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ADHDは治療すると治る?ストラテラやコンサータなどの薬の治療は必要?
集中できない、席を離れてしまう、忘れ物が多いなどの多動性・衝動性・不注意の症状が現れるADHD。ADHDは幼少時から症状が現れ、学校生活や仕事に支障をきたしているケースもあります。ADHDの治療...
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ADHDは治療すると治る?ストラテラやコンサータなどの薬の治療は必要?

公開日 2017 年 12 月 12 日 | 更新日 2017 年 12 月 15 日

ADHDは治療すると治る?ストラテラやコンサータなどの薬の治療は必要?
山下 裕史朗 先生

久留米大学医学部小児科学講座主任教授

山下 裕史朗 先生

目次

集中できない、席を離れてしまう、忘れ物が多いなどの多動性・衝動性・不注意の症状が現れるADHD。ADHDは幼少時から症状が現れ、学校生活や仕事に支障をきたしているケースもあります。

ADHDの治療は大きく環境調整・行動療法・薬物治療がありますが、それらの治療によって治るものなのでしょうか。各治療法や薬の特徴などについて、ADHDを専門に診療・研究する久留米大学医学部小児科学講座 山下裕史朗教授にうかがいました。

ADHDは治療で根本的に治る発達障害ではない

ADHD(注意欠如多動症/注意欠如多動性障害)は、年齢に対して多動・衝動性、不注意が多くみられる発達障害のひとつです。多くの場合、子どものころから「集中できない」「そわそわする」「忘れ物が多い」などの症状があり、友達関係や学習・仕事などに支障をきたしてしまいます。

ADHDの症状を抱えるお子さんや保護者の方は、ADHDは治療すれば治るのか、が気になることだと思います。結論からいえば、ADHDは治療で完全に症状が消えて治ることはありません。治療を行ってもADHDの特性は残ってしまいます。

しかし、後述する治療を行えば、ADHDの症状は目立たなくなりますし、一般の方と同じような日常生活を送れるようになります。

ADHDの治療―環境調整、SSTやペアレントトレーニング、薬物療法

ADHDの治療は大きく

  • 環境調整(生活環境を整える治療)
  • 行動療法(SST、ペアレントトレーニングなど)
  • 薬物療法

にわけられます。

ADHDの重症度はDSM-5の診断基準により判断しますが、程度が中等症以上と診断された場合に治療を開始します(軽症であれば、環境調整にとどめることもあります)。

基本的には環境調整と行動療法からスタートし、それでも症状の改善がみられない場合に薬物療法を併用しながら治療を進めます。

 

ADHDの各治療法の詳細は以下をご覧ください。

ADHDの治療までの流れ

子どもを診察する医者

さまざまなサイトでセルフチェックが公開されていますが、それでテストするといくつかの症状でADHDにあてはまる方も少なくないでしょう。実際の医療現場では入念な聞き取り(問診)を行い、一定の評価基準にもとづき、医学的な見地からADHDであるか否かを診断します。

ADHDの治療実施までのプロセスは以下のとおりです。

  • 本人や周囲への聞き取り
  • ADHDの評価と診断 
  • 治療の開始

①患者さんや家族などの周囲の方への聞き取り(問診)

<必要なもの>★はあると好ましいもの

  • (事前配布されていれば)回答済みの質問票
  • 通知表★
  • 先生との連絡帳★
  • 授業でのノート★
  • 母子健康手帳★
  • 育児日記
  • 幼少時のビデオ(ホームビデオなど)

DSM-5の診断基準にあてはまるかどうかを見極めるには、本人や家族、学校の先生、成人であれば職場の上司など周囲の方への聞き取りが非常に大切です。

臨床現場では、事前に患者さんの関係者に質問票を配布し、回答してもらいます。そして質問票から関係者の多くの方がその患者さんに対し、同様の傾向がみられると感じているとわかれば、ADHDの傾向があると判断されます。

また、質問票のほかにも幼少時の行動や状態が記録されているもの(成績表、連絡帳、育児日記、ビデオなど)があれば、その記録を参考にしながら幼少時からADHDの症状があったか否かの判断をします。

しかし、実際にADHDと確定診断をするには、もうひとつ大切なポイントがあります。ADHDの症状によって日常生活で困っているかということです。

ADHD傾向があっても生活に支障がなければADHDと診断されない

ADHDは、不注意や多動・衝動の症状のほかに、その症状があることによって「日常生活に支障をきたしている状態であるか」が重要です。実際にADHDの傾向があっても、本人が日常生活において学業や仕事などに不便を感じていなければADHDであるとは診断されません。

②ADHDの評価と診断―DSM-5を使用

ADHDで主に使用される診断基準は、アメリカ精神医学会が作成したDSM-5という基準です。①で聞き取りをした内容がこの診断基準を満たすかどうかで、ADHDを診断します。

ちまたに存在するセルフチェックもDSM-5などを基準につくられているものがあります。これらは自分にADHDの傾向があるかの判断材料としては有用ですが、仮にセルフチェックで多くがあてはまるからといってすべての方がADHDと診断されるわけではありません。

 

ADHD診断で使用される「子どもの日常生活チェックリスト(QCD)

出典:日本イーライリリー株式会社「親と子のためのADHD.co.jp」

DSM-5記載のADHDの診断基準

DSM-5に記載されている診断基準は次のとおりです。


A1:以下の不注意症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6ヶ月以上にわたって持続している。


a.細やかな注意ができず、ケアレスミスをしやすい。
b.注意を持続することが困難。
c.上の空や注意散漫で、話をきちんと聞けないように見える。
d.指示に従えず、宿題などの課題が果たせない。
e.課題や活動を整理することができない。
f.精神的努力の持続が必要な課題を嫌う。
g.課題や活動に必要なものを忘れがちである。
h.外部からの刺激で注意散漫となりやすい。
i.日々の活動を忘れがちである。

A2:以下の多動性/衝動性の症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6ヶ月以上にわたって持続している。


a.着席中に、手足をもじもじしたり、そわそわした動きをする。
b.着席が期待されている場面で離席する。
c.不適切な状況で走り回ったりよじ登ったりする。
d.静かに遊んだり余暇を過ごすことができない。
e.衝動に駆られて突き動かされるような感じがして、じっとしていることができない。
f.しゃべりすぎる。
g.質問が終わる前にうっかり答え始める。
h.順番待ちが苦手である。
i.他の人の邪魔をしたり、割り込んだりする。

B:不注意、多動性/衝動性の症状のいくつかは12歳までに存在していた。
C:不注意、多動性/衝動性の症状のいくつかは2つ以上の環境(家庭・学校・職場・社交場面など)で存在している。
D:症状が社会・学業・職業機能を損ねている明らかな証拠がある。
E:統合失調症や他の精神障害の経過で生じたのではなく、それらで説明することもできない。

ADHDの検査と診断についての詳細はこちら

③環境調整や薬によるADHD治療の開始    

診断基準にもとづいてADHDと診断され、かつ症状が日常生活に支障をきたす中等症以上の場合は、治療を実施します。軽症の場合は環境調整にとどめることもあります。

治療する場合、

  1. 環境調整(生活環境を整える治療)
  2. 患者さんや親御さんの行動を変える治療(SST、ペアレントトレーニング)
  3. 薬による治療(①②で改善しない場合)

の順に治療を進めます。

ADHD治療はまず環境調整から

ADHD治療を開始する際は、まず環境調整から行います。この環境調整により、ずいぶんと症状が軽減される患者さんも多いです。

環境調整と並行して、行動療法も行います。行動療法では、ADHDの症状による対人トラブルなどを回避するために対処法を学ぶSST(ソーシャルスキルトレーニング)、ADHDのお子さんに対する保護者の方や先生の対応を学ぶペアレントトレーニングがあります。

環境調整と行動療法で十分に改善しない場合に限り、薬物療法を実施します。薬物療法だけでADHDが改善するというわけではなく、あくまで環境調整と行動療法を行ったうえでの補助的な役割として、薬を利用することになります。

次章では、ADHD治療の実際について説明します。

環境調整―より集中でき、物事に取り組める環境をつくる

勉強する子ども

ADHDの治療ではじめに行う治療が環境調整です。環境調整とは、患者さんにとってADHDの生じやすい環境を避け、より物事に集中できる、学習や仕事についていけなくなった際にもサポートしてくれる人のいる環境をつくることを指します。

以下の取り組みが環境調整の一例です。

  • 掲示物を最小限にする
  • 先生の一番前の座席にする
  • 周囲にサポートをしてくれる人を配置する
  • その都度ルールやすることを確認する

行動を変える治療① - SST(ソーシャルスキルトレーニング)

SSTとは、うまく集団行動や対人関係を構築するために必要なこと(あいさつ、トラブルが生じた際の対処、相手の思考や感情を理解することなど)がなぜ必要かを学び、訓練するものです。これらのスキルは通常は周囲の行動を観察したり周囲の大人から教えてもらったりすることで後天的に獲得していくものですが、ADHDの患者さんはどうしても先に感情や衝動が出てしまいます。そのせいで集団や対人関係で困難を覚える方が多くいらっしゃいます。

そこで支援学級や療育センターなどで集中的にソーシャルスキルを学ぶ訓練を行います。

SSTは、まず、小グループでソーシャルスキルを獲得することのメリットや、獲得しないとどんなトラブルが起きるのかを教える、次に実際にあいさつなどを目の前でやってみて模倣・反復させる、そして実際に実行しその内容をフィードバックし、徐々に日常場面で定着させていく、といった手順で進めていきます。

SSTはADHDだけでなく、他の発達障害のトレーニングにも用いられます。

行動を変える治療② -ペアレントトレーニング―子どもが好ましくない行動をした際の親の対応を学ぶ

ペアレントトレーニングとは、患者さんがADHDの症状により好ましくない行動を取った際、保護者の方や先生がどういう対応をするのが適切かを学ぶものです。このトレーニングを受ける対象は、患者さんでなく、患者さんの周囲にいる保護者の方や先生などである点が特徴です。

保護者の方が適切な対応をとることで、患者さんの不適切な行動は徐々に減っていくことがわかっています。

具体的には

・よいところに注目し褒める

・好ましくない行動を取った際に注目しない、反復するときはタイムアウト

などの方法を身につけます。

ペアレントトレーニングは、特に子どものADHDに有効です。また、ADHDなどの発達障害の有無に関係なくペアレントトレーニングはとても価値が高いです。これは「子どもをどう健やかに育てていくか」のスキルであり、保護者の方が身につけるべきものであるといえるでしょう。

薬によるADHD治療―環境調整、SSTで奏功しない場合の次の選択肢

薬を飲む子ども

環境調整やSSTを行ってもなかなかADHD症状による生活の支障が改善しない場合は、薬による治療を実施します。

ADHDの治療に用いる薬剤には、

・コンサータ

・ストラテラ

・インチュニブ

の3種類があります。いずれも、症状に対する薬の効果は同じです。

コンサータ:薬の持続時間はやや短時間(1日1回服用)

服用開始からコンサータの効果が出るまでの期間

1週間弱

コンサータの効果の持続時間

10〜12時間

コンサータの主な副作用

  • 食欲低下
  • 吐き気
  • 腹痛
  • 不眠

コンサータは1日1回(朝)の服用で10〜12時間効果が持続する薬です。そのため朝、朝食後に服用して日中の症状をカバーします。てんかんやチックを持つ患者さんはコンサータの服用によりてんかんやチックの症状が強く出ることがあるため使用を控えます。

ストラテラ:薬の持続時間は短時間(1日2回服用)

服用開始からストラテラの効果が出るまでの期間

1〜2か月

ストラテラの効果の持続時間

24時間(朝・夕2回の服用)

ストラテラの主な副作用

  • 食欲低下
  • 吐き気
  • 腹痛
  • 眠気

ストラテラは、1日2回(朝・夕)の服用が必要です。1日2回の服用により、ほぼ1日(24時間)効果が持続します。コンサータと比べ、副作用の程度が低いといわれます。

インチュニブ:薬の持続時間は長く18歳未満のみ適用の新薬(2017年5月適用)

服用開始からインチュニブの効果が出るまでの期間

1〜2週間

インチュニブの効果の持続時間

24時間

インチュニブの主な副作用

  • 血圧低下
  • 眠気

インチュニブは2017年5月から保険適用となったADHDの新しい薬です。コンサータとストラテラは子ども・大人の両方に使用できますが、インチュニブは18歳未満の子どもにのみ適用になっています(2017年現在)。

インチュニブは1日1回の服用で、24時間効果が持続します。コンサータよりも長時間効き、ストラテラより少ない服用回数であることから、薬を飲むことを忘れがちなADHDの患者さんにもやさしい薬であるといえるでしょう。

ADHDの薬物治療についての詳細はこちら

ADHD

しばらく服用してみて、薬があわない場合は別の薬に変更することがあります。また、並行して行う環境調整やSSTなどの行動療法のやり方を変えることで調節することもあります。

ADHDの薬は、それさえ飲めばすべての症状が解決するわけではありません。あくまで、環境調整や行動療法を行ったうえでの補助的な役割であり、環境調整と行動療法は継続して行う必要があります。

ADHDの治療をするうえでのポイント      

患者さん自身のADHDの特性をしっかりと理解する

ADHDの症状は多動性・衝動性・不注意の3点ですが、患者さんによりどの症状が出やすいか、どのような場面で症状が出るのかは少しずつ異なります。そのため、ADHD全般の特徴だけでなく、その患者さんのADHDの特性をしっかりと自身や周囲の方が理解することが一番大切です。

また、ADHD以外にも自閉症やLD(学習障害)、運動(特に手先)の発達の遅れなどが併存している患者さんもいます。こうした併存症があると、ADHDの症状の出方がまた変わってくるため、その患者さんならではの特性の理解がますます重要になります。

特性の理解を深めることで、周囲がより適切なフォローをするために役立ちますし、余計な不安を軽減することにも一役買います。

患者さんができそうな生活の工夫を伝える

ADHDの症状は、治療によって完全に消失するわけではありません。あくまでも治療によって症状を目立たなくし、日常生活を不便なく送れるようにすることが目的です。

そのため、保護者の方や学校の先生などは、ADHDの症状をカバーできる生活の工夫を教えることも大切です。

たとえば、いわれたことや約束には必ずメモを取る、自分が忘れやすいことを周囲に伝え、サポートをお願いするなどです。そのような生活の工夫により、ADHDであっても通常と同じように生活され、就労されている方もたくさんいます。

患者さんができないことを注意する・叱ることよりも、どうしたらできるようになるのかという方法を併せて伝えることを意識していただければと思います。

ADHDの子どものための医療支援と社会支援の連携―くるめSTP

私が理事を勤めるNPO法人くるめSTPでは、ADHDの子どものための取り組み(STP/サマートリートメントプログラム)を実施しています。

STPはADHDの子どもの学校適応力を育成するため、SSTなどを用いながら、夏休みの期間に各種トレーニングや指導を行っています。また、同時に保護者の方に向けてのペアレントトレーニングを実施しています。

出典:くるめSTP

ADHDは上手に付き合えば日常生活を送れる!まずは専門家に相談を

山下裕史朗教授

繰り返しお伝えするように、ADHDは治療を行い、ADHDの症状によって起こりうるトラブルを回避する方法を学べば日常生活を送ることが可能な発達障害です。近年では疾患の啓発が進んだことからADHDの知名度は上がっていますが、まだADHDの患者さんが快適に過ごせる環境とはいい切れません。

もし自分や家族がADHDかなと感じ、実際に日常生活で困っていれば、まずは小児科や児童精神科など、発達障害をみている専門家のもとを受診してみましょう。いきなり、病院はハードルが高いと感じられるのであれば、学校の先生や各自治体の福祉センター、教育センターなどに相談する選択肢もあります。

そしてADHDと実際に診断された場合は、周囲の理解と協力が不可欠です。患者さん自身の特性をよく理解して、適切なサポートができるよう心がけてくださればと思います。

 

小児神経学、特に注意欠如多動症(ADHD)やレット症候群等の発達障害を専門とし、長年にわたって臨床研究や患者支援を行っている。2003年に米国NY州立大学バファロー校で学んだADHD児への包括的治療プログラムであるSummer Treatment Program (STP)を北米以外で初めて日本に導入し、久留米市で13年間実践してきた。STP卒業生は300名を超えた。またレット症候群の基礎的・臨床的研究にも力を注いでおり、九州一円から患者さんが集まっている。

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