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男性不妊の治療――薬物療法と手術療法の適応

男性不妊の治療――薬物療法と手術療法の適応
河村 寿宏 先生

田園都市レディースクリニック 理事長、田園都市レディースクリニック あざみ野本院 院長

河村 寿宏 先生

湯村  寧 先生

横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディ...

湯村 寧 先生

目次
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この記事の最終更新は2017年12月28日です。

不妊治療に取り組むパートナーは、子どもを出産して育てていくという目標に向かっています。しかし、男女の体や心理の差から、不妊治療を苦痛に感じるようになるケースも少なくありません。

特に男性の場合、勃起不全(ED)や腟内射精障害などを発症してしまう方もいらっしゃいます。その結果、カップルの仲が悪くなってしまう方も一部にはいらっしゃるようです。

今回は、引き続き、田園都市レディースクリニック理事長の河村寿宏先生と、田園都市レディースクリニックで男性不妊外来を担当する湯村寧先生に、男性が不妊治療をプレッシャーに感じてしまう原因と、その回避方法についてお話しいただきました。

男性不妊の原因には、

  • 造精機能障害
  • 性機能障害
  • 精路閉塞障害(せいろへいそくしょうがい)

の3つがありますが、原因により治療法は異なっています。

男性不妊の治療法としては、主に、漢方薬やビタミン剤、サプリメントなどを用いる薬物療法と手術療法があります。手術療法では、精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)を治す手術やTESE(精巣精子回収術)などが行われています。

ペイレス

男性不妊の半分は特発性であり、原因が分かっていませんが、一般的には、漢方薬やビタミン剤、ホルモン剤などのサプリメントを経験則によって処方しながら、精液所見の改善効果をみていきます。また、EDに関しては専用の治療薬が存在します。

男性不妊の治療として多くの施設で処方される漢方薬には、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)というものがあります。補中益気湯は、虚弱体質や疲労倦怠といったものに効果のある漢方薬です。しかし、漢方薬は患者さんそれぞれの体質により効き目が異なります。

そのため、当院では、患者さんの体質によって、処方する漢方薬を変えています。また、精索静脈瘤をお持ちの患者さんには、精巣の血液の流れをよくする漢方薬を出すなどの工夫をしています。

男性不妊の薬物療法には、漢方薬だけでなくビタミン剤とサプリメントもとても重要です。そのため、当院ではビタミン剤の処方においても、患者さん1人ひとりに合わせて工夫しています。たとえば、精子の運動率を上げるのか、数を増やすのかによって、ビタミンC、E、B12のビタミン剤を使い分けています。

サプリメントとしては、亜鉛など一般的なものに加え、コエンザイムQ10などのサプリメントが使われています。

男性不妊の手術療法の種類としては、主に精索静脈瘤の手術やTESEが行われています。当院では、私が横浜市立大学附属病院の医師でもあるため、手術を行う場合は、横浜市立大学附属病院に足を運んでいただき、手術を実施します。

そして、手術後のフォローアップを当院で行うという形をとっています。日帰りでTESEを行う場合は当院で行うこともできます。

精索静脈瘤は良性疾患であり、がんなど手術を行わないと命の危険があるものとは異なります。そのため、男性不妊であるという結果が判明した後、早々に手術をすすめるということは、患者さんの精神的負担となる可能性があります。

そのため、当院では、患者さんの立場から治療法を考え、いきなり手術を選択するのではなく、漢方薬やビタミン剤、サプリメントを服用しても精液所見の改善が見られない方、または、精液所見は改善しているが妊娠に至らない方を対象として、精索静脈瘤の手術を実施しています。

精索静脈瘤の手術には、精索静脈瘤高位結紮術(せいさくじょうみゃくりゅうこういけっさつじゅつ)、精索静脈瘤低位結紮術、腹腔鏡下精索静脈瘤手術(ふくくううきょうかせいさくじょうきゃくりゅうしゅじゅつ)の3種類があります。それぞれの手術方法により特徴が異なり、精索静脈瘤高位結紮術と腹腔鏡下精索静脈瘤手術は保険診療となっています。一方、精索静脈瘤低位結紮術は保険適用外の手術方法ですが、局所麻酔により実施できることなどから、日帰りで行うことが可能です。

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TESEは、射精した精液の中に精子が入っていない無精子症の患者さんを対象としています。TESEとは、患者さんの精巣の中から直接精子を回収するという手術です。回収した精子は、通常は顕微授精により卵子と受精させます。

無精子症の場合、薬を使うよりもTESEを行ったほうが精子を得られる可能性が高いため、最初から手術を選択するケースが多いです。しかし、施設によっては、TESEの前にホルモン剤を投与したほうが効果的という方針のところもあります。

男性不妊の原因として分かっている精索静脈瘤などの病気は良性疾患であり、手術をしなかったからといって命に関わることはありません。そのため、私は手術を検討する場合、患者さんにしっかりと手術とその後のことについて説明し、心の準備を整えていただきます。そして、ご本人が納得したうえで手術を実施することが大切だと考えています。

ペイレス

精液所見の低下は、日常生活にも大きく関わっており、生活習慣の中で精液所見を低下させてしまうものと、改善が期待できるものとがあります。具体的には以下のとおりです。

喫煙

たばこを吸うことは、生殖機能において、男女ともに悪影響を及ぼすということがはっきり分かっています。また、受動喫煙であってもよくありません。妊娠中のパートナーがたばこの副流煙を吸うことで、流産早産、死産といったリスクも高まります。また、無事に出産できたとしても、乳幼児突然死症候群(SIDS)*を発症する可能性が上昇します。本人、パートナー、生まれてくる赤ちゃんのためにも、喫煙している方は早期に禁煙することをおすすめしています。

*乳幼児突然死症候群(SIDS)…疾患を発症したことがない乳幼児が、何の予兆もなく突然死するもの。原因は不明。

長期間の禁欲

長期間の禁欲をすることによって、精子の運動率などが低下し、質が悪くなることが分かっています。特に、体外受精などを受ける方は、精液を採取する日にできるだけたくさんの量の精液を出したいと考え、長期間禁欲を行ってしまう方もいらっしゃいます。しかし、そういった行為はかえって精液所見が低下することがあるので、ため込みすぎず適度に射精をするほうがよいでしょう。禁欲はなるべく1週間以内が望ましいと考えられます。

過度に睾丸(こうがん)を温める行為

睾丸の温度が上昇することによって、精巣機能が低下します。そもそも、睾丸が体内ではなく、体外にある理由は、体温よりも低い温度のほうが精子には適しているからです。そのため、ボクサーパンツのような体に密着する下着よりは、トランクスなど風通しのよい下着のほうが冷却効果があり、精子のためにはよいと思われます。

また、お風呂に入ってはいけないというわけではありませんが、あまり長い時間湯船に浸かる、サウナに長時間入ることは避けたほうがよいでしょう。そのほかにも、パソコンなどの熱を発する電子機器を膝の上に置くことも睾丸が温まる原因となります。

上記の行為によって、精液所見に重度の悪影響が及ぶというデータはありません。しかし、精巣機能低下の原因になり得るものはできるだけ避けることをおすすめします。

育毛剤に注意

育毛剤の中には精液所見が低下する可能性を指摘されているものがあります。

肥満

肥満の方が全員子どもを持つことができないというわけではまったくありません。しかし、肥満の方は妊娠成績が低下してしまう傾向にあります。

偏った食生活

上記の肥満とも通じることですが、カロリー過多や炭水化物過多の食生活はよくないといわれています。

過度な飲酒

適度な飲酒であれば問題はありませんが、過度な飲酒はよくありません。

長時間自転車に乗る

自転車に長時間乗り、睾丸がサドルの圧迫を受けることで精子が悪影響を受けるというデータがあります。また、長い時間自転車に乗ることはEDにつながる可能性もあるといわれています。

精神的ストレス

実際に精神的なストレスがどれほど精液所見に影響しているのかを証明するはっきりとしたデータは存在しません。しかし、患者さんを診ていて、今回は少し精液所見が低下しているというときは、高い確率で、精神的なストレスを抱えているケースが多いと感じます。

電磁波に当たる

電磁波も精巣機能に影響しているといわれています。そのため、携帯電話をズボンのポケットに入れるのは避けたほうがよいでしょう。

薬の影響

胃薬の成分の影響で、精液所見が低下する場合もあります。また、現在はあまりありませんが、以前まで潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)の薬でも精液所見への影響がありました。

運動をして体を鍛える

患者さんを診ていると、体を鍛えたり運動を始めたりした患者さんは、精液所見がよくなるという傾向があります。運動不足を感じている方は、体を動かすことをおすすめします。

バランスを考えて食材を摂取する

炭水化物やカロリーの摂りすぎは精液所見を低下させます。また、そのような食生活は肥満にもつながります。そのため、偏りのないバランスの取れた食生活を心がけてください。

日本生殖医学会が認定している生殖医療専門医の中で、男性不妊治療の専門医は特に少ないのが現状です。男性不妊症治療専門医は泌尿器科にあたるため、泌尿器科の医師でもある程度の範囲までは、男性不妊を診ることが可能です。しかし、細かく診ていくとなると、やはり男性不妊治療の専門医の力が必要となります。当院では、男性不妊症を専門としている泌尿器科の医師の専門外来を設けているため、専門的な診察を受けていただくことが可能です。

男性不妊

2017年時点、生殖医療専門医の中でも全国でわずか51人しかいない男性不妊治療の専門医は、大都市に集中しており、特に東京都と神奈川県に多くなっています。そのため、男性不妊治療の専門医が1人もいない県も多々あります。

そういった県の不妊治療施設で男性不妊治療の手術を実施する際は、遠くの場所から専門医の先生を呼び寄せて、手術を行っているのが現状です。このような状況では、医師自身も負担を強いられます。そして何より、患者さんに不便をかけてしまっています。

しかし、不妊治療への理解や、不妊の原因の半分が男性にもあるという認知が徐々に広まり、最近は男性側も治療に協力的になりつつあります。そのため、男性不妊治療の専門医の需要も高まっています。今後は男性不妊治療の専門医の数が増え、日本全国どこの施設の患者さんでも、男性不妊治療の専門医に診てもらえるようになっていくと期待しています。

なお、受診を決めている方は以下の予約専用ダイヤルにてお問い合わせいただけます。

≪田園都市レディースクリニック予約専用ダイヤル≫

受付時間:月〜金:9:00〜18:00 、土:9:00〜17:00 、日:休診

045-905-5524

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田園都市レディースクリニックHP

https://www.denentoshi-lady.com/

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  • 田園都市レディースクリニック 理事長、田園都市レディースクリニック あざみ野本院 院長

    河村 寿宏 先生

  • 横浜市立大学附属市民総合医療センター 生殖医療センター 泌尿器科部長・准教授、田園都市レディースクリニック 臨時職員

    湯村 寧 先生

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