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脱腸(鼠径ヘルニア)とはどんな病気? その原因について

脱腸(鼠径ヘルニア)とはどんな病気? その原因について
長濵 雄志 先生

国家公務員共済組合連合会 九段坂病院 外科部長

長濵 雄志 先生

目次
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脱腸(鼠径ヘルニア)は、腹壁の間から鼠径部(太ももの付け根)に腸などの臓器が出たり入ったりを繰り返す病気です。厚生労働省の調査によると、2011年の時点で鼠径ヘルニアの手術を受けた患者さんは、年間約16万人との結果が出ています。鼠径ヘルニアには、先天性(生まれつき)のものと後天性(生まれた後にできたもの)のものがあります。

今回は、九段坂病院 外科部長の長浜雄志先生に、鼠径ヘルニアの原因や種類、そして鼠径ヘルニアになりやすい方の特徴について伺いました。

脱腸(鼠径ヘルニア)の原因と種類

鼠径ヘルニアの原因は

  • 先天性(生まれつき)
  • 後天性(生まれた後にできたもの)

に大きく分けられます。そして、鼠径部のどの部分に発生するかによってさらに細かく分類されます。

鼠径ヘルニアの原因

先天性の鼠径ヘルニア

妊娠9週目以降から出生までの間、男児は股間ではなく、腎臓の内側に睾丸を配置しています。出生の前になって(妊娠7〜8か月といわれています)はじめて、腎臓の内側から腹膜鞘状突起(腹部の内側を覆っている腹膜の一部が突起状に伸びたトンネル)を巻き込むような形で下降し、睾丸は通常のあるべき位置に移動します。女児の場合は、睾丸ではなくヌック管という管が腹膜鞘状突起を巻き込みながら下降します。

通常、この腹膜鞘状突起は産まれる前に閉鎖されるのですが、閉鎖されない場合もあります。このため、腸などがこの部分から出たり入ったりを起こし、生まれつき(先天的に)鼠径ヘルニアとなるのです。子どもに発症する鼠径ヘルニアは、先天性のものがほとんどです。

後天性の鼠径ヘルニア

後天性の鼠径ヘルニアの大きな原因は加齢です。加齢によって腹壁などの組織が弱くなり、腹膜が伸びること(ヘルニア嚢)で臓器が出入りを繰り返します。

ヘルニアの状態
ヘルニアの状態

・先天的に鼠径ヘルニアの因子をもっていた方が、加齢などの後天的原因が加わり発症する

・加齢という後天的な原因だけで発症する

など複数のパターンが原因で、大人は鼠径ヘルニアを発症します。

鼠径ヘルニアの種類

鼠径ヘルニアはその位置によって区別されており

の4種類に大別できます。

それぞれの鼠径ヘルニアが発生する位置
それぞれの鼠径ヘルニアが発生する位置

内鼠径ヘルニア

内鼠径ヘルニアと外鼠径ヘルニア
内鼠径ヘルニアと外鼠径ヘルニア

内鼠径輪(お腹から伸びている血管と精管の通り道)、下腹壁動静脈よりも内側の腹壁が弱くなり、ヘルニア嚢をつくるタイプを内鼠径ヘルニアと呼びます。腹壁組織が弱くなることが原因なので、中年以降の方、特に男性に多いとされています。

外鼠径ヘルニア

内鼠径輪に沿って腸などの臓器が出たり入ったりを繰り返すタイプを外鼠径ヘルニアと呼びます。外鼠径ヘルニアは、先天的要因と後天的要因の両方が関係しているため、子ども、大人のどちらにも発生する可能性があります。

大腿(だいたい)ヘルニア

鼠径靱帯という場所の下から、腸などの組織が出たり入ったりするタイプを大腿ヘルニアと呼びます。

鼠径靱帯の位置
鼠径靱帯の位置

閉鎖孔(へいさこう)ヘルニア

閉鎖孔(骨盤内にある孔)という場所をヘルニア門として発生するタイプを閉鎖孔ヘルニアと呼びます。

閉鎖孔の位置
閉鎖孔の位置

大腿ヘルニアと閉鎖孔ヘルニアは、高齢のやせ形女性で多産(複数回の出産経験がある方)である方に多いといわれています。

(女性の鼠径ヘルニアについての詳しい説明は、記事2『脱腸(鼠径ヘルニア)は女性も発症する病気』をご参照ください)

脱腸(鼠径ヘルニア)になりやすい方の特徴とは?

先にもご説明したように、後天性の鼠径ヘルニアの主な原因は、加齢により腹壁などの組織が弱くなることです。そのため、好発年齢(病気を発症しやすい年齢)は60~80歳です。また、普段から鼠径部に強い腹圧がかかっている方は、鼠径ヘルニアになりやすいと考えられていますが、正確なデータは出ていません

また、鼠径ヘルニアの発症に遺伝が関係しているかどうかについて、はっきりとしたデータはありません。