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冠動脈バイパス術とは?
心臓を取り囲むように存在している冠動脈の血流が悪くなると、心臓の筋肉の運動が障害されます。このような場合には、心臓へ血液を送ることができるように、冠動脈に別の血管をつなげる冠動脈バイパス術という...
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冠動脈バイパス術とは?

公開日 2018 年 03 月 15 日 | 更新日 2018 年 08 月 29 日

冠動脈バイパス術とは?
高橋 政夫 先生

平塚共済病院 心臓血管外科

高橋 政夫 先生

目次

心臓を取り囲むように存在している冠動脈の血流が悪くなると、心臓の筋肉の運動が障害されます。このような場合には、心臓へ血液を送ることができるように、冠動脈に別の血管をつなげる冠動脈バイパス術という手術によって治療が行われることがあります。

本記事では、冠動脈バイパス術の手順や手術の詳しい内容について、平塚共済病院 心臓センター・心臓血管外科部長の高橋政夫先生にお話を伺いました。

冠動脈バイパス術とは

狭心症や心筋梗塞の治療として行われる手術

冠動脈バイパス術は狭心症心筋梗塞の治療として行われる手術です。

狭心症や心筋梗塞は、冠動脈が細くなったり、詰まったりしていて、血流が障害されて発症します。そのため、冠動脈バイパス術によって冠動脈に新しい血管をつなぐことで、心臓の筋肉への血流を改善する治療が必要です。新しい血管を何箇所つなぐか、どの血管をバイパスに用いるかは術前の検査によって決定します。

冠動脈バイパス術の適応

薬物療法やカテーテル治療が適応でない場合に検討される

狭心症や心筋梗塞には、(1)薬物療法、(2)カテーテル治療、(3)冠動脈バイパス術の3種類の治療法があります。

冠動脈バイパス術の適応となるのは、薬物療法やカテーテル治療が難しい場合や、これらの治療では血流の改善が期待できないとされる場合です。

薬物療法とは

薬物療法は、薬剤を用いて行う治療法です。血管を拡げる薬を服用することで血流を改善させます。

薬での治療は患者さんの体への負担は小さいですが、薬のみで血管を広げ、血流をよくするには限界があります。そのため冠動脈に強い狭窄(きょうさく:血管が細く、狭くなる)がみられ、薬物療法のみでの治療が困難な場合には、冠動脈バイパス術とカテーテル治療が検討されます。

カテーテル治療とは

カテーテル治療は、カテーテルを用いてバルーンやステントという器具を血管内に挿入して血管の狭い部分を広げる治療です。循環器内科の医師によって行われます。局所麻酔で行えるため、手術に比べると患者さんの負担は少ないという利点があります。

一方で、体内にステントを入れると、ステントに血栓がつき、血管がふさがってしまう(ステント血栓症)というリスクも挙げられます。また、ステントは、金属でできているため金属アレルギーの患者さんには適応できません。

そのほかにもカテーテルを通せない箇所に狭窄がみられる場合、カテーテルの挿入によりほかの血管に影響が出ると判断される場合には、冠動脈バイパス術が検討されます。

冠動脈バイパス術はどのような方法で行われるか?

冠動脈バイパス術の方法−人工心肺装置を使用する場合と使用しない場合

冠動脈バイパス術は、心臓の表面にある非常に細い冠動脈と、バイパス用の血管を髪の毛よりも細い糸で縫ってつなぎ合わせる手術です。そのため、多くの場合には人工心肺装置を用いて心臓の動きを止める「心停止冠動脈バイパス術(オンポンプ CABG)」を行います。

しかし人工心肺装置を用いることには、さまざまなリスクがあります。そこで、スタビライザーという手術器具を用いて、心臓が動いた状態で行う「心拍動下冠動脈バイパス術(オフポンプ CABG)」が1990年代より実施されるようになりました。日本冠動脈外科学会の2016年の統計によると、日本での冠動脈バイパス術は、およそ6割が心拍動下で行われています。

バイパスグラフトは術前の検査によって決定

冠動脈バイパス術でバイパスに用いる血管をバイパスグラフトといいます。どの血管をバイパスグラフトとして使うかは術前のエコーなどの検査によって決定します。

ここでは代表的なバイパスグラフトを紹介します。

<代表的なバイパスグラフト>

  • 内胸動脈(ないきょうどうみゃく)
  • 橈骨動脈(とうこつどうみゃく)
  • 右胃大網動脈(みぎいだいもうどうみゃく)
  • 大伏在静脈(だいふくざいじょうみゃく)

バイパスグラフト

代表的なバイパスグラフトのなかでも、左内胸動脈は最も多く用いられます。

また腎臓の悪い患者さんは、橈骨動脈をシャントに使うことがあるため、足にある大伏在静脈を用いることが多くあります。

血液透析を行うために動脈と静脈をつなげる処置

手術の流れ

ここでは平塚共済病院で行われている手術の流れをご紹介します。

STEP1

手術室に移動していただいた後、麻酔が導入され深く眠った状態になります。

口から気管チューブを入れ、人工呼吸器がつながると手術が始まります。

STEP2

心臓の表面の冠動脈にアプローチするために胸を切開します。

切開の方法は、胸の真ん中を切り開く胸骨正中切開と、左乳房の下を小さく切開するMIDCAB(小切開)の2種類があります。

胸骨正中切開と小切開の違い

STEP3

平塚共済病院では、心表面にスタビライザーを取り付けて、部分的に心臓を固定しながら、心拍動下冠動脈バイパス術(オフポンプ CABG)を行っています。万が一の事態に備えて、人工心肺装置を準備し、いつでも心停止冠動脈バイパス術(オンポンプ CABG)に切り替えられるようにしています。

スタビライザー

当院では、医療器具を独自に改良するなど、よりよい治療を患者さんに提供できるように取り組んでいます。たとえば、手術中の患者さんの負担を小さくするために、患者さんの心臓に触れる部分を柔らかくした医療機器を使用しています。

STEP4

バイパスグラフトと呼ばれる血管と冠動脈を縫い合わせます。どの血管をバイパスグラフトに用いるかは術前のエコー検査などによって決定されます。

血管と冠動脈を縫い合わせます

血管と冠動脈を縫い合わせます

STEP5

血管の縫合が終わったら、開胸したままで、血流計と術中グラフト造影装置を用いて血液が流れているかを検査します。

術中グラフト造影装置

STEP6

バイパスグラフトの開存を確認できたら、十分洗浄を行い、心臓の周りに血液や水などが溜まらないようにドレーンという管を留置します。開けた胸骨は数本のワイヤーを用いて閉鎖します。

その後、筋層と皮下を抜糸の必要がない吸収性縫合糸を使って縫合します。

STEP7

手術室でレントゲンを撮影し、問題がなければ、麻酔を覚ました後、自分で呼吸が十分に行えるようになったら気管チューブを抜いて集中治療室へ移動します。

冠動脈バイパス術について

手術の当日は、まず手術室に入室していただき、麻酔科医師より全身麻酔が導入されます。

いつ麻酔から目覚めるのか?

平塚共済病院では、冠動脈バイパス術を受けるすべての患者さんに対して、オフポンプCABGを行っているため、ほとんどの患者さんは、手術室で麻酔より覚醒し、全身麻酔中に人工呼吸のために挿入していた気管チューブを抜管しています。そのため、術後に集中治療室に帰室し、ご家族と面談するときには、手術直後から会話ができることもあります。

いつから水が飲める?いつから食事が始まる?

当院では抜管してから、約4時間で氷をなめることから始めていただき、約5時間後には水が飲めるようになる方がほとんどです。水が飲めるようになれば、薬の内服も可能です。

食事は、手術の翌朝よりゼリーのように食べやすいものから開始して、徐々にお粥・常食に切り替えていきます。

術後のリハビリについて

歩行することから始める

ほとんどの患者さんは、手術の翌朝には座位が可能で食事ができます。

平塚共済病院では、手術翌日の午後にはベッドから立ち上がっていただき、体重を測定します。早い方ではこのとき10m歩行も可能です。

術後2日目には歩行を開始し、徐々に距離を伸ばします。約1週間で500m歩行が可能となると、この時点で、リハビリ室に移動し、エルゴメーター(自転車)での訓練を開始します。

退院時には、ほとんどの方がエルゴメーターで20〜30分運動することができます。また、退院してからは30分程度のウォーキングも可能で、通常通りの生活ができると考えてよいでしょう。

術後はスポーツも楽しむことができる

平塚共済病院では、胸骨正中切開で手術を受けられた方へ、1か月ほどは重たいものを持たないように指導しています。しかし3か月ほどすれば、胸骨も強固に癒合するため、ほとんどの運動が可能です。テニスやゴルフ、水泳といったスポーツも3〜6か月後には行っていただけると考えられます。

テニスをする人

食事の指導

リハビリ合わせて重要なのが食事の指導です。再び動脈硬化が起こるのを防ぐために、栄養管理・減塩指導を行います。必要に応じて管理栄養士による指導を受けていただく場合もあります。

冠動脈バイパス術の入院期間・退院までの流れ

冠動脈バイパス術後、一般的には集中治療室に数日間滞在していただき、順調に回復すれば一般病棟へ移動していただきます。入院期間は患者さんの年齢などによって異なりますので、担当の医師に確認するのがよいでしょう。

入院中は術前の生活に戻ることができるように、前項で述べたようなリハビリを行います。そしてCT検査(エックス線を使って身体の断面を撮影する検査)を行い、バイパスした血管に血液が流れていることが確認できれば退院していただきます。

術後の傷の痛みには個人差がありますが、必要に応じて痛み止めを処方します。また、外来通院や生活上の注意点について説明をしっかりと行い、術後をフォローします。

冠動脈バイパス術のリスクとは

冠動脈バイパス術のリスク−起こりうる合併症とは?

冠動脈バイパス術で起こりうる合併症には、以下のものが挙げられます。

心臓合併症

心臓に直接触れながら行う冠動脈バイパス術では、血圧の低下や不整脈が現れる可能性があり、起こりうる心臓合併症には、心筋梗塞、心不全、不整脈、心タンポナーデなどが挙げられます。

手術中に心臓の循環機能が著しく低下した場合には、簡易方式の人工心肺装置を用いることもあります。

脳合併症

狭心症や心筋梗塞の原因である動脈硬化が、冠動脈だけではなく脳の血管でも起こっているということは十分に考えられます。そのため、まれに脳梗塞などの脳合併症を発症する可能性があります。

万が一、脳合併症が起きた際には神経内科や脳神経外科の医師により治療が行われます。

肺合併症

起こりうる術後肺合併症としては、肺炎や呼吸不全などがあります。手術は全身麻酔で行うため、その影響で肺にかかる負担が大きくなります。術後は痰が出やすい状態になりますが、肺炎や呼吸不全などの肺合併症を予防するためにも、痰の排出は意識して行っていただくよう指導します。

また、肺合併症を予防するために、喫煙の習慣がある患者さんには手術前の1か月くらいは禁煙していただきます。

出血

心臓は血液の循環を行う臓器ですので、手術の際には出血の可能性が生じます。

また、血管を縫合する冠動脈バイパス術は、血液が空気に触れても固まらないように抗凝固薬という薬を全身投与して行うため、胸骨や創から出血が起こります。

出血への対策として、自己血回収装置という機械で、出血した血液を体内に戻す処置を行いますが、貧血が進行してしまうと輸血を検討する必要があります。

輸血には、あらかじめ自己血を貯血して用いる場合もありますが、もしものときのために他家血輸血(他人の血液を輸血すること)ができるように準備をしています。

その他にもまれではありますが、感染症、肝障害、消化器合併症などのリスクが考えられます。

心臓の手術には、頭から足の先まで体のさまざまな部分が関係しています。そのため、あらゆる状況を想定して準備し、患者さんへの事前説明を徹底することを大切にしています。

冠動脈バイパス術後に狭心症は再発する?

術後に狭心症が再発する可能性はあるのか

残念ながら、冠動脈バイパス術によって血流が改善されても、再び血流が悪くなることはありえます。

手術を行っても動脈硬化自体を大きく改善するわけではありません。やはり肥満や喫煙といった生活習慣は、再び動脈硬化による血管の狭窄を引き起こし、狭心症の再発のリスクとなります。

肥満体型

術後に気をつけること−悪玉コレステロール(LDL)など脂質の値を管理する

再発を予防するためには、術後も生活習慣に注意しなければなりません。具体的には、記事2『狭心症の症状とは?胸の痛み・違和感に注意』で述べたような、肥満や喫煙の習慣を改善し、脂質の値を正常に保つことが必要です。

狭心症、心筋梗塞の治療を行う必要のある患者さんは、悪玉コレステロール(LDL)の値を70以下にすることを目標としています。

悪玉コレステロール(LDL)を正常値にするためには、スタチンという薬の内服や、PCSK9という薬を2週間ごとに皮下注射するという方法が行われます。そのほかに糖尿病や高血圧のコントロールも行い、再発を予防していきます。

術後の経過

一般的に冠動脈バイパス術後、1週間くらい経過するとカテーテル検査またはCT検査を行って血流を確認します。

その後は1年後、5年後、10年後という頻度で検査を受けることが理想で、患者さん自身が意識的に検査を受けることが大切であると考えます。

 

なお、お電話での受診等のお問い合わせについては下記にて承っております。

≪平塚共済病院医療連携支援センター≫

受付時間:8:30~17:15(土曜・日曜・祝祭日を除く)

0463-32-1950

  • お問い合わせの際は「メディカルノートの記事を見た」とお伝えいただくとスムーズです

人工心肺装置を用いない心拍動下冠動脈バイパス手術で用いる吻合部固定装置Donut Heart Stabilizerを1996年より考案。また、2002年には術中グラフト造影装置をアジア・オセアニアで初めて取り入れた。さらに2010年、MIDCAB小切開創から容易にLITAを剥離できるMIDACCESS Retractorを考案。低侵襲手術を積極的に施行している。
2001年、CCT(Complex Catheter Therapeutics)にて、OPCAB3枝のライブ手術を執刀。インド ジャイプールのFortis Escort病院に招待されMIDCAB2枝のライブ手術を施行するなど国際的にも活躍している。

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