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血管腫とは?―2018年4月、口腔粘膜にできた血管腫への医療用レーザーによる治療が保険収載に

血管腫とは?―2018年4月、口腔粘膜にできた血管腫への医療用レーザーによる治療が保険収載に
丸岡 豊 先生

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 副病院長 歯科・口腔外科 診療科長 医工連携推...

丸岡 豊 先生

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血管腫とは血管が変化して塊のようになってしまう病気です。口の中はもともと血管が多いので血管腫ができやすく、痛みなどの症状はありませんが、肉眼で赤黒く膨らんだような症状がみられます。血管腫の治療はもともと手術、凍結療法や硬化療法などが選択されてきましたが、近年医療用レーザーによる照射法で治療できるようになりました。口の中にできた血管腫に対するこの治療方法は2018年4月に保険治療となりました。

今回は血管腫とその治療方法について国立国際医療研究センター病院 歯科・口腔外科診療科長の丸岡 豊先生にお話を伺いました。

血管腫とは、本来幅広く伸びていくはずの血管が変化し、異常な塊を作ってしまう病気です。病名に腫瘍の「腫」という字が今でも慣用的に用いられていますが、小児期に発症する先天性の血管腫(血管性腫瘍)を除いて、それらのほとんどは腫瘍ではなく、血管の発生異常(Vascular malformation)からなるものです。

血管腫(以下、血管奇形)は血管の塊なので、粘膜の薄い部分では透けてみえ、赤黒く膨らんだような印象です。一般的に痛みなどはありませんが、表面が膨らんでくることが多いため、食べ物を食べたときなどに誤って咬みやすく、それによる痛みや出血が生じることがあります。

血管腫

丸岡先生ご提供

血管奇形には生まれつきのものが多いとはいわれていますが、発症に気づかず病院を受診しない方もいるので、発症年齢や、好発年齢は一概にはいえません。ただ時間と共に少しずつ大きくなっていきます。

血管奇形は原因が明らかになっていませんが、外傷や感染、ホルモンなどの刺激により大きくなるという説もあります。1つだけではなく、複数の血管奇形がみつかるケースもあります。

血管

血管奇形は血流の速いものと遅いものとに分類され、以下のように分類することができます。

<血管奇形の種類>

血流の速いもの

  • 動静脈奇形

血流の遅いもの

これらが混在したものもありますが、この分類は治療を選択するうえで重要です。

血管奇形は診療で特徴を確認したあと、MRI検査や超音波検査などでより詳しく調べます。これらの検査によって具体的な血管奇形の種類を同定します。

MRI検査……磁気を使い、体の断面を写す検査

手術

サポーターやスポンジなどを用いて圧迫する方法です。

血管奇形に流入している血管を塞いで、しぼませてしまう治療法です。放射線科と共同して行うことが多いです。

薬剤を用いて血管奇形を固めてしまう治療法です。症状に合わせていろいろな薬剤を使い分けます。

手術の場合、ほとんどは入院、全身麻酔を要し、メスで切り取ります。部位によっては切除部分の変形が起きる可能性があります。また再発の可能性も否定できません。

凍結療法とは、液体窒素などを用いて病変を壊死させて除去する治療法です。こちらも手術治療同様、その部分に変形が起きる可能性があります。

上記の治療法にはそれぞれの特徴がありますので、よく検討して最善の方法を選んでください。

レーザー治療

一方、近年は上記の治療法以外にも医療用レーザーによる治療が用いられています。レーザー光は、赤血球内のヘモグロビンに吸収され、それが一瞬にして熱エネルギーに変換されることで異常な血管の塊を破壊し、血管奇形を縮小させます。表面からの照射だけでは効果が期待できない大きな口の中の病変の治療には「病変内照射法」との組み合わせが有効です。国立国際医療研究センター病院歯科・口腔外科ではNd:YAG(ネオジウムヤグ)レーザーといわれるものを使用しています。

Nd:YAG(ネオジウムヤグ)レーザーは血管奇形のなかでも静脈奇形、毛細血管奇形に用いられる治療方法です。

Nd:YAG(ネオジウムヤグ)レーザーによる病変内照射法は、部分麻酔下で行われます。全身麻酔の必要はありません。そのうえ治療時間が数分程度と短く、入院の必要はほとんどありません。

血管の塊がある部分の少し横に1mm程度の穴を開け、そのなかにレーザーのファイバーを通して、レーザーを照射しながらファイバーを引き抜いていきます。照射時の痛みはほとんどありません。レーザー照射後、30分ほど冷やし、出血がなければそのまま帰宅できます。

Nd:YAG(ネオジウムヤグ)レーザー照射後は、血管の一部が破裂した状態です。このため、施術後しばらくは内出血が広がります。しかし、この内出血は数週間〜1か月のうちに治り、徐々に元通りになります。

また、血管奇形のサイズが大きく、1度の照射で治療しきれない場合、複数回に分けて治療することもあります。この場合、治療と治療の間には半年ほど期間をあけるようにします。

保険診療

口の中の粘膜にできた血管奇形への医療用レーザーによる治療は2018年4月より保険治療に収載されたため、費用の面でも治療が受けやすくなりました。しかし、レーザー治療が受けられる病院は限られているため、受診する際は注意が必要です。
 

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  • 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 副病院長 歯科・口腔外科 診療科長 医工連携推進室長、東京医科歯科大学 臨床教授

    丸岡 豊 先生

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