インタビュー

膝前十字靭帯の役割―損傷はなぜ起こるの?

膝前十字靭帯の役割―損傷はなぜ起こるの?
黒田 良祐 先生

神戸大学 大学院医学研究科外科系講座整形外科学 教授

黒田 良祐 先生

この記事の最終更新は2018年02月25日です。

膝前十字靭帯は、膝にある靭帯の1つで、骨同士が前後にずれすぎないようストッパーの役割を果たしています。主にスポーツによる急ブレーキや、方向転換の衝撃に耐えきれなくなったときに膝前十字靭帯が切れてしまいます。

今回は、膝前十字靭帯の役割について神戸大学医学部整形外科の黒田良祐先生に詳しくお話を伺いました。

提供:PIXTA

主に、大腿骨という太ももの骨と脛骨というすねの骨をつなげているのが膝の関節です。

その膝の中には、内側側副靭帯、外側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯の4本の靭帯があります。そのうち前十字靭帯は、すねの骨の前方から、太ももの骨の後方に向かってつながっています。

膝前十字靭帯は、骨同士が前にずれすぎないようにストッパーとしての役割を果たしています。そのため、走っていて急に止まるとき、急激に方向転換するときなど、骨が前にずれることなく動くことができます。

サッカー

スポーツによる損傷が圧倒的に多く、なかでも球技が原因として一番多いです。特にサッカー、ラグビー、テニス、バスケットボール、バドミントンなど、相手のいないところを狙い、相手の動きと逆をついて攻めるスポーツの場合、急に方向を変えなければなりません。その際に、膝前十字靭帯が耐えきれないほどの強い力がかかると、ぶちっと切れてしまいます。

スキーも膝前十字靭帯損傷の原因として多いです。スキーは急な方向転換をする場合、片足で踏ん張る必要があります。そのため、それぞれの足に体重がかかり、よく靭帯が切れてしまいます。

靭帯は切れるときは一発で切れるため、スポーツの頻度よりも、スポーツの種類で靭帯への負担は変わります。日常生活で靭帯が切れることは、基本的にありません。

提供:PIXTA

膝前十字靭帯が切れた瞬間は、激しい痛みがともないます。膝の中で出血するため、血がたまり腫れます。靭帯が切れて間もない数日間は、強い痛みがあり歩けなくなるため、松葉杖を使います。個人差はありますが、1か月ほどかけて徐々に痛みはひいていきます。

痛み以外の症状では、膝が曲がりにくくなり、不安定な感じがします。足で踏ん張るときには、膝がずれるようなグラグラとした感覚を感じます。

統計学的には、女性のほうが膝前十字靭帯を損傷する方が多いです。

女性のほうが男性と比べて筋力が弱いため、筋肉でストップをかける十分な力がなく靭帯に負担がかかり切れてしまうと考えられています。

部活中の学生

中学・高校での部活動、大学のサークルなど10代〜20代で、スポーツをしている頻度が多いと膝前十字靭帯の損傷を起こす機会が増えます。また、年齢に関わらず球技やスキーをする方のなかでは、靭帯を損傷することが多いです。

前十字靭帯が切れてから1か月ほどで痛みはひいていき、日常生活の困難はなくなっていきます。

ただし、痛みはひいても、切れた靭帯が治ったわけではなく、1度切れた靭帯は切れっぱなしになっています。スポーツに復帰する場合は、手術による治療が必要です。

膝前十字靭帯損傷の治療についてはこちら『膝前十字靭帯損傷の治療とは?』をご覧ください。

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