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インタビュー

ADHDは薬物治療で治る? 薬の種類と特徴

ADHDは薬物治療で治る? 薬の種類と特徴
原 仁 先生

社会福祉法人青い鳥小児療育相談センター神経小児科 所属

原 仁 先生

ADHDの治療法のひとつに、コンサータ、ストラテラ、インチュニブを使った薬物療法があります。薬物療法は確かに一定の効果がありますが、薬だけでADHDが治るわけではありません。では、どのような場合に薬を使い、各治療薬にはどのような特徴があるのでしょうか。ADHD治療薬の特徴や副作用について、社会福祉法人青い鳥 小児療育相談センター 神経小児科の原 仁先生にうかがいました。

薬を飲む子ども

まず、ADHDは薬だけで治るものではないということをお伝えしたいと思います。また、薬に限らず、ADHDは治療だけでは症状を完全になくすことが難しいものです。ADHDの症状を自覚してそれを克服する手段を自ら身に着けていくことが、治療の最終的な目標です。薬を含めたADHD治療は、今ある症状をやわらげ日常生活を送りやすくするために実施されます。

専門医のあいだでは昔からよくいわれていますが「ADHD治療薬はそれだけで治る魔法の薬ではない」ということです。ADHDの薬物治療はあくまでも、患者さんが日常生活を不便なく行えるようにするための補助的な役割にすぎません。ですから、まずは後述する「環境調整」やペアレントトレーニング、ソーシャルスキルトレーニング(SST)などの「行動療法」を用いて、ADHD症状の緩和を図ります。それらでも生活が改善しない場合において、はじめて薬によるADHD治療が行われます。

<ADHD治療の流れ>

  1. 環境調整、それに加えて、ペアレントトレーニングやソーシャルスキルトレーニングなどの非薬物的治療を優先します。
  2. ①で奏功しない場合あるいは実施が困難な場合、薬物療法(コンサータ、ストラテラ、インチュニブの服用)を考慮します。

薬物療法と同時に環境調整、ペアレントトレーニング、ソーシャルスキルトレーニングなどを実施するとより効果的です。

考えているお母さん

ADHDがなぜ起こるのか、その詳細な発症メカニズムは明らかにされていませんが、ノルアドレナリン、ドーパミンというふたつの脳内の神経伝達物質(脳内の神経細胞のあいだで情報を伝える物質)が関与していると推測されています。特にドーパミン不足に陥ると、「物事を順序立てて行えない」「待つことができない」といった行動が現れるといわれます。

そこで神経伝達物質のはたらきを活性化、または後シナプス(情報を受け取る細胞)から情報が漏れ出てしまった状態に蓋をすることで、脳内の情報伝達を増やし、ADHDの症状を改善できると考えられています。

ADHDの治療には、2017年10月時点で

  • コンサータ
  • ストラテラ
  • インチュニブ

の3つの薬が認可されています。この3剤は作用するメカニズムが少しずつ異なりますが、ADHDに現れる、多動性・衝動性・不注意に効果を発揮します。

服用回数

1日1回(朝)

治療開始からコンサータの効果が出るまでの期間

効果があるか否かは3回程度の服用で判断可能

コンサータの効果の持続時間

10〜12時間(夕刻には薬効が消失)

コンサータの主な副作用

  • 食欲低下(30〜50%)、結果としての体重減少
  • 寝付きが悪くなる(1時間程度の入眠の遅れ)
  • チック(まばたきや頭を振るなど、意思に関係なく繰り返される動き)の増悪

インチュニブ

コンサータは、ドーパミンやノルアドレナリンが情報伝達を行う前に再取り込みされることを防ぎ、ドーパミンやノルアドレナリンのはたらきを活性化させることでADHDの症状を改善します。主にドーパミンのはたらきに作用します。

1日1回、朝のみ(遅くとも正午まで)に服用します。午後に服用すると寝付きが悪いなどの不眠の副作用(1%程度)が現れることがあるためです。

医師の指示通りに服用していれば、薬物依存は起こりません。

コンサータは、医師の判断のもと、患者さんの症状や生活パターンを考慮し、休薬日を設けたり、一時中断をしたりすることがあります。これをドラッグホリデイ法といい、コンサータ特有の治療法です。医師と話し合って薬を服用する日を決めてください。

コンサータでは、30〜50%に食欲低下の副作用がみられます。特に薬がよく効いている昼食の時間帯に食欲低下が起きやすく、昼食があまり食べられないことが多いです。その場合は朝食の量を増やす、遅めの夕食や夜食により調整する、などして、栄養を補うようにしてください。また、食欲低下を防ぐために胃炎治療薬を併用することもあります。

寝付きが悪いなどの入眠困難(1時間程度の入眠の遅れ)の副作用が出ることがあります。朝の服用時間を早めると改善することがあります。なお、コンサータによって睡眠の質が低下(途中覚醒、熟眠感のなさ、早朝覚醒など)することはありません。

服用回数

子どもの場合は1日2回(朝・夕)が推奨されている。大人は1日1回でもよい。

治療開始からストラテラの効果が出るまでの期間

1〜2か月

ストラテラの効果の持続時間

24時間

ストラテラの主な副作用(いずれも治療開始時や増量時に起こりやすい)

  • 眠気
  • 気持ち悪い、食欲低下
  • 頭痛

ストラテラもコンサータと同様にドーパミン、アドレナリンの再取り込みを抑制することでドーパミン、アドレナリンを活性化させる薬です。特にノルアドレナリンの活性を促す神経に作用します。

ストラテラは、服用開始から少しずつ量を増やし、3段階を経て適切な服用量(維持量)へと持っていきます。これは一気に維持量を投与すると副作用が強く出るためです。そのため、効果が感じられるまで1〜2か月ほどかかります。

ストラテラには、カプセルと液剤(内用液)の2種類があります。小さな子どもではカプセルや錠剤はまだ上手に飲むことができないことが多いため、まずは液剤から始める方も多くいます。

ストラテラは適切に服用すればコンサータよりも副作用が軽く済みます。主な副作用は、眠気、気持ち悪くなることによる食欲低下、頭痛などです。しかし生活を妨げるほどではなく、2〜3日程度で治まることが多いです。

服用回数

1日1回

服用開始からインチュニブの効果が出るまでの期間

1〜2週間

インチュニブの効果の持続時間

24時間

インチュニブの主な副作用

  • 血圧低下
  • 眠気

コンサータ

インチュニブは2017年5月に発売された新しいADHD治療薬(α2Aアドレナリン受容体作動薬)です。作用のメカニズムもコンサータやストラテラと異なり、情報伝達物質を受け取る側のシナプスを調節することで脳内の情報伝達を増やす作用があるとの仮説が立てられています。

インチュニブは神経伝達物質を増やすのではなく、情報を受け取る側の機能を調節することから非刺激治療薬と呼ばれます。

 インチュニブ(グアンファシン徐放性剤)の成分であるグアンファシンは、降圧剤(血圧を下げる薬)「エスタリック」として、1984年から2005年まで我が国でも使用されていました。血圧を下げる作用は弱いため高血圧治療薬としての適応はなくなったのですが、2009年ころよりADHD治療薬として再開発されました。

インチュニブは新薬のため、現在は原則6歳以上18歳未満の子どもにのみ適用です。ただし、18歳未満に治療を開始した場合は18歳を過ぎても服用を継続することができます。2018年ごろには処方制限は解除される予定です。いずれ手続きが完了するなら、大人でも服用できるようになるでしょう。

インチュニブには血圧を下げる副作用があり、心疾患のある患者さんが服用するには難しい点があります。とくに房室ブロック(第 2 度、第 3 度)がある方は服用できません。

インチュニブはもともと血圧を下げる薬として開発されていたため、血圧低下の副作用があります。健康な子どもの場合は血圧低下が自覚症状として現れることはそれほど多くはありませんが、心疾患を抱えている子どもには注意が必要です。

副作用として低血圧や徐脈(脈が遅くなる)となる場合があります。それらが、頭痛やふらつき、めまい、立ちくらみといった自覚症状となることがあります。ときに、失神の症状が現れることもあるため、失神が起きた場合はすぐに医師に相談してください。

インチュニブを服用すると約半数の方に眠気が現れます。眠気が体のだるさや頭がぼーっとするといった症状として発現します。しかし、朝起きられない、日中眠ってしまうなどの強い症状となることはまれです。

親子が医師を受診している

どの薬にもいえることですが、体質などによって薬にはあう、あわないがあります。そのため、医師と相談しながらどの薬がよいかを決めていきます。それぞれの薬の概要を説明し、担当医のお勧めも伝えます。そのうえで、患者さんや保護者の方と一緒に選ぶスタイルです。

私の患者さんでは、副作用が比較的すぐに消失する、カプセルは苦手という理由からストラテラを選ぶ方が多い印象です。しかしストラテラは副作用が軽いぶん効果もおだやかで、患者さんによっては症状を抑えきれないこともあるため、カプセルが飲めるならコンサータとの併用を勧めることもあります。

現在の第一選択薬はコンサータかストラテラかのいずれかですが、インチュニブも、前述のように処方制限が解除されるなら、第一選択薬のひとつとなるとでしょう。

薬 図

ADHDの薬は、症状が安定してきたら減薬や断薬を実施します。ADHD-RS‐Ⅳという評価法を用いて、どれくらい症状が残っているか確認し、残存する症状が正常域に入っていれば、減薬や断薬の相談をします。

幼少期から治療を行っていれば、おおよそ日常生活での対処法が身についてきた高校生ごろに薬をやめることが多いです。

成人になってからも薬での治療が継続して必要だと判断される場合には、引き続き薬物療法を実施します。

子どもの勉強をみるお父さん

冒頭で述べたように、ADHD治療薬はそれだけでADHDが治る魔法の薬ではありません。薬を飲んでいても、ときに忘れてしまったり、つい衝動的に動いてしまったりすることはあります。

そこで重要な点が2つあります。ひとつは「集中できる環境をつくること」、もうひとつが「ADHDの症状が出ても困らないようにどう対処するかを学ぶこと」です。そのために環境調整、ペアレントトレーニング、ソーシャルスキルトレーニング(SST)があります。

ADHDの患者さんは視界に入ってくるものに敏感で、すぐにそちらに気を取られてしまいがちです。そのような状況をなるべく減らすために、集中しやすい環境をつくることを環境調整といいます。

具体的には、目に入りやすい掲示物を減らす、穏やかで落ち着いた子の隣の席にする、一番前の席にして教師が声をかけやすくするなどが挙げられます。

これは患者さんの保護者の方に対して行うトレーニングです。ADHDの理解を深め、ADHDの子どもに対してどのように接するかなどを学びます。

ADHDの患者さんが日常生活で実際に遭遇するトラブルを回避するために、ロールプレイを通して自己管理能力や対人スキルなどを獲得するトレーニングです。

あいさつの仕方、順番の守り方、メモを取り見返すようにするなどの具体的な行動を、シチュエーションごとに学びます。

仲良しの親子

ADHDは薬だけの治療で治るものではありません。薬で症状を抑えつつ、より快適に日常生活を送れるような対処法を学び、健常な方と同じような社会生活を過ごす工夫が必要です。また、それが十分に可能なはずです。

そのためには、まずはADHDの特性を理解することが大切です。そして自身の強みと弱みを知り、強みは伸ばし、忘れっぽい、長続きしない、余計なことをしゃべってしまうなどの弱い部分は生活の工夫をしたり、他者の手を借りたりしながら補っていくことが重要だといえるでしょう。そこを意識するようにすれば、きちんと社会生活を送ることができます。

ですから、保護者の方も望ましくない行動をただ叱るだけでなく、その子どもの自己肯定感を高め、自信を持てるように接することが大切です。温かく見守り、できたことは小さなことであってもほめるようにしましょう。

そのように自己肯定感を高めれば、不登校、いじめ(加害者にも被害者にもなりうる)、ネット中毒、学業不振などの二次障害を防ぐことにもつながります。

 

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