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前立腺肥大症の検査。流れや方法、診断内容について

前立腺肥大症の検査。流れや方法、診断内容について
小林 一樹 先生

国家公務員共済組合連合会 横須賀共済病院 診療部長・泌尿器科部長

小林 一樹 先生

前立腺肥大症の診断は問診と複数の検査によって行われます。排尿に関する症状は人によって感じ方が異なることもあるため、問診ではI-PSSと呼ばれるテストを行い排尿の状況を数値化します。検査では、まず排尿の流れる速度を測定したり、排尿後膀胱に残った残尿量を測定したりして、尿路症状の有無を確認します。尿路症状があると判断された場合には、超音波を用いて前立腺のサイズや尿路を障害しているかどうかを可視的に判断します。

前立腺肥大症には症状の類似した疾患として前立腺がんが挙げられます。これらの鑑別にはさまざまな検査が用いられます。代表的な検査方法としてあげられるのが「PSA検査」と「直腸診」です。

今回は前立腺肥大症の検査方法と診断について横須賀共済病院 泌尿器科部長 小林一樹先生にお話を伺いました。

前立腺肥大症の検査方法

診療

検査の流れ

前立腺肥大症が疑われた場合、問診といくつかの検査が行われます。ここではそれぞれの検査についてご説明いたします。

<診断のために行う検査>

  • 国際前立腺症状スコア(I-PSS)による問診
  • 尿流測定
  • 残尿測定

<肥大の程度を確認するために行う検査>

  • 超音波検査

<前立腺がんとの鑑別のために行う検査>

  • PSA検査
  • 直腸診

まずは問診と2つの検査で診断

国際前立腺症状スコア(I-PSS)による問診

排尿に関する症状は感じ方も人それぞれです。少しの尿路症状でも強く自覚する方もいれば、強い尿路症状があっても気が付かない方もいます。そのため患者さんの訴えを目安として数値化する意味で、米国泌尿器科学会で制作された国際前立腺症状スコア(I-PSS)が用いられます。横須賀共済病院ではおおよその目安として、この検査で7点以上の患者さんを対象に治療を行っています。

I-PSSスコアの判定基準

<I-PSSスコア判定の基準>

  • 0〜8点:軽症
  • 9〜20点:中等症
  • 20点以上:重症

I-PSSは尿路症状の有無とその程度を測るために有効な検査ですが、この結果だけで前立腺肥大症と断定することはできません。なぜなら排尿には前立腺肥大症以外にも心理的な要素や、食事など環境要素などさまざまな要素が関係しているからです。この検査をあくまで目安として、その他の検査結果と合わせて診断を検討します。

排尿の勢いを調べる尿流測定

前立腺肥大症による尿路症状では、排尿の勢いが著しく低下することがあります。そこで診断のために排尿の勢いを測定する尿流測定を行います。尿路測定では1秒間にどのくらい排尿されているかを測定します。健常な成人であれば通常1秒間に20ml以上の排尿が見込まれます。この検査で10mlを超えない場合、なんらかの尿路障害が疑われます。

尿流測定の検査方法は簡単です。専用のトイレでいつも通り用を足していただくだけで、自動的に測定することができます。

残尿測定

また前立腺肥大症による尿路障害では十分な排尿が行えなくなることで、膀胱内に必要以上に尿が残ってしまうことがあります。そのため排尿直後の膀胱内にどの程度尿が残っているかを調べるため、残尿測定も行います。

残尿測定は排尿後の残尿測定専用超音波装置による検査で行います。機器を30秒ほど腹部に当てるだけで計測が可能です。健常な方であればおよそ50〜100mlの残尿量が有意であるといわれていますが、尿路障害のある方の場合、残尿量が100mlを超えてしまいます。このような結果が出た場合には、腹部の超音波検査を行い、さらに詳しい検査をします。

どのくらい肥大しているかを調べる超音波検査

検査

次に実際に前立腺がどの程度肥大しているか、肥大した前立腺がどのように尿路を阻害しているかを確認するため、超音波検査を行います。このとき行う検査を「経腹超音波検査」といいます。

前立腺の大きさは健常な方であればおよそ10cc程度でくるみ大といわれていますが、前立腺肥大症の方の場合20〜100ccと開きがあります。実際に手術などの治療が必要になる方は30cc以上の方がほとんどです。また前立腺肥大症は、前立腺の大きさによって明確な診断の基準があるわけではありません。いくら肥大していても、それが排尿になんの影響も示さない場合には前立腺肥大症と診断することはできないからです。

前立腺肥大の画像
エコーで見る前立腺肥大症 ご提供:小林先生

前立腺の経腹超音波検査では、「プローブ」という超音波探子を下腹部に当て前立腺の形状や大きさなどを診ます。検査に痛みはなく、検査時間も5分程度です。

この検査結果をみて、尿路症状に前立腺肥大が大きく関わっていると判断された時点でおおよそ前立腺肥大症という診断がつきます。

前立腺がんとの鑑別のために

記事2『尿が出にくくなる?前立腺肥大症の症状』でも申し上げましたように、前立腺肥大症と症状、原因、好発年齢が一致した疾患として前立腺がんが挙げられます。前立腺がんは前立腺肥大症とは異なり、悪性疾患であるため他の臓器への転移をもたらす危険性があり確実な鑑別が必要です。前立腺がんとの鑑別のためにさまざまな検査が行われますが、特に代表的なものが「PSA検査」と「直腸診」です。

前立腺がんのスクリーニング検査、PSA(前立腺特異抗原)検査とは?

PSA検査は、血液検査の一種で血液中のPSA(前立腺特異抗原)を測定する検査です。PSAとは精液内のタンパク質の一種であり、血液中でのこの濃度が高くなると前立腺がんの恐れがあるといわれています。

しかしPSAの数値は前立腺への一時的な刺激や炎症、あるいは鑑別すべき前立腺肥大症によっても上昇することがあり、この数値だけでは確実な鑑別はできません。そのため、併せて直腸診など別の検査も行います。

泌尿器科医による触診「直腸診」とは?

前立腺は肛門から指を挿入することによって大きさ、硬さを確かめることができます。泌尿器科医の行う前立腺の触診のことを「直腸診」といいます。前立腺がんの場合、前立腺が硬く腫れ上がるため触診で鑑別することができます。

50歳を過ぎたら年に一回はPSA検査を

小林一樹先生

PSA検査は前立腺肥大症の有無にかかわらず、前立腺がんのスクリーニング検査として50歳を過ぎたら年に1回受診することが推奨されています。尿路症状があり検査を行った場合で、最初は前立腺肥大症と診断された方でも、年月が経過することで前立腺がんが発症することがありますので、一度の検査で安心せず経過的な観察が必要です。