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大動脈弁狭窄症の治療方法の1つ、TAVIとは?

大動脈弁狭窄症の治療方法の1つ、TAVIとは?
岩切 直樹 先生

北海道大野記念病院 循環器内科 主任医長

岩切 直樹 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年06月18日です。

大動脈弁狭窄症を根本的に治療するためには、手術治療の他に経カテーテル大動脈弁置換術、通称「TAVI」が検討されることがあります。TAVIは胸を切り開かず、カテーテルという医療用の細い管を使用して人工弁を入れる治療です。2002年にフランスで第一例が行われ、ヨーロッパを中心に広まったあと、2013年より日本でも手術治療の難しい患者さん向けに保険適用となりました。

今回はTAVIについて北海道大野記念病院 循環器内科 主任医長の岩切 直樹先生にお話を伺いました。

経カテーテル大動脈弁置換術は、Transcatheter Aortic ValveImplantationの略語として「TAVI」と呼ばれています。胸を切り開かず、カテーテルという細い管によって人工弁を入れる治療方法です。TAVIではカテーテルを大動脈まで進め、機能しなくなった大動脈弁を医療用のバルーンで押し広げ、その内側から人工弁を留置します。

TAVI、人工弁留置までの流れ

TAVIは胸を切り開く必要がありません。そのため、傷が小さく目立ちにくいのはもちろんのこと、身体の負担が小さく早期の回復が見込めます。また、手術治療で用いられることのある人工心肺を使用することもないため、それによる免疫の低下などの心配もありません。

カテーテル

TAVIは、カテーテルをどこから挿入するか(アプローチ方法)によって、大きく4つに種類が分かれます。ここではそれぞれの特徴についてご説明します。

<TAVI 4つのアプローチ方法>

  • 経大腿アプローチ
  • 経心尖アプローチ
  • 経鎖骨下動脈アプローチ
  • 直接大動脈アプローチ

TAVIアプローチの種類

経大腿アプローチでは太股の付け根を通る大きな血管からカテーテルを挿入し、心臓まで進めます。4つあるアプローチ方法のうち、カテーテルを通す距離はもっとも長いですが、傷が大きくても1cm弱と他のアプローチより小さく済み、2018年4月現在、多く行われている治療方法です。

しかし、下記のような方には治療が難しく、別のアプローチ、あるいは手術治療が検討されます。

<経大腿アプローチの難しい方>

  • 動脈硬化が強く、カテーテルを長距離通すのが難しい方
  • 小柄で血管の太さが足りない方
  • 大動脈に他の病気がある方
  • 大動脈の治療などで過去に人工血管を入れている方 など

経心尖アプローチは、心臓下部に位置する心尖部の筋肉に穴を開け、心臓に直接カテーテルを挿入します。この治療方法では血管内ではなく、肋骨と肋骨の間をメスで切り、その部分の肋間を押し広げてカテーテルを通します。

経鎖骨下動脈アプローチは鎖骨の奥に位置する鎖骨下動脈からカテーテルを挿入し、心臓を目指します。鎖骨下動脈へカテーテルを挿入する際、少し皮膚を切開する、傷が小さい治療方法であるといえます。

直接大動脈アプローチは、カテーテルが通る分だけ胸を切り開いて、カテーテルを挿入します。切り開く大きさは手術治療より小さいですが、手術治療同様に骨も少し切ることが特徴です。

病室

TAVIで懸念される合併症*は、基本的には手術治療による大動脈弁置換術と同様です。しかし、TAVIを行う際特に注意すべき合併症は以下のとおりです。なお、同等にかかりやすい合併症に関しては記事5『大動脈弁狭窄症の治療方法―術後の合併症・再発について』をご覧ください。

合併症……ある病気や、手術や検査が原因となって起こる別の症状

TAVIでは、カテーテルをどこから挿入するかによって懸念される合併症が異なります。傷が大きくなる経心尖アプローチや直接大動脈アプローチを用いる場合、傷から細菌が入ることよる創感染が懸念されます。

そのほか懸念される合併症は弁周囲逆流です。弁周囲逆流とは、人工弁と心臓の隙間から血液が漏れ出し、逆流を起こしてしまうことです。動脈硬化が進行し、心臓の組織がもろくなってしまっている方に生じやすい傾向があります。

TAVIで弁周囲逆流がみられる原因は、手術治療と違って人工弁を留置する場所に手を加えることが難しいからです。手術治療では、人工弁を縫い付ける前に機能しなくなった弁や組織を切り取り、なるべくきれいな状態で人工弁を縫い付けます。しかしTAVIの場合は、機能しなくなった古い弁を医療用のバルーンで押し広げ、人工弁を留置するため、治療後も古い弁が残ったままになります。そのため動脈硬化が強い患者さんの場合、人工弁と心臓の隙間がうまく埋められず、人工弁の脇から血液が漏れ出てしまうことがあります。

また、隙間を作らないようにバルーンで目一杯血管を押し広げようとすると、心臓が裂けてしまい命にかかわることもあるため、加減が難しい治療法という側面もあります。しかし、現在使用されているTAVIは、治療が確立されてから3代目ということもあり、このような課題に対する改善がなされてきています。
 

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