くも膜下出血とは、おもに脳の血管にできた瘤が破裂して起こる病気です。くも膜下出血を発症すると、「ハンマーやバットで殴られたような」激しい頭痛とともに、意識障害が起こることが多いとされています。くも膜下出血の症状について、医療法人春秋会 城山病院の島野裕史先生にお話を伺いました。
くも膜下出血には、以下の症状があります。
くも膜下腔への出血が生じると、くも膜の外側にある硬膜が圧迫されることで非常に激しい頭痛が起こります。この頭痛は非常に激しい痛みを伴い、通常の頭痛と明らかに異なるとされています。
【くも膜下出血で起こる頭痛の特徴】
くも膜下出血では、非常に激しい頭痛とともに、意識を失うなどの意識障害が起こることがあります。出血の度合いによって、意識障害の重症度は異なります。出血が少量の場合には、意識障害がなく頭痛だけが起こるケースもあります。
くも膜下腔への出血が多量の場合、急激に頭蓋内圧が上昇(頭蓋内圧亢進)することで、嘔吐やめまいなどが起こりえます。
脳動脈瘤があるだけでは、特別な状況を除いてほとんど症状が起こりません。多くの場合、脳動脈瘤が突然に破裂して初めて激しい頭痛や意識障害などの症状が起こります。
しかし、ケースによっては、警告出血による軽度の頭痛や、内頚動脈の近くにできた動脈瘤によって目の症状は前兆として現れる可能性があります。
くも膜下腔への微小の出血(警告出血)によって、頭痛が起こることがあります。しかし、「いつもよりひどい頭痛」「風邪の症状」などと間違った解釈で見過ごされてしまうこともあります。くも膜下出血を早期に発見するために、このようなケースは回避せねばなりません。
警告出血は、その後急激に症状が現れるリスクをはらんでいます。いつもと違う頭痛だと感じたときには、すぐに病院の脳神経外科を受診してください。
内頚動脈という血管に動脈瘤が発生し、動眼神経(眼球運動にかかわる神経)が圧迫された場合、以下のような目の異常が起こることがあります。
など
動眼神経の症状を伴う内頚動脈に発生した動脈瘤は、破裂しやすく、危険度が高いとされています。そのため、瞼が下がる、ものが二重にみえるといった目の症状が現れたときには、すぐに病院を受診しましょう。このような状況は「待ったなし」です。
くも膜下出血は、いきみ(息を込めておなかに力を入れる)を伴う行為によって血圧が乱高下(急激な上昇・下降)する、以下のような状況で起こりえます。
くも膜下出血は、頭痛と同時に意識障害が起こることが多いため、道に倒れているところを発見されるケースも少なくありません。
「Hunt and Kosnik(ハントアンドコスニック)分類(1974)」では、症状によって、くも膜下出血をグレード0から5に分類します。
・グレード0:未破裂の動脈瘤
・グレードⅠ:無症状か、最小限の頭痛および軽度の項部硬直をみる
・グレードⅠa:急性の髄膜あるいは脳症状をみないが、固定した神経学的失調のあるもの
・グレードⅡ:中等度から強度の頭痛、項部硬直をみるが、脳神経麻痺以外の神経学的失調はみられない
・グレードⅢ:傾眠状態、錯乱状態、または軽度の巣症状を示すもの
・グレードⅣ:昏迷状態で、中等度から重篤な片麻痺があり、早期除脳硬直および自律神経障害を伴うこともある
・グレードⅤ:深昏睡状態で除脳硬直を示し、瀕死の様相を示すもの
引用元:http://www.jsts.gr.jp/guideline/182_184.pdf
これまでお話ししたように、くも膜下出血は脳動脈瘤が破裂するまで無症状であることが多いです。そのため、警告出血による頭痛や瞼が下がるといった、前兆といえる症状が現れた場合には、まずは病院の脳神経外科を受診しましょう。そこで未破裂の脳動脈瘤を発見できれば、くも膜下出血を未然に治療することが可能になります。
くも膜下出血の症状は、激しい運動をする、重いものを運ぶなど、いきんだときに起こることが多いです。そのため、いきむ行為のあとにいつもと違う頭痛が起こった場合には、絶対に放置せず、ただちに病院(脳神経外科)を受診してください。
もし何も発見されなければ安心できますし、早期にくも膜下出血をみつけられれば治療の可能性は上がります。「ただの頭痛」と思わずに、きちんと検査することが大切だと考えます。
医療法人春秋会城山病院 脳・脊髄・神経センター
島野 裕史 先生の所属医療機関
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