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大腸がんの手術ー術後の生活・合併症についても解説
大腸がんの患者数は年々増加の一途を辿っており、現在では多くの方にとって非常に身近な疾患となりました。大腸がんがみつかった場合には、まず手術を行うことが一般的です。その方法はさまざまで、「がんが大...
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大腸がんの手術ー術後の生活・合併症についても解説

公開日 2018 年 01 月 11 日 | 更新日 2018 年 06 月 21 日

大腸がんの手術ー術後の生活・合併症についても解説
關野 考史 先生

松波総合病院 副院長兼外科・消化器外科部長

關野 考史 先生

大腸がんの患者数は年々増加の一途を辿っており、現在では多くの方にとって非常に身近な疾患となりました。

大腸がんがみつかった場合には、まず手術を行うことが一般的です。その方法はさまざまで、「がんが大腸のどこの部分に発生したのか」によって大きく異なります。さらに手術の難易度、手術時間、術後に起こりやすい合併症なども、がんが発生した場所によって大きく変わります。

大腸がんにはどのような種類があり、それぞれどういった術式が検討されるのでしょうか。記事1『大腸がんの原因・発症に気付くための症状とは?』に引き続き、大腸がん手術に詳しい社会医療法人蘇西厚生会 松波総合病院 副院長・外科部長・消化器外科部長 關野考史(せきの たかふみ)先生にお話を伺いました。

大腸がんの手術 直腸がん・結腸がんで違いはあるのか?

基礎知識:大腸がんの分類

記事1でもご紹介したように、大腸がんは、大腸のどの区分にがんが発生したのかによって下記のように分類されます。

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結腸がん

  • 虫垂がん(ちゅうすいがん)
  • 盲腸がん(もうちょうがん)
  • 上行結腸がん(じょうこうけっちょうがん)
  • 横行結腸がん(おうこうけっちょうがん)
  • 下行結腸がん(かこうけっちょうがん)
  • S状結腸がん(えすじょうけっちょうがん)

直腸がん

  • 直腸S状部がん
  • 上部直腸がん
  • 下部直腸がん
  • 肛門管がん
  • 肛門周囲皮膚のがん

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このようにさまざまな大腸がんがあり、どの部位のがんなのかによって、手術の難易度やポイントは変わってきます。

「直腸がん」ではより手術の難易度が高くなる

このなかでより手術の難易度が高いとされているのが「直腸がん」の手術です。直腸がんの手術が難しい理由は、直腸が位置している部分が関係しています。

直腸というのは骨盤のなかに位置している臓器であり、直腸の周囲にはとても重要な機能を担うさまざまな臓器がいくつも存在しています。

たとえば女性であれば子宮と膣、男性であれば前立腺、そして男女ともに存在する膀胱など、直腸の周囲には、とても重要な臓器が骨盤に囲まれながら密集しています。特に男性では女性と比べて骨盤が狭いうえ、男性機能の関与する神経が密集しています。

このように、性機能や排尿機能に関する臓器・神経が密集していることから、直腸の手術を行う場合にはそうした周囲のものを傷つけないよう配慮していくことが求められ、手術は難しいものになってきます。

大腸がん手術の「切除範囲」はどう決める? 

大腸の切除範囲

基本は「がんとリンパ節」を十分な範囲切除していく

大腸がんの手術をする場合、基本的には下記の部分を摘出します。

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  • がん腫瘍
  • がん腫瘍の周辺の組織
  • がん腫瘍の周辺のリンパ節

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ここで注意すべきは「がん周囲のリンパ節を確実にとる」ことです。

がんは進行するとリンパ節へ転移していきます。最初はがんの近くのリンパ節に転移がみられ、そのあとは血管に沿って体の中枢部分に向かってリンパ節転移が進行していきます。そのため転移が疑われるリンパ節を取り残さないよう、十分な範囲のリンパ節を摘出していく必要があります。

しかし、リンパ節はヒトの体のどこにでも、全身に広がっているので、簡単にいってしまえば摘出しようと思えばどこまででも摘出できてしまいます。

ですから「どこまでのリンパ節を摘出すべきなのか」を適切に判断しなければなりません。

進行している場合には「栄養している血管の根元」まで摘出する

そのため「どの範囲までを切除するのか」については、これまでの医学のデータに基づいて、どの部位のがんであるか、どれくらいの進行度であるかなどに応じて定められています。

直腸の手術

進行したがんで、リンパ節への転移が進んでいると考えられる場合には、上図のように腸を栄養している(腸に栄養を送っている)血管の根元の部分で切除をすることになります。

一方、それほどがんの深達度が高い(がんが深くまで浸潤している)状態ではなく、事前の検査の結果からもリンパ節への転移がそれほど進んでいないと判断できる場合には、もう少し手前のリンパ節までが、摘出の対象となります。

こうした切除範囲の判断は「1) 術前診断で明らかになるがんの深達度」と「2) 術前のリンパ節転移の評価」の2つで決まっていきます。CTによる検査などを行うとがんのリンパ節転移が疑われる範囲を明らかにすることができますので、そうした検査によって術前の患者さんの状態を検討し、切除範囲を判断していきます。

「肛門を残す」「肛門の機能を温存する」手術とは?

肛門 手術

また肛門に近い部位にがんができた場合には「肛門を残す手術ができるかどうか」「肛門の機能を温存できる手術ができるかどうか」という点もポイントになってきます。

直腸にがんができた場合でも、がんの発生部位や進行度などによっては、肛門を残す手術を行うことができます。このように肛門を残す手術は「括約筋温存手術(こうかつきんおんぞんしゅじゅつ)」とよばれます。

一方、肛門の近くにがんができ、がんも進行している状態である場合には、肛門部分を摘出しなくてはならないケースがあります。その際には、摘出された肛門の代わりに「人工肛門(ストーマ)」を付ける必要があります。こうした手術は「腹会陰式直腸切断術(ストーマ造設術)」とよばれます。

肛門を摘出した場合には、人工肛門を取り付けることで排泄機能を維持できますが、肛門を摘出するという侵襲性の大きい手術であることから、ほかの大腸がんの手術と比べると患者さんへの負担はより大きくなります。また人工肛門を付けた後は、その後のケアもやや煩雑であり、そうした施術後の処置という点でも患者さんの負担が懸念されていました。

 

そうしたなか近年では、下図のように人工肛門を使用しないようにする手術が行われるようになってきています。それが「括約筋間直腸切除術(かつやくきんかん ちょくちょうせつじょじゅつ)」とよばれる手術です。

人工肛門

括約筋間直腸切除術は、肛門の「肛門括約筋」という筋肉の一部だけを摘出する手術です。

この手術では、図のように肛門をしめたりゆるめたりする筋肉である肛門括約筋のうち、内側の「内肛門括約筋」の部分までを摘出し、外側の「外肛門括約筋」は残したままにします。このように肛門括約筋の一部が残っていることで、肛門の機能を温存することが可能になります。

括約筋間直腸切除術はがんが早期で、深達度も低い場合に検討できます。こうした手術方法が登場してきたことで、肛門に近い場所にできたがんであっても、肛門の機能を温存するという選択ができるようになってきました。

こうした手術方法が登場してきたことから、今後、直腸がんの治療で課題となってくるのは「どれだけ肛門の機能を温存できるのか」というところでしょう。昔までは、肛門の近くのがんであれば、手術の選択肢は「肛門をすべて摘出して人工肛門をつける方法」のみとなっていました。しかし、こうしたより低侵襲な手術方法が徐々に広まってきたことで、肛門機能の温存というところをより重視していく流れができつつあります。

現状のところすべての医療機関で括約筋間直腸切除術を施行しているというわけではないようですが、今後より低侵襲な手術方法のメリットが、さらに注目されていくと考えられます。

大腸がんの手術適応は? 年齢やステージでどのように変わるのか

手術できるかどうかは患者さんの状態から考える

患者さんのなかでも、ステージⅣと判断され、最初の診断時ですでに肝臓や肺にたくさんの転移巣がみられる方では、原発巣である大腸がんを手術していくのかについて、色々な意見が出ることがあります。

あまり症状が出現しそうでない場合には、むやみに手術をせずに内科的な治療(抗がん剤治療)によって治療を進めていくという選択をすることがあります。

一方で、大腸がんからの出血が著しく貧血の症状がどんどんと悪化していってしまう、または腸が、がんによって閉塞してしまっている、もしくは閉塞寸前の状態になっているといった場合では、手術をするという選択をすることがあります。

「何歳からは手術ができない」ということはない

一般的に、高齢になるほど手術のリスクは高まると考えられますが、あくまでも手術の適応は患者さんの状態をみて決めるものであり、基本的に年齢だけで判断することはありません。たとえば70代の方でも疾患の既往歴やがんの状態によっては手術を推奨できない方もいらっしゃいますし、その一方で90歳であってもとても元気で手術を検討できる患者さんもいらっしゃいます。

特に、高齢になればなるほど「臓器の個人差」は大きくなっていきます。若い方ではそこまで臓器の状態に大きな個人差はありませんが、高齢の方では患者さんの個々の状態を見極めることがとても大切です。ですので、「〇〇歳だから手術はできない」といった判断をすることはなく、あくまでも患者さんの状態によると考えます。

大腸がんの手術の方法 ―開腹手術と内視鏡(腹腔鏡)手術

2つの手術方法 「開腹手術」と「内視鏡(腹腔鏡)手術」

大腸がんの手術は大きく下記のふたつがあります。

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  • 開腹手術        …腹部を開いて行う手術
  • 内視鏡手術(腹腔鏡手術)…小さないくつかの切開創から特殊な医療機器を挿入して行う手術

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どちらの手術を選択するのかは、患者さんの状態や医師の治療方針によって異なります。技術としては腹腔鏡手術のほうがより医師のスキルが求められるとされており、なかでも腹腔鏡で行う横行結腸がん、直腸がんの手術は難しいと考えられています。

大腸がん手術の実例:松波総合病院の大腸がん手術

松波総合病院の外科・消化器外科では、腹腔鏡手術に力を入れています。

腹腔鏡手術のメリットである「拡大視効果」と「低侵襲」という点を最大限活用していきたいと考えているためです。

腹腔鏡手術では腹部に内視鏡という医療用カメラを入れ、その映像を見ながら手術を進めるため、外科医が肉眼で臓器をみるよりも、より鮮明かつ詳細に臓器を観察することができます。

また内視鏡手術では、開腹手術よりも小さな創で手術を行うため、術後の患者さんの回復もよりはやくなります。また創が小さいことから開腹手術と比べると、見た目の面(整容性)でもメリットがあります。

こうしたいくつかのメリットがあることから当院では腹腔鏡手術の技術を磨き、多くの患者さんに提供できる体制づくりを目指しています。

▼質の高い内視鏡手術・腹腔鏡手術を目指すための取り組みについては、記事3『大腸がん治療で行われる内視鏡・腹腔鏡手術とは?』で詳しく解説していきます。

内視鏡(腹腔鏡)手術の適応とならないケースとは

当院では多くの症例で腹腔鏡手術を選択していますが、下記のようなケースでは開腹手術のほうが望ましいと判断し、開腹手術を行うようにしています。

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・過去に複数回、腹部の手術を受けたことがある場合

・腹部の周囲にまであきらかにがんが浸潤している場合

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複数回、腹部の手術を受けたことがある方

たとえば、過去に腹部の手術を何回か受けたことがある方では、腹部に相当な「癒着(ゆちゃく)」が生じている可能性があります。癒着というのは炎症などによって傷ついた組織が、治癒していこうとする過程でくっつき、組織同士が結びついてしまう状態のことです。

少しの癒着であれば手術中に剥がしながら進めていくことがありますが、多くの癒着がみられる場合には開腹手術で行うことが望ましいでしょう。

腹部の周囲にまであきらかにがんが浸潤している方

大腸の周囲の組織にまでがんが浸潤している患者さんでは、手術時に大腸以外の周囲の臓器をも切除していく必要があります。そうした手術では開腹手術を選択していきます。

大腸がん手術の流れ ―手術時間・入院期間など

大腸がん手術前後の流れ

一般的に、大腸がんの手術はこのような流れで進めていきます。

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  1. 術前診断(術前治療を行うケースもあり)
  2. 手術
  3. 術後補助化学療法

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まずはどのように手術を進めていくのかを決めていくために、術前診断を行います。

さきほど、リンパ節の切除範囲を判断するために行うとご説明したCT検査の他にも、MRI検査、腹部超音波検査、PET検査、血液検査などを行い、そうした検査の結果から患者さんに適切な手術方法を検討していきます。

大腸がんが進行しており、切除不能な肝臓・肺などへの転移がみられる場合では、手術の前に術前治療を行うことがあります。

手術のまえに抗がん剤などを使用することで、がんの大きさを切除が可能な範囲にまで小さくすることができる場合があります。また直腸がんの場合には、手術前のがんの大きさが切除可能な範囲であったとしても、術前に抗がん剤で治療をして進める場合もあります。

早期のがんであった場合には術後の治療が不要なケースもありますが、基本的には1つでもリンパ節の転移がみられた場合には、「術後補助化学療法」とよばれる抗がん剤などを使用した治療法によって、がんの再発を抑制するための治療を約半年間続けていきます。

一般的な手術時間

手術の時間は、がんがどの部位にできたのかによって大きく変わります。

一概に示すことは難しいですが、直腸がん以外のがん、たとえば盲腸がん・上行結腸がん、S状結腸がんなどでは約2~3時間と考えられます。

一方、直腸がんの場合は、患者さんによって大きく異なってきます。一般的には約3~5時間かかると考えられます。

直腸がんの手術は、冒頭でもご紹介したように難易度の高い手術であるためより手術時間は長くなります。また女性よりも男性のほうが手術時間は長くなる傾向にあります。これは男性のほうが、骨盤は狭く、性機能に関連する神経が周囲に多く存在するためです。こうした手術時間の性差が最も顕著に表れるのは直腸がんの手術でしょう。

一般的な入院期間

術後の入院の期間は、順調であれば1~2週間ぐらいです。術後補助化学療法が必要な方は一般的に通院で行います。術後補助化学療法が必要でない方は、3か月ないし半年に1度程度で来院いただき、術後の状態を確認していくことが一般的でしょう。

大腸がんは再発しても治りやすい

大腸がんは比較的治りやすいがん、再発しても治る見込みがあるがんだといえます。これはたとえば肝臓や肺にまで転移していたとしても、その部分を外科的に切除することができれば治る見込みが残されているためです。こうした点は他のがんとは異なるところでしょう。

術後に発生しやすい合併症とは?

注意すべき合併症は「縫合不全」

最も注意しなければならない合併症は縫合不全でしょう。大腸がんの手術後、腸を縫い合わせた部分がうまくくっつかず、、その結果、腸の内容物が腸の外へと出ていってしまう現象です。縫合不全を引き起こすと、腸内の細菌が腹腔に飛び散り、炎症をおこしてしまう「腹膜炎」になるリスクがあります。

特に縫合不全が起きやすいといわれているのは直腸がんの手術です。直腸がんの手術の場合では全国平均で5~10%の症例が縫合不全をおこすと報告されています。一方で、結腸がんの手術では、縫合不全がおきることは非常にまれだと考えられています。

縫合不全を起こさないための対処

このように直腸がんの手術では縫合不全を引き起こすリスクがあることから、それを予防するために手術時に小腸の人工肛門をつける場合があります。

こうした対処をとることで、直腸がんの手術のあと、手術の縫合部を内容物が通過することがなくなり、縫合不全を引き起こすリスクを大きく抑制することが可能になります。

その後、しばらくして縫合部分が落ち着き、もう縫合不全をおこすリスクは低いと判断された場合には、小腸の人工肛門を外し、小腸同士をもとのように縫い合わせます。このように直腸がんの手術の際には、一時的な小腸の人工肛門をつくるという対処によって、合併症の発症リスクをおさえていく方法もあります。

術後に注意すべきこと ―食事や運動

手術後の癒着で、腸が狭くなっている可能性もある

気を付けるべきこととしては野菜や海藻といった、食物繊維が豊富で消化のよくないものを、しっかり噛んで飲み込むようにすること、そして大量には食べ過ぎないようにすることが大切です。

大腸に限らず、腹部の手術をしたあとというのは、手術後の部分に癒着が生じ、食べ物の消化に影響を及ぼしている可能性があります。もし癒着が起こってしまっている場合、癒着の仕方によっては、腸がねじれたり、折れ曲がったりした状態でくっついてしまっていることがあり、そうした場合では腸の内腔が狭くなってしまっている(狭窄している)ことがあります。

こうした状態で消化のよくない食べ物が、あまり噛まれない状態で通過しようとすると、狭くなった部分に食べ物が詰まり、通過障害や腸閉塞になるリスクが高まります。

こうしたことからも腹部の手術をしたあとでは、食物線維の豊富な食品には注意し、食べすぎないように、また食べる場合にはあらかじめ細かく切っておくなどの工夫を行うほうが望ましいでしょう。

運動に関しては特に注意することはなく、術後安静にすべき時間が経っていれば通常通り動いていただいて大丈夫でしょう。

 

▼引き続き記事3『大腸がん治療で行われる内視鏡・腹腔鏡手術とは?』では關野先生に、大腸がんの手術のなかでも特に「腹腔鏡手術」について、より詳細に解説いただきます。

大腸がん(關野 考史先生)の連載記事

岐阜大学第1外科、国立東静病院外科、国立循環器病センターなどで研修医として経験を積んだのち、1996年に岐阜大学第1外科医員、羽島市民病院外科医師として勤務する。その後1997年に木曽川病院外科医長、2001年に郡上中央病院外科医長をつとめる。
2003年より岐阜大学第1外科助手、2006年岐阜大学高度先進外科助手・第1外科併任講師、2007年岐阜大学高度先進外科助教・第1外科併任講師、2011年岐阜大学付属病院 第1外科講師、2012年岐阜大学付属病院 第1外科講師・高度先進外科 臨床准教授、2014年岐阜大学付属病院 第1外科准教授をつとめる。
そして2017年松波総合病院副院長に就任し、外科部長・消化器外科部長となる。

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