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乳がんの原因やリスクについて 乳がんを予防する方法はある?
乳がんの発症に大きく関わっているものが女性ホルモンである「エストロゲン」です。また、生活習慣なども乳がんのリスクになることがあります。それでは、具体的にどのようなことが乳がんのリスクとなるのでし...
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乳がんの原因やリスクについて 乳がんを予防する方法はある?

公開日 2018 年 06 月 13 日 | 更新日 2018 年 06 月 14 日

乳がんの原因やリスクについて 乳がんを予防する方法はある?
千島 隆司 先生

独立行政法人 労働者健康安全機構 横浜労災病院 乳腺外科部長

千島 隆司 先生

目次

乳がんの発症に大きく関わっているものが女性ホルモンである「エストロゲン」です。また、生活習慣なども乳がんのリスクになることがあります。それでは、具体的にどのようなことが乳がんのリスクとなるのでしょうか。本記事では、独立行政法人労働者健康安全機構 横浜労災病院乳腺外科部長である千島隆司先生に乳がんのリスク要因や予防についてお話を伺いました。

乳がんのリスク 出産経験がないこと

出産経験がない方は出産経験がある方に比べて、乳がんのリスクが高くなります。これは、月経周期によって繰り返される「エストロゲン」と「プロゲステロン」の周期的な上昇が大きな要因であるといわれています。

出産経験がない=月経周期(エストロゲンとプロゲステロンの定期的な上昇)が途切れなく続く

生理周期

乳がんの発症要因のひとつに、エストロゲンの増加があります。エストロゲンとは主に卵巣から分泌される女性ホルモンで、月経周期のうち卵胞期に多く分泌されています。

さらに、エストロゲンの増加に加えて、月経周期に伴うエストロゲンとプロゲステロンの定期的な上昇も乳がんのリスクになるといわれています。プロゲステロンは月経周期のうち黄体期に多く分泌される女性ホルモンです。

月経周期は妊娠・出産をすることで1年~1年半ほど中断し、その間は卵巣からエストロゲンとプロゲステロンの分泌量は減少します。

しかし、出産経験がない場合、月経に伴うエストロゲンとプロゲステロンの分泌が途切れなく続くことで、乳がんのリスクが高まるといわれています。そのほか、トータルの月経回数が多い方(たとえば、初潮が早い方や閉経が遅い方)も、乳がんのリスクが高いといえます。

乳がんの患者さんは40年で約7倍に増えている

乳がん罹患数・死亡数の年次推移 青が罹患数、黒が死亡数

上図は1975年以降の乳がんの患者数と死亡数の推移です。グラフをみると1975年から2015年の40年間で、患者数は約7倍に増加していることがわかります。これには、月経回数の変化が大きく影響していると考えられます。

女性が一生の間に産む子どもの数(合計特殊出生率)は1975年頃から減少傾向にあり、1人あたりの出産回数は少なくなってきています。さらに、初潮の低年齢化も進んでいることから、時代が進むにつれて女性の月経回数は増加しているといえます。

乳がんの患者数増加の背景には、ライフスタイルの変化もあるかと思いますが、月経回数の増加は乳がんの発症に大きな影響を与えていると考えられます。

乳がんのリスク 肥満

閉経後は脂肪細胞でエストロゲンが産生される

閉経後の女性では肥満(注)が乳がんの発症リスクになるといわれています。

先述の通り、閉経前では月経周期に伴って卵巣からエストロゲンとプロゲステロンが産生されていますが、閉経後には卵巣でこれらが産生されなくなります。

それを補うために、脂肪細胞などにあるアロマターゼという酵素でエストロゲンがつくられます。閉経後のエストロゲン増加は乳がんのリスクを高めることから、脂肪細胞を豊富に持っている肥満の女性は乳がんのリスクが高くなるのです。

(注)BMI[Body Mass Index:体重(kg)÷〔身長(m)×身長(m)〕]で30以上の場合

乳がんのリスク 飲酒

飲酒によって乳がんのリスクが高くなる可能性もあります。飲酒と乳がんの発症について関連性を調査した国際的な研究(主に欧米人女性を対象)では、アルコール摂取量がエタノール換算で1日10g増すごとに、乳がんのリスクが10%高くなるという結果が出ています。

しかし、日本人女性を対象とした国内の研究では、飲酒が乳がんのリスクを上昇させるという結果もあれば、飲酒と乳がんの関連性は認められないという結果も報告されていて、飲酒と乳がんの関連性は人種によって差があると考えられています。

このように、飲酒と乳がんの関連性について実際には明らかになっていない点も多々ありますが、リスクを上昇させるという結果も出ているため、過度な飲酒は避けていただきたいと思います。

乳がんのリスク 喫煙

たばこ

喫煙も乳がんの発症リスクを高めることが明らかとなっています。日本人女性を対象とした調査では、非喫煙者に比べて喫煙者の乳がん発症リスクは1.7倍であるという研究結果も出ています。また、たばこの煙には多くの発がん性物質が含まれていて、喫煙によって代謝物が乳房組織に形成されることも確認されています。

乳がんのリスク 糖尿病

糖尿病になると、高インスリン血症・高血糖状態となることから、これらが乳がんのリスクにつながるといわれています。

がん細胞には「インスリン様成長因子(IGF-1)」の受容体があり、IGF-1を取り込むことで増殖します。インスリン様成長因子はその名の示す通り、インスリンと構造がよく似ていることから、一部のがん細胞はインスリンを取り込むことでも増殖します。

また、がん細胞はブドウ糖(血糖)を取り込む性質も持っていることから、糖尿病が乳がん増殖を刺激する可能性があると考えられています。

(注)インスリン…膵臓で作られ、血糖を低下させるホルモン

乳がんのリスク 良性乳腺疾患

一部の良性乳腺疾患がリスクになることもある

良性乳腺疾患とは、乳房に発生する良性疾患の総称で、乳腺線維腺腫や葉状腺腫、乳管内乳頭腫などがあります。また、良性乳腺疾患は「過形成(元々体にある細胞の異常増殖)」なのか「腫瘍(元々体にない細胞の異常増殖)」なのかで大きく分けられ、さらにそれが「増殖性」なのか「非増殖性」なのかによっても病態が異なります。

このなかで、増殖性の乳管内乳頭腫(異常細胞に分類される)ができやすい人は、乳がんもできやすいと考えられています。そのため、このような良性乳腺疾患がみつかった場合、乳がんとの区別が難しい場合には検査切除(手術での摘出)を行う場合もあります。

ただし、乳がんのリスクになる良性乳腺疾患はほんの一部であり、多くの良性乳腺疾患(特に乳腺線維腺腫)は乳がんのリスクとは関連がないと考えられています。

乳がんは予防できる?

首を傾げている女性

「乳がんは予防できますか?」という質問をよく受けるのですが、乳がんの予防法は基本的にはありません。しかし、ここまでご説明したような乳がんのリスク因子を取り除いていただくことは大切であると考えます。

また、因果関係は明らかではありませんが、大豆やイソフラボンの摂取が乳がんのリスクを低下させるという研究もされています。

イソフラボンは乳がんのリスクを低下させる?

イソフラボン(注)の摂取量と乳がん発生の関連性について、国立がん研究センターが行った研究があります。この研究では、イソフラボンの摂取を「みそ汁をよく飲むグループ」と「大豆・豆腐・油揚げ・納豆をよく食べるグループ」のそれぞれに分けて調査を行っています。

研究の結果、大豆・豆腐・油揚げ・納豆の摂取と乳がんの発生には関連がみられませんでしたが、「みそ汁をよく飲む人ほど乳がんになりにくい」という結果が得られています。

ただし、この結果だけから、乳がんの予防のためにみそ汁を飲むという考えは早計であるといえます。みそ汁の大量摂取は食塩の大量摂取につながる可能性があり、違う病気を引き起こす可能性もありますので、あくまでも適度な摂取を心がけていただくことをお勧めします。

(注)イソフラボン…マメ科の植物に含まれている成分でポリフェノールの一種。大豆に含まれる大豆イソフラボンはエストロゲンに似た作用を持つ

1991年福島県立医科大学医学部卒業。横浜市立大学大学院に在籍中に、カルフォルニア大学・サンディエゴ校へ留学。留学期間中はGFP遺伝子の研究に携わり、世界で初めてGFP遺伝子を使ってがん細胞が転移する様子を確認することに成功。このGFP遺伝子の研究は2008年にノーベル化学賞を受賞した。(ボストン大学下村脩名誉教授)
帰国後は、乳がん治療の最前線に携わりたいという思いから、臨床医としての経験と技術を積み上げる。

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