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肝細胞がんの治療の種類と特徴について

肝細胞がんの治療の種類と特徴について
窪田 敬一 先生

本庄記念病院 消化器外科

窪田 敬一 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年07月26日です。

2018年現在に行われている肝細胞がんの治療は、手術(肝移植を含む)・穿刺局所療法・肝動脈塞栓療法・化学療法の4種類です。そして、腫瘍の数や大きさによって、それぞれの患者さんにもっとも適している治療法を選択します。また、手術で肝臓を切除する際は、肝機能の値からどの範囲まで切除可能かを適切に判断することが重要です。

今回は、獨協医科大学病院外科診療部長の窪田敬一先生に肝細胞がんの治療の種類と特徴についてお話しを伺いました。

肝細胞がんの治療法は、大きく

  • 手術(肝移植を含む)
  • 穿刺局所療法
  • 肝動脈塞栓療法
  • 化学療法

の4つです。

肝細胞がんの大きさや数、肝臓の機能がどの程度あるかなどの検査し、それぞれの患者さんの適した治療法を選択します。

(肝臓がんのステージ(病期)について詳しくは、記事1『肝臓がんとは 種類や症状について』をご参照ください)

以下では、肝細胞がんのそれぞれの治療法についてご説明します。

腫瘍の数が3個までの患者さんが手術の適応となります。肝細胞がんの手術は、メインの腫瘍と共に、周囲に散らばっている小さな腫瘍も合わせて肝臓を切除します。そのため、肝細胞がんの治療のなかでもっとも病気を根本から治す治療法です。

手術の前には肝臓の機能を測定する

また、手術の前に、その患者さんの肝臓の機能がどの程度なのかを測り、切除できる範囲を適切に判断することが重要です。肝臓の機能を測る検査としては、ICG検査(インドシアニングリーン試験)が実施されています。ICG検査では、インドシアニングリーンという色素を患者さんの静脈に注射し、15分後に採血をします。色素は胆汁のなかに排出されるため、血液のなかにどの程度インドシアニングリーンが残っているのかを調べることで、肝臓の機能も測ることができるのです。肝臓の機能が正常な方であれば、15分後に血液中に残っているインドシアニングリーンは10%未満です。

そして、ICG検査で測った肝機能の数値とCTの画像をコンピューターに取り込み計算しながら、肝臓のどの範囲を切除するかの術式を決定します。この判断が適切でなかった場合、術後の患者さんの生活に支障をきたし、肝不全に陥る危険性があります。なお、腫瘍の大きさと肝機能の値は比例しているわけではありません。

肝移植が保険適応になる基準とは

肝臓の機能が低下している場合などは、自身の肝臓すべて摘出しドナーの肝臓を移植する、肝移植が選択されることもあります。肝細胞がんの患者さんが肝移植を希望する場合、保険適応で実施するためには「ミラノ基準」というものを満たしてる必要があります。

ミラノ基準(1996年)

単発癌:直径5 センチ以下
多発癌:直径3 センチ以下3個まで

※除外事項
血管内:リンパ管内の腫瘍浸潤なし
リンパ節:他臓器の転移なし

ミラノ基準の内容は、腫瘍が多発している場合、3センチメートル以内の腫瘍が3個以内であること、腫瘍が1つの場合は5センチメートル以内であることというものです。また、前提条件として血管内とリンパ管内への広がりがなく、リンパ節・多臓器への転移がないことが必要です。このミラノ基準を満たしていれば、肝移植後の予後が良好である可能性が高いというデータが出ているため、保険適応となるのです。なお、ミラノ基準を満たしていない患者さんは、保険適応外であれば肝移植を受けることが可能です。

穿刺局所療法とは、体の外から腫瘍に向けて針を刺し、熱を加え腫瘍を熱凝固させる治療法です。針を刺した腫瘍だけを焼灼するため、周囲に飛んでいるかもしれない小さながん細胞を治療することはできません。そのため、そういった細胞が大きくなった場合は、再度治療を実施します。穿刺局所療法の対象となる患者さんは、腫瘍の数が3つ以内で大きさが3センチメートル以内の方です。

穿刺局所療法には

  • ラジオ波焼灼療法(RFA)
  • 経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)
  • 経皮的エタノール注入療法(PEIT)

の3種類があります。2018年現在、もっとも推奨されているものはラジオ波焼灼療法です。ラジオ波焼灼療法とは、周波数が約450キロヘルスの周波(AMラジオなどと近い周波)を流すことで腫瘍を焼灼します。

肝動脈塞栓療法とは、脚の付け根から大腿動脈にカテーテル(医療用の管)を挿入し、肝臓の腫瘍に栄養を届けている血管に塞柱物質を入、腫瘍に栄養が行き届かないようにする治療法です。腫瘍の大きさが3センチメートル以上で、2~3個、または大きさに関わらず4個以上腫瘍がある患者さんが対象です。また、肝動脈塞栓療法はその他の治療法と併用して実施することもあります。

腫瘍の数が4個以上になると、抗がん剤を使用する化学療法の適応となります。それ以上の悪性度である場合などは、緩和療法を選択することも可能です。

シニア男性
素材提供:PIXTA

肝細胞がんの治療による主な合併症としては、以下のものがあります。

*合併症…ある病気や、手術や検査が原因となって起こる別の症状

効果的な焼灼ができたかは治療後にわかる

穿刺局所療法は、高熱で腫瘍を熱凝固させるためバブルが発生し、治療中は腫瘍の輪郭がはっきりとみえません。そのため、腫瘍を効果的に焼灼することができたかどうかは、治療後にCT検査やMRI検査を実施するまでわかりません。

*CT…エックス線を使って身体の断面を撮影する検査
*MRI…磁気を使い、体の断面を写す検査

腫瘍が腹腔内に散らばること起こる合併症

治療後が終了し腫瘍から針を抜く際、針のルートから腫瘍が腹腔内に散らばり、腹膜にがんが発生する可能性があります。

出血

穿刺局所療法はある程度太い針を肝臓に刺すため、腹腔内・胸腔内・胆道から出血することがあります。

肝不全

肝臓を切除した後に肝不全を起こすことがあります。特に、B型肝炎C型肝炎を発症していることで、もともと肝臓の機能が低下している患者さんに多くみられます。非常に重い場合は命を落とすこともあります。術後に肝不全を起こさないためには、手術前に切除できる肝臓の範囲をしっかりと見極めることが重要です。

手術中の出血

肝臓の内部には多くの血管が走っており、血液が非常に多く保有しています。そのため、手術中に失血を起こし、輸血などの処置が必要になる場合があります

胆汁漏

手術で切除した場所から胆汁(肝臓から分泌されている消化液)が漏れ出ることがあります。胆汁漏があるとドレーン(排液管)を抜くまでの期間が長くなります。

ドレーン(排液管)…体内にある血液や体液を外に出すために用いるカテーテル(医療用の管)のこと

医師
素材提供:PIXTA

肝細胞がんの再発には、肝内転移(IM)と多中心性(MC)の2つのパターンがあります。肝内転移とは、最初の治療のときからあったがん細胞が周囲に転移し再発することです。一方多中心性とは、一度治療したところとは別のところに新しく肝細胞がんができることです。たとえば、B型肝炎C型肝炎の患者さんは、がんを治療してもウイルスを排除したわけではないため、違う場所に再び肝臓がんが発生する可能性があります。

どちらのパターンの再発なのかは、再発した期間で判断することができます。術後2から3年ほどは、どちらの再発も考えられます。しかし、それ以降の場合は多中心性が多いといわれています。

肝細胞がんの場合、再発をしても腫瘍の数が3個以内であれば再度手術を行うことが可能です。複数回手術をできることは、肝細胞がんならではの特徴です。

普段通りに生活することが可能
素材提供:PIXTA

肝細胞がんの手術後の生活では、肝臓に負担をかける食生活(大量の飲酒や高カロリー食)は控えるようにしてください。また、B型肝炎C型肝炎の患者さんは最低でも半年に1回、その他の患者さんは最低でも1年に1回、肝細胞がんの検査を受けるようにしてください。なお、その他の大きな制限はないため、普段通りに生活することが可能です。

先生

肝細胞は早期に発見できれば効果的な治療が望めるようになりました。また、再発をした場合の治療法も確立されつつあります。

病院の医師としっかり相談をし、4つの治療法のなかから適切な治療法を選択してください。そして、諦めずに治療に臨んでいただきたいと考えています。

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