インタビュー

子どもの肺炎―治療法は原因によって変わる

子どもの肺炎―治療法は原因によって変わる
阿部 克昭 先生

鎌ヶ谷総合病院 小児科 部長

阿部 克昭 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年02月16日です。

子どもの肺炎は、治療にあたりまず原因の特定をし、治療法を決定します。主に外来での治療が中心で、場合により入院が必要になります。

今回は子どもの肺炎の治療について、千葉市立海浜病院小児科の阿部克昭先生に詳しくお話を伺いました。

肺炎の原因によって治療方法が全く異なるので、原因を特定することが最優先です。

症状が比較的軽い場合は、外来治療を行います。特にマイコプラズマ肺炎は、子どもに点滴で使える薬が少ないこともあり、外来での治療が中心になります。飲み薬が中心です。

ウイルス性であれば、肺炎であっても自然に治っていくことがほとんどです。ただし、呼吸困難をともなうようなウイルス性肺炎では、入院して酸素吸入などの治療を行わなければ、非常にまれですが脳障害を起こす危険があります。

マイコプラズマ肺炎も無治療で治ります。しかし、症状が2週間ほど続く可能性があるため、たいていは病院に受診する方が多く、抗菌薬による治療を行います。

細菌性肺炎は適切な治療が行われないと、より重症化して敗血症性ショックとなり生命に危険がおよぶことがありえます。

敗血症性ショック…人体が細菌感染に完全に負けてしまい、血液を十分に循環させることができなくなった状態

入院中の日本人の子ども

子どもにとって、普段と違う慣れない環境となる入院はあまり好ましくありません。

しかし、以下のような場合は入院措置をとることがあります。

  • 呼吸が苦しいとき
  • 水分がとれず薬も飲めないとき
  • 意識がもうろうとしているとき
  • 熱性けいれんを短時間に繰り返してしまうとき
  • 細菌性肺炎で内服の抗菌薬が効かないとき

飲み薬

子どもで一般的な細菌性肺炎と診断されたらほとんどの場合は、基本的にはペニシリン系の薬を5日間内服します。

肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラなどの細菌性肺炎では、ペニシリン系の「アモキシシリン」や「アモキシシリン・クラブラン酸」を主に使います。

飲み薬(内服薬)が無効な場合は、入院して点滴から5日間の抗菌化学療法を行います。

途中ですっかり元気になり、抗菌薬感受性検査で飲み薬が効く細菌だった場合には、飲み薬に変えて退院します。その場合も抗菌薬は合計5日間で十分です。

また、どうしても薬を飲めない子どもや、呼吸が苦しそうであったり、ぐったりとしている子ども、その他さまざまな事情で治癒を急ぐ場合には、最初から入院で治療することもあります。

ウイルス性肺炎には、ほとんどの場合特効薬がないため対症療法薬で治療をします。主に去痰薬や気管支拡張薬で症状を和らげます。

ウイルス性肺炎では呼吸困難をともなっていたり、喘息発作を合併したりで酸素吸入が必要になることも多く、このような場合には入院で治療をすることになります。

マイコプラズマ肺炎では、有効な抗菌薬を7〜10日間ほど内服します。途中で抗菌薬を変える必要があった場合、変えた薬を7〜10日間ほど内服します。

千葉市立海浜病院におけるマイコプラズマ肺炎の疑いがある場合の詳しい治療手順は以下の通りです。

① LAMP法でマイコプラズマ肺炎の確定診断を行う

② 並行して「クラリスロマイシン」を処方する

③ 2〜3日後に再受診してもらい、マイコプラズマ陽性であることを確認

・解熱していた場合…クラリスロマイシンを継続(合計7〜10日間)

・発熱が続いている場合

…前方の永久歯が生えそろっている子どもの場合「ドキシサイクリン塩酸塩水和物」か「ミノサイクリン塩酸塩」を処方
…より低年齢の子どもの場合「トスフロキサシントシル酸塩水和物」を処方

④ 発熱が続いているときには血液検査や胸部X線写真の再検査も行う

その結果により、ステロイド薬の内服を併用することもある

LAMP法…有用性のある遺伝子診断で、結果が判明するまで数日かかる。マイコプラズマ肺炎の検査方法には、このLAMP法以外に、迅速抗原検査、PCR法などがある。

ステロイド…炎症を抑えたり、免疫の働きを弱めたりする薬

細菌性・マイコプラズマ肺炎では、抗菌薬を服用することで自然治癒をするより早く治すことができます。

ただし、細菌性肺炎は最初から細菌性ではなく、ウイルス性の風邪に合併して起こることが多いものです。ウイルス性の風邪の段階で早めに抗菌薬を使い始めても、肺炎の予防や早く治す効果はないため注意してください。

肺炎になってしまった場合、細菌性・マイコプラズマ肺炎では抗菌薬を服用し、ウイルス性肺炎では症状を和らげる治療を行いながら自然治癒を待ちましょう。

笑顔の阿部先生

肺炎というと重症感があるかもしれません。しかし、子どもの肺炎は風邪の延長線上にある病気で、きちんと治療すれば予後の良い病気です。その点が高齢者の肺炎とは、大きく異なります。マイコプラズマ肺炎は風邪の延長線上ではありませんが、これもあまり重症な病気ではありません。

完全に肺炎を予防することはできません。あまり心配のしすぎは、必要のない抗菌薬を飲んでしまったり、病院の待合室で新しい病気をうつされたりしてしまう原因になりかねません。

甘く見すぎるのもよくないのですが、肺炎を正しく知って正しく怖がりましょう。

 

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