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慢性膵炎は完治する?食事や生活で気を付けるポイントも解説
膵臓は、胃・腸・肝臓などの臓器とともにおなか(腹腔内)に収まる臓器のひとつです。膵臓は消化酵素やインスリンの分泌といった体の重要な働きを担っています。この膵臓に持続的な炎症があらわれるとお腹(み...
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慢性膵炎は完治する?食事や生活で気を付けるポイントも解説

公開日 2017 年 11 月 25 日 | 更新日 2017 年 11 月 26 日

慢性膵炎は完治する?食事や生活で気を付けるポイントも解説
下瀬川 徹 先生

みやぎ県南中核病院企業団企業長

下瀬川 徹 先生

膵臓は、胃・腸・肝臓などの臓器とともにおなか(腹腔内)に収まる臓器のひとつです。膵臓は消化酵素やインスリンの分泌といった体の重要な働きを担っています。

この膵臓に持続的な炎症があらわれるとお腹(みぞおちや背中あたり)に痛みがあらわれることがあり、その後、病態が進行していくにつれて次第に膵臓の機能が損なわれていきます。こうした疾患は「慢性膵炎」とよばれています。

慢性膵炎は、早期の段階では自覚症状があらわれにくく、診断されるときにはすでに進行した病態であることも少なくありません。慢性膵炎に気付くにはどういった症状に注目すべきでしょうか。また診断や治療、生活習慣の改善指導はどのように行われるのでしょうか。本記事では膵炎に詳しい東北大学大学院医学系研究科・消化器病態学分野 教授 下瀬川徹先生に、慢性膵炎の概要についてお話を伺いました。

慢性膵炎とは

慢性膵炎とは

慢性に経過する、膵臓の炎症

慢性膵炎とは、膵臓で発生する炎症性の慢性疾患です。慢性膵炎を発症し、膵臓の炎症が持続すると、徐々に膵臓の機能が損なわれていきます。

膵臓は「外分泌腺」と「内分泌腺」から成り立っています。それぞれ下記のような役割を担っています。

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外分泌腺……食物を消化する消化酵素(膵酵素)を十二指腸に分泌する

内分泌腺……血糖を調節するホルモン(インスリンなど)を血液中に分泌する

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膵臓の機能

 

炎症によって外分泌腺と内分泌腺の破壊が繰り返されていくと、膵臓の細胞は「線維」へと置き換わっていきます。これを「線維化」といいます。

線維化が進行すると、膵臓の実質(臓器の機能を担う細胞)が減少します。こうして正常に機能する細胞が減少することで、外分泌腺や内分泌腺の機能が損なわれていきます。

膵

 

慢性膵炎の症状

膵臓に慢性的な炎症がおき、内分泌腺と外分泌腺の機能が損なわれていくことから、慢性膵炎ではさまざまな症状があらわれます。実際に慢性膵炎ではどのような症状があらわれるのか、主な症状を解説していきましょう。

炎症による腹痛

慢性膵炎でよくみられる症状として挙げられるのは上腹部痛(じょうふくぶつう:みぞおちの痛み)や背部痛(背中や腰の痛み)です。

膵臓は、胃・腸・肝臓などが収まる、空洞のようなところ(腹腔内)に位置しています。そのなかでも膵臓は腹腔内の背中側にある臓器ですので、膵臓の炎症が起きるとみぞおちから背中側に痛みがあらわれます。

慢性膵炎の腹痛は大量の飲食をしたとき、脂っこいものを食べたときにあらわれることが多いです。痛みだけでなく、不快感や膨満感といった症状としてもあらわれることもあります。

膵実質の線維化による症状

慢性膵炎では「膵実質の線維化」による症状があらわれます。

膵臓の線維化は、外分泌腺や内分泌腺の機能を低下させます。

外分泌腺が線維化すると、消化酵素の分泌が低下し、消化吸収不良が引き起こされます。その結果栄養障害に陥り、体重低下(痩せ)につながります。

一方、内分泌腺が線維化すると、ホルモン分泌が低下します。膵臓にはランゲルハンス島というインスリンを分泌する内分泌細胞の小さな集まり(内分泌腺)があります。膵実質が線維化することでランゲルハンス島などが破壊されてしまうと、血糖値を下げる働きをもつ「インスリン」などのホルモン分泌が不足します。こうしてインスリン分泌が低下すると、血糖値のコントロールが不良となるため、糖尿病の発症につながります。

膵管内圧の上昇による症状

慢性膵炎では「膵管内圧の上昇」による症状もあらわれます。

膵管(すいかん)とは、水分や重炭酸塩とともに膵外分泌腺でつくられる消化酵素を十二指腸に運ぶ管です。

慢性膵炎では、膵内に持続的に炎症が起こることで、膵管の狭窄などが起こります。すると膵液の流出障害が引き起こされ、膵管内圧が上昇します。

こうして膵管内圧が上昇することで、腹部の痛みがあらわれます。また、膵液の流出障害は「膵液分泌不全」を引き起こします。膵液分泌不全は、消化酵素の分泌を滞らせますので消化不良栄養障害につながります。

膵臓

急性憎悪

慢性膵炎は炎症性の疾患であるため、「急性憎悪」が起きれば急性膵炎と同様の症状・経過がみられます。

急性憎悪の場合には、腹部の激しい痛み発熱吐き気などがあらわれます。経過は症状の程度によってさまざまですが、重症化する場合には生死に影響を及ぼす可能性も出てくるため、早期に適切な治療を行う必要があります。

そのほか、進行した慢性膵炎では血液の成分(ヘモグロビン)が減少することによる貧血、消化吸収障害によって脂肪が消化されないことによる脂肪便(しぼうべん:脂肪がたくさん含まれてやや白っぽい色になる便)などがみられます。

こうした症状は慢性膵炎だけにみられるものではありません。また、慢性膵炎では自覚症状があらわれにくいことが多いです。

そのため、患者さんがこのような症状から慢性膵炎の発症に気付くことは難しいといえます。

慢性膵炎の成因による分類 | アルコール性・非アルコール性

アルコール

慢性膵炎は「アルコール性」と「非アルコール性」に大別される

現在の日本の定義では、慢性膵炎は「アルコール性」と「非アルコール性」のふたつに大別されています。

---

  • アルコール性慢性膵炎   ……アルコールの過剰摂取が成因と考えられるもの
  • 非アルコール性慢性膵炎 ……アルコールの過剰摂取以外の要因が成因と考えられるもの

※自己免疫性膵炎・閉塞性膵炎は、現地点では膵臓の慢性炎症として別個に扱われている。

---

このふたつは臨床経過が少し異なります。これまでに行われたさまざまな研究の結果をみてみると、アルコール性慢性膵炎のほうが、症状が激しい傾向にあり、また進行も早いことが示されています。

非アルコール性膵炎にはさらに細かな分類がある

非アルコール性膵炎は、成因によってさらに細かな分類があります。

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  • 特発性
  • 遺伝性
  • 家族性 など

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「自己免疫性膵炎」や「閉塞性膵炎」は、別の疾患と定義されている

慢性膵炎と同じように、膵臓に慢性的な炎症があらわれる疾患として、自己免疫機序が原因と考えられている「自己免疫性膵炎」や、膵管が狭窄・閉塞することで膵臓全体あるいは一部に炎症があらわれる「閉塞性膵炎」があります。

これらは、同じく膵臓に慢性の炎症があらわれる疾患ですが、現在日本では「慢性膵炎」とは定義されず、ほかの慢性炎症として別個に扱われています。

このように自己免疫性膵炎や、閉塞性膵炎が、慢性膵炎とは別の疾患として扱われている理由は「病態の可逆性」にあります。

自己免疫性膵炎や閉塞性膵炎は、治療により病態や病理所見が改善することがあり、そのほかの慢性膵炎とは異なり、可逆性のある疾患(治療により改善するもの)と考えられています。たとえば自己免疫性膵炎はステロイドの投与によって劇的に改善がみられるという特徴があります。こうしたことからこれらのふたつの慢性炎症は、慢性膵炎とは別のものとして扱われます。

ただし、欧米では慢性膵炎の定義が異なり、自己免疫性膵炎や閉塞性膵炎も「慢性膵炎」のひとつとして捉えられています。近年では慢性膵炎の定義をさらに広くダイナミックに捉えていこうという世界的な流れになりつつあります。今後どういった病態を「慢性膵炎」と定義していくべきかについて、引き続き活発な論議が進められていくと予想されます。

▼慢性膵炎の分類について詳しくは記事2『慢性膵炎の診断基準とは? |早期慢性膵炎とはどのような概念か』をご覧ください。

慢性膵炎の経過

 

慢性膵炎の経過

4つの病期に分けて捉える

現在の日本では、上記の図のように慢性膵炎の経過を「潜在期」「代償期」「移行期」「非代償期」の4つに分けて考えています。

この4つの経過の捉え方は、慢性膵炎の症状と治療方針を考えていくうえで役立ちます。

①潜在期

潜在期とは、慢性膵炎の発症前の症状がみられない時期です。

潜在期には持続的な大量飲酒や喫煙などが慢性膵炎発症の危険因子と考えられます。

②代償期

代償期とは、「膵臓の機能が十分に保たれている(代償されている)時期」のことです。

代償期には膵臓の実質は保たれており、まだ厚い線維化はみられません。そのため膵臓本来の機能は保たれている時期です。

一方で、実質が保たれているということは、まだ炎症が起きる部分が残されているということでもあります。そのため代償期には、膵臓全体が腫れる、激しい腹痛を起こすといった「膵炎の急性増悪」がみられます。こうした発作を繰り返すうちにだんだんと膵臓の細胞が壊され、線維化が進んでいきます。

③移行期

移行期とは、代償期から非代償期へと移行していく時期です。

移行期には徐々に膵臓の実質が減少し、膵臓の機能が損なわれていきます。

一方で、膵臓の実質部分は少なくなることから、膵臓の炎症も起こりにくくなります。そのため腹痛発作の頻度は次第に減少していきます。

この時期には、膵石灰化などの膵臓の形態変化があらわれ始めるようになります。

④非代償期

非代償期とは、慢性膵炎が進行した状態で、「膵臓の機能が保たれていない(代償されない)時期」のことです。

非代償期には膵臓のさまざまな機能が損なわれ、外分泌腺、内分泌腺それぞれの機能に障害があらわれます。

たとえば外分泌腺の機能が損なわれることで消化吸収障害や体重減少、脂肪便などがあらわれます。また内分泌腺の機能が損なわれることで膵性糖尿病の発症などがあらわれます。またこの時期には膵石灰化が顕著となり、膵管拡張や膵萎縮などの形態変化の進行もみられるようになります。

一方で、膵臓の実質は少なくなっており、炎症による腹痛発作は減っていきます。

このように、慢性膵炎の患者さんがどの段階にいるのかによって、損なわれる膵臓の機能や、あらわれる症状が異なります。これによって慢性膵炎の治療方針も大きく変わります。

そのため慢性膵炎の治療では、病期を正確に診断することが大切です。

慢性膵炎の診断

慢性膵炎の診断

まずは血液検査や超音波検査などで「慢性膵炎」の可能性を探る

慢性膵炎の診断については、2009年に改訂された慢性膵炎臨床診断基準に従って進めていくことが一般的です。

腹痛発作がある、食事をしたあとに腹部不快感がある、背中のあたりが痛む、吐き気がある、糖尿病を発症している、といった症状がみられる場合には慢性膵炎の可能性を考えることが大切です。

検査では、まず血液生化学検査(血液検査)を行うことが一般的です。

血中におけるアミラーゼ、リパーゼ、トリプシノーゲン、エステラーゼといった膵酵素の値が異常(上昇や低下)を示すことが、慢性膵炎に気付くための手掛かりとなります。血液検査によって、こうした膵酵素の異常を調べ、その変動が症状と密接に関係するかについて明らかにすることが重要です。

その他にも血中のヘモグロビン、総たんぱく、アルブミン、コレステロールの値などを調べることも、慢性膵炎を診断するうえで有用です。

また、体重の変化を確認することも必要です。痩せてきていないか、BMI(Body Mass Index)はどのように変化しているかについても注目し、その変化から膵外分泌機能の障害による栄養状態を推測することも重要です。

さらに診断を行ううえで有用となるのは腹部超音波検査 (US)です。

腹部に超音波を当てることで膵臓が腫れていないか、膵管が拡張していないか、膵石はみあたらないか、などを調べることができます。そのため腹部超音波検査は慢性膵炎のスクリーニングに有効です。

正確な診断には「画像検査」が必要

こうした検査によって慢性膵炎の疑いが強まった場合、さらに正確な診断を行うためには画像検査が必要です。

画像診断では、CT検査、MRI検査 (MRCP)、そしてさらに超音波内視鏡 (EUS)や内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)などを行います。こうした検査によって、本当に慢性膵炎であるのか、あるいは類似疾患であるかを判断していきます。

慢性膵炎と類似の症状があらわれる疾患としては膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)や膵臓がんなどが挙げられます。こうした検査を行うことで類似疾患との鑑別を行うことが大切です。

慢性膵炎を疑う臨床症状や所見がみられるがUSやCTで明らかな画像変化が見られない場合に、「早期慢性膵炎」の可能性を考えることになります。

▼早期慢性膵炎については記事2『慢性膵炎の診断基準とは? |早期慢性膵炎とはどのような概念か』をご覧ください。

慢性膵炎の治療  

代償期と非代償期では、治療方針が異なる

これまでの話のなかでは、慢性膵炎にはアルコール性、特発性、遺伝性などさまざまな成因があることを解説しましたが、慢性膵炎の成因がどのようなものであっても基本的な治療方針は大きく変わりません。

一方で、経過(代償期か、非代償期か)によっては、治療方針が大きく変わります。

代償期の治療

代償期には膵臓の実質が保たれているため、炎症に対する治療が必要になることが多いです。

急性増悪に対しては急性膵炎と同様の治療を行います。急性増悪がない間欠期の腹痛に対しては禁酒と脂肪摂取制限、生活指導を基本としたうえで、経口蛋白分解酵素阻害薬、膵消化酵素薬を中心とした薬物治療を行います。また腹痛発作を起こさせないための予防的な治療が必要になるため、禁酒や脂肪摂取制限を行います。

一方、代償期には膵臓の実質が保たれているため「膵臓の機能を補う治療」は必要ありません。

非代償期

移行期~非代償期では実質が壊されていくことから、低下していく膵臓の機能を補うための治療が必要です。

このように膵臓の働きを支援する治療は「補充療法」とよばれます。補充療法としては、消化酵素の不足には膵消化酵素薬、また内分泌機能の低下にはインスリン製剤の投与などが行われます。

一方、膵実質は減少するため、急性増悪のような激しい炎症は少なくなります。

また、非代償期には膵管の狭窄や、膵石がみられるようになります。膵管の狭窄に対しては内視鏡による膵管ステント(細いチューブ)の膵管内への留置、膵石に対してはこのような内視鏡治療や体外衝撃波結石破砕術(ESWL)を併用する場合があります。

またときには合併症に対する治療も必要です。膵のう胞や胆道狭窄などの合併症がある場合にはのう胞ドレナージ(のう胞内に溜まった膵液を腸管に流す治療法)や胆道ドレナージ(胆汁を腸管内に流れやすくする治療法)などの内視鏡治療、場合によっては手術が必要になります。

膵臓の実質が保たれているかどうかで治療方針が大きく異なるため、代償期と非代償期では治療が異なります。

食事や生活習慣で注意すべきポイントとは?

慢性膵炎の治療では、早期の段階から膵炎の進行を抑えるために「生活指導を行う」ことが重要です。

これまでお話してきましたように、アルコールを飲まないこと(禁酒や断酒)が重要です。タバコ(喫煙)も慢性膵炎の発症と進行促進のリスク因子であることがわかっています。ですから禁酒と禁煙をしっかりと行うことが大切です。

また、食事内容や食習慣への配慮も大切です。脂っこい食べ物は控え、栄養バランスを考えた食事を、規則正しく、きちんとよく噛んで食べることを意識しましょう。また日常生活における飲酒、暴飲暴食、脂肪の取りすぎは腹痛発作の誘因となります。発作を繰り返すと膵実質の破壊と膵線維化を進行させますので、こうした食生活を送らないよう注意が必要です。

また生活習慣については、昼夜が逆転しない規則正しい生活リズムをつくることも大切です。

 

 

引き続き記事2『慢性膵炎の診断基準とは? |早期慢性膵炎とはどのような概念か』では下瀬川先生に、慢性膵炎という疾患概念の捉え方と早期発見の重要性について、近年の動向を交えながら解説いただきます。

 

慢性膵炎 (下瀬川 徹 先生)の連載記事

1982年より消化器内科医師としてキャリアをはじめる。1998年には東北大学消化器内科教授に就任。膵疾患研究の第一人者として、臨床・研究ともに国内外をリードしており、2012年から2014年まで日本膵臓学会理事長、2014年からは日本消化器病学会理事長を務めている。

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