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【医師監修】家族や恋人、友人など身近な人がうつ病になったときの接し方は?

【医師監修】家族や恋人、友人など身近な人がうつ病になったときの接し方は?
[医師監修] メディカルノート編集部

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近年、うつ病はめずらしい病気ではなくなり、それに伴ってどう支えたらよいか悩む方も増えているでしょう。患者さんにどんな言葉をかけたらよいのか、病院を受診した方がよいのかなど、わからないことも多いのではないでしょうか。
今回は、うつ病を患った家族を支える立場の方に向けて、患者さんと接するときのポイントをお伝えします。

周囲が気づくことのできるうつ病のサイン

うつ病は、急に発症するのではなく、徐々に症状が進んでいく場合がしばしばです。その変化はささいなことから始まることも多いのです。気になることがあったら放置せずに、早めに対処することが大切です。
医療機関でも使われるうつ病の診断基準には、以下の症状が記載されています。

  1. 抑うつ気分(憂うつな気分や悲しい気持ち)
  2. ほぼ毎日、ほぼ1日中興味や関心が減退している
  3. 体重の減少、あるいは増加
  4. 不眠、または過眠
  5. 精神運動性の焦燥、または停止(焦って落ち着かない、または思考や行動にブレーキがかかったようになってしまう)
  6. 疲労感、または気力の減退
  7. 無価値感、過剰な罪責感(自分に価値がないように感じる、自分が悪いと過剰に責めすぎる)
  8. 思考力や集中力の減退、決断困難
  9. 死について繰り返し考えるようになる

これらのうち5つ以上(①または②のどちらかを含む)の症状が2週間続き、本人が著しい苦痛を感じているか、仕事や家庭生活に支障をきたしていると、うつ病が疑われます。また、身体症状として頭痛や胃痛、動悸や息苦しさなどを感じることもあります。
表情が暗くなった、いつも楽しんでいた外出や趣味が楽しめなくなった、好きな食べ物がなんとなくおいしくない、といった些細な変化もうつ病の前兆であるかもしれません。
もちろん、これらの症状が現れたからといって必ずうつ病であるとは限りませんが、いつもと違うように感じられたら、少し注意して様子をみたほうがよいでしょう。

家族や恋人、友人がうつ病かもしれないとき、受診を促すポイント

受診を促すための声掛け

心配していることを伝える

うつ病が疑われる症状があるとき、受診してほしくても本人が症状を軽視したり、病院へ行くことを嫌がったりするかもしれません。そんなときは、まずあなたが心配しているということを伝えてみましょう。そのうえで受診をすすめてみてください。「症状が進むと治療に時間がかかる」、「不調な状態を続けているのは損」などと伝えるのもよいでしょう。

また、専門の精神科や心療内科の受診に抵抗がある場合は、学校や職場のカウンセラーやかかりつけ医にまず相談してみてもよいでしょう。地域の保健所でも相談を受け付けている場合もあります。

病院を探すなど、受診のためのサポートをする

うつ状態にあるときは、自分で病院を探したり予約したりことが難しい場合も多いです。すると、本人も受診したほうがいいと思っていても、なかなか行動に移せないことがあります。

そのようなときは、家族であるあなたがいくつか病院を探してみて、「この病院はどう?」「代わりに予約しようか」などとサポートしてみてもよいでしょう。上記のようにカウンセラーやかかりつけ医に紹介してもらうのもいいでしょう。
なかなか受診をしない理由として、ほかに心配なことがあって受診をためらっているということもあるかもしれません。うまく症状を話せるか、仕事を休んでもいいのかなど、受診をためらう裏には悩みがあることもあります。精神科の薬をのむことに抵抗がある場合もあるでしょう。そのようなときには、「何か心配なことや不安なことはない?」「病院に一緒に行こうか」と声をかけてみるのもよいでしょう。

うつ病の症状が重いときは、医師に自分のことを話すことを負担に感じることもあります。病院に行くことじたい、おっくうに感じることでしょう。最初のうちは家族が病院に付き添って、家での様子などを本人に代わって伝えるとよいでしょう。そうすれば本人の負担軽減になりますし、医師にとっても得られる情報が増えることから、診察に役立ちます。

家族や恋人、友人がうつ病のとき、接し方で気をつけるべきことは?

周囲の人がかけるべき言葉や禁句

励ましや急かすような声掛けは控える

家族がうつ病になったとき、声掛けには少し注意が必要です。言葉の選び方によっては、精神的に負担を感じてしまったり、さらに落ち込んだりしてしまうこともあります。
一般的にうつ病の方に禁句とされる言葉は、「励ます言葉」「急かす言葉」です。「頑張れ」や「早く治そう、仕事に戻ろう」などの言葉は、本人を追い詰めてしまい、治療に必要な休養の妨げとなってしまいますから、注意しましょう。

本人の気持ちに寄り添う言葉をかける

かけるべき言葉は、その人の状況や症状によって異なります。どんな場合であっても、共感の姿勢をもって接することが大切です。「つらかったね」「頑張ったね」など、本人の気持ちに寄り添った言葉を選ぶように心がけるとよいでしょう。

「精神的につらい」と打ち明けられたとき

本人の行動に注意しつつ、言葉の裏の気持ちに理解を示す

うつ病で何よりも避けなければならないことが「自殺」 です。うつ病の症状が重いときには「つらい」などと言われることもあるかもしれません。そうした言葉を言われると驚くかもしれませんが、「そんなことを言わないで」と本人が死にたい気持ちにふたをするような反応は控えてください。本人のつらい気持ちを受け止めずにいると、本人は本当の気持ちをあなたに打ち明けることが難しくなってさらにつらくなってしまうこともあります。
そのような言葉の裏には、「つらくて仕方がない」「気持ちをわかってほしい」などの思いを抱えていることも多いです。本人の行動には十分に注意する必要がありますが、「それほつらいんだね」と、その気持ちに理解を示すことが大切です。

自殺予防の原則「TALK」

自殺予防の原則として「TALK」 があります。

Tell(あなたのことをとても心配しており, 自殺しないと約束して、とはっきり伝える)

Ask(自殺したい気持ちがあるか直接尋ねる)

Listen (絶望的な気持ちに耳を傾ける)

Keep safe(安全確保:一人にせず、家族がそばについている)

の頭文字を取ったものです。

うつ病の家族や恋人、友人に連絡したり、会ったりしてもいいの?

うつ病の治療中だからといって、連絡や会うことを極端に控える必要はありません。ただ、回数が多かったり、すぐに返事を求めたりすると、本人の負担になってしまうことがあります。

うつ病の方の様子を見ながら休みたいときには休んでもらい、「返事はできるときでいいよ」と声をかけるようにすると、本人も少しは楽になるでしょう。

気晴らしに外出に誘うことは、最初のうちはやめておいたほうがよいと考えられます。うつ病の症状で日常生活がままならないうちは、外出がかえって心身の負担になるおそれがあります。

治療を始めたばかりのときは休養を優先し、落ち着いてきたら少しずつ近場の外出から誘ってみてください。できることが増えると、本人の自信にもつながります。

家族や恋人、友人から距離を置きたいと言われたら

うつ病になると「申し訳ないから」といって、距離を置くことを選択しようとする場合もあります。しかし、うつ病の治療中に大きな決断をすることはよくありません。うつ病の状態にあるときには、健康なときのように正常な判断が難しいことがあります。

もし本人が距離を置きたいと言っても「焦らずに、もう少し落ち着いてからゆっくり考えよう」と声をかけてあげましょう。少しだけ距離を置いて見守ったり、連絡の頻度を減らして様子をみてもよいかもしれません。

うつ病で休職中の過ごし方

うつ病になると、休養をとるためにしばらく休職する方もいます。人によっては数か月にわたって休むことも珍しくありません。この間、家族としてはどう過ごしてもらえばよいのか、迷うこともあるかと思います。

休職中はストレスから解き放たれた生活を送ることが大切です。「心の休養をとることが大事」と声をかけて、気兼ねせず休める環境を整えてあげてください。

焦らず、服薬管理など治療のサポートをする

うつ病の治療の効果はすぐに現れるものではありませんから、焦りは禁物です。症状が落ち着かないときは、自身で薬の管理をすることも難しい場合もありますから、家族の方がきちんと用量や回数を守って飲めているか時々確認してください。自殺念慮(自殺したい気持ち)がある場合は、薬をためている場合もあります。

生活リズムを整えるサポートをする

薬の効果が現れて症状が落ち着いてきたら、生活リズムを整えられるようにサポートをすることもよいでしょう。本人に余裕があるときは、簡単な家事をしてもらったり、気晴らしに近くを一緒に散歩したりするのもよいでしょう。決して無理をせずに、できたこと、よかったことを振り返るようにすると、本人の自信にもつながります。

仕事をやめたいと言われたら

まずは落ち着いてからゆっくり考えるよう、声をかける

うつ病になると「会社に迷惑をかけているのは申し訳ないから」といって、退職したいと言われることもあるかもしれません。しかし、うつ病の治療中に人生の大きな決断をすることは原則的にしないでください。

うつ病によって判断力が低下し、また過度に自分を責めるような考え方で物事を考えがちですから、正しい判断ができず、のちに後悔する場合があります。
もし、本人が退職したいと言っても「今は心も体も疲れているから、焦って決めないで、もう少し落ち着いてからゆっくり考えましょう」と声をかけてあげましょう。

うつが快方に向かうことを目指すための、周囲の心がけ

長い目で見守り、休養のサポートをする

大事な家族がうつ病から回復に向かうために必要なことは、長い目で見守ることです。うつ病の回復には時間がかかり、なかには年単位で治療が必要な方もいます。しかし、うつ病は原則的に治る病気です。

うつ病の治療や回復には時間が必要であることを理解し、温かく見守りましょう。

うつ病の家族や恋人、友人を支えて、自分が疲れてしまったとき

うつ病を患っている家族や恋人、友人と一緒にいると、支えている人も疲れてしまうことがあります。長くサポートを続けるために、そして共倒れを避けるためにも、あなた自身のリフレッシュも大切です。

心置きなく話せる方に話をしたり、ほかの家族と協力してリフレッシュする時間をつくったりしてみてください。

ひとりで抱え込まず、周囲の力を借りながら、療養のサポートをしていきましょう。

うつ病の人をみていると心配になるものですが、過度に心配しても本人にとって負担になることもあります。本人が話しかけてきたらよく聞いてあげる、くらいの姿勢でいいでしょう。

傾聴の際に大切なのは、本人のいうことに価値判断をせずによく聞いて、本人の気持ちや思っていることを受け入れることです。かといって、受け入れることに対して、むやみに認めたり否定したり判断をする必要はありません。