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前立腺肥大症の手術方法。メリット・デメリットについて

前立腺肥大症の手術方法。メリット・デメリットについて
小林 一樹 先生

国家公務員共済組合連合会 横須賀共済病院 診療部長・泌尿器科部長

小林 一樹 先生

目次
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前立腺肥大症の治療の選択肢には薬物治療と手術治療があります。なかでも手術治療は尿路症状を大きく改善する治療方法として有効です。

手術治療にはいくつか手段がありますが、代表的なのは「経尿道的前立腺切除術(TUR-P: Transurethral Resection of Prostate)」「ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP: Holmiumu Laser Enucleation of Prostate)」「光選択的レーザー前立腺蒸散術(PVP: photoselective vaporization of the Prostate )」の3つです。経尿道的前立腺切除術は内視鏡を用いて前立腺を切除する手術で、20年来スタンダードな治療方法です。ホルミウムレーザー前立腺核出術は日本が最も多く行っている治療方法で、レーザーを用いて前立腺をくりにくようにして尿道を確保します。

光選択的レーザー前立腺蒸散術は2011年に保険適用となった比較的新しい手術方法です。レーザーで前立腺を蒸散させ、尿道を確保するため、他の手術よりも低侵襲に治療を行うことができます。

今回は前立腺肥大症手術方法について横須賀共済病院 泌尿器科部長 小林一樹先生にお話を伺いました。

前立腺肥大症の治療方法は?

薬の服用、あるいは手術で治療

前立腺肥大症の治療には「薬物治療」と「手術治療」があります。ここではより確実に尿路症状を取り除く手術治療について詳しくご説明します。

薬物治療については記事4『薬を使った前立腺肥大症の治療方法』をご覧ください。

手術治療

手術

手術治療にもさまざまな種類がある

前立腺肥大症の手術治療には方法が複数あります。今回はその中でも代表的な3つの治療方法についてご説明します。

<主な前立腺肥大症の手術方法>

  • 経尿道的前立腺切除術

(TUR-P: Transurethral Resection of Prostate)

  • ホルミウムレーザー前立腺核出術

(HoLEP: Holmiumu Laser Enucleation of Prostate)

  • 光選択的レーザー前立腺蒸散術

(PVP: photoselective vaporization of the Prostate)

経尿道的前立腺切除術(TUR-P: Transurethral Resection of Prostate)

2017年現在、20年来スタンダードな手術方法として行われているのがこの経尿道的前立腺切除術(TUR-P: Transurethral Resection of Prostate)です。

内視鏡を用いて肥大化した前立腺を切除する

経尿道的前立腺切除術では尿道から内視鏡を挿入し、肥大化した前立腺を電気メスで削り取ります。このとき、切除を数回に小分けにして行うことによって、尿路を阻害している前立腺を確実に切除します。経尿道的前立腺切除術は最も実績のある治療方法ですが、やや出血が多く、3~6日間程度の尿道カテーテルが必要となります。

ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP: Holmiumu Laser Enucleation of Prostate)

2017年現在、日本で次に代表的な治療方法がホルミウムレーザー前立腺核出術、通称HoLEP(ホーレップ)です。HoLEPは日本で広く行われている治療方法ですが、結石を治療する装置と同じ装置で治療を行うことができるため、幅広く普及しました。

レーザーを使って前立腺をくり抜く手術

HoLEPも経尿道的前立腺切除術と同様に尿道から内視鏡を挿入し治療を行います。レーザーを用いて肥大化した前立腺をくり抜くように切り取るところが特徴的です。くり抜いた前立腺は膀胱のなかで分断し、細かくしてから吸引し、体外に排出します。

経尿道的前立腺切除術より低侵襲

HoLEPはレーザーを用いて前立腺を切除するため、経尿道的前立腺切除術と比較すると出血が少なく低侵襲であるといえます。また尿路を阻害している前立腺をくり抜くので根治性も高いといわれています。

合併症を起こす可能性も

その一方でHoLEPは他の治療と比較すると習熟を必要とする手技があり、合併症として尿失禁を起こすことがあるというデメリットがあります。そのため医師によって治療成績にばらつきがあります。

低侵襲で合併症の少ない光選択的レーザー前立腺蒸散術(PVP: photoselective vaporization of the Prostate )とは?

小林一樹先生

そこで近年より低侵襲で合併症の少ない治療として注目されているのが光選択的レーザー前立腺蒸散術です。この治療はアメリカではすでにスタンダードな治療方法として認知されています。日本では「PVP治療」、あるいは装置の色が緑であることから「グリーンレーザー治療」とも呼ばれています。

光選択的レーザー前立腺蒸散術
PVP治療 ご提供:小林先生

PVP治療では経尿道的前立腺切除術で用いられる内視鏡よりも細いカテーテル*を尿道から挿入し、そこから高出力レーザーを照射することによって肥大化した前立腺を蒸散させます。蒸散した表面は数ヶ月で上皮化*してきます。レーザーは施術者の目に入ると失明などのおそれがあるため、術者は専用のサングラスをかけて手術を行います。

グリーンレーザーの手術風景
グリーンレーザー使用中のお写真 ご提供:小林先生

カテーテル……医療用のチューブ。対英期の輩出や薬剤の注入に用いられる

上皮化……削れた皮膚や粘膜が治癒し、再生すること

出血が多い場合、経尿道的前立腺切除術に切り替えることも

PVP治療は従来の手術よりも出血量が少ないとされていますが、肥大化した前立腺の血管の位置によっては出血を起こすこともあります。出血を起こすとPVP治療用の内視鏡では細く水の流れが悪くて見えないこともあります。そのため、ごくまれではありますが、術中に出血が生じた場合には太い内視鏡を挿入して経尿道的前立腺切除術に途中で切り替えることもあります。

PVP治療後注意することは?

刺激に注意

PVP治療はレーザーで肥大した前立腺組織を焼き切るため、施術後は皮膚の損傷を引き起こしています。そのため少しの刺激でもレーザーを照射部から出血しやすくなり、その結果血尿などが出てしまうことがあります。

PVP治療後は上皮化する数ヶ月の間、下記のような行動を控えるのがよいでしょう。

<PVP治療後控えるべきこと>

  • お酒・カフェインなど刺激物の摂取
  • 自転車に乗るなど、外的な刺激の強い行動

PVP治療のメリットは?

入院

低侵襲で合併症が少ない

PVP治療の一番のメリットは低侵襲であるということです。レーザーによって前立腺を凝固し、尿道を確保していきます。レーザーによる切除は通常の内視鏡による切除と比較すると止血しやすく出血が少ないため、痛みも少なく術後の回復もそれだけ早いのが特徴です。

また一時的な尿閉や血尿、発熱を伴うことはありますが、他の手術と比較して尿失禁などの合併症が少なく、出血もほとんどないため輸血の必要もありません。手術の難易度もHoLEPと比較すると容易で、最初から高水準の治療成績をキープすることが可能です。

入院期間が短い

そのため入院期間も従来の手術治療より短くて済みます。前述の通り従来の経尿道的前立腺切除術の場合には入院期間がおよそ7日間前後、そのうち術後の尿道への管の挿入期間は3〜6日間というのが一般的です。しかしPVP治療の場合、入院期間は平均して4泊5日〜5泊6日ほどで、そのうち術後の尿道への管の挿入期間はわずか2日程度です。

PVP治療のデメリットは?

長期成績はこれから

PVP治療は前立腺肥大症による尿路症状を低侵襲手術により改善することができる治療方法です。しかし日本で保険適用となったのは2011年であり、比較的新しい治療であるといえます。そのため長期的な成績についてはこれから明らかになっていくことでしょう。

一部のデータによれば、PVP治療は他の手術治療と比較して尿路症状の再発率がやや高いともいわれています。しかし前立腺肥大症は良性の疾患であるため、万一、再度尿路症状が生じた場合に再度手術治療を行うこともできます。また再発時の症状の重さによっては、薬物治療によって再手術を行わずにコントロールしていくことも可能です。

逆行性射精になる危険性

前立腺肥大症の手術では尿道を確保するために前立腺を削ります。そのため従来射精時に閉じるはずの膀胱頚部が、射精時に閉じなくなってしまい、精液が逆流する「逆行性射精」を合併してしまうことがあります。

逆行性射精は全く精液が出なくなってしまうわけではありません。しかし、放出される精液の量が少なくなるため、自然妊娠につながりにくくなります。そのため前立腺肥大症の手術はこれからお子さんを作りたいと考えている方には勧めません。

小林一樹先生

前立腺肥大症の手術治療はどんな人に行う?

前立腺肥大の症状が強い患者さんや希望した患者さんに行う

記事2『尿が出にくくなる?前立腺肥大症の症状』でお話しましたように、前立腺肥大症には排尿に関するさまざまな症状があります。加えて進行すると重篤な合併症を招くこともあります。しかし重篤な合併症が起きる前の段階で薬物治療などを行えば、多少尿は出にくくても通常通りに生活を送れる場合もあるため、手術治療は全員に行われるわけではありません。主に手術治療は下記のような患者さんに行われます。

<手術治療を行う患者さん>

  • 前立腺肥大の症状が強い場合
  • 薬を服用しても思うように効果が得られなかった場合
  • 本人が治療を望む場合

記事4『薬を使った前立腺肥大症の治療方法』でも申し上げましたように前立腺肥大症の患者さんの約80%はまず薬物療法を選択します。薬物療法で症状が緩和される方の場合には引き続き薬を服用していただくことで様子をみます。しかし服用しても効果がなかったり、副作用を起こしたりと薬が合わない患者さんや、継続的に薬を飲みたくない患者さんには、手術治療を勧めます。

また医師も原則として患者さんの希望に応じますが、検査結果をみて必要があればより治療成績の高い手術治療を勧めることがあります。

終わりに

小林一樹先生

前立腺肥大症の手術治療はQOLの治療である

前立腺肥大症の手術は重篤な合併症のある患者さんを除き、基本的にはQOL(Quality of life=生活の質)を向上させるための治療です。現在すでに尿路症状がある方で前立腺のサイズが従来のサイズの倍以上(30cc程度)ある方の場合は、手術治療によって大きく症状が改善する可能性があります。一方で、前立腺のサイズはそれほど肥大していないにも関わらず尿路症状のある方の場合には、手術治療を行ってもそこまで症状が改善しないこともあります。医師と相談し、ご自身にあった治療を選択していくことが大切です。