インタビュー

血栓性外痔核の治療薬と手術-市販薬を使うときのアドバイスと病院へ行くタイミング

血栓性外痔核の治療薬と手術-市販薬を使うときのアドバイスと病院へ行くタイミング
佐原 力三郎 先生

牧田総合病院 肛門病センター長

佐原 力三郎 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年08月28日です。

血栓性外痔核は比較的よくみられるであり、時間はかかるものの、自然に治癒する病気です。しかし、強い痛みや大きなしこりによる不安感を伴うこともあるため、「一刻も早く症状から開放されたい」と感じている方も少なくはないでしょう。血栓性外痔核には市販薬を使ってもよいのでしょうか。また、病院ではどのような治療薬・手術方法が用いられているのでしょうか。

牧田総合病院 肛門病センター長の佐原 力三郎(さはら りきさぶろう)先生にご解説いただきました。

※診療科目の名称は、院内標榜を掲示しています

血栓性外痔核は自然治癒する病気であり、治療を受けなければ治らない病気とは異なります。市販薬を使用することで改善がみられるようであれば、そのまま経過をみてもよいでしょう。

血栓性外痔核は肛門の歯状線より外側にできるのため、軟膏(塗り薬)が適しています。肛門より奥の直腸に対して作用する坐薬は、外痔核のできる部位には作用しない可能性もあるため、添付文書をよく読んで、ご自身の痔のタイプにあった薬剤を選びましょう。

※局所性ではなく全身性に作用を示す坐薬の場合は、この限りではありません。

血栓性外痔核の多くは、発症直後に痛みや腫れのピークを迎え、徐々に症状が軽快していきます。2~3日様子をみることは問題ありませんが、次第に症状が悪化していく場合は病院を受診してください。血栓性外痔核ではなく、肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)の可能性も考えられます。

※肛門周囲膿瘍:をもった腫れができる肛門の病気です。

肛門周囲膿瘍の場合は、肛門周囲の腫れに発熱を伴うことがあります。通常、血栓性外痔核には発熱を伴わないため、熱が出ているときにも受診が必要です。

血管性外痔核の背後には、大腸がんなどの悪性の病気が隠れているケースもあります。血栓性外痔核ができる数か月前から、気になるお腹の症状がある場合や、便の色が変わった場合、血が混ざっている場合などには精密検査を行うこともあります。

自動で水が流れるトイレが普及し、便の色を目視しない方も増えましたが、便の異変は重要な体のサインです。目で確認する癖をつけましょう。

医師と話して安心している患者さん

血栓性外痔核は急激に増大する病気であり、それまで何もなかった肛門に突然生じることもまれではありません。また、しこりができることから、悪性の病気ではないかと心配される方もいらっしゃいます。

病院を受診し、のひとつであると確認することは、こうした不安を払拭することにもつながります。不安なときには一人で悩まず、専門の病院を受診することをおすすめします。

受診時の注意:急なことで心が動揺しています。日頃内服しているお薬手帳があれば忘れず持参しましょう。

血栓性外痔核の多くは、薬物治療によって完治します。

使用する治療薬は、抗炎症作用のあるステロイド含有軟膏(塗り薬)です。このほか、痛みが強い場合は、鎮痛作用を持つ内服薬を処方することもあります。

軟膏の使用期間は、症状が続いている期間のみでよいと考えられています。多くの場合、腫れや痛みは数日で治まり、血栓も2~4週間で自然に吸収されます。

血栓が大きい症例では吸収までに期間を要することもありますが、しこり以外の症状は長引くことなく軽快することがほとんどです。

血栓ができてから期間が経っている場合には、血栓を溶かす作用を持った軟膏(ヘパリン類似物質軟膏)を使い、吸収を促すこともあります。

頻度はまれですが、次のような場合には手術を考慮することもあります。

  • 症状が強く、日常生活や仕事に支障をきたしている場合
  • 血栓が大きく、吸収までに期間を要すると考えられる場合
  • 重要な予定があるなど、患者さんからの強い希望がある場合

一般的な血栓性外痔核の手術では、「血栓摘出術」という術式(方法)を選択します。

血栓摘出術とは、皮膚の腫れの頂点に小さな傷を作り、内部にある血栓を除去するシンプルな手術です。血栓がなくなるため、腫れやしこりは手術中から小さくなります。局所麻酔をかけて行うため、注入時以外の痛みの心配はありません。

手術により腫れや痛みは落ち着くため、術後に大きな制限はかかりません。当院では、「自転車やバイクの遠乗りを避ける程度でよいです」とお伝えしています。

お腹が大きな妊婦さん

妊産婦の方は血栓性外痔核になりやすい傾向があります。これは、大きくなった妊娠子宮によって、直腸や肛門部の血流が慢性的にうっ滞気味になるためです。また、妊娠中は排便時の腹圧も上昇する傾向があり、うっ滞が助長されやすい状態にあると考えられます。

妊娠中でも、ステロイド含有軟膏の塗布が主な治療法となります。血栓性外痔核で軟膏を使用する期間は数日から1、2週間と短いため、安全に使用することができます。

痛みを抑える鎮痛薬に関しては、控えたほうがよいものと選択可能なものがあるため、産婦人科の先生と相談されることをおすすめします。

局所麻酔を用いた血栓摘出術も可能です。妊娠中であっても、そうでない場合でも、薬物治療と手術治療のメリット・デメリットに関する説明をしっかりと受け、ご自身に合った方法を選択しましょう。

血栓性外痔核の予防としては、血流の悪化につながる行動を避けることが大切です。

  • 長時間、座り続けない
  • 長時間、運転を続けない
  • 排便時に長くいきむ習慣を見直す

仕事でやむを得ず座位を続けなければならない場合は、定期的に休憩をとり、立ち上がって歩きましょう。

どうしても休憩をとることができない場合には、肛門をキュッと締めることを取り入れてみましょう。これだけでも血流のうっ滞は解消されます。

腹圧を上昇させる習慣を見直すことも大切です。たとえば、トイレに長くこもる習慣がある場合は、「5分以内」を心がけてみてください。新聞やスマートフォンを持ち込む習慣をやめるだけでも、トイレの時間は短縮されます。

便秘や下痢など、排便時のいきみを助長する症状に悩まれている方は、過去を振り返り「便通がよかった時期にしていたこと」「食べていたもの」を分析してみましょう。

(1)食生活の改善、(2)水分の摂取、(3)運動の3つをセットで行うことで、腸の状態は大きく変わります。

血栓性外痔核の治療時には、原因となっている便秘や下痢の治療薬も処方することもあります。しかし、予防や再発防止のためには、薬に頼るのではなく、自分の力で生活習慣や体質そのものを変えていくことが大切だと考えます。

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