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大腸がんの内視鏡手術(腹腔鏡手術)の概要
以前まで、大腸がんの手術に限らず腹部の外科手術というのは、腹部を開く「開腹手術」が広く行われてきました。そうしたなか近年では「内視鏡手術(腹腔鏡手術)」という特殊な医療機器を用いて行われる新しい...
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大腸がんの内視鏡手術(腹腔鏡手術)の概要

公開日 2018 年 01 月 11 日 | 更新日 2018 年 09 月 19 日

大腸がんの内視鏡手術(腹腔鏡手術)の概要
關野 考史 先生

松波総合病院 副院長兼外科・消化器外科部長

關野 考史 先生

以前まで、大腸がんの手術に限らず腹部の外科手術というのは、腹部を開く「開腹手術」が広く行われてきました。そうしたなか近年では「内視鏡手術(腹腔鏡手術)」という特殊な医療機器を用いて行われる新しい術式が登場し、多くの医療機関で施行されるようになってきました。

さらに2004年からは日本内視鏡外科学会による「技術認定医」という制度もはじまり、高い技術が求められる腹腔鏡手術をより安全に、高いクオリティを担保するための取り組みに力が入れられています。

腹腔鏡手術とはいったいどのようなメリットがある手術なのか、そして技術認定とはどういった資格であるのか、実際に認定医を取得されている社会医療法人蘇西厚生会 松波総合病院 副院長・外科部長・消化器外科部長 關野考史(せきの たかふみ)先生に、大腸がんに対する腹腔鏡手術についてお話を伺いました。

大腸がんの手術を低侵襲で行う「内視鏡手術(腹腔鏡手術)」とは?  

開腹手術 内視鏡 腹腔鏡手術

近年、より患者さんへの負担が少ない手術方法として、内視鏡手術(腹腔鏡手術)が注目されています。

腹腔鏡手術とは、お腹を開いて行われる「開腹手術」とは異なり、いくつかの小さな切開創だけで行う手術方法のことです。

一般的には、数mmから1cmの創を5か所ほどつくります。そしてその切開創から「鉗子(かんし)」という医療器具と、「内視鏡」という医療用カメラを挿入して手術を行います。

内視鏡手術 腹腔鏡手術

 

腹腔鏡手術には、下記のような特徴があります。

切開創のサイズが小さい

切開創は数mmから1cm程度です。一か所だけ、手術の最後に摘出する臓器を取り出すためにやや大きめの切開創(5cm程度)が必要になります。この大きく切開する部分は、術後に傷跡が目立たないように、おへそ部分につくることが一般的です。

モニター画面を通して臓器を観察する

開腹手術のときには、外科医が肉眼で臓器を観察します。しかし腹腔鏡手術では、内視鏡に接続したカメラモニターに映し出された映像をみることで、臓器を観察します。

腹部を膨らませる(気腹法)

腹腔鏡手術では、腹部を二酸化炭素で膨らませながら手術を行います。これは「気腹法(きふくほう)」とよばれています。

このように腹部を膨らませる理由は、内視鏡を挿入したときに腹部のなかの映像をみやすくするためです。通常、お腹はしぼんだ状態になっているため、このまま内視鏡を入れても、内視鏡の先端に臓器がくっついてしまい、何もみえなくなってしまいます。

そこで腹腔鏡手術では、お腹のなかに二酸化炭素を入れて、腹部にドーム状の空間ができるように膨らませます。こうした空間ができて初めて、腹部の状態を鮮明にみることができ、手術中に安定した、良好な視野を確保することができます。

経験と技術が求められる手術

このあとに詳しくご説明しますが、腹腔鏡手術は特殊な医療機器を用い、モニターに映し出された映像をみながら進める手術ですので、経験と技術が求められる手術になります。開腹手術で多くの症例をこなしてスキルを磨いた外科医であっても、初めて腹腔鏡手術を行う際には戸惑ってしまうことがあります。そのため腹腔鏡手術をしっかり行うためには、経験を重ねてスキルを磨くことが大切になります。

大腸がんの腹腔鏡手術のメリット

臓器をより鮮明に観察できる「拡大視効果」

では腹腔鏡手術には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。メリットとしてまずいえるのは、腹腔鏡手術による拡大視効果でしょう。

拡大視効果とは、内視鏡によって臓器をより大きく、鮮明に観察することができるという利点のことです。

さきほどもご説明したとおり、開腹手術では腹部を開き、外科医が直接肉眼で臓器を観察します。一方で、腹腔鏡手術では小さな切開創から内視鏡を挿入し、内視鏡に接続されたモニター画面をみることで、臓器の状態を拡大します。

このとき、モニターに映し出された臓器は、肉眼でみるよりも拡大され、鮮明で精密な映像になっており、細かな血管や神経までも観察することができます。通常、肉眼ではこうした細かな血管や神経は見逃しがちになってしまいます。

腹腔鏡による拡大視効果は、こうした見逃しがちな細かな臓器の状態を把握することに役立ち、より精密で的確な手術を進めることが可能になります。

創が小さいことによる「低侵襲性」

また「低侵襲」というところも、腹腔鏡手術の大きなメリットでしょう。

低侵襲というのは、患者さんの体にかかる負担、つまり手術によってもたらされる体へのストレスの度合いがより低いということです。

大腸がんに限らず、腹部の手術ではやはりお腹を大きく切開すると、それだけ術後の炎症反応が強くなります。ですので、その手術による創をより小さくすることによって、術後の炎症反応を抑えることができます。

炎症反応を抑えることにはさまざまな利点があります。たとえば術後に熱が出てしまうことを防ぐことができたり、術後の回復が早くなったりすることもわかっています。実際にいくつかの研究データでも、開腹手術よりも腹腔鏡手術を行うほうが、血中の炎症性物質の産生が抑制され、術後の経過がよくなるということも報告されています。

創が小さいことによる「整容性(美容性)」のメリット

また創が小さいことのもうひとつのメリットとなるのが、整容性(美容上の利点)です。

がんという命にもかかわることがある疾患の手術をするとき、どこまで創の大きさを気にするのかについては、人によってそれぞれだと思いますが、創が小さいに越したことはない、ということは言えるかと思います。

術後の創が大きい場合には、たとえば温泉やプールに入るといった状況のときに、人の目を気にして、負い目を感じてしまう方もいらっしゃいます。手術のあとの創が、そうした手術後のコンプレックスにできるだけつながってしまわないように、創を小さくするということは大きなメリットとなりうるでしょう。

腹腔鏡手術の傷跡

「開腹」と「内視鏡(腹腔鏡)」で安全性・治療成績に差はあるか?

開腹手術と腹腔鏡手術のどちらを行うべきかについては、患者さんの状態や、がんの進行度、そして医師の治療方針によって異なります。

「大腸癌治療ガイドライン2014年版」でも解説されている研究データをみてみると、海外のランダム化比較試験やコクランレビューといったレベルの高い研究結果では、結腸がん・直腸S状部がんに対する腹腔鏡手術と開腹手術を比べたところ、安全性、そして長期成績は同等であることが報告されています。

この研究の詳細をさらに見てみると、開腹手術と腹腔鏡手術では下記のような違いも明らかになったとされています。

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  • 「手術時間」は、開腹手術よりも腹腔鏡手術のほうが長い
  • 「出血量」は、開腹手術よりも腹腔鏡手術のほうが少ない
  • 「術後の腸管運動の回復」は、開腹手術よりも腹腔鏡手術のほうが早い
  • 「在院期間(入院期間)」は、開腹手術よりも腹腔鏡手術のほうが短い

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現状はこのような報告がなされていますが、手術手法のさらなる改善、外科医の技術や医療機器の質の向上は日々進められており、手術の安全性や成績についてのデータも積み重ねられ続けています。こうした取り組みによって、今後、それぞれどちらの手術をすべきかという推奨は変わっていく可能性があります。

腹腔鏡手術の難しさ

このようにいくつかのメリットが挙げられる腹腔鏡手術ですが、腹腔鏡手術を高い質を保って行っていくためには経験と技術が求められます。それは、腹腔鏡手術特有の「難しさ」があるためです。いったいどのような難しさがあるのか、それぞれ解説していきましょう。

腹腔鏡手術では、外科医にとってみえる「景色」がちがう

先ほどもお話したように、腹腔鏡手術では小さな切開創から挿入した内視鏡を介して、モニター画面上で患者さんの臓器を観察していきます。

そのため臓器の状態の鮮明度はもちろん、「臓器をみる角度」も違ってきます。

これまで一般的に行われてきた開腹手術では、みなさんもイメージできるように、腹部を開き、臓器を真上からみています。しかし、腹腔鏡手術では小さな切開創から内視鏡を挿入しているため、どちらかというと臓器に対して横方向の角度からみていることになります。ですからおなじ物体(臓器)でも、みえている光景は全然違ってきます。なかには、真上からみても気が付かなかった所見を、横からみることで気づくことができるケースもあります。

こうしたことから、開腹手術のときと比べ、腹腔鏡手術では外科医が目にする手術の景色は大きく異なってきます。腹腔鏡手術を行うためにはこうした「独特の視野」を理解して、慣れていかないといけません。

開腹手術は指が20本、腹腔鏡手術では4本の鉗子しかない

また、腹腔鏡手術の難しい点としてもうひとつ挙げられるのが「手術中に使うことのできる鉗子の数」です。

開腹手術では、執刀医の指が両手で10本、そして執刀医の目の前に立つ助手の指も10本あり、合計20本の指で臓器をおさえたり、臓器を切除したり、縫合したりと進めていくことができます。

一方、腹腔鏡手術では、執刀医がもつ鉗子が両方で2本、そして助手も鉗子2本、合計して4本の鉗子しかありません。そのため、手術をスムーズに進めるためには、限られた鉗子の中のどの鉗子でどこをつかみ、どのように臓器を移動させるかといった効率的な手技、手順をあらかじめ決めておく必要があります。

こうしたことから腹腔鏡手術は手術チームで連携を取りながら、合理的に手術を進めてくことが求められます。手術をどう進めていくのか、術前によくプランを考えてチームで共有することが必要です。手術の手順をその場で思いつくことが困難な場合も多く、そういった面でも、外科医として、そして手術チームとして習熟が必要になる手術といえるでしょう。

よりよい大腸がん内視鏡(腹腔鏡)手術のために―技術認定とは

学会から認められた腹腔鏡手術のエキスパート「技術認定医」

これまでお話してきたように、腹腔鏡手術は経験と技術が求められる手術です。そのため、手術はより経験が豊富で、技術を磨いた医師、手術チームのもとで受けたいと考えられる患者さんも多くいらっしゃると思います。

そこで執刀医の技術の高さを判断する手掛かりのひとつとして挙げられるのが、「技術認定医」という資格をもつかどうか、という点です。経験と技術が求められる腹腔鏡手術を、より安全に、より質よく行うことができる医師には「技術認定医」という資格が与えられることになっています。

この技術認定医というのは、2004年に日本内視鏡外科学会が制定した「日本内視鏡外科学会技術認定」という認定医制度に合格した外科医にのみ公布される資格です。

内視鏡手術は、日本では1990年代に胆のう摘出手術で初めて施行されて以降、大腸がんに対する手術にも保険が適用されるようになり、徐々に取り組む病院が増えてきました。しかし、高い技術が求められる手術であることから、より安全にこの手術が普及するよう日本内視鏡外科学会が制定した資格が、この技術認定医制度です。

技術認定医は、手術の様子をおさめた「ビデオ」で審査される

技術認定医は全 5 領域、特に消化器・一般外科領域は各臓器別に資格が定められています。

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領域

  • 消化器・一般外科
  • 泌尿器科
  • 産科婦人科
  • 整形外科
  • 小児外科

臓器別】 

例)消化器・一般外科領域

  • 胆道
  • 大腸   
  • 胃     
  • 食道   
  • 脾臓
  • 腎・副腎
  • 肝臓   
  • 膵臓   
  • 乳腺   
  • 甲状腺 
  • ヘルニア

---

日本内視鏡外科学会技術認定資格の審査には、外科医の領域の資格のなかでも珍しい「ビデオ審査」が設けられています。手術の様子をビデオにおさめ、その映像をもって学会が、医師が行う手術のクオリティの高さを判断していきます。技術認定医ではこのビデオ審査の結果が合格に大きく影響します。

技術認定医への道は「狭き門」

内視鏡技術認定医は合格率が非常に低く、かなり厳しい審査が設けられている資格だといえます。

日本内視鏡外科学会のHPで公表されているデータをみてみると、2016年度の消化器・一般外科領域<大腸>の合格率は26%でした。外科医のなかでも熱心に手術を行い、日本内視鏡外科学会へ申請している方のうちの約26%ですから、これは相当厳しい審査基準だと考えられます。

私は大腸の日本内視鏡外科学会技術認定を有していますが、松波総合病院が位置する岐阜県のなかでもこの大腸の技術認定医を有している方は数人しかいない程度です。こうした厳しい審査を乗りこえて、学会から認定された資格を持つ医師ということは、腹腔鏡手術の高い技術を持つ医師であるかどうかを判断するひとつの手掛かりになっていくと考えられます。

大腸がん手術には、チーム・病院内の連携も重要

また、こうした外科医自身のスキルとともに、手術チーム、病院の体制といったところも、よりよい大腸がんの手術を目指すうえでは必要となってきます。

たとえば、腹腔鏡手術を積極的に行っている医療機関では、腹腔鏡手術に対する外科の体制がより整備されているようになっています。患者数の多い大腸がんはもちろん、消化器外科領域としては食道がん、胃がん、肝胆膵領域のがんなど、多くのがん症例のほか、良性疾患では虫垂の切除、鼠径部(そけいぶ)ヘルニア、など幅広い疾患に対して腹腔鏡手術を積極的に取り入れています。こうした「どれほど積極的に腹腔鏡手術に取り組んでいるのか」という点も、より質の高い手術を受けられる体制かどうか、判断していく手掛かりになります。

また、病院内の連携も大切でしょう。大腸がんの手術は、外科療法(手術)だけでなく、その前後で内科的治療(大腸内視鏡によるいわゆる内視鏡治療や抗がん剤による治療など)が必要になるケースがあります。そのため外科のなかだけではなく、内科との連携も大切です。

当院では「化学療法室」という外来があり、ここで抗がん剤治療について、専門のスタッフが対応をとる仕組みができています。また、週に1回は内科外科合同のカンファレンスが開かれ、がんの患者さんの状態や治療方針、術後の経過などをしっかりと話しあっています。このカンファレンスではほかにも放射線科医、病理医なども参加し、多角的な意見交換をしています。

こうした病院の体制というところも、よりよい手術を受けるうえではひとつ重要なポイントとなってくるでしょう。

スキルが求められる内視鏡(腹腔鏡)手術 さらなる成績向上を目指して

關野考史(せきの たかふみ)先生

がんの治療を行ううえで一番重要なのは、がんを治すこと、つまり「がんの根治性」です。

どうしたらがんをしっかりと治していけるのかについては、現在もさまざまな研究が進められています。そして医療機器の質も、外科医の技術も、さらなる向上を目指して日々磨かれ続けています。こうした取り組みがさらに発展していき、よりがんを根治させられる方法が確立されていくように、私たち外科医は尽力していかなくてはいけないでしょう。

日本人が多く罹患する「大腸がん」のよりよい治療法を目指して、さらなる発展が期待されています。
 

大腸がん(關野 考史先生)の連載記事

岐阜大学第1外科、国立東静病院外科、国立循環器病センターなどで研修医として経験を積んだのち、1996年に岐阜大学第1外科医員、羽島市民病院外科医師として勤務する。その後1997年に木曽川病院外科医長、2001年に郡上中央病院外科医長をつとめる。
2003年より岐阜大学第1外科助手、2006年岐阜大学高度先進外科助手・第1外科併任講師、2007年岐阜大学高度先進外科助教・第1外科併任講師、2011年岐阜大学付属病院 第1外科講師、2012年岐阜大学付属病院 第1外科講師・高度先進外科 臨床准教授、2014年岐阜大学付属病院 第1外科准教授をつとめる。
そして2017年松波総合病院副院長に就任し、外科部長・消化器外科部長となる。

「大腸がん」についての相談が9件あります

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