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大腸がんの腹腔鏡下手術 メリットや特徴について

大腸がんの腹腔鏡下手術 メリットや特徴について
松村 直樹 先生

東北ろうさい病院 外科副部長 内視鏡外科部長 内視鏡下手術センター長

松村 直樹 先生

目次
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腹腔鏡下手術は、術後の傷跡が小さいことや癒着のリスクが軽減されるといったメリットがあります。がんが発生する場所や腫瘍の浸潤度(周りの組織へ広がっている度合い)によって、大腸がんでも腹腔鏡下手術が推奨されています。

今回は、東北ろうさい病院 内視鏡外科部長の松村直樹先生に、大腸がんの腹腔鏡下手術について、お話を伺いました。

大腸がんの手術は長年、大きくお腹を切開する方法で行われてきました。しかし、切開創(術後の傷跡)が大きいと、術後の痛みが強く回復するまでに時間がかかることや、傷口から感染症を引き起こすなどのリスクがあります。そのため、小さな傷で大腸がんの手術を実施することを目的として腹腔鏡下手術が始められました。

腹腔鏡下手術とは、腹腔鏡という内視鏡(体の内部を観察・治療する医療機器)を挿入し、カメラで拡大視した腹腔内をモニターに映しながら手術を行います。開腹手術とアプローチ方法は異なりますが、同じ内容を腹腔鏡下手術でも行います。体につく傷は、鉗子(物をつかんだり引っ張ったりするための器具)と腹腔鏡を挿入するための小さな穴が5か所ほどです。

「大腸癌治療ガイドライン2016年版」では、結腸がんと直腸S状部で安全性が確認されており、腹腔鏡下手術の適応として推奨されています。

横行結腸がんと下行結腸がんは、高度な技術を要するため、腹腔鏡下手術はあまり推奨されていません。そのため、患者さんの状態(肥満度や開腹歴)などを考慮しながら、実施を検討します。

腹腔鏡下手術後につく傷跡は開腹手術よりも小さいため、患者さんの痛みも少なく、退院や社会復帰までの時間が短くなります。また、傷跡から感染症を引き起こすリスクも軽減されますし、皮膚切開をする範囲が小さいため、腹壁と大腸などの癒着も軽減できると思われます。

腹腔鏡下手術では、器具を腹腔内に挿入し閉鎖空間で手術を行います。そのため、手術中でも腹腔内は通常の約37℃であり、湿度もほぼ100%に近い状態が維持できます。生理的状態を崩さないため、腹腔内の乾燥や低体温という侵襲(生体を傷つけること)を防ぐことが可能です。

腹腔鏡下手術は内視鏡で腹腔内を拡大視して行います。そのため、切ってよい部分と切ってはいけない部分が非常にはっきりとわかります。裸眼ではみえないような部分まで観察できる反面、繊細で丁寧な手術が要求されます。

そのため、日本の腹腔鏡下手術の技術と安全性を担保するために、日本内視鏡外科学会では技術認定制度を設けています。技術認定制度とは、一定の症例数と実際の術中のノーカットビデオから、腹腔鏡下手術の技術を判断し、認定するものです。

肥満体形(BMI 25以上)の患者さんは、腸間膜*に内臓脂肪が多量に蓄積しています。腸間膜に内臓脂肪が蓄積していると腹腔内に空間をつくることが難しくなります。また、腸間膜のなかにある血管やリンパ節をとることも困難です。手術時間が長くなったり、出血を起こしたりするリスクが高くなるため、肥満の患者さんは腹腔鏡下手術が適応とならないケースもあります。

*腸間膜…腸管と腹膜をつなぐ腹膜のひだの部分

お粥

腹腔鏡下手術の場合、術後早期から大腸は動いているため、手術の翌日から食事を摂ることが可能です。

まれではありますが、術後に縫合不全(吻合した箇所の一部がうまくつながらないこと)という合併症*が起こることがあります。縫合不全を起こした際にしっかりとした食事を摂取すると、大量の便が腹腔内に流れ込み腹膜炎を引き起こすリスクが高くなります。

*ある病気や、手術や検査が原因となって起こる別の症状

このようなリスクを危惧して、術後2日から3日は流動食、その後は通常の食事に近づけていき退院の準備をするという施設もあります。

退院した後の生活で注意すべき点はほとんどありません。しかし、手術による合併症として腹膜と腸管が癒着し、腸閉塞を引き起こす可能性もあります。そのため、消化のよい食材を選んで食べてください。消化の悪い食材である、レンコンやゴボウなどの根菜類、キノコ類、海藻などは避け、もし摂取する場合は、よく噛んで食べましょう。

先生

我々医師は、大腸がんの医療技術を上げていくために日々勉強し、万全の準備をしています。しかし、我々の技術が向上しても、早期に大腸がんをみつけることができなければ、命を救うことが難しいケースもあります。また、早期に発見することで、患者さんの心身に負担の少ない治療法で治すことができます。

まずは、喫煙やお酒の飲みすぎ、加工肉の摂取、肥満体型といった、大腸がんの発生リスクとなることは避けてください。そして、40歳以上の方であれば毎年検診(便潜血検査)や定期的に人間ドックを受け、自覚症状のない初期のうちに、大腸がんを発見することが重要です。

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