インタビュー

子宮内膜症の治療方法 薬物療法と手術療法がある

子宮内膜症の治療方法 薬物療法と手術療法がある
安藤 正明 先生

倉敷成人病センター 理事長

安藤 正明 先生

この記事の最終更新は2018年01月30日です。

子宮内膜症の治療方法には、薬物療法と手術療法があります。薬物療法は痛みを抑えたり病勢を弱くしたりする目的で行われ、手術療法では発生した子宮内膜を取り除きます。また再発予防のために、術後に薬物療法を実施する場合もあります。

今回は記事3『腸や尿管などに発症する希少部位の子宮内膜症とは』に引き続き倉敷成人病センター院長の安藤正明先生に、子宮内膜症の治療方法についてお話をうかがいました。

子宮内膜症の検査では、経腟超音波検査やMRI検査を実施します。

経腟超音波検査とは腟の中に超音波を発生する機械を入れ、画像化する検査です。しかし深部子宮内膜症や病変が1センチメートルもない塊だった場合、経腟超音波検査やMRI検査でも映像に映らず見つけることはできません。そのため実際に手術をしてからでないと子宮内膜症があるのかどうかわからないこともあります。

薬物

子宮内膜症の薬物療法にはいくつかのパターンがあります。痛み止めだけを服用する対症療法や、ホルモン治療といって、長期的に低用量ピルや黄体ホルモン製剤を使用する治療法があります。

高血圧糖尿病などの慢性疾患では6か月薬を飲めば治るといったものではありません。同様に子宮内膜症も閉経にいたるまではホルモン治療で完治することはありません。

子宮内膜症組織は卵巣から分泌される女性ホルモンに刺激され増殖進展していきます。そのため閉経後は自然と病勢が落ち着くと考えられます。

子宮内膜症を完治させる治療は手術療法です。子宮内膜症の手術には、開腹手術と腹腔鏡下手術の2種類があります。子宮内膜症が腹膜に発生した場合は、癒着した周囲の組織をはがしながら病変を摘出します。また子宮や卵巣も同時に摘出する場合もあります。

子宮内膜症に対して開腹手術を行った場合、術後に組織の癒着が起こる可能性が高くなります。また術後の痛みが強いことや美容的な面も考慮して、倉敷成人病センターでは開腹手術は行っておらず、腹腔鏡下手術を選択しています。

子宮内膜症の腹腔鏡手術
手術中の安藤先生 提供:倉敷成人病センター

腹腔鏡下手術は腹部に小さな穴を開け、そこにカメラと鉗子を入れて映像をみながら病変を摘出します。細長いカメラを体内深く入れることが可能で、骨盤の深い部位もみることができます。また手術による傷の痕が少ないことや、手術による癒着が少なく、術後の回復が早いといった利点もあります。

子宮内膜症の種類によっても異なりますが倉敷成人病センターの場合、多くの子宮内膜症の入院期間は約1週間です。手術の2日前に入院していただき、術後3、4日で退院します。ほとんどの患者さんでは手術の翌日から歩いたり、食事を摂ったりすることが可能です。一般の病院でも約3日から51日程度の入院です。

手術の種類によっても異なりますが、一般的な子宮内膜症に対しての腹腔鏡下手術の費用は、約20万円です(3割負担の場合)。

しかし高額医療費制度の申請ができるため、実際に患者さんが負担する金額は20万円以下となります(高額医療費制度で支給される金額は患者さんの所得により異なります)。

子宮内膜症のなかでもチョコレート嚢胞がん化しやすい種類です。そのためお子さんをすでに出産されていて40歳を超えている患者さんで、4センチメートル以上のチョコレート嚢胞がみつかった場合、手術をおすすめることをガイドラインでは推奨しています。

子宮内膜症の種類について詳しくは、記事1『子宮内膜症とは 好発年齢や好発部位について』をご参照ください。

しかし20代や30代など、これからお子さんを出産する予定の患者さんに対して、子宮・卵巣を摘出することは避けなければならず、子宮・卵巣は温存し嚢胞だけを取る場合も少なくありません。しかし嚢胞だけを摘出した患者さんは再発率が高くなります。そのため、子宮・卵巣を温存した患者さんは再発予防のために、術後に薬物によるホルモン治療を行う場合があります。

直腸や尿管などに子宮内膜が発生する希少部位の子宮内膜症の場合、直腸・尿管を切除しなくてはならないこともあります。そういったケースでは、切除後に機能を復活させるため臓器の再建手術も必要となります。

倉敷成人病センターでは、外科・泌尿器科などの科と連携しながら、希少部位の子宮内膜症の腹腔鏡下手術も実施しています。

安藤正明先生

子宮内膜症は癒着が多く骨盤の解剖が変形してしまっていることが多く、その手術には医師の技量が必要となります。病変をとり残してしまったり、癒着をはがす際に臓器に穴を開けてしまい、腹膜炎を引き起こしたりする危険性もあるのです。

手術を受ける場合は、医師をしっかりと選ぶ必要があります。ある程度子宮内膜症の手術件数が多い医療機関の場合、さまざまな子宮内膜症の症例を経験しています。そのため何かあっても対処できる能力も高いと考えられます。経験手術件数を、医師を選ぶ1つの基準としていただくこともよいのではないでしょうか。

また、平成30年度の診療報酬改定によりロボット手術が、婦人科、外科領域でも保険で認められるようになります。それにより低侵襲手術の選択枝が増え、今後手術のあり方が大きく変わると思われます。倉敷成人病センターでは婦人科、外科領域のロボット手術も実施しています。

詳しくは病院のHPをご参照ください。

http://www.fkmc.or.jp/

 

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