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院長インタビュー

東京女子医科大学病院が挑戦する病院改革と医療安全管理

東京女子医科大学病院が挑戦する病院改革と医療安全管理
田邉 一成 先生

東京女子医科大学病院 病院長/泌尿器科 教授(講座主任)

田邉 一成 先生

東京女子医科大学病院長の田邉一成先生は2015年4月の就任以来、「強い病院づくり」を目標にさまざまな改革を実施されてきました。本記事では、田邉先生が考える「強い病院」の姿、実際に取り組まれてきた改革の内容についてご紹介します。

 
東京女子医科大学病院よりご提供

東京女子医科大学病院は1900年の創立以来、至誠と愛(誠実な慈しむ心)を理念に掲げ、利用者である患者さんに対し安全・安心の医療を提供できるよう努力しています。

都営大江戸線若松河田駅もしくは牛込柳駅から徒歩約5分、都営新宿線曙橋駅から徒歩約8分と交通アクセスのよい当院では、2017年時点で、医師940名、看護師1,235名、その他職種スタッフ3,170名が力を併せて、一日あたり外来3,500~4,000名、入院1,000名前後の患者さんに医療サービスを提供しています。病床数は1,379床ありますが、現在一部の病棟で改修工事をすすめており、7年後である2024年のリニューアルに向けて準備を進めています。

東京女子医科大学病院長になり2年以上が経ちますが、就任以来「どうすれば医療を通じてより多くの方に奉仕できるか、病に困っている方のために活躍できるのか」を常に考え続けてきました。

病院経営の方針に一貫性を持たせていくことはとても大切です。組織のトップの考え方や方針が頻繁に変わると、その度に現場は変更を求められ、次第に不信感が募っていきます。

逆を言えば、現場で働く医師や看護師などのスタッフ達が安心して働けて信頼が確かなものになると、現場が円滑にまわって連携プレーが進み、患者さんに提供できる医療サービスの質も向上し、結果として患者さんの安心や信頼につながるのです。

東京女子医科大学病院よりご提供

東京女子医科大学病院は、病院のある新宿区以外にも、東京都、日本全国から患者さんを受け入れています。また、高度な医療技術を提供することができるため、近年では海外からも患者さんが受診を希望されることが増えつつあります。

病棟の改修工事をするにあたり病床数削減の話も出ましたが、ベッド数が足りないと患者さんを受け入れることはできません。当院を信頼して受診していただいた患者さんをより多く受け入れ治療を提供できるよう「ビッグサイズ」かつ「ハイパーアクティブ」な「スマートホスピタル」づくりを進めています。

東京女子医科大学病院は、泌尿器科・ロボット手術(ダビンチ)をはじめとする先進医療・腎臓など臓器移植の実績でよく知られています。

病院長に就任してから実施した改革のうちの一つは、当院の強みをさらに伸ばすためのものでした。

ダビンチ手術
東京女子医科大学病院よりご提供

当院では7年ほど前からロボット手術を導入しており、泌尿器科をはじめさまざまな診療科の手術で実績を上げています。

ロボット手術は手術を担当する医師に高度な技術が求められますが、体を大きく切開する必要がなく大半の患者さんは手術翌日から食事を開始し、歩行もできます。通常の開腹手術よりも体の負担が少ないため入院期間を短縮でき、また術後感染症を起こしにくいことから、ロボット手術は患者さんの社会復帰を早めることが可能になりました。

これまでロボット手術で保険適応が認められているのは前立腺がんや胃癌などの一部の疾患のみでしたが、2018年4月より適応疾患が12疾患へと大幅に適用拡大が行われました。

移植支援部
東京女子医科大学病院よりご提供

東京女子医科大学病院では腎臓・肝臓・心臓・膵臓の移植手術を積極的に実施してきました。特に開院以来、腎臓移植は約5,000件以上の実績があります。当院では今後さらに移植件数が増加することを見越して、移植支援部を設立しました。移植支援部設立と同時に移植管理科を設置し、移植業務全般を管理することとなりました。

移植支援部では、これまで各診療科が個別に担当していた移植に関連する業務を一手に引き受けています。これまで各診療科が担当していた移植に関する情報を一か所で管理するようになったことで、治療がよりスムーズに進められるようになりました。安心・安全な移植医療を実現する移植支援部の設立と活動内容は非常に画期的な取り組みとして注目されています。

東京女子医科大学病院のウィークポイントを徹底的に洗い出して対策を打つことで、病院の総合力の底上げを行いました。これが二番目の改革です。

東京女子医科大学病院よりご提供

麻酔科に併設されることの多い集中治療部門を集中治療科として独立させ、同時にスタッフ数を増やすなど部門の能力を強化しました。

また集中治療科の設立により、これまで以上に患者さんを受け入れより適切な集中治療管理がなされるようになったほか、外科系診療科でより多くの手術が行えるようになりました。数年後には集中医療のメッカに成長するものと期待しています。

東京女子医科大学病院よりご提供

東京女子医科大学病院では重大な医療事故を起こしたことから、医療安全の徹底的・根本的改革が行われています。

利用者の皆様の健康を守るため「安全、安心の医療」を実践するはずの病院で起こしてしまった一連の事件により、社会からの信頼を大きく損なってしまったと関係者一同重く受け止めています。

この時の反省を踏まえ医療安全科を設立、病院の安全機能が機能しているか常にチェックする体制を整備しました。医療安全科の設置は全国的にみても珍しい取り組みですが、医療安全学は医療安全に関する教育と研究の要になる分野として大いに期待しています。また医療安全科を設置したことで、万が一ミスが生じた場合もスムーズな初期対応をとれるような体制を強化しました。

また院内には医療安全推進部があり、2017年11月時点で12名のスタッフで運営しています。当院では安全管理に関する教育を徹底していますが、特に教授職など重要なポジションに就く予定の方には医療安全対策推進部での勤務もしくはリスクマネージャー等の実務を1年以上経験していただいています。

また安全管理に関する報告制度も整備しました。トラブル発生から24時間以内に報告書を提出するよう徹底して、病院全体でトラブルや問題点について共有するようにしています。さらに法人には「医療安全・危機管理部」が設置され、法人全体の医療安全を推進しています。

東京女子医科大学病院よりご提供

病院全体の情報共有という点では、難しい症例の手術をするときには診療科単体ではなく治療にかかわる診療科全体で多職種で実施する、治療方法に関するディスカッションも取り組みの一つとして挙げられます。

難しい症例であればあるほど、スタッフのチームプレーが重要になります。東京女子医科大医学病院ではハイリスク症例検討会を毎週開催して、チームとして患者さんを治療する体制をつくりました。ハイリスク症例検討会ではこれまでに500~600件の症例を検討しており、内容によっては理解度を深めるために患者さんのご家族に同席していただくこともあります。

2006年に東京女子医科大医学病院の泌尿器科主任教授に就任して以来、泌尿器科の医師達が超過勤務をすることのないような体制づくりを進めました。2015年に病院長となってからは病院全体という、より大きな枠組みで働く医療者のQOL(生活の質)を向上させる方法を考えています。

病院で働くスタッフたちにはそれぞれの生活があります。各々のワークライフバランスが保てなければ、次第に心のゆとりがなくなり、患者さんに対して質のよいサービスも提供できなくなります。

一人でも多くのスタッフが、可能な限り定時には病院を出て自宅で夕飯を食べられるよう、業務の効率化を進める・労働環境の改善といった残業しない風土づくりも、経営陣に求められる仕事の一つと考えています。これが三番目の改革です。

当院の強みの一つとしてご紹介した腹腔鏡やロボット手術の実践も、実は業務効率化に役立っています。

腹腔鏡手術やロボット手術のような低侵襲治療は、開腹手術にくらべ患者さんの身体的負担が少なく、傷口が小さいことから術後感染症のリスクも低下します。

患者さんの身体的負担が減って退院が早まれば、その分医師や看護師の負担も減らせるため、当院では可能な限り腹腔鏡やロボット手術による低侵襲治療を実施しています。

仕事が残っていて早く帰れないなら、業務内容を見直して簡素化・合理化する必要があります。東京女子医科大学では看護部長と統括部長が中心となり、どうすれば病棟の業務を減らせるのか毎週ディスカッションするほか、残業時間の多い診療科に対してはどうして残業をするのか、解決策はないか一緒に考えていくこともあります。

一つ一つは些細なことであっても、雑多な業務が積み重なると長時間労働化して過労を招き医療ミスにつながることがあります。業務をミニマムにすることはスタッフのQOLを護るだけでなく、患者さんへの質の高いより安全な医療サービスの提供にもつながると考えます。

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  • 東京女子医科大学病院 病院長/泌尿器科 教授(講座主任)

    田邉 一成 先生

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