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院長インタビュー

「安全で良質な医療を提供し続けたい」山梨大学医学部附属病院の取り組み

「安全で良質な医療を提供し続けたい」山梨大学医学部附属病院の取り組み

山梨県中央市にある山梨大学医学部附属病院は、1983年の創設以来、地域を守る医療機関として多くの患者さんとそのご家族をサポートしています。山梨県で唯一の特定機能病院(2018年現在)に認可され、安全で良質な医療の提供を目指す同院の理念や取り組みについて、院長の武田正之先生にお話を伺いました。

山梨医科大学医学部附属病院は1983年に創設され、321床を構えて診療業務を開始しました。2018年現在、当院は618床の病床、27の診療科を備える高度急性期病院となり、山梨県を中心としたエリアの患者さんを数多く受け入れています。当院は国立大学附属病院としては比較的新しく、私は第11代目の院長として、2017年4月に就任しました。

618床ある病床の稼働率は83.9%で、患者さんの平均在院日数は13.1日です(2017年データ)。近年、内視鏡を用いた低侵襲手術(患者さんの肉体的負担が少ない手術)の件数が増加し、当院の平均在院日数は徐々に短くなっています。

また、病棟の再整備および新病棟の開設が進行中で、2020年にはすべての病棟がリニューアルされる予定です。

画像提供:山梨大学医学部附属病院

山梨大学医学部附属病院は1995年に、山梨県内唯一の特定機能病院(2018年現在)として厚生労働省からの承認を受けました。当院には、山梨県内からはもちろん、静岡県北部や長野県南部など県境エリアからも患者さんが訪れます。

特定機能病院:医療施設として一定水準以上の機能・人材を有し、高度な医療を提供する病院

2012年には手術支援ロボット『ダ・ヴィンチ』を導入しました。ダ・ヴィンチは、2018年現在、山梨県内において、山梨県立中央病院と当院合わせて2つの医療機関のみに導入されています。当院では前立腺がん・腎がんを中心にロボット手術を行っていますが、近年は婦人科疾患や胃がんに対する手術にも活用を始めました。

画像提供:山梨大学医学部附属病院

当院は、手術室と心・脳血管X線撮影装置を組み合わせたハイブリッド手術室を有しています。ハイブリッド手術室では、大動脈弁狭窄症(左心室の弁が硬化し血液通過が妨げられる病気)に対する経カテーテル大動脈弁植え込み術(Transcatheter Aortic Valve Implantation:TAVI)を実施しています。

画像提供:山梨大学医学部附属病院

当院にはあらゆる放射線治療施設が整っており、さまざまな治療が実施できます。

たとえば、集中的かつ精密な照射を可能とするIMRT(強度変調放射線治療)や、前立腺に対する小線源治療(放射線を出す小型カプセルを患部に挿入して行う治療)、サイバーナイフ(ロボットアームを用いた定位放射線治療装置)による治療が可能です。

これら放射線治療施設を活用することで、がん治療における放射線治療の選択肢が広がり、患者さんの状態やニーズに合わせた治療が可能になります。

画像提供:山梨大学医学部附属病院

当院は山梨大学医学部附属の大学病院として、「国民のためのよい医療人の育成」にも力を注ぎます。当院の臨床教育部では、山梨大学医学部の卒業生が初期研修(1〜2年目)・後期研修(4〜6年目)を受けています。

また臨床研究推進部では、大学と共同で臨床研究(診療データを活用した治療法・薬の開発などの研究)を行います。将来的には、海外との共同研究を発展させたいと考えています。

山梨大学医学部附属病院は安全で質の高い医療を提供するために、安全管理を徹底しています。たとえば「医療の質・安全管理部」では、予定以上の手術時間や出血量、退院後1週間以内に再入院したケースについての情報をすべて把握し(インシデントレポートといいます)、原因究明と再発防止に取り組んでいます。

医療の質・安全管理部には専任の医師、看護師、薬剤師が数名ずつ在籍し、ケースごとにカンファレンスを開いて問題の解明にあたります。また、山梨大学医学部附属病院の各診療科・各講座には専任でリスクマネージャーが在籍し、安全管理を徹底しています。

このような取り組みを通して、当院は「安全で質の高い医療」の実現を目指しています。

当院における27の診療科は、それぞれに優秀な医師と良質なスタッフがそろい、特に下記の診療科で、患者さんの診療に力を注いでいます。

第三内科では、慢性腎臓病、透析、腎移植糖尿病、内分泌、リウマチ、膠原病などに対する治療を行います。同科は行政・医師会とともに、山梨県全域を対象とした慢性腎臓病(CKD)対策を展開し、また糖尿病サポートチームが週に1回院内を回診するなど、さまざまな取り組みを行っています。

神経内科では、遺伝性脊髄小脳変性症・痙性対麻痺に関する遺伝子診断、治療、研究を行います。同科は特に遺伝性痙性対麻痺について、全国の施設が集まる共同研究体制(JASPAC)の事務局を務め、国内はもとより中国を中心とした海外からも患者さんが訪れます。

血液・腫瘍内科ではおもに、骨髄増殖性腫瘍急性白血病悪性リンパ腫多発性骨髄腫、自己免疫性血液疾患に対する治療、および免疫チェックポイント薬の適正使用のサポートを行います。骨髄増殖性腫瘍については、全国の施設からの遺伝子変異解析を受け付けています。

小児科では、小児における血液・がん疾患、心疾患、神経疾患、腎疾患、内分泌疾患、新生児疾患、救急疾患に対する治療を行います。なかでも、先天性心疾患に対するカテーテル治療や小児難治性白血病、がんに対する造血幹細胞移植に力を入れています。

精神科では、認知症の早期診断・早期介入、精神疾患の遺伝相談、難治性うつ病の脳刺激療法などを行っています。同科は、患者さんの苦痛やご家族の希望に十分に耳を傾けた、全人的な医療を目指しています。

消化器外科、乳腺・内分泌外科では、食道がん胃がん大腸がん、肝臓がん、膵臓(すいぞう)がん、乳がんの診療と研究を行っています。特に、患者さんの負担が少ない低侵襲手術、鏡視下手術、そして機能温存手術に力を入れています。

整形外科では、脊椎変形、脊髄腫瘍頚椎症性脊髄症腰部脊柱管狭窄症骨軟部腫瘍、小児整形外科、手外科、関節リウマチ変形性膝関節症変形性股関節症などに対する治療を行います。

脳神経外科では、脳血管障害脳腫瘍(良性・悪性・頭蓋底)、脊椎脊髄に関する治療を行います。特に脳卒中、悪性脳腫瘍、神経内視鏡による手術に力を入れ、ハイブリッド手術室を駆使した高度な治療を行なっています。

麻酔科では、手術室麻酔(心臓血管・小児・内視鏡手術など)や緩和ケア病室の運用、ペインクリニック(痛みの治療)を行います。

泌尿器科ではおもに、下部尿路機能障害、腎不全、性機能障害、小児泌尿器科疾患、女性泌尿器科疾患に対する治療を行います。同科では対象疾患に対して積極的にロボット手術や内視鏡手術を活用し、低侵襲な治療を実現しています。また、下部尿路機能障害、性機能障害については、基礎研究を行っています。

眼科ではおもに、加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞の診療や、硝子体手術、緑内障診療を行います。

耳鼻咽喉科・頭頸部外科では、頭頸部がんに対する集学的治療(外科的治療・放射線・化学療法などを組み合わせて行う治療)、甲状腺がん手術、鼻腔内視鏡手術、耳科手術を中心に行います。

当院の産婦人科は、妊娠や分娩、婦人科疾患、不妊症更年期障害、女性内分泌疾患などを扱い、女性の心身における健康向上を目指しています。なかでも不妊治療に関しては、あらゆる診療科の医師が在籍する「生殖医療センター」を設置し、体外受精・胚移植のステップを中心として、患者さんを精力的にサポートしています。

形成外科は、全身と対象として損傷した部分の治療を行います。そのほかに、保険診療ではありませんが、性同一性障害の治療を手がけています。性同一性障害の治療では、他診療科と連携を取り、ダ・ヴィンチを用いた子宮摘出、乳房の切除・再形成などを行います。

現在、日本全体で病院の機能分化が進められています。そのような流れのなかで当院は、特定機能病院として、地域の急性期医療(緊急または重症な患者さんに対する集中的な治療)を担う使命があると考えます。

今後さらに高齢化する社会において、地域の病院とのスムーズな連携、在宅医療への移行などを進めていきます。

私たちはこれからも病院全体のまとまりを維持することで安全管理を徹底し、よい医療人を育成し、安全で良質な医療を提供します。そして開設当時からの理念である「一人ひとりが満足できる病院」を守り続けます。