

大腸がんがみつかった場合には、まず手術を行うことが一般的です。大腸がんの手術といっても、その方法はさまざまで、「がんが大腸のどこの部分に発生したのか」によって大きく異なります。さらに手術の難易度、手術時間、術後に起こりやすい合併症なども、がんが発生した場所によって大きく変わってきます。

大腸がんの手術はどのような種類があり、それぞれどういった術式が検討されるのでしょうか。記事1『大腸がんの原因・発症に気付くための症状とは?』に引き続き、大腸がん手術のエキスパートである社会医療法人蘇西厚生会 松波総合病院 副院長・外科部長・消化器外科部長 關野考史(せきの たかふみ)先生にお話を伺いました。

大腸がんの手術 直腸がん・結腸がんで違いはあるのか?

基礎知識:大腸がんの分類

記事1でもご紹介したように、大腸がんは大腸のどの区分にがんが発生したのかによって下記のように分類がなされています。

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結腸がん

  • 虫垂がん(ちゅうすいがん)
  • 盲腸がん(もうちょうがん)
  • 上行結腸がん(じょうこうけっちょうがん)
  • 横行結腸がん(おうこうけっちょうがん)
  • 下行結腸がん(かこうけっちょうがん)
  • S状結腸がん(えすじょうけっちょうがん)

直腸がん

  • 直腸S状部がん
  • 上部直腸がん
  • 下部直腸がん
  • 肛門管がん
  • 肛門周囲皮膚のがん

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ひとことに大腸がんといっても、このようにさまざまな大腸がんがあります。そしてどの部位のがんなのかによって手術の難易度や、ポイントは変わってきます。

「直腸がん」ではより手術の難易度が高くなる

これらの大腸がんのなかでより手術の難易度が高いとされているのが「直腸がん」の手術です。直腸がんの手術が難しい理由は、直腸が位置している部分が関係しています。

直腸というのは骨盤のなかに位置している臓器であり、直腸の周囲にはとても重要な機能を担うさまざまな臓器がいくつも存在しています。

たとえば女性であれば子宮と膣、男性であれば前立腺、そして男女ともに存在する膀胱など、直腸の周囲には、とても重要な臓器が骨盤に囲まれながら密集しています。特に男性では女性と比べて骨盤が狭いうえ、男性機能の関与する神経が密集しています。

このように、性機能や排尿機能に関する臓器・神経が密集していることから、直腸の手術を行う場合にはそうした周囲のものを傷つけないよう配慮していくことが求められ、手術は難しいものになってきます。

大腸がん手術の「切除範囲」はどう決める? 

大腸の切除範囲

基本は「がんとリンパ節」を十分な範囲切除していく

大腸がんの手術をする場合、基本的には下記の部分を摘出します。

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  • がん腫瘍
  • がん腫瘍の周辺の組織
  • がん腫瘍の周辺のリンパ節

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ここで注意すべきは「がん周囲のリンパ節を確実にとる」ことです。

がんは進行するとリンパ節へ転移していきます。最初はがんの近くのリンパ節に転移がみられ、そのあとは血管に沿って体の中枢部分に向かってリンパ節転移が進行していきます。そのため転移が疑われるリンパ節を取り残さないよう、十分な範囲のリンパ節を摘出していく必要があります。

しかし、リンパ節はヒトの体のどこにでも、全身に広がっているので、簡単にいってしまえば摘出しようと思えばどこまででも摘出できてしまいます。

ですから「どこまでのリンパ節を摘出すべきなのか」を適切に判断しなければなりません。

進行している場合には「栄養している血管の根元」まで摘出する

そのため「どの範囲までを切除するのか」については、これまでの医学のデータに基づいて、どの部位のがんであるか、どれくらいの進行度であるかなどに応じて定められています。

直腸の手術

進行したがんで、リンパ節への転移が進んでいると考えられる場合には、上図のように腸を栄養している(腸に栄養を送っている)血管の根元の部分で切除をすることになります。

一方、それほどがんの深達度が高い(がんが深くまで浸潤している)状態ではなく、事前の検査の結果からもリンパ節への転移がそれほど進んでいないと判断できる場合には、もう少し手前のリンパ節までが、摘出の対象となります。

こうした切除範囲の判断は「1) 術前診断で明らかになるがんの深達度」と「2) 術前のリンパ節転移の評価」の2つで決まっていきます。CTによる検査などを行うとがんのリンパ節転移が疑われる範囲を明らかにすることができますので、そうした検査によって術前の患者さんの状態を検討し、切除範囲を判断していきます。

「肛門を残す」「肛門の機能を温存する」手術とは?

肛門 手術

また肛門に近い部位にがんができた場合には「肛門を残す手術ができるかどうか」「肛門の機能を温存できる手術ができるかどうか」という点もポイントになってきます。

直腸にがんができた場合でも、がんの発生部位や進行度などによっては、肛門を残す手術を行うことができます。このように肛門を残す手術は「括約筋温存手術(こうかつきんおんぞんしゅじゅつ)」とよばれます。

一方、肛門の近くにがんができ、がんも進行している状態である場合には、肛門部分を摘出しなくてはならないケースがあります。その際には、摘出された肛門の代わりに「人工肛門(ストーマ)」を付ける必要があります。こうした手術は「腹会陰式直腸切断術(ストーマ造設術)」とよばれます。

肛門を摘出した場合には、人工肛門を取り付けることで排泄機能を維持できますが、肛門を摘出するという侵襲性の大きい手術であることから、ほかの大腸がんの手術と比べると患者さんへの負担はより大きくなります。また人工肛門を付けた後は、その後のケアもやや煩雑であり、そうした施術後の処置という点でも患者さんの負担が懸念されていました。

 

そうしたなか近年では、下図のように人工肛門を使用しないようにする手術が行われるようになってきています。それが「括約筋間直腸切除術(かつやくきんかん ちょくちょうせつじょじゅつ)」とよばれる手術です。

人工肛門

括約筋間直腸切除術は、肛門の「肛門括約筋」という筋肉の一部だけを摘出する手術です。この手術では、図のように肛門をしめたりゆるめたりする筋肉である肛門括約筋のうち、内側の「内肛門括約筋」の部分までを摘出し、外側の「外肛門括約筋」は残したままにします。このように肛門括約筋の一部が残っていることで、肛門の機能を温存することが可能になります。

この手術はがんが早期で、深達度も低い場合に検討できます。こうした手術方法が登場してきたことで、肛門に近い場所にできたがんであっても、肛門の機能を温存するという選択ができるようになってきました。

こうした手術方法が登場してきたことから、今後、直腸がんの治療で課題となってくるのは「どれだけ肛門の機能を温存できるのか」というところでしょう。昔までは、肛門の近くのがんであれば、手術の選択肢は「肛門をすべて摘出して人工肛門をつける方法」のみとなっていました。しかし、こうしたより低侵襲な手術方法が徐々に広まってきたことで、肛門機能の温存というところをより重視していく流れができつつあります。

現状のところすべての医療機関で括約筋間直腸切除術を施行しているというわけではないようですが、今後こうしたより低侵襲な手術方法のメリットがさらに注目されていくと考えられます。

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