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消化器がんの治療方法。症状緩和の化学療法とそのメリット

消化器がんの治療方法。症状緩和の化学療法とそのメリット
曽我部 進 先生

KKR札幌医療センター 消化器・腫瘍内科医長、外来化学療法室長

曽我部 進 先生

目次
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消化器がんにおいて、手術によりがんを摘出することが難しく根治不能と診断された場合、延命や症状緩和のための化学療法を行うという選択肢があります。信頼できる担当の医師と、化学療法のメリット・デメリットについて考えながら、治療方針を決定することが重要です。

記事4『胃がんの治療方法。抗がん剤治療や化学療法の特徴』に引き続き、根治不能の消化器がんと診断されたとき、患者さんはどのような点に注意すべきなのかを、KKR札幌医療センター 消化器・腫瘍内科医長であり外来化学療法室長も務めている曽我部進先生にお話をうかがいました。

根治不能な消化器がんと診断された場合の選択肢には、延命・症状緩和のための化学療法と、延命治療はせず緩和治療だけを行う方法があります。延命治療のメリットとデメリットを考慮しながら、患者さんと担当の医師とが話し合いながら治療方針を決定します。

消化器がんの患者さんで、延命・症状緩和の化学療法を受けるための条件は2つあります。1つ目は、体が副作用に耐えることができることです。2つ目は、化学療法のさまざまな面を理解したうえで、治療についてご自身で判断する能力があることです。そして、延命・症状緩和の化学療法には、以下のメリットとデメリットが存在します。

殺細胞性の抗がん剤や分子標的薬などの薬を投与することで、がんの増殖を抑え、体内の腫瘍の量が減ることによって、延命効果や症状の緩和が期待できます。また、最近では、免疫チェックポイント阻害薬の一部も、胃がんに対して保険適用となりました。免疫チェックポイント阻害薬を使うことで、今までよりも長い延命効果が期待できるようになりました。

化学療法はがん細胞だけではなく正常な細胞にも障害を与えるため、吐き気やだるさ、脱毛といった副作用が発生します。そして、保険が適用となっている薬でも高額なものもあるため、患者さんの金銭的な負担が大きくなります。また、多くの患者さんが定期的に外来に来て治療を行うため、通院がストレスになってしまうケースもあります。

がんの治療は、手術や化学療法だけではありません。患者さんが苦痛に感じていることをヒアリングし、苦痛を取り除くことを緩和ケアといいます。代表的な患者さんの苦痛は、身体的な症状です。がんの場合、体が痛い、だるい、息苦しいといった症状が生じる場合があります。

また、患者さんは「がんによって自分はこの先どうなっていってしまうのか」という不安や悩みといった精神的な苦痛を抱えていることが多いと思います。そのような苦痛に、医師や看護師、薬剤師だけでなく、社会福祉士や精神保健福祉士などが、チームとなって向き合い、さまざまな症状や不安などに対応していくことは重要な治療です。

緩和ケアは、ベスト・サポーティブ・ケア(BSC)という名のもとに、化学療法などの延命治療を行わなくなった段階で開始すると考えられているケースも少なくありません。しかし実際は、化学療法を行う段階から、緩和ケアを行うことが大切で、患者さんの予後にも良い影響を与えたという報告もあります。

医師と患者さんが対話

延命治療を実施するかしないか、どのような治療方針で進めるのかを決めることは決して簡単なことではありません。そのため、患者さんは以下のような点に注意しながら判断してください。

ネット上には、消化器がんについてのさまざまな情報が錯綜(さくそう)しています。ときには正しくない情報や有効性が証明されていない治療法であっても、検索の上位に表示されていることもあるのです。がんであると伝えられた患者さんには、精神的に不安定になっていたり、気持ちが落ち込んでしまっていたりする方も少なくないため、そういった誤った情報に飛びついてしまう危険性があります。

また、そのような治療は健康保険が適用されず、概して高額であることが多いようです。お金を出せば標準ではない特別な治療がうけられる、と思われている方もいらっしゃいますが、そのようなことはないと私は考えています。いわゆる「標準治療」とは、日本では、治療効果が証明され健康保険が適用となっている、推奨される治療なのです。

新しい治療法を試みるということに否定的になることはありません。しかし、その情報が本当に正しいものなのかを吟味する必要があります。そのためがん治療に関してのガイドラインを読んだり、担当の医師にこういった治療に取り組みたいという意思を相談して、情報の正確性を判断するようにしてください。

私が治療方針について患者さんとお話しをする際は、必ずメリットとデメリットとの両方をしっかりと説明するようにしています。そして、ガイドラインに記載されている標準治療を踏まえながらも、患者さんとのコミュニケーションから、患者さんの置かれている環境や希望を聞き出し、考慮していくことが我々の役目だと感じています。

医師のいうことをすべて鵜呑みにはせず積極的に質問し、信頼できる医師のもとで治療を行ってください。そして、担当の医師を選択する1つの基準として、日本臨床腫瘍学会が認定するがん薬物療法専門医という資格があります。もちろん、この資格がなくとも素晴らしい治療を行っている医師は多数おりますし、資格がすべてとは思いません。しかし、専門医であるということは、少なくともその時々の最新の標準治療を理解し実践していることの担保にはなるのではないかと私は考えています。

また、1人の医師だけではなく、セカンドオピニオンやサードオピニオンなどを活用して、複数の医師から意見を聴くことも良いでしょう。

曽我部進先生

患者さんのなかには、延命治療をやらなくてはいけないものと考え、「やらなかったらどうなるのですか」と質問される方もいらっしゃいます。しかし、「やらないとどうなるのか」ではなく、「やったらどうなるのか」というように考えてほしいと私は思っています。

化学療法が誕生してからまだ100年も経過していません。それ以前は、がんができれば延命の方法もなくそのまま自然な経過をたどっていたわけです。あくまでベースはそこにあり、近年の医学の発展により、寿命を延ばす治療法が存在するようになり、治療をすることでその自然な経過にあらがうという選択も可能になった、と考えてみるのはどうでしょうか。

副作用の影響によりやりたいことができなくなると考え、延命治療は一切受けずにやりたいことをやるとおっしゃる方もいらっしゃいます。もちろん、そういった考え方も間違いではありません。しかし、なるべく副作用を軽減し、QOL(生活の質)を保ちながら延命治療を行う方法もあります。「抗がん剤は、効かない」とおっしゃる患者さんもいらっしゃいますが、最初から延命治療はしない、化学療法は無効だ、と決めつけるのではなく、担当の医師とコミュニケーションをとりながら治療について考え、そのうえで結論を出すことが重要なのではないかと私は考えます。

記事6『消化器がんの化学療法。がんの遺伝子解析とは』では、消化器がんの遺伝子解析や新薬の研究などについて詳しく解説します。
 

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