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膀胱がんの治療-手術から膀胱内注入療法まで

膀胱がんの治療-手術から膀胱内注入療法まで
加藤 伸樹 先生

九段坂病院 泌尿器科 部長

加藤 伸樹 先生

目次
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膀胱がんには、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)、膀胱全摘除術といった手術による治療のほかに、化学療法(抗がん剤治療)や放射線療法、膀胱内注入療法などの治療があります。治療方針はステージ(臨床病期)をもとに決定され、治療後も経過によっては抗がん剤やBCG(ウシの結核菌生ワクチン)を膀胱内に注入する治療が行われます。

膀胱がんの治療について、九段坂病院 泌尿器科部長の加藤伸樹先生にお話しいただきました。

記事4『膀胱がんの検査について』でお話ししたように、膀胱がんは「がんの深さ」、「リンパ節転移の有無」、「ほかの臓器への転移の有無」という3つの指標によってステージ(病期)が決まります。このステージをもとに、第一段階の治療方針を決定します。

さらに、後述の経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)で得られた組織の病理検査をもとに、その悪性度と、がんの根っこの深さと行った重要な情報を加味して、患者さんの体の状態や患者さんの希望を考慮して最終的な治療方針を決定します。

膀胱がんのステージ(病期)と治療

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)とは、先端にワイヤーループのついた内視鏡(体の内部を観察・治療する医療器具)を尿道に挿入し、高圧電流によって腫瘍を削り取るという手術です。膀胱がんの治療のスタートはこの手術です。この手術は根治を目指した治療でもあり、得られた組織から今後の外来フォローや追加治療の方針を決めるための重要な検査でもあります。経尿道的膀胱腫瘍切除術は、膀胱内に生理食塩水を溜めた状態で削り取る水中切開で行われます。

経尿道的膀胱腫瘍切除術

NBIを用いて切除範囲を決める

腫瘍は単発で存在するとは限らず、染み出すように広がっていることもあります。そのような場合、切除範囲を決めるために狭帯域光観察(NBI:Narrow Band Imaging)と呼ばれる特殊な光源を用いた検査を行います。通常の内視鏡検査に加えてこの検査を行うことによって、従来よりも腫瘍と正常組織の境目がわかるようになりました。

扁平なタイプの膀胱がん

左:通常光、右:NBI(加藤先生ご提供)通常光では確認しづらい扁平なタイプの膀胱がんもNBIを使えばよく見える。

ハイリスク群に対しては“2nd TUR”(再度内視鏡手術)を行う

ハイリスク群の膀胱がんに対しては、術後2か月以内に経尿道的膀胱腫瘍切除術を再度行う“2nd TUR”を実施する場合があります。以下のような進展リスクの高い膀胱がんは術後の外来フォロー中に進行してしまうことがあります。もう一度さらに筋層、腫瘍周囲を切除することによって後療法を確定し、進展を防ぐ目的で行います。

<ハイリスク群>

  • がんが筋層に達していないものの根が深い
  • 組織検査で悪性度が高いと判断された
  • 上皮内がんをともなう
  • 腫瘍が多発している
  • 腫瘍の径が大きい
  • 再発例

膀胱全摘除術は、がんの浸潤が筋層に達している場合に行われる手術です。腫瘍の位置や状態によっては、男性では膀胱と前立腺だけでなく、尿道を摘出することもあります。また、女性では子宮を摘出することがあります。

膀胱を全摘出した場合には、尿路変向を行わなければなりません。

尿路変向には、「回腸導管造設術」や「自排尿型新膀胱造設術」などがあります。

回腸導管造設術

回腸導管造設術は、腸を一部切り取って尿管とつなぎ、腸の先を体外に出して尿の出口に用いる方法で、膀胱がんの尿路変向として普及しています。体外に出した腸はストーマと呼ばれ、ストーマには尿をためる袋(パウチ)を取り付けます。ストーマパウチにたまった尿を排出したり、ストーマパウチを交換したりといったケアが必要となります。

自排尿型新膀胱造設術

自排尿型新膀胱造設術は、長めに切り取った腸を縫い合わせて新しく膀胱をつくり、尿管や尿道につなぐことで尿路変向を行う方法です。この方法では、尿の出口を新たにつくる必要はありません。手術時間は長くなるため、特に高齢の患者さんにとっては大きな負担となることがあります。術後、新膀胱では尿意(尿がたまる感覚)が自分の膀胱とは異なり、お腹が張ってきたような感覚になります。尿意がはっきりしないため定時的に排尿が必要となり、膨らみすぎると自己導尿が必要になります。

化学療法とは、抗がん剤を用いてがん細胞を殺したり、がん細胞の増殖を停止させたりする治療です。膀胱がんの治療では、化学療法のみで根治(病気を根本から完全に治すこと)を目指すのは難しいと考えられており、補助的な治療として用いられます。

膀胱がんの治療では、手術の前に腫瘍を縮小させたり、リンパ節に転移したがんを消失させたりする目的で、ゲムシタビンとシスプラチンという薬が用いられます。

また、手術後にも追加の治療として化学療法を行うことがあります。

放射線療法は、がんに放射線を照射してがん細胞を攻撃する治療です。膀胱がんの治療においては、高齢もしくは全身状態が悪いという理由で手術適応にならない場合、手術を望まない場合に行います。放射線療法のみでがんを根治することは難しいと考えられており、一般的に化学療法と併用します。

また、がんが骨に転移している場合、痛みを取り除く目的で放射線療法が行われることがあります。

抗がん剤の注入

術中所見で筋層非浸潤性膀胱癌と診断した場合、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)直後、あるいは24時間以内に、再発予防のため膀胱内に抗がん剤を単回注入します。膀胱がんの状態に応じて、外来で週1回の注入を10回程度行います。抗がん剤を注入するためには、膀胱内に尿をためておく必要があるため、出血があったり、膀胱に穴が開いていたりする場合(膀胱穿孔)には行われません。

BCG(ウシの結核菌生ワクチン)の注入

術後、ハイリスク群の膀胱がんに対しては、BCG(ウシの結核菌生ワクチン)を膀胱内に注入し、再発予防を行います。

一般的には、週に1回、トータルで6〜8回注入を行いますが、副作用の症状があまりに強ければ、2週間に1回の頻度にします。BCG注入の副作用としては、頻尿や排尿時痛があります。生ワクチンですので、結核菌に感染した場合と同様の症状(発熱、全身のだるさ、関節痛や結膜炎など)があらわれることもあり、その場合には薬で治療します。

また、膀胱内にBCGを定期注入するメンテナンス療法も有効であることが明らかになっており、九段坂病院では、再発を予防する目的で、3か月ごとに2週間連続で注入を行っています。

注射

生物学的療法(免疫療法)とは、免疫細胞を活性化する物質を投与し、免疫を高めることでがん細胞を攻撃するという治療です。生物学療法は、現在(2018年時点)まだ研究段階にあります。専門家によって医学的根拠があると認められているわけではなく、その効果については明らかになっていないことを理解しておく必要があります。

経尿道的膀胱腫瘍切除術で起こりうる合併症(ある病気や、手術や検査が原因となって起こる別の症状)には、出血、尿路感染、膀胱穿孔(ぼうこうせんこう:膀胱の粘膜に穴が開くこと)が挙げられます。どれも命にかかわるような合併症ではないため、適切な処置が行われれば大きな問題になることはないと考えられます。

内視鏡で行う経尿道的膀胱腫瘍切除術に比べると、膀胱全摘除術は大きな手術で、手術の合併症もさまざまです。膀胱全摘除術で起こりうる合併症には以下があります。

  • 腸閉塞…腸管の動きが悪くなり、便やガスが出なくなります。
  • 腎盂腎炎尿路感染症の一種で、腎盂で細菌が繁殖し腎臓が炎症を起こします。
  • 水腎症…尿管と腸管の吻合部が狭くなり、尿の流れが妨げられ、停滞した尿によって腎臓が拡張します。
  • 肺梗塞(エコノミークラス症候群)…血液が固まってできた血栓が血管に詰まる病気です。

膀胱全摘除術で起こりうる後遺症には、消化管運動障害、性機能障害などがあります。また、尿路変向を行った影響で、長期間経った後に腎臓の機能低下がみられる場合もあります。

膀胱がんは再発率が比較的高いがんであるため、筋層非浸潤性膀胱がんで治療が経尿道的膀胱腫瘍切除術だけで済んだ場合でも、術後に定期的に検査を受けていただき、経過観察を行う必要があります。最低2年間は、約3か月に1回の頻度で膀胱鏡検査と尿検査、尿細胞診検査を受けていただき、以降は6か月ごとの検査をします。再発がみられればその都度治療を行います。

加藤先生

先ほどもお話ししたように膀胱を摘出し、尿路変更を行う膀胱全摘除術はQOL(生活の質)に大きく関わります。しかし、膀胱がんと診断された場合でも、早期に発見されて治療を開始できれば、ご自身の膀胱を残したまま生活を送ることができます。

一度でも血尿がみられるなど、記事3『膀胱がんの症状とは?初期症状から進行した場合の症状まで』で紹介したような所見があった場合には、すぐに泌尿器科を受診していただきたいと考えます。
 

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