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弁膜症の治療―弁を整える「形成術」と人工弁を入れる「置換術」
心臓の弁が機能しなくなり、血液の循環がスムーズに行えなくなる弁膜症は、外科的治療やカテーテル治療*といった外科的治療を行うことによって、根本的な治療を目指します。外科的治療は、機能しなくなった心...
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弁膜症の治療―弁を整える「形成術」と人工弁を入れる「置換術」

公開日 2018 年 06 月 18 日 | 更新日 2018 年 09 月 19 日

弁膜症の治療―弁を整える「形成術」と人工弁を入れる「置換術」
大川  洋平 先生

社会医療法人 孝仁会 北海道大野記念病院 副院長・心臓血管センター長・医療安全管理部長

大川 洋平 先生

目次

心臓の弁が機能しなくなり、血液の循環がスムーズに行えなくなる弁膜症は、外科的治療やカテーテル治療といった外科的治療を行うことによって、根本的な治療を目指します。外科的治療は、機能しなくなった心臓の弁を修復して機能を再生させる「形成術」と、新たな弁として人工弁を挿入する「置換術」とがあり、病気の種類や患者さんの状態に応じて決定されます。また、置換術を選択した場合は用いられる人工弁にさまざまな種類があるため、目的や患者さんの希望に合わせた選択が必要です。

今回は弁膜症の治療方法について、北海道大野記念病院 副院長・心臓血管外科・心臓血管センター長の大川洋平先生にお話を伺いました。

カテーテル治療……「カテーテル」と呼ばれる医療用の細い管を血管内に通して行う治療方法

弁膜症の治療方法

薬

根本的な治療は外科的治療のみ

弁膜症は心臓の弁がうまく機能しなくなる病気なので、壊れた弁を修繕したり、新しい弁を入れたりして、再び弁が機能するように治療する必要があります。そのためには、手術治療やカテーテル治療などの外科的治療が必要です。

薬物治療は対症療法

弁膜症の患者さんに対し、症状を緩和させるために薬物治療が用いられることもあります。特に僧帽弁の狭窄症や閉鎖不全症の場合、利尿剤や降圧剤などの薬物で血液の逆流を一時的に防げることがあります。

しかし、薬で弁の機能を回復させることは不可能であるため、最終的には外科的治療が必要となることがほとんどです。

外科的治療の手段

形成術と置換術

それではここで、弁膜症の外科的治療について詳しく説明します。弁膜症の外科的治療には、一部例外を除いて2つの治療方法があります。それは、機能しなくなった弁を修繕し再び機能するようにする「形成術」と、機能しなくなった弁の代わりに新しい弁を入れる「置換術」です。次項ではそれぞれの治療方法についてご説明します。

弁膜症の形成術

手術

手術治療で弁を修復し、機能を再生する

形成術は機能しなくなった弁を手術治療でうまく修繕し、弁の機能を回復させる治療方法です。この治療では、人工弁輪というリング状の人工物を入れて弁周囲の形状を整え、弁尖(弁の先端)の形やはたらきを手作業で整えます。ただし、弁のはたらきが悪くなる理由は患者さんによって異なるため、治療方法の詳細もそれぞれ異なります。

また、僧帽弁に対する治療の場合、弁尖を支える腱索(けんさく)が劣化していることもあり、この場合には人工腱索を使用して弁の機能を再生します。

僧帽弁の構造

人工物の挿入が少ない

形成術では人工物をほとんど用いず、使用したとしても数か月後には細胞に覆われ、いずれ身体に同化していきます。もともと備わっている患者さん自身の弁を使って治療するため、人工物を入れた場合に生じる感染症や血栓の発生などのリスクが少なく、その分術後の懸念点が少ないのが特徴です。以上の理由から外科医はまず置換術より形成術の適応を考え、治療を検討します。

主に閉鎖不全症の患者さんに用いられる

しかし、形成術はすべての弁膜症に適した治療とはいえません。

形成術は主に弁が緩んで血液が逆流してしまう「閉鎖不全症」に用いられます。特に僧帽弁閉鎖不全症は、構造上形成術を行いやすいため、多くは形成術で治療されます。

一方、大動脈弁閉鎖不全症は患者さんの状態に応じて、形成術と置換術のどちらも検討されます。これは大動脈弁の構造が単純であるがゆえに、形成術での治療効果が十分に見込めない場合もあるからです。

また、血流の出口が狭まる「狭窄症」の場合には、形成術はほとんど不可能といえます。なぜならその場合、動脈硬化によって元来柔軟性があるはずの弁尖そのものが変性し、硬くなってしまっているため、弁の形を整えても機能が回復することは難しいからです。そのため狭窄症は、次に説明する「置換術」での治療が検討されます。

弁膜症の置換術

カテーテル治療

手術治療、あるいはカテーテル治療にて人工弁を挿入する

置換術は機能しなくなった自身の弁の代わりに人工弁を挿入し、弁の機能を再生する治療方法です。この治療方法は、手術治療だけでなく、カテーテル治療によって行われることもあり、大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的人工弁置換術のことを「TAVI」といいます。TAVIについては同院 循環器内科の岩切直樹先生の記事『大動脈弁狭窄症の治療方法の1つ、TAVIとは?』も併せてご覧ください。

手術治療における置換術は、機能しなくなった患者さん自身の弁を取り除き、周囲の状態を整えたあと、弁輪と人工弁を縫い合わせる治療です。形成術と比較すると治療方法が統一化されており、治療時間も短く済むことが多いです。

2つの人工弁

手術治療における置換術では「生体弁」「機械弁」という2種の人工弁が用いられます。ここではそれぞれの人工弁についてご説明します。

TAVIでは用いられる人工弁が異なります。TAVIの人工弁に関しては同院循環器内科の岩切直樹先生の記事も併せてご覧ください。

生体弁

生体弁とはウシの心膜やブタの心臓弁を加工して作られる生体由来の人工弁です。元々が生体の組織であるため、機械弁と比較すると血栓ができにくく、血液を固めづらくする「ワーファリン」という薬の服用が治療後3か月程度で済むことが特徴です。

その一方、生態の組織であるために機械弁と比較すると耐久性が弱く、患者さんの年齢にもよりますがおよそ10〜15年で弁の機能が低下し、再手術が必要となる場合があります。

本記事の「ワーファリン」は抗凝固薬一般を指しています(正確には、抗凝固薬はワーファリン以外にも種類があります)。なお、抗凝固薬の中でも「非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)」はビタミンKの影響を受けにくく、これを生成する納豆などの食品の摂取制限は不要とされています。

機械弁

機械弁は炭素繊維やチタンから作られる人工弁です。耐久性が強く、一度置換すると基本的には生涯機能することが大きな特徴です。

その一方、人体にとって全くの異物を入れることになるので、細菌感染が懸念されます。また、付近に血栓ができやすいという特徴もあり、生涯ワーファリンの服用が必要です。

生体弁と機械弁、選択は?

どちらにしようか迷う人

懸念点を考慮し、患者さん自身が行うことも

手術治療で置換術を選択する場合、人工弁を生体弁と機械弁から選択します。従来は年齢などを目安に医師が判断していましたが、近年は下記の懸念点を説明したうえで患者さんご本人が決定することもあります。

大動脈弁狭窄症を例に取ると、日本胸部外科学会のデータ(弁膜症2008年学術調査結果)では年間7,050例の手術が行われ、そのうちの61%が生体弁、38%は機械弁を使用したことが分かっています。ご高齢の患者さんが多い大動脈弁狭窄症では、生体弁を選択する患者さんが多いようです。

再手術の可能性

手術

前述の通り、生体弁を選択した場合、弁の劣化によって再手術が必要となる場合があります。弁膜症の手術は複数回行うことが可能ですが、手術回数が増えれば増えるほど癒着などの影響で手術時間も長くなり、より心臓に負担がかかりやすくなってしまいます。

また、純粋に手術による体の負担や痛みから、「二度目の手術は受けたくない」と訴える患者さんもいます。そのため、再手術を望まない患者さんには機械弁を勧めることがあります。

ワーファリンの服用期間

薬

一方、機械弁を選択した場合、再手術が必要となる可能性は低いのですが、血栓予防のためにワーファリンの服用が一生涯必要となります。ワーファリンの生涯服用は単純に手間が増えるだけでなく、服用によって出血時に止血が困難になってしまうので、他の病気に対する手術の際や、事故等による怪我の際、危険が伴います。そのため、運動を好む方など怪我のリスクを懸念する患者さんの場合、年齢が若くてもワーファリンの生涯服用が不要な生体弁を選択することがあります。しかし、若い方が生体弁を使用する場合、ご高齢の方に比べて弁の劣化が早まることもあります。

また、機械弁を選択すると納豆などの食品の摂取に気をつけなければなりません。これは納豆に含まれるナットウキナーゼが身体のなかでビタミンKを生成し、ワーファリンの効果を下げてしまうからです。ビタミンKは肝臓に入ると血液の凝固因子を作る役割があります。

本記事の「ワーファリン」は抗凝固薬一般を指しています(正確には、抗凝固薬はワーファリン以外にも種類があります)。なお、抗凝固薬の中でも「非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)」はビタミンKの影響を受けにくく、これを生成する納豆などの食品の摂取制限は不要とされています。

治療後の注意点

歯医者

歯科治療に注意

弁膜症の外科的治療ではどの治療を選択しても、多少の人工物が挿入されます。人工物に細菌が付着すると、感染症を引き起こすことがあります。

血管内に細菌が入り込む原因の1つに歯科治療があります。歯科治療によって口腔内に傷ができると、そこから細菌が入り込み、血管内で人工物に付着することで感染症につながる恐れがあります。

形成術の場合、人工弁輪等を使用しても数か月後には細胞に覆われてしまうため、いずれこのような感染のリスクは少なくなります。一方で、人工弁は生涯このような危険を伴うため、歯科治療は可能な限り手術治療前に済ませてしまうことが望ましいです。

また、もし人工弁の挿入後に歯科治療が必要になった場合は、必ず歯科医に申し出るようにしましょう。

弁膜症、治療後の再発の危険性

形成術は再発の危険性がある

形成術は治療後体内に残る人工物が少なく、感染症や血栓の発生などのリスクが少ない反面、患者さん自身の弁を残す治療なので、治療後再度弁が変性してしまうことも考えられ、再手術が必要になる場合がまれにあります。

変性……細胞や組織が変化すること

置換術は生体弁を用いた場合、再手術の恐れがある

置換術は形成術のような弁膜症そのものの再発はほとんどありません。しかし、前述の通り生体弁による治療を選択した場合、人工弁が10〜15年で変性しうまく機能しなくなることで、再手術が必要になる可能性があります。
 

弁膜症 (大川 洋平 先生)の連載記事

1987年旭川医科大学医学部卒業。2010年より大野記念病院心臓血管外科副院長に就任。心臓血管外科医として心臓血管センター長も務める。

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