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鼠径ヘルニア(脱腸)の手術とは?
 鼠径ヘルニアを発症すると、足の付け根の鼠径部が腫れて、違和感や痛みなどの症状が現れます。成人の鼠径ヘルニアの場合、根治のためには手術による治療が必要です。従来は、鼠径部を縫って縛り閉じる手術が...
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鼠径ヘルニア(脱腸)の手術とは?

公開日 2018 年 04 月 19 日 | 更新日 2018 年 04 月 20 日

鼠径ヘルニア(脱腸)の手術とは?
大橋 直樹 先生

東京外科クリニック 院長

大橋 直樹 先生

目次

 

鼠径ヘルニアを発症すると、足の付け根の鼠径部が腫れて、違和感や痛みなどの症状が現れます。成人の鼠径ヘルニアの場合、根治のためには手術による治療が必要です。従来は、鼠径部を縫って縛り閉じる手術が行われていましたが、2018年現在はヘルニア嚢と呼ばれる穴の部分を内側からメッシュで覆う手術が普及しており、より患者さんへの体の負担が少なく、再発しにくい治療を行うことが可能となりました。

本記事では鼠径ヘルニアの手術について、東京外科クリニック院長 大橋直樹先生にお話しいただきました。

鼠径ヘルニア(脱腸)の手術のタイミング

鼠径部の膨らみが自他ともに認められる大きさになれば手術を行う

鼠径ヘルニアは手術による治療でしか根治できません。そのため鼠径ヘルニアと診断がつけば、原則すべての患者さんに手術を検討します。

手術を行うタイミングとしては、鼠径部の膨らみが自他共に認められる大きさになれば手術を行うと考えています。たとえば「鼠径ヘルニアだと思います」と患者さんがいらっしゃった場合でも、明らかな膨らみがなければすぐに手術は行わず、膨らみが大きくなったら手術に踏み切るという判断をすることもあります。

嵌頓(かんとん)の可能性が高ければすぐに手術を行う

記事1『画像でみる鼠径ヘルニア(脱腸)の症状』でも述べたように、鼠径ヘルニアは治療を行わずに放置していると、嵌頓(かんとん)という重症に陥る可能性があります。嵌頓になると、腸閉塞を起こしたり、血流障害が起きて腸が壊死したりする恐れがあり、非常に危険です。そのため、嵌頓になる可能性が高いと判断されれば、すぐに手術を行います。

早めに手術で治療することが望ましい

鼠径ヘルニアの手術は、嵌頓になる可能性が高いなどの緊急性がなければ、患者さんの希望されるタイミングで行うことが可能です。ですから、患者さんに対してしっかりと治療内容を説明し、理解していただいた上で手術を行うようにしています。

しかし、鼠径ヘルニアと診断された場合、できるだけ早めに手術を受けていただくことが望ましいと考えます。なぜなら、鼠径ヘルニアにかかっている期間が長いと、手術は難易度が上がってしまいますし、術後の合併症が起こりやすいと考えられているからです。ですから、痛みがなく、日常生活に支障がない場合は手術を先送りにしてしまいがちですが、可能な限り早めに手術を受けていただくことが望ましいといえます。

手術

鼠径ヘルニア(脱腸)の手術方法

標準治療はメッシュを用いた手術方法

従来の鼠径ヘルニアの手術方法は、ヘルニア門を糸で縫って塞ぐというものでした。この手術方法は組織縫合法と呼ばれます。しかしこの手術方法は、腹圧や腸の重みがかかる箇所を縫って閉じると、糸が劣化した際に再び穴が開いてしまうという問題点があります。また、開腹で行うため、痛みが強い・入院期間が長いという患者さんにとって負担の大きい治療でした。

1960年代からは、メッシュを使って内側からヘルニア門を塞ぐ手術が行われるようになりました。このメッシュを使った手術方法は1980年代に普及し、2018年現在は標準治療として、成人の鼠径ヘルニアの手術のほとんどにメッシュが用いられています。現在使われているメッシュは、ポリエステルやポリプロピレンといった素材でできており、正しく使用されれば従来の組織縫合法よりも再発が起きにくいといわれています。

ヘルニアとメッシュ

メッシュを敷いたところです。外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアのすべてをカバーしています。

鼠径部切開法または腹腔鏡手術によってメッシュを入れる

ヘルニア嚢を塞ぐためのメッシュを入れるには、鼠径部を3〜5cmほど切開する鼠径部切開法、または腹腔鏡手術のどちらかが行われます。

・鼠径部切開法

鼠径部を3〜5cmほど切開して行う手術です。

・腹腔鏡手術(TAPP法・TEP法)

腹腔鏡という内視鏡器具を用いて行う手術です。腹腔鏡手術はTAPP法(腹腔内到達法)とTEP法(腹腔外到達法)の大きく2種類に分けられます。それぞれアプローチが異なりますが、適切に行われれば長期的な治療成績に優劣はないといえます。

東京外科クリニックでは、可能な限り径2〜5mmの小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術を行っています。

腹腔鏡を用いるその他の術式として、臍に12mmの腹腔鏡を入れて行う手術や、30mmほどの大きな穴を一箇所開けて行う、単孔式腹腔鏡下手術があります。東京外科クリニックでは、可能な限り細い器具(径2mmもしくは3mm)を使い、傷を小さくできるよう努めています。これをreduced port surgeryと呼んでいますが、通常の腹腔鏡手術より進んだ高度な取り組みがなされています。

メッシュを用いない場合もある

成人の鼠径ヘルニアは、メッシュを用いた手術方法が標準治療として確立されていますが、まれにメッシュを用いない手術を行うことがあります。

たとえば女性のなかにはメッシュを体内に入れることで、妊娠や出産に影響が出るのではないかと心配される方がいらっしゃいます。実際にはメッシュを用いた手術によって、妊娠や出産にどのように影響があるのかは医学的に明らかになっていませんが、当院にいらっしゃる女性の患者さんでもメッシュを用いない手術を希望される場合があります。

私はそのような患者さんには、メッシュを用いるのが標準治療であるとしっかり説明を行ったうえで、メッシュを用いない手術もできるという選択肢を提示し、患者さんご自身に納得のいく治療法を決定していただきます。

医師によっては、若い女性の小さい鼠径ヘルニアの治療にはメッシュを用いない、従来の組織縫合法を推奨している先生もいます。しかし組織縫合法には再発のリスクが高いなどのデメリットがあるため、その点をしっかりと説明したうえで、患者さんの意思を尊重しながら治療法を決めていくことが大切です。

鼠径ヘルニアの手術を受けた場合の入院期間

鼠径ヘルニアの手術は、施設や手術を担当する医師の方針、患者さんの状態にもよりますが、手術前の準備や術後の管理を行うことを考慮して、一般的に3〜4泊程度の入院で行われることが多いです。後ほどお話ししますが、施設によっては入院をせずに日帰りで手術を受けることも可能です。

入院している患者さん

鼠径ヘルニア(脱腸)の腹腔鏡を用いた手術方法

2〜5mmの腹腔鏡を用いた手術方法

鼠径ヘルニアの治療は、メッシュを用いた手術が普及し、再発のリスクが低くなりました。さらに、腹腔鏡という内視鏡器具を用いた手術も行われるようになり、患者さんにとってより負担の少ない、体に優しい治療を行うことが可能になりました。

腹腔鏡手術の流れ

ここでは東京外科クリニックで行われている、2〜5mmの腹腔鏡を用いた手術の手順をご説明します。

お腹に2〜5mmの穴を3箇所開ける

鉗子と呼ばれる手術器具やカメラのついた内視鏡を挿入するための穴を3箇所開けます。

腹腔鏡手術 ①

カメラのついた内視鏡を挿入する

カメラのついた内視鏡を挿入し、腹腔鏡内の様子をモニターに映し出します

腹腔鏡 ②

ヘルニア嚢の入り口にメッシュを貼りつける

モニターに映し出された映像を見ながら、メッシュを挿入していきます。

腹腔鏡 ③

メッシュを腹膜のなかに埋め込んでヘルニア嚢の入り口を塞ぎます。

傷口を縫う

メッシュを挿入したら傷口を縫合します。2〜5mmの傷口が全部で3箇所できます。

腹腔鏡 ⑤

鼠径ヘルニア(脱腸)の腹腔鏡手術のメリット

腹腔鏡手術のメリットには以下のようなものが挙げられます。

・術中や術後の痛みが少ない

切開で行う手術に比べると、術中や術後の痛みが少ないといわれています。

・体への負担が少なく、術後の回復も早い

術後の回復も早いため日帰りで手術を行うことも可能です。

・傷が小さく、目立ちにくい

小さな傷で手術可能であるため整容性においても優れています。

・同時に複数のヘルニアを手術できる

腹腔鏡手術では、一度の手術で複数のヘルニアを治療できます。

腹腔鏡手術の跡
腹腔鏡手術を受けられた患者さん(大橋先生ご提供)

鼠径ヘルニア(脱腸)の腹腔鏡手術のデメリット

腹腔鏡手術のデメリットには以下のようなものが挙げられます。

・手術時間が長い

腹腔鏡手術は切開で行う手術に比べると手術時間が長くなる傾向にあります。しかし術者に十分な技術があれば、切開で行う手術と同等またはより早く手術が終わります。

・高度な技術が要求される

患者さんの臓器に直接触れることなく、モニターを見ながらの手術になるため、術者には高度な技術が必要です。

・腹腔鏡手術専用の特殊な麻酔を使わなければならない

腹腔鏡手術専用の麻酔は特殊で専門的な知識が必要です。下記にて詳しく説明しておりますが、患者さんによっては麻酔が使えない場合があり、腹腔鏡手術の適応とならないケースもあります。

・他の手術に比べて費用がやや高額

鼠径ヘルニアの手術は保険診療によって受けることが可能ですが、切開で行う手術に比べると、腹腔鏡手術は一般的にやや高額となります。手術費用の目安については下記にて説明しております。

腹腔鏡手術の適応

麻酔がかけられない場合は腹腔鏡手術の適応とならない

腹腔鏡手術は、ほとんどの患者さんにとって負担が少なく体に優しい治療であるといえます。そのため東京外科クリニックではできる限り腹腔鏡を用いて手術を行っています。しかし患者さんによってはまれに腹腔鏡手術専用の麻酔が使えない場合があり、腹腔鏡手術の適応にならない場合があります。

具体的には、心肺機能が低い方や超高齢者には、腹腔鏡用の麻酔を用いることが難しく、腹腔鏡手術が行えないことがあります。なぜなら、腹腔鏡用の麻酔は腹腔内を炭酸ガスで満たすので、肺が圧迫されてしまい、患者さんによっては手術に耐えられない可能性があるからです。

しかし、腹腔鏡手術で使用する麻酔器は、炭酸ガスの作用に抵抗して肺の容積のバランスをきちんととることができるような仕組みや、麻酔作用で弱まる自発呼吸を助けるような仕組みを備えていますので、術前検査によって問題がない限りは、ほとんどの患者さんに腹腔鏡での手術を受けていただいています。

また、万が一術前検査によって腹腔鏡手術用の麻酔が不適応となった場合でも、鼠径部切開用の麻酔や局所麻酔を用いることで切開による手術を行うことが可能ですので、患者さんに合わせていくつか治療方法を提示します。

小児でも腹腔鏡手術が受けられる

成人の鼠径ヘルニアだけでなく、小児の鼠径ヘルニアの場合でも腹腔鏡を用いて手術を行うことが可能です。一般的に20歳未満の未成年の患者さんには、メッシュは用いない手術となりますが、成人と同じように腹腔鏡で手術を行い、入院せずに治療を行うことが可能です。

子ども

腹腔鏡で行う鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り手術とは

鼠径ヘルニアの手術は日帰りで実施可能

東京外科クリニックでは、患者さんの日常生活に大きな影響を与えることなく治療を行いたいとの思いから、鼠径ヘルニアの日帰り手術を行っています。

入院をしなくても、鼠径ヘルニアの手術を行えるようになった背景には、まず鼠径ヘルニアの治療として腹腔鏡手術が普及し、術後の患者さんがどのような経過をたどるのかがわかるようになってきたことが関係しているといえるでしょう。そしてさらに、日帰り手術に適した麻酔が登場したことで、入院をしなくても手術当日に帰宅していただけるようになりました。全身麻酔で1泊という不便は過去のものになりつつあります。

外科の手術手技の進歩だけでなく、麻酔科医とうまく連携することによって鼠径ヘルニアの日帰り手術を実現することが可能となったのです。(もちろん病状によっては入院経過観察が必要と判断される場合もあります。安全に日帰り手術が可能かは医療機関に個別にお尋ねいただく必要があります。)

術後の経過もしっかりとフォローできる体制が必要

日帰り手術を受けられる患者さんのなかには術後の経過に不安を感じられる方もいらっしゃいます。そのため、日帰り手術を実施するためには、術後院内でゆっくり休んでいただけるような回復室を設け、術後管理を適切に行います。さらに、万が一のために近隣の高度救急施設と連携体制を確立し、環境を整えることで日帰り手術の適応が拡大され、どなたでも安心して治療が受けられるようになりました。

鼠径ヘルニア(脱腸)の日帰り手術の流れ

ここからは実際に東京外科クリニックで行われている日帰り手術の流れをご説明します。

術前検査

手術を受けることが決まったら、術前検査を受けていただきます。当院ではあらかじめ手術を希望されている場合は、初診当日に検査を済ませていただくことも可能です。

採血や心電図、呼吸機能検査を行うだけでなく、現在治療中の病気の有無や、今までに大きな病気をしたことがあるかどうかなど、しっかりと問診を行って患者さんの状態を把握します。

来院・術前準備

手術当日、患者さんには食事や飲み物を摂取せずに来院していただきます。

来院後、血圧の測定や着替えなどの術前準備が終わると、麻酔科医が麻酔をかけます。

手術開始

麻酔がかかるといよいよ手術開始です。当院では腹腔鏡を使った手術を行っています。

回復室へ移動・帰宅

麻酔が覚めたら回復室で休んでいただきます。術後管理は、患者さんの様子をみながら看護師が行います。水を飲んだり、食事をしたりするタイミングや、着替えを行って帰宅するタイミングなどを案内します。個人差がありますが、1〜1時間半くらい休んだ後に帰宅される方が多いです。

看護師と患者

日帰り手術の手術時間の目安

腹腔鏡手術自体は、患者さんの状態にもよりますが、だいたい40分くらいで終了します。術前準備や術後の回復期間を合わせると、3時間くらいで帰宅される方が多いです。

手術後は経過観察を行うために、約一週間後に来院していただき、傷や痛みの様子を確認し、特に問題がなければその後は診察を受ける必要はありません。

鼠径ヘルニア(脱腸)の手術費用の目安

鼠径ヘルニアの手術は保険診療で受けることが可能で、日本国内であれば施設によって手術にかかる費用の格差はほとんどないと考えてよいでしょう。

手術費用の目安としては、腹腔鏡:約81,000円、従来の開腹法:約60,000円となります。(※2018年現在、健康保険3割負担、平均的な給与所得者の場合)

施設によって検査費用や入院費用など、別途で費用が発生する場合もありますので、医療機関を受診する際に相談してください。

鼠径ヘルニア (大橋直樹先生)の連載記事

日本外科学会認定外科専門医。
慶応義塾大学医学部外科学教室助教を勤めた後平成27年独立。
現在は腹腔鏡手術、小児外科、乳腺外科の日帰り手術専門クリニックを運営し多くのスペシャリストに活躍の場を提供している。成人鼠径ヘルニア手術の専門家として業績多数。

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