独立行政法人 国立病院機構 栃木医療センターは栃木県宇都宮市に位置し、まもなく創立110周年を迎える歴史と伝統のある病院です。開設当時は宇都宮陸軍衛戍病院でしたが、1945年に当時の厚生省に移管されて国立病院となりました。現在は独立行政法人化し、2013年に現在の名称に変更されました。「常に進化し続ける医療機関」をめざしている同院は現在、どのような取り組みを行っているのか、院長である長谷川親太郎先生にお話を伺いました。
当院は全国に143か所ある、独立行政法人国立病院機構の医療機関のひとつであり、100年以上の歴史を誇ります。27の診療科と充実した設備を有し、地域の方々のさまざまなニーズに応えられるように努めています。
また、国立病院機構の病院として有事の際に十分な対応ができるよう、宇都宮医療圏のなかで唯一、感染症病床を設けています。さらに7つの病棟のうち3つにHCUを設け、幅広い疾患に対応できる病院となっています。
当院は、二次救急輪番病院として地域の中核を担っています。救急搬送は基本的に断らない方針で、受け入れ数は年々増加しています。そのため、行政などからの信頼も厚いです。
当院が受け入れる症例は幅広く、比較的重症度の高くない患者さんから、一部の三次救急まで担っている状況です。小児救急に関しても地域からの信頼は高く、多くの症例を受け入れています。
地域における三次救急は主に近隣の大規模病院が受け入れています。しかし、そこで受け入れが困難なときなどは、地域の方々の要望に応えるために幅広く受け入れていかなくてはならないと思っています。
夜間でも対応が可能な、当院の救急受け入れ体制を支えているのが、各診療科の医師たちです。
脳外科に関しては、医師4名体制で診療を行っています。循環器科も2名体制ではありますが、いつでも対応できる状態を整えています。
また、麻酔科医も多いのが当院の強みです。医科が4名、歯科が2名と、病院の規模に対してとても充実しています。そのため、緊急の全身麻酔による手術にも、十分に対応が可能な体制となっています。
当院の放射線科には、診断を行う医師と治療を行う医師の2名がいます。特に、放射線治療に関する専門家は全国でも800名程度しかいない貴重な人材です。2018年4月には、さらにもう1名増える予定です。
2016年には放射線治療装置をリニューアルし、より精度の高い医療を提供することが可能になりました。
当院の内科は総合内科が全国的に有名で、特に医長を務める先生のもとで勉強をしたいという医師が多く集まってきます。
総合内科では、特定の診療科や臓器にこだわらず、幅広い症例をみています。医師たちは毎日のようにカンファレンスを行っており、診療や勉強には大変熱心です。
新たな専門医制度がはじまったら、当院でも総合診療科・総合内科として専門医の教育を行っていきたいと考えています。
眼科は医師2名体制で診療を行っています。2年前に網膜疾患を専門にする医師が着任してから、診療内容が充実しました。網膜疾患や白内障、緑内障をはじめ、難易度の高い疾患の治療も行っています。
当院では、最先端の医療機器を取り入れているのに加え、2014年に病棟と手術・リハビリ棟を新設しました。特に手術室は廊下も含め広々としたスペースを確保し、大画面のモニターを置くなど大規模病院並みの設備を整えています。こうして設備を充実させたことが、麻酔科医をはじめとした医師が増えた要因でもあると思っています。
また、リハビリテーション室もかなり広くなりました。これは、栃木県内でも有数の広さです。同じ建物内にある調理室も最新の設備を整えました。
医師の数が増えただけでなく、そのほかの人材も当院は充実しています。診療情報管理士や医療ソーシャルワーカーを複数そろえ、臨床工学技士も3名体制にしました。足りていなかったところの人員を充実させたことで、地域の方々からの評判も上がり、スタッフにとってもより働きやすい病院になったのではないかと感じています。
歯科・口腔外科は、当院内でもっとも紹介が多い診療科であり、優秀な実績を誇っています。
そんな歯科・口腔外科では、肺炎の予防や重症化防止に重要な口腔ケアを、全国でも早い時期から熱心に行っています。6年前に診療報酬の対象として認められた際に、当院がモデル病院となったほど、力を入れている取り組みのひとつです。
当院では、ポリファーマシーの対策にも積極的に取り組んでいます。ポリファーマシーとは、多剤併用や必要以上に多い薬剤が処方されている状態のことを指します。単純に薬を減らせばよいというものではありませんが、患者さんの病状をみて減らせるのであれば減らしていこうという方針で行っています。
また、薬剤調整を行うのは入院中です。入院しているあいだならば、万が一何か問題が発生してもすぐに対応が可能です。必要な薬だけに整理し、安心して開業医の先生のもとへ戻っていただけるようにしています。
開業医の先生方にポリファーマシー対策を理解し承諾してもらえるよう、病院をあげて取り組んでいる旨の文書を院長名で記載しています。このポリファーマシー対策の取り組みに関しても、国内モデル病院となっています。
当院は地域医療支援病院となっていますが、これは栃木県内でも早い段階で指定されました。現時点での紹介率は90.7%、逆紹介率は63.3%と高く、現在も上がり続けています。
連携医療機関も300か所以上あります。救急搬送は原則断らないため、連携医の先生から強く信頼されている医療機関だと自負しています。
課題としては、まだまだ医師の数が足りてないことがあげられます。具体的に医師不足である診療科としては、産婦人科や神経内科、呼吸器内科、血液内科などです。常勤の医師がいない診療科には、非常勤で医師を派遣してもらっている状況です。
だんだんと欠員は埋まってきましたが、地域住民の方々や、連携医療機関、行政や消防など、地域のみなさまの期待に応えるためにも今後、対策を講じてまいります。
当院にはさまざまな強みがある一方で、まだまだ改善が必要なところもあります。どこまで高度な医療を提供できるかという点で、診療科によって力の差があり、これを解消するためにはさらに医師を確保しなければなりません。医師が自ら門を叩いてくれる病院になれたならば、より地域に信頼される病院になれると思っています。
そのために、当院は設備への投資や人材確保を続けてまいりました。当院がどんどん進化すれば、医師も他職種の方々も集まってくると考えています。
数年後には外来棟も新しくする予定です。さらにランクアップした医療機関をめざしてまいります。
当院では、若い医師への教育も非常に重要であると考えています。
私をはじめとした当院のベテラン医師たちは、若手のころからさまざまな症例を経験させてもらい、成長してきました。今度はその恩返しとして、次の世代に教育として伝えていく番だと思っています。
外科系に関しては、手術において積極的に術者をしてもらうようにしています。もちろん常に万全のサポートを行い、最終的な手術の仕上がりは私たちが行った場合と変わらないようにいたします。
内科系は特に、総合内科の教育に関して熱心に行っています。ジェネラリストをめざすのであれば、当院の内科は国内でもっともおすすめできる医療機関のひとつです。学びたいという要望を満たしてくれると思います。
当院は、地域に信頼され、地域に貢献し、地域と協働していくことのできる病院をめざしています。
救急車での搬送数も右肩上がりで増えていますが、それ以外の方法で当院の夜間救急を受診していただいた患者さんの数も非常に増えてきました。それは、地域の方々からの信頼度がさらに高まったためであると考えています。
その信頼に応えていくためには、今後もさまざまな設備投資や優秀な人材の充実を図っていかなくてはなりません。ワンランク上の医療機関になれるよう、今後も進化を続ける医療機関をめざしてまいります。
独立行政法人 国立病院機構 栃木医療センター 院長、 全国国立病院院長協議会 関東信越支部会 副会長
独立行政法人 国立病院機構 栃木医療センター 院長、 全国国立病院院長協議会 関東信越支部会 副会長
日本泌尿器科学会 泌尿器科指導医・泌尿器科専門医
2年間の外科研修後、1984年から泌尿器科医師としてキャリアをはじめる。慶應義塾大学医学部泌尿器科、並びに関連病院での勤務の後、1992年に国立栃木病院に泌尿器科医長として赴任。手術部長、副院長を経て、2014年栃木医療センター院長に就任。栃木県医師会常任理事、栃木県病院協会副会長、全国国立病院院長協議会関東信越支部会副会長、慶應義塾大学関連病院会理事としても活躍中。
長谷川 親太郎 先生の所属医療機関
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。