【編集部記事】
【医師監修】インフルエンザの薬の効果や副作用―使用してはいけない薬はある?
公開日 2018 年 06 月 14 日 | 更新日 2018 年 06 月 22 日
- インフルエンザ
- インフルエンザ(こども)

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[医師監修] メディカルノート編集部
目次
- インフルエンザの薬にはどのような効果や役割があるの?
- インフルエンザにかかったときに処方される薬の種類
- 抗インフルエンザ薬で現れる可能性のある副作用
- インフルエンザにかかったときに市販の薬は使ってもよいの?
- 妊娠中に抗インフルエンザ薬を使っても大丈夫?
- 子どもが抗インフルエンザ薬を使用しても大丈夫?
- インフルエンザにかかったときは薬を使うほうがよい?
インフルエンザに自分がかかったときや家族がかかったときには、「早く症状を抑えたい」、「周りにうつしたくない」と思われる方は多いのではないでしょうか。
インフルエンザにかかったときに病院で処方される薬には、タミフル®・イナビル®・リレンザ®などいくつかの種類があります。また、市販されている薬のなかには、使用を避けた方がよい薬もあります。
この記事では、インフルエンザの治療に使用される薬の特徴や副作用、注意しなければならないポイントなどについてお伝えします。
インフルエンザの薬にはどのような効果や役割があるの?
インフルエンザウイルスの増殖を抑え、症状を軽くする役割がある
インフルエンザは、インフルエンザウイルスが体内で増殖することで起きる感染症です。インフルエンザにかかったときに病院で処方される抗インフルエンザ薬は、ウイルスの増殖を抑える効果があります。
ウイルスの増殖を抑えることができると、急激な発熱、全身のだるさや関節痛といったインフルエンザの症状が比較的軽く済むといわれています。インフルエンザウイルスの増殖は発症してから48時間がピークであるため、48時間以内に抗インフルエンザ薬を使用することが重要です。
インフルエンザにかかったときに処方される薬の種類
病院で処方される抗インフルエンザ薬として、タミフル®・イナビル®・リレンザ®の3種類がよく知られています。2018年3月にはゾフルーザ®という新しい薬の使用が日本国内で始まりました。これらの4種類の薬には、使いかたや投与回数(使う回数)の違いがあります。
タミフル®の特徴と使用方法
タミフル®には、次のような特徴があります。
- 内服薬(飲み薬)
- 種類はカプセル状(成人向け)、ドライシロップ剤(子供向け)の2種類
- A型またはB型インフルエンザのどちらにも使用できる
- 腎臓病を持つ方は腎機能低下のリスクがあるため、事前に医師に相談が必要
- 新生児や子どもの場合は使用できないことがある
イナビル®の特徴と使用方法
イナビル®には、次のような特徴があります。
- 吸入薬(口から吸入する薬)
- A型またはB型インフルエンザウイルスのどちらにも使用できる
- 喘息などの呼吸器の病気がある方、以前にイナビル®を使用してアレルギーが出たことがある方は、使用を控えることがある
- 乳製品のアレルギーを持つ方は使用できない(成分に乳製品が含まれるため)
- 効果が長く持続するため、最初に1回吸入するだけでよい
10歳未満の子どもは1容器を1回吸入、10歳以上の方は2容器を1回吸入します。場合によっては、2日間にかけて2回吸入することもあります。薬を一気に吸うことが難しい子どもの場合は、内服薬であるタミフル®を使うことが多いようです。
リレンザ®の特徴と使用方法
リレンザ®には、次のような特徴があります。
- 吸入薬(口から吸入する薬)
- A型またはB型インフルエンザウイルスのどちらにも使用できる
- 喘息などの呼吸器の病気がある方、以前にリレンザ®を使用してアレルギーが出たことがある方は、使用を控えることがある
- 5歳以上、かつ、上手に吸入できる場合には子どもも使用できる
リレンザ®は、1日2回、5日間吸入します。薬を一気に吸うことが難しい子どもの場合は、内服薬であるタミフル®を使うことが多いようです。
新薬ゾフルーザ®の特徴と使用方法
2018年2月に厚生労働省に承認されたインフルエンザの新薬ゾフルーザ®は「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」と呼ばれており、ウイルスが細胞のなかで増殖するのを抑える効果があります。ウイルスが細胞の外に出て増殖するのを抑える効果があるタミフル®・イナビル®・リレンザ®に比べて、よりウイルスの広がりを抑えることができるといわれています。
ゾフルーザ®には、次のような特徴があります。
- 内服薬(飲み薬)
- A型またはB型インフルエンザウイルスのどちらにも使用できる
- 効果が長く持続するため最初に2錠飲むだけでよい
- 12歳未満の子どもの場合は、体重が10kg以上で、錠剤の薬を上手に内服できる場合は使用してよい(体重に応じて、薬の量は変わる)
抗インフルエンザ薬で現れる可能性のある副作用
吐き気や嘔吐、下痢などの症状が出ることがある
抗インフルエンザ薬の副作用としては、吐き気や嘔吐、下痢などの消化器症状が出やすいといわれています。そのほかにも、めまいや味覚が変わるという方もいるようです。薬の種類によって現れる症状が異なることがあります。
また、タミフル®に比べて、イナビル®・リレンザ®の方が比較的副作用が出にくいといわれています。
インフルエンザにかかったときに市販の薬は使ってもよいの?
インフルエンザ脳症を引き起こすことがあり、市販薬は使わないほうがよい
インフルエンザにかかると、38度以上の高熱や全身の関節痛、倦怠感などが急激に起こります。そのようなときに、病院に行って長時間待つというのはとてもつらいことです。手に入りやすい市販の解熱鎮痛剤や総合風邪薬を使おうと思うかもしれません。
しかし、市販の薬のなかには、インフルエンザが重症化してかかるインフルエンザ脳症を引き起こすとされている成分が入っているものもあります。特にNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)とよばれる解熱鎮痛剤は、飲んではいけません。
インフルエンザの可能性がある場合は、市販の薬を使わずに、病院に行って医師の診察を受けることがよいでしょう。
妊娠中に抗インフルエンザ薬を使っても大丈夫?
重症化を防ぐためにも、妊娠中に抗インフルエンザ薬を使ってもOK
妊娠している方は妊娠していない方に比べて、インフルエンザにかかったときに重症化しやすいことが知られています。そのため、もしインフルエンザにかかったら、できるだけ早い段階(発症後48時間以内)で抗インフルエンザ薬を使用することが重要とされています。
授乳中の母親がインフルエンザにかかったときは、子どもへの感染を防ぐため、しっかりと手洗いをしてマスクを着用した状態で、直接母乳を与えてもよいとされています。タミフル®やイナビル®などの抗インフルエンザ薬を使用していても、授乳をしてよいといわれています。
子どもが抗インフルエンザ薬を使用しても大丈夫?
年齢などにより使用してよいかが異なる
子どもに対して、いつから抗インフルエンザ薬を使用してよいかは、薬によって異なります。
- タミフル®は生後2週間から
- イナビル®は吸入が上手にできるようになってから(2018年5月現在、特に年齢の制限はありません。)
- リレンザ®は5歳から、かつ、吸入が上手にできるようになってから
- ゾフルーザ®は体重が10kgを超えてから
子どもがインフルエンザにかかったときには、抗インフルエンザ薬の種類や使用の有無にかかわらず、飛び降りたり、急に走り出したりといった異常行動が報告されています。インフルエンザが重症化してかかるインフルエンザ脳症によっても異常行動がみられることがあります。このため、異常行動が薬の影響なのか、インフルエンザそのものの影響なのか、はっきりしません。
いずれにしても、異常行動による転落などの事故を防ぐために、薬を使用してから少なくとも2日間は、就寝中も含めて子どもが1人きりにならないように気を付けてください。
タミフル®については、2018年5月現在、10歳以上の未成年への使用が禁止されています。これは、従来タミフル®と10代の異常行動に因果関係があるのではないかと考えられていたためです。しかし、タミフル®と異常行動の明確な因果関係が不明との見解があることから、今後は10歳以上の未成年に使用できるようになる可能性があります。
インフルエンザにかかったときは薬を使うほうがよい?
重症化するリスクのある方は使ったほうがよい場合もある
インフルエンザは自然治癒することもあるため、必ずしもタミフル®やイナビル®などの抗インフルエンザ薬が必要な病気ではありません。しかし、肺炎や脳症を発症するリスクもあるため、重症化するおそれのある方や合併症をお持ちの方には、抗インフルエンザ薬を使った方がよい場合もあります。
また、抗インフルエンザ薬の効果があるのは発症から48時間以内です。48時間を過ぎるとあまり効果がないので使わないこともあります。
インフルエンザかなと思ったら、早めに近くの内科などのかかりつけ医に相談するとよいでしょう。
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