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乳がんの手術について 乳房温存手術と乳房切除術の特徴とは
2018年現在、乳がんの手術において実施されている術式は主に、乳房を温存する「乳房温存手術」と乳房を切除する「乳房切除術」の2種類です。近年は、乳房切除術後に乳房を再建する手術も存在します。今回...
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乳がんの手術について 乳房温存手術と乳房切除術の特徴とは

公開日 2018 年 09 月 13 日 | 更新日 2018 年 09 月 25 日

乳がんの手術について 乳房温存手術と乳房切除術の特徴とは
佐藤 隆宣 先生

東京都済生会中央病院 乳腺外科 部長

佐藤 隆宣 先生

目次

2018年現在、乳がんの手術において実施されている術式は主に、乳房を温存する「乳房温存手術」と乳房を切除する「乳房切除術」の2種類です。近年は、乳房切除術後に乳房を再建する手術も存在します。

今回は、東京都済生会中央病院 乳腺外科部長の佐藤隆宣先生に、乳房温存手術と乳房切除術の特徴や適応となる患者さん、術後の生活の注意点などのお話を伺いました。

乳房温存手術の特徴

以下では、乳房温存手術の特徴についてご説明します。

乳房温存手術の適応となる患者さん

乳房温存手術は、以下の条件を満たしているかなどを考慮しながら、実施するかどうかを決定します。

  • 広範囲の乳管内にがんが広がっていないもの
  • 多発病変*でないもの
  • 手術後の放射線照射が可能なもの
  • 患者さんが乳房温存手術を希望している

上記の条件は、乳房専用のレントゲン検査であるマンモグラフィ検査、超音波検査*、乳房MRI検査*などを用いて調べます。

(乳がんの検査方法について詳しくは、記事1『乳がんの検査とは 検診から術前検査まで詳しく解説』をご参照ください)

多発病変…病気により変化が起きている箇所(病変)が複数あるもの。2つ以上の病変が同じ乳房の離れた場所にあった場合は、乳房温存手術を実施することが難しくなる。

超音波検査…患者さんに超音波を当て映像化する検査。

MRI検査…磁気を使い、体の断面を写す検査。

乳房温存術

乳房温存手術の適応を決める際に重要なことは、がんが乳管内に広がっていないかどうかです。腫瘍が小さな早期の患者さんの場合でも、広範囲の乳管内にがんが広がっている患者さんは乳房温存手術の対象外となります。

また、乳房温存手術後は原則放射線治療を受ける必要があります。そのため、妊娠中の患者さんや、一部の膠原病を合併していることにより放射線治療を受けられない患者さんは乳房温存手術が適応にならない場合があります。

なお、腫瘍のサイズにおいて以前までは、3cm以下のものを対象としていました。しかし2018年現在は3cm以上の腫瘍でも、腫瘍を全て摘出することができ、術後の乳房の見栄え(美容結果)に患者さんが満足されるようであれば、乳房温存手術の適応となることがあります。

検診を受診する方の増加に伴い2cm以下の早期発見率の上昇、また、術前化学療法が普及も普及しています。その結果、乳房温存手術の対象となる患者さんも増えています。

乳房温存手術の様子 写真左から2番目:佐藤隆宣先生
乳房温存手術の様子 写真左から2番目:佐藤隆宣先生

乳房温存手術のメリットとデメリット

乳房温存手術のメリット

乳房温存手術は乳房を残すことが可能であり、乳がんの根治と整容性を両立させる「Oncoplastic Surgery」という手術技法も行われるようになってきました。また、乳房切除術と比較し切開する部分が小さくなるため、患者さんの身体的負担が軽減されます。なお、広範囲のリンパ節を郭清(切除)した場合は、身体的負担が大きくなることもあります。

乳房温存手術のデメリット

腫瘍のできる位置によって、術後の乳房の変形が目立つことがあります。また、切除断端*にがんが残っている場合(切除断端陽性)は後日、追加の切除や乳房切除術が必要になることもあります。そして、術後は原則放射線治療を行うため、5週間ほど毎日通院することが必要になります。

切除断端…切除した組織の断面のこと。

 

乳房温存手術の様子 写真中央:佐藤隆宣先生
乳房温存手術の様子 写真中央:佐藤隆宣先生

乳房切除手術の特徴

以下では、乳房切除術の特徴について解説します。

乳房切除術に適応となる患者さん

乳房切除術は、腫瘍が大きい患者さんや、術前の放射線治療の効果がみられなかった患者さん、乳管内進展が広範囲に広がっている患者さんなどに対して実施します。また、乳房温存手術後の切除断端が陽性の患者さんや、術後に局所再発をした患者さんに対しても行います。

乳房切除術のメリットとデメリット

乳房切除術のメリット

がんが広範囲に広がっている患者さんの場合、乳房温存手術よりも乳房切除術のほうが局所再発の可能性が低くなります。

乳房切除術のデメリット

乳房の喪失感があるため、患者さんによっては精神的な負担となることがあります。また、乳房温存手術の際よりも切開する範囲が大きいため、身体的負担が大きくなります。

切除した乳房を再建する乳房再建術

患者さんが希望した場合、乳房を切除した後に乳房を再建する乳房再建術を、保険適応で受けることができます*。

乳房再建術には、人工乳房を使用する方法と、患者さんの自家組織を使用する方法があります。人工乳房による再建方法は、乳房を摘出した後、組織拡張器(エクスパンダ―)を大胸筋の下に挿入します。その後、生理食塩水を注入しながら、半年ほどかけて皮膚を伸ばし人工乳房(インプラント)に入れ替えます。

全ての施設において、保険適応で受けられるわけではありません。

人工乳房による再建術の方法
人工乳房による再建術の方法

患者さんの自家組織による再建では、お腹や背中の皮膚、脂肪、筋肉を採取し移植します。人工のインプラントを挿入する必要はありませんが、組織を採取した部分に傷あとが残ります。

自家組織(お腹)による再建の方法
自家組織(お腹)による再建の方法

また、乳房再建は、乳がんの手術と同時に乳房再建をする「一次再建」と、乳がんの術後落ち着いてから再建を行う「二次再建」があります。

一次再建の特徴

一次再建をした場合、術後初めから乳房が存在するため、患者さんの喪失感が緩和できます。また、乳がんの手術と同時に組織拡張器を挿入するので、手術の回数を減らすことができます。また、乳房再建が終わるまでの期間も短くなります。

二次再建の特徴

がんが皮膚や大胸筋、広範囲のリンパ節に転移している患者さんの場合、二次再建をおすすめします。

上記のような進行した乳がんの患者さんの場合、手術で乳房を切除した後に、放射線治療が必要になることもあります。組織拡張器を挿入した状態で放射線治療を受けると、感染症のリスクが高くなり、皮膚の伸展も悪くなることがあります。そのため、進行した乳がんの患者さんが再建を希望する場合は、乳房切除術後、状態が落ち着いてから再建をおすすめします。

乳房再建術のデメリット

乳房再建は複数回の手術が必要です。また、人工インプラントによる感染症、術後出血などのリスクなどもあり、患者さんの身体的負担や精神的負担となることもあります。術前から主治医とよく話し合い、乳房再建のメリットとデメリットを理解してから受けることが大切です。

乳がんの手術後の後遺症

乳がんの手術後の主な後遺症は、リンパ浮腫と手術跡や胸部の恒常的な痛みです。

リンパ浮腫

リンパ浮腫とは、リンパ液が皮下組織に漏れ出すことで上肢や下肢が腫れる後遺症です。リンパ浮腫は、手術や放射線治療によってリンパ液の流れが悪くなることによって発生します。

乳がん治療後の場合、リンパ浮腫は上肢に発生します。左右の腕の差が何cm以上あればリンパ浮腫であるという正式な定義はありませんが、2cm以上の差があった場合をリンパ浮腫と呼ぶことが多いと思われます。また、患者さんによって発生する時期は異なり、術後すぐに発生する場合もあれば、数年後に発生する場合もあります。

術後のリンパ浮腫の予防法

リンパ浮腫を予防するためには、以下の点に注意して生活してください。

  • 手術をした側の腕を、時計・指輪・下着などで圧迫しない
  • 腕を使い過ぎたり、重い荷物を持ったりしない
  • 日焼け・虫刺され・ケガなどで、手術をした側の皮膚を傷つけない
  • スキンケアを行い、皮膚を乾燥・細菌感染から守る

リンパ浮腫の治療法

リンパ浮腫が発生した場合は、悪化させないために早期の適切な治療が大切です。治療法としては、リンパ浮腫について専門的な知識を得た医師によるリンパドレナージや、スキンケア、弾性スリーブによる圧迫療法などがあります。

リンパドレナージとは、うっ滞したリンパ液を専門的なマッサージによって深部リンパ管に流し込む治療法です。術後に浮腫みや違和感がある場合は、早めに医師に相談してみてください。

術後の痛み

手術後、手術を受けた側の胸部・上腕・(わき)の痛みや違和感、痺れが慢性的に続くことを、乳房切除術後疼痛症候群といいます。はっきりとした原因はわかっていませんが、手術や放射線治療、抗がん剤治療によって神経が損傷されることが関与しているといわれています。

乳がんの手術後の生活

乳がんの手術後の生活において、特別な制限はありません。無理をし過ぎない範囲で、通常の生活を送っていただけます。しかし、肥満は乳がんの発症リスクを高めることがわかっています。そのため、バランスの取れた食事や適度な運動を心掛け、体重の増加には注意してください。

また、喫煙もさまざまながんのリスクとなるため、喫煙者の方には禁煙をお勧めします。

それぞれの患者さんによって求めていることは異なる

先生

乳がんの手術に対して、患者さんが求めることは一人ひとり異なります。たとえば、ご自身の乳房を残したいという患者さんもいれば、術後の放射線治療を受けないために全て切除することを希望する患者さんもいます。

また、腫瘍の位置や患者さんの体形によっては、乳房温存手術を実施したとしても、元通りの綺麗な形の乳房を残すことが難しいケースもあります。そのため、美容結果を重視する患者さんにとっては、乳房温存手術よりも乳房切除術を実施した後に再建するほうが求めていることと合致する場合もあります。

乳がんの治療は患者さんと医師とがしっかりとコミュニケーションをとりながら、それぞれの患者さんの求めいていることを実現できるように考えていくことが重要です。私は、患者さんやご家族が乳がんについて正しい知識と理解を得たうえで、納得して治療を受けていただきたいと考えています。不安なことや気になることがある場合は、些細なことでもどんどん病院のスタッフに話していただければと思います。

 

乳がん検査・治療 (佐藤 隆宣 先生)の連載記事

1993年徳島大学医学部を卒業後、東京医科歯科大学第二外科入局。関連病院にて消化器・一般外科を研修。その後は乳がんを専門として、2007年より大学に帰局、乳腺外科診療の責任者として、乳がんの臨床と研究に従事。2014年からは東京都済生会中央病院へ赴任し乳腺外科部長として、安全かつ最良の医療を患者様に提供することを心がけ、インフォームドコンセントにも十分な時間をかけ、納得のいく治療を実施している。特に力を入れているのが整容性に優れた温存手術で、これまでの多くの経験と蓄積されたデータをもとに工夫を凝らした満足度の高い温存手術を提供している。さらに乳がんの大きさや場所などから乳房温存手術が難しいという場合も、形成外科と連携し、乳房再建にも積極的に取り組んでいる。

「乳がん」についての相談が22件あります

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