インタビュー

肛門にできる血栓性外痔核とは-痛みを和らげる方法や出血したときの対処も紹介

肛門にできる血栓性外痔核とは-痛みを和らげる方法や出血したときの対処も紹介
佐原 力三郎 先生

牧田総合病院 肛門病センター長

佐原 力三郎 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年08月28日です。

「いぼ」の一種、血栓性外痔核(けっせんせいがいじかく)は、肛門付近に血豆が生じ、痛みや腫れが現れる良性の病気です。自然に治ることもありますが、下着との摩擦などにより出血することや、激痛により日常生活に支障が出てしまうこともあります。痛みや出血につながる行為や、自分でできる症状の緩和方法について、牧田総合病院 肛門病センター長の佐原 力三郎(さはら りきさぶろう)先生にご解説いただきました。

※診療科目の名称は、院内標榜を掲示しています。

血栓性外痔核は、もともとの症状を持っていなかった人にも起こりうる、頻度が高い痔のひとつです。

血栓性外痔核

上の図をご覧ください。外痔核とは、直腸の粘膜と肛門上皮の境界線である歯状線(しじょうせん)よりも外側にできる痔核の総称です。このうち血栓性外痔核とは、血管内に血栓(いわゆる血豆)が形成される外痔核のことをいいます。

血栓性外痔核が発生する部位は、静脈血管が張り巡らされた外痔静脈叢(がいじじょうみゃくそう)があるため、血流が豊富です。この静脈叢にうっ滞が生じると、血栓が形成されて血管が拡張し、組織に炎症が起こって血栓性外痔核が生じます。うっ滞とは、静脈血の流れが血管内で止まってしまい、滞った状態になることを指します。

では、どのような行為・習慣が、肛門付近でのうっ滞を引き起こすのでしょうか。

血栓性外痔核は、多くの場合腹圧により肛門部の血流が阻害されることで生じます。腹圧を上昇させる行為や習慣には、たとえば以下のものがあります。

  • 排便時のいきみ
  • お腹に圧のかかるスポーツ(ゴルフなど)
  • 重い物を持ち上げる作業
  • 風邪などによる咳

※腹圧がかかると肛門付近でうっ滞が起こる理由:

通常、心臓から腹部の血管を通って肛門部へ流れ込んだ動脈血は、静脈血となって心臓の方向へと戻ります。しかし、静脈血は動脈血ほど圧が高くないため、腹圧がかかると心臓方向へ戻ることができなくなり、肛門部で滞留してしまいます。

また、肛門部を下敷きにして座り続ける行為も、血液のうっ滞を引き起こす原因となります。

素材提供:PIXTA

次のような方は、血栓性外痔核になりやすい傾向を持っているといえます。

  • 座っている時間が長い(長時間のデスクワークや運転手の方など)
  • 腹圧がかかる力作業を業務としている

血栓性外痔核に、男女差や年齢による差はありません。ただし、妊娠中(特に妊娠後期)の女性は、子宮の圧迫により直腸や肛門部の血流が悪くなりやすく、血栓性外痔核を発症しやすい傾向があります。さらに、分娩時の腹圧は非常に高くなるため発症しやすさも高まります。

※妊娠中の血栓性外痔核については、記事2『血栓性外痔核の治療薬と手術-市販薬を使うときのアドバイスと病院へ行くタイミング』をお読みください。

血栓性外痔核の主な症状は、(1)肛門付近の急な腫れ、(2)痛み、(3)違和感、(4)手で触るとしこりを触知できることです。しこりの大きさは、小豆大から銀杏大までとさまざまです。

痛みは血栓性外痔核を生じた直後から現れます。持続性の痛みであり、活動しているときも安静にしているときも、常に続くという特徴があります。ただし、排便時には痛みが弱まることも多いようです。

通常は発症直後に痛みのピークを迎え、日が経つにつれて落ち着いていきます。

血栓性外痔核による痛みの程度は、腫れやしこりの大きさとは比例しておらず個人差があります。たとえば、肛門縁より奥の肛門管にできた場合、自覚症状は「何かが挟まっているような違和感」にとどまることもあります。また、痛みではなくかゆみを訴える患者さんもいます。

しこりを擦ったり揉んだりすることは、強い痛みの引き金となります。また、血栓性外痔核を「直腸粘膜の脱出かもしれない」と思い込んでしまい、肛門の奥へと押し込もうとされる患者さんもみえます。こうした行為は激痛や悪化の原因となります。直腸にできる内痔核など、肛門に返納してもよい病気もあるため、不用意にいじらず、専門的な病院で正しい診断を受けることも大切です。

入浴中

血栓性外痔核の痛みは、患部や全身を温めることで和らぎます。お風呂に浸かるなど、ご自分が「楽になる」と感じることを積極的に行うことをおすすめします。

これとは逆に、「辛くなる」「痛みが増す」と感じる行為は控えるようにしましょう。

形成された血栓は皮膚に覆われているため、発症直後から出血が起こることはほとんどありません。しかし、核を指で揉んだり下着と擦れたりして皮膚が破れてしまうと、二次的に出血することがあります。

また、血栓が大きい場合、血栓に押し広げられて薄くなった皮膚組織が壊れ、脱落して出血することもあります。

肛門周囲の出血は、多くの方が不安に感じる症状のひとつかもしれません。しかし、血栓性外痔核の場合、出血が起こると血栓は小さくなり、痛みや腫れはかえって和らぐ傾向があります。

出血が起こる前からこのような特徴を知っておくと、急に出血した場合にも落ち着いて対処できるかと思います。

血が止まらない場合や出血量が多いときには、パッド(女性の場合、生理用品など)を当てて過ごしたり、圧迫して止血を試みたりしてもよいでしょう。

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