【疾患啓発(スポンサード)】

クリップする
URLを入力して
記事をクリップしましょう
指定された URL のページが見つかりません
S664x430 8c70c60d 5c82 434b 9267 cc58b7c0bcf5
人工呼吸器とは?適応疾患や仕組みについて
 病気の発症などによって呼吸が十分にできなくなってしまったとき、人工的に呼吸を支えてあげる必要が出てきます。そうしたときに活用されるのが「人工呼吸器」です。人工呼吸器という言葉を耳にしたことがあ...
Male consulter resolved
クリップに失敗しました

人工呼吸器とは?適応疾患や仕組みについて

公開日 2018 年 01 月 08 日 | 更新日 2018 年 01 月 11 日

人工呼吸器とは?適応疾患や仕組みについて
川村 一彦 先生

医療法人財団愛慈会 相和病院 理事長・院長

川村 一彦 先生

目次

 

病気の発症などによって呼吸が十分にできなくなってしまったとき、人工的に呼吸を支えてあげる必要が出てきます。そうしたときに活用されるのが「人工呼吸器」です。人工呼吸器という言葉を耳にしたことがあっても、実際にどのようなものか、どういったときに使われるのかについては、なかなか知る機会がないといえるのではないでしょうか。

本記事では医療法人財団愛慈会 相和病院の理事長・院長の川村 一彦先生に人工呼吸器がどのようなものであるか、どういったリスクがあるのかを解説いただきました。

人工呼吸器とは ―どういった目的で使用する?

人工呼吸器は「肺の人工臓器」

人工呼吸器は呼吸を人工的に管理するための医療機器です。たとえば脳血管障害や心筋梗塞を発症することで突然呼吸ができなくなったり、神経難病や慢性閉塞性肺疾患(COPD)によって徐々に呼吸が苦しくなってきた患者さんには、呼吸を人工的に補っていく必要があります。そうした患者さんの呼吸を支え、管理していくための医療機器が人工呼吸器です。

人工呼吸器は、患者さんの呼吸に対して物理的・人為的に介入することで呼吸機能を維持していきます。こうした治療介入によって、患者さんの命を救い、また生活の質の低下を最小限に留めていくことができるようになります。

このように呼吸の代わりとなる機能を果たすことから人工呼吸器は「肺の人工臓器」とも呼ばれています。現代の医療では、腎臓は透析、心臓は心臓移植を行うことで、それぞれの臓器の能力を人工的に代用することが可能になっています。これらと同じように、肺では人工呼吸器を使用することで肺の機能を代用することができます。

人工呼吸器による治療は決して「延命治療」ではない

人工呼吸器による治療は延命治療ではなく、患者さんの呼吸を支える「呼吸器治療」です。

重症の方では人工呼吸器を外すことができない方もいらっしゃいます。そのため、重症の患者さんに対する人工呼吸器治療を「延命治療」と捉える方もいらっしゃるかもしれません。しかし私は、こうした人工呼吸器の使用は「生死が選択できる状態を、あえて延命している」のではなく「命が生き続けられる限りの最期までを見届けるために治療を続けている」もののだと考えています。ですから延命ではなく、命ある患者さんが最後まで生きるうえで必要な「治療」だと考えています。

人工呼吸器の適応疾患

人工呼吸器

呼吸不全になるさまざまな疾患の患者さんに対して使用される

心筋梗塞や脳血管障害などで突然意識がなくなった方、神経難病・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・慢性呼吸不全などを発症した方などで使用されます。たとえば心筋梗塞や脳血管障害などの発症によって突然意識がなくなる方では緊急で人工呼吸器の使用が検討されます。一方、神経難病やCOPDといった疾患では段階的に呼吸が苦しくなってくるため、患者さんの状態や希望に合わせて使用を検討していきます。

人工呼吸器を使用する際のポイント

人工呼吸器を使用するかどうかの判断のポイントは大きく2つあります。

①十分な自発呼吸ができるかどうか

患者さんのなかには、自発呼吸ができない方はもちろん、自発呼吸があっても十分に呼吸ができない方もいらっしゃいます。自発呼吸があっても、息がくるしい、呼吸がつらいといった状態の方は、人工呼吸器の使用を検討していきます。

②患者さんとご家族の方の意思

人工呼吸器を使用するかどうかは「患者さんご本人が呼吸を苦しいと感じるかどうか」で判断されます。また、患者さんご本人の意思が確認できない状態ではご家族の方の意向を確認し、使用するかどうかを判断する場合もあります。患者さんやご家族がどういった生活を望まれているのか、どのような考え方を持たれているのか、金銭面の問題はないかなど、さまざまな観点を踏まえたうえで判断がなされます。

人工呼吸器の種類・換気経路

現在、多く使用されている呼吸管理法として下記の2つが挙げられます。

人工呼吸器の種類・換気経路

侵襲的陽圧換気(IPPV)は下記のような場合に用いられます。

  • 上気道に狭窄や閉塞がみられる方(外傷・炎症・腫瘍・異物など)
  • 意識障害がみられる方
  • 長期間の人工呼吸管理を必要とする方
  • 肺炎や無気肺で気道の吸引や洗浄が頻回に必要となる方
  • 頭頸部の悪性腫瘍(がん)などの手術時

一方、非侵襲的陽圧換気(NPPV)は下記のような症例でよく用いられます。

  • 二酸化炭素が増えている慢性呼吸不全の方
  • COPDの急性増悪
  • 心原性肺水腫

挿管人工呼吸とNPPV 登場の歴史

1950年代陽圧型人工呼吸器の普及以来、人工呼吸には気管挿管や気管切開による侵襲的な陽圧換気法が多く使われてきました。この方法は、気管の中に管を入れたり、のどの一部を切開するため、挿入後は声を出すことが困難になるなど、患者さんへの負担がありました。

1990年代以降、気管挿管をしないマスク型の人工呼吸(NPPV)が次第に一般的に使用されるようになり、それと共に人工呼吸器自体が大きく進歩しました。NPPVが広く使用されるようになり、在宅での人工呼吸がより行いやすくなりました。

人工呼吸器の仕組み ―設定・モード・アラームとは?

人工呼吸器

酸素を「吸う」のではなく「送り込む」

以前までは、陰圧(肺に酸素を吸い込むタイプ)の人工呼吸もありましたが、近年では陽圧(肺に酸素を送り込むタイプ)の人工呼吸器が主流になっています。

本来、ヒトは縮めた肺を広げることによって、肺に酸素を吸い込みます。しかし陽圧の人工呼吸器では外側から圧をかけて酸素を送り込むことで呼吸を行います。このように人工呼吸器で行われる呼吸とヒトの呼吸方法は、その原理が大きく異なります。

人工呼吸器はこうした肺に酸素を送り込む原理で呼吸を管理するため、その圧が強すぎると肺にダメージを与えてしまう可能性があります。そのため人工呼吸器には圧力と酸素の量をコントロールするための機能が備わっています。さきほどもご紹介したように、どれだけ自発呼吸ができるのかは患者さんによって異なりますので、それぞれの患者さんに合わせた人工呼吸が行われるよう、さまざまな設定が備わっています。

人工呼吸器の設定・モード

人工呼吸器の設定には下記のようなものがあります。

---<設定>---

  • トリガ ……患者さんの吸気を検知するための「トリガ感度」機能を備えた設定
  • PEEP ……肺に圧をかけたままにすることで、呼気終末時にも肺胞が完全につぶれないため、肺を楽に膨らますことができ、呼吸仕事量が軽減する設定

---------------

Positive end expiratory pressure:呼気終末陽圧

さらに人工呼吸器には患者さんの呼吸をどのように補助するのかを決める「モード」を選択する必要があります。臨床で使用されるモードとしては下記の2つに分類されます。

---<モード>----

  • CMV:調節換気(VCV,PCVなど)
  • PTV:部分的補助換気(SIMV,CPAP,PSVなど)

------------------

これらのモードは、強制換気(人工呼吸器によって周期的に行われる機械的な換気)と補助呼吸(患者さんの吸気努力によって人工呼吸器から送気が開始される換気)のふたつの換気をどのように使用するかで分けられています。強制換気主体ではVCV、PCV、自発呼吸主体ではCPAP、PSV、強制換気と自発呼吸を組み合わせたものはSIMVと大別されています。

こうした設定やモードは患者さんの自発呼吸の強さや、肺のコンプライアンス(膨らみやすささ)、呼吸のスピードなどによって、より適切なものを選択していきます。また、患者さんの容態が一定でないこともあるため、その場合には容態の変化に合わせてその都度設定を変えていく必要があります。

人工呼吸器のアラーム

患者さんの容態が変化したときや、人工呼吸器自体になにか異常があらわれた場合にはアラームが発せられます。人工呼吸器に関わる医療従事者はアラームの意味を理解し、それぞれ適切な対応をしていく必要があります。

アラームにはさまざまなものがありますが、大きく下記のようなものに分けられます。

---

  • 救命的アラーム
  • 合併症予防アラーム
  • 人工呼吸器本体トラブル時に発生するアラーム

---

人工呼吸器を扱う病院では病室にモニターが設置されており、何か異常があった場合には医療従事者が駆け付けるようになっています。人工呼吸器を扱う際にはこうした設定やモードを適切に設定し、アラームについて正しい対処ができるようにすることが必要です。

人工呼吸器の合併症 人工呼吸器関連肺炎・人工呼吸器関連肺傷害など

人工呼吸器関連肺炎

人工呼吸器を使用している際に生じやすい合併症がいくつかあります。一般的に多く認知されているもののひとつは肺炎(人工呼吸器関連肺炎)でしょう。

人工呼吸器を使用していることで胃液やつばを誤って気道に吸引してしまうことが原因だと考えられています。特に高齢の方で発症しやすく、肺炎を合併してしまうと命に影響を及ぼす場合もありますので注意が必要です。

人工呼吸器関連肺傷害(VALI)

人工呼吸器関連肺傷害とは、人工呼吸器によって下記のような状態にさらされ、肺がダメージを受けることによって生じる合併症です。

  • 肺胞が過度に伸展される
  • 肺胞の虚脱(きょだつ:肺胞の空気がなくなること)と再開通を繰り返す
  • 高濃度酸素への暴露がある

人工呼吸器関連肺傷害は肺だけでなく他の臓器不全をもたらし死亡率を増加させると考えられています。

痰(たん)のつまりによる窒息

人工呼吸器を使用していると痰が溜まりやすくなってしまいます。痰が溜まりすぎてしまうとチューブを閉塞させ、窒息を引き起こすリスクがあります。

機器の故障・異常

人工呼吸器自体の故障や異常によっても、命に危険を及ぼすリスクがあります。たとえば機械の電源が入っていなかった、吸気弁・呼気弁の接続がうまくいっていなかった、アラームに異常があったなど、こうした機器の異常にも注意が必要です。

こうした合併症を引き起こさないためにも、また合併症を発症してしまったときに速やかに適切な対処をするためにも、患者さんをフォローする体制を作ることは非常に大切です。

在宅か病院か ―人工呼吸器を使用する患者さんを受け入れる病院は?

現状、病院で人工呼吸器を使用し始めた場合、そのまま使用し続けるか、使用をやめるかについては患者さんご本人とご家族の方の判断に任せられています。

もし人工呼吸器を使用し続けたいと判断した場合、多くの一般病院ではそのまま入院し続けることは難しく、退院して在宅で人工呼吸器を続けるか、それともほかの療養型の病院へ移るか、という選択をしなくてはなりません。

しかし、人工呼吸器を使用している患者さんを受け入れる医療機関というのは、まだ多くないのが現状です。一方、在宅でみていく場合には痰の吸引や合併症の予防や対応といった人工呼吸器を使用するうえで気を付けなければならない多くのポイントがあることから、医療機関ほどしっかりとしたサポート体制を整えにくいといった難点があります。

こうしたことから、現状はどうしても在宅にするか、転院するかの「分かれ道」を選ばなくてはならず、その判断に悩まれるご家族の方は多くいらっしゃいます。

 

それでは在宅で人工呼吸器を使用する患者さんの看護をするには、どのようなポイントに気を付けなければならないのでしょうか。一方、転院をして医療機関で人工呼吸器治療を続けたいと思った場合には、どのような医療機関であれば患者さんを受け入れてくれるのでしょうか。記事2では人工呼吸器の看護のポイントについて、引き続き川村先生に解説いただきます。

 

医療法人財団愛慈会 相和病院の理事長・院長をつとめる。慢性期の重症な患者さん、救命救急センター病院や一般病院で急性期の治療を終えた患者さんの長期療養が可能となる療養病院をつくるべく、相和病院の経営に力を入れてきた。安心安全な医療提供を目指し、日々患者さんと向き合っている。

関連記事