インタビュー

生後3か月未満の赤ちゃんの発熱―病院での検査、治療法と看病のポイント

生後3か月未満の赤ちゃんの発熱―病院での検査、治療法と看病のポイント
橋本 祐至 先生

うさぴょんこどもクリニック 院長、千葉市立海浜病院 小児科 非常勤医師

橋本 祐至 先生

この記事の最終更新は2017年10月31日です。

発熱は、ときに重篤な細菌感染症のサインである場合があるため、尿路感染症や菌血症といった重症感染症を見逃さないために、千葉市立海浜病院ではしっかりとした対応を行っています。しかし、生後3か月未満の赤ちゃんで哺乳ができ、眠れて、呼吸も安定している場合、慌てないことも時には重要です。

今回は、生後3か月未満の赤ちゃんの発熱における病院での検査と治療について、千葉市立海浜病院小児科 橋本祐至先生にお話していただきました。

記事2『生後3か月未満の赤ちゃんの発熱で注意すべき重症感染症』では生後3か月未満の赤ちゃんの発熱で注意すべき疾患についてご紹介いただきましたが、親御さんにとっては「発熱した場合、すぐに病院に行って何をみてくれるのか」混乱されると思います。

熱の高さにかかわらず病院を受診した際、千葉市立海浜病院小児科ではまずどのような検査を行っているのかお教えしましょう。

抗原検査で診断できるような感染症(RSウイルスインフルエンザなど)、肺炎尿路感染症髄膜炎などについては、入院と同日におおよそ判断が可能です。

菌血症については、血液培養の結果を待ってから判断することになります。

先ほども述べましたが、生後3か月未満の赤ちゃんの発熱のうち、治療を要する細菌感染症は5~15%程度とされています。残りの大部分は何らかのウイルス感染症であり、広義的に述べるとすれば「ウイルス性の風邪」としか診断できません。ただしこれは、細菌感染症が除外された前提での話ですので、入院時に原因が判明するとまでは言いきれませんが、入院をした際におおよそ「ウイルス性の風邪」ではないかという説明を親御さんにさせていただいています。

生後3か月未満の赤ちゃん(乳児)が38.0℃以上の発熱をきたした場合、基本的には入院対応としています。通常、生後1か月未満の新生児の体温は正常時でも37.0~37.5℃程度は認められます。

37.5℃以上は注意が必要な状態ですが、新生児は特に外気などによる環境温に影響を受けやすいため、部屋の温度が高いとき、哺乳後、激しく泣いた後は体温が高くなることがしばしばあります。元気があり、部屋の温度を調整してすぐ体温が下がる場合は大きな心配はいりません。

ただし、3か月未満で38.0℃以上が続く場合は、明らかな発熱であり、受診が求められると考えたほうがよいです。

基本的には全例入院の上、精査を行っています。「まずは感染症」と考えたうえで、感染症がどこの部位で起こっているのかを探しにいくことが原則です。

【千葉市立海浜病院小児科で実施している検査】

  • 各種抗原検査(RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、インフルエンザなど、流行も考慮して検査)
  • 胸腹部レントゲン(肺炎の確認、腹部の異常ガスの確認)
  • 血液検査
  • 尿検査(尿路感染症の確認)
  • 髄液検査(髄膜炎の確認)
  • 各種培養検査(血液、髄液、尿、便など)

付き添いの関係や社会的な背景の問題から入院していただくのが難しいケースで、1~2か月の乳児であり、バイタルサインや全身状態がよい場合は、髄液検査を除く検査を外来で行い、血液検査の数値が悪くなければ、外来で経過をみることもあります。

記事2『生後3か月未満の赤ちゃんの発熱で注意すべき重症感染症』で述べた通り、菌血症や、髄膜炎、尿路感染症など、原因がどこにあるかを考えていきます。そのときに、月齢の大きな子どもならば、咳の症状から気道系の感染症、嘔吐・下痢からおなかの感染症、けいれんから中枢神経感染症など、症状や程度から感染症の部位や重症度を考えることも可能なのですが、3か月未満の赤ちゃんの場合、はっきりとした症状が出てこないことも多く、見た目の所見のみから「異常なし」と判断を下すと、重篤な疾患を見逃してしまう可能性があります。

そのため、当院では、3か月未満の発熱の場合は、入院で精査をする方針としています。

基本、患者さんに行う検査はほぼ決まっています。各種の抗原検査、胸腹部レントゲン、血液検査、尿検査、髄液検査、各種検体の培養検査などを網羅的に行ったうえで、細菌染症を起こしているか、起こしているのであればどの部位で感染症を起こしているのかを判断していきます。

培養検査以外は1~2時間で結果がわかります。培養検査の結果が出るまでは抗菌薬を2剤併用して治療を行い、培養検査の結果をみて、抗菌薬継続の必要性の判断、抗菌薬継続の場合はそれに適した抗菌薬への変更の必要性などを判断していきます。

生後3か月未満は解熱剤を使用する月齢ではないため、発熱そのものに対する特別な治療介入は行われません。むしろ前述したように、まずは「感染症の可能性」を疑って、その感染症がどの部位で起こっているのか、抗菌薬で治療できうるような細菌感染がないのかを検索し、診断に応じた治療を行うことに努めています。

当院では、大部分は入院で精密検査をしたうえできちんと治療を行っていますので、再受診のケースは少なく、全体の1~2割程度です。

半年~1年単位でどんどんワクチンスケジュールが変化していくため、当院では、特別なワクチン接種スケジュールの資料を作成していません。

2017年現在は、「NPO法人 VPDを知って子どもを守ろうの会」作成の資料を実際に印刷して親御さんに説明しています。

【資料の閲覧はこちらから】

生後2か月から肺炎球菌、インフルエンザ菌、B型肝炎のワクチンが公費で接種可能になります。生後3か月未満の赤ちゃんが発熱で入院された場合、必ずワクチン接種歴を確認しています。1回の接種ではまだ十分な予防にはなりませんが、確認することは大事なことです。

RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、パレコウイルス、単純ヘルペスウイルスなど。その他にも風邪症状を伴うウイルス感染は幾つかありますが、ウイルスを同定するような検査は一般的な総合病院では行っていません(検査結果が出るまで数週間かかりウイルスが同定できた頃にはお子さんは元気になっているため、ウイルスを叩く治療がないため)。

生後2か月より肺炎球菌ワクチン(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)、インフルエンザ菌type bワクチン(乾燥ヘモフィルスb型ワクチン)、B型肝炎ワクチン(組換え沈降B型肝炎ワクチン)が、生後3か月より4種混合ワクチンが公費で受けられます。

また、自費になりますが、生後2か月よりロタウイルスワクチンが接種できます(経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチンは計2回、5価経口弱毒生ロタウイルスワクチンは計3回)。

沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン、乾燥ヘモフィルスb型ワクチンは細菌性髄膜炎のワクチンですが、これらのワクチンが公費で接種できるようになってから、細菌性髄膜炎の頻度は確実に減っており、ワクチンを接種しないことで細菌性髄膜炎のリスクは明らかに高まると考えています。

熱はそもそも、環境温(室温が高すぎる、着せすぎ)の影響で高まることがあります。まずは赤ちゃんの体温を計測し、それが真の熱かどうかをもう一度確認しましょう。

機嫌が良い、哺乳ができる、よく眠れる、の3つの状態が保てている場合、緊急受診の必要性はないと考えてよいでしょう。慌てず、翌日の日中に外来受診をしてください。

哺乳ができないから熱が上がるというよりは、熱が上がるために不機嫌となり哺乳ができないと考えるほうが自然です。嘔吐が主症状でなければ、子どもが欲しがるだけしっかり哺乳させてください。

「頭を冷やすと風邪が早くよくなる」とよく耳にすることがありますが、当院では、発熱を起こした子どもに頭を冷やす処置を行うことはありません。また、脇や足の付け根など、太い血管が走っている部分を冷やすと確かに体温はやや下がりますが、生後3か月未満の赤ちゃんは体が小さいので、あまり極端に体を冷やすと体が冷えすぎてしまいます。また先ほども述べた通り、生後3か月未満は解熱剤を使う時期にも該当しないので、経過観察だけにとどめます。

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