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転移性脳腫瘍は肺がんからの転移がもっとも多いーー転移性脳腫瘍の原因や症状とは?

転移性脳腫瘍は肺がんからの転移がもっとも多いーー転移性脳腫瘍の原因や症状とは?
中谷 幸太郎 先生

熱海所記念病院 脳神経外科 ガンマナイフ部長

中谷 幸太郎 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年09月27日です。

転移性脳腫瘍(てんいせいのうしゅよう)とは、脳以外にできたがんが脳に転移する病気です。もっとも脳に転移しやすいがんは肺がんですが、ほかにも乳がん消化器がん大腸がん胃がんなど)などが挙げられます。脳への転移を早期発見・早期治療するためには、定期的に頭部の画像検査を受けることが大切です。

今回は、脳転移を起こしやすいがんの種類や、転移性脳腫瘍の症状について、医療法人伊豆七海会 熱海所記念病院 脳神経外科ガンマナイフ部長の中谷 幸太郎(なかや こうたろう)先生にお話をお伺いしました。

脳腫瘍には、原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍の2種類があります。原発性脳腫瘍とは、脳そのものから発生した腫瘍を意味します。

一方、転移性脳腫瘍とは、脳以外の全身のいずれかの場所にできたがんが脳に転移することで発生した腫瘍を意味します。がんの患者さんのうち、8〜10%の方が転移性脳腫瘍を発症するといわれています。

素材提供:PIXTA

また、転移性脳腫瘍の77〜87%はテント*よりも上に、15〜25%はテントよりも下に発生します。

*テント:大脳と小脳を分ける硬膜のこと。

どの種類のがんでも脳転移を起こす可能性がありますが、日本人では、以下のがんからの脳転移が多いといわれています。

なかでも肺がんからの脳転移がもっとも多く、転移性脳腫瘍のうちの半数以上を占めます。また、乳がんと消化器がんが、それぞれ10〜20%ほどを占めることが分かっています。

転移性脳腫瘍の多くは、原発巣となるがんからの「血行性転移」によって生じるといわれています。がんの転移方法の1つである「血行性転移」とは、がん細胞が血液の流れにのることで、脳、肺、骨などへ転移することです。肺にがんができると、血流豊富な脳へ転移しやすいと考えられています。

また、血液は心臓から送り出され全身を回った後に肺へ戻るため、各臓器にできたがんが血液の流れにのって肺に転移しやすいということも分かっています。

肺がんの中でも、脳転移を起こす可能性がもっとも高いものは「肺腺がん」です。転移性脳腫瘍全体の約25%は、肺腺がんからの転移といわれています。

肺がんの種類

肺がんは、以下の2種類に分類されます。

さらに非小細胞肺がんは

  • がん
  • 扁平上皮がん
  • 大細胞がん

などに分類されます。

肺腺がんからの脳転移には、EGFR遺伝子変異が関係していることが分かっています。EGFR(上皮成長因子受容体)はタンパク質の一種で、細胞を増殖させるはたらきがあります。

肺腺がんが属する非小細胞肺がんの中には、がん細胞の表面にEGFRが多数発現するものがあります。このEGFRの遺伝子に変異がある場合には、がん細胞の増殖を促すことになります。実際に、肺腺がんから脳転移を起こす患者さんの半数以上に、EGFR遺伝子変異が認められています。

欧米人と比べて日本人はEGFR遺伝子変異を持つ方が多いことから、日本では肺腺がんから脳転移を起こす患者さんが多いといわれています。肺腺がんの患者さんの中でも、特にEGFR遺伝子変異を持っている方は、脳に転移する可能性が高いため注意が必要です。

転移性脳腫瘍では、主に以下のような症状が現れます。

腫瘍が大きくなると、周囲の脳組織を圧迫するようになります。圧迫によって脳の神経が障害されることで、その神経が担当している機能に異常が発生します。たとえば、以下のようなさまざまな症状があります。

  • 腕や脚の麻痺
  • 言語障害
  • 意識低下
  • ふらつき
  • 痙攣(けいれん)

などが挙げられます。

仮に腫瘍が前頭葉に発生して、この部分が障害された場合には、手足の麻痺により転びやすくなったり、てんかん発作(痙攣発作)が起こったりします。後頭葉が障害された場合には、視野が狭くなるなどの視野障害、小脳が障害された場合にはめまいやふらつき、呂律が回らないなどの症状が現れます。

手足の麻痺などの運動麻痺は、一度発症すると急速に悪化していくことがあります。

脳は頭蓋骨(ずがいこつ)に包まれているために、腫瘍が大きくなるにつれ頭蓋内の圧力が高くなります。圧力が高くなることによって、頭痛、嘔吐、吐き気などの頭蓋内圧亢進症状が現れます。 

*頭蓋内…頭の骨(頭蓋骨)の内部

脳の腫瘍周辺が腫れることで異常な量の水分が溜まりむくむ「脳浮腫」を起こすことがあります。脳浮腫は、脳神経の機能低下の原因にもなります。

転移性脳腫瘍が原因の症状として、意欲低下や食欲不振などが現れることもあります。これらの症状は、肺がん乳がんなどの原発巣の抗がん剤治療の副作用と考えられたり、時には認知症と間違えられたりすることもあります。

また、患者さんが症状を自覚できないようなケースでは、脳転移の発見や治療の遅れにつながることもあります。

転移性脳腫瘍では、主に頭部CT*やMRI*などの画像検査を行います。まずは単純撮影を行い、転移性脳腫瘍が疑わしい場合にはより詳細に評価するために造影剤を投与してCTやMRI検査を実施します。

*CT:X線を使って体の断面を撮影する検査。

*MRI:磁気を使い体の断面を写す検査。

肺がんは脳へ転移することが多いという理由から、肺がんの治療を行う呼吸器科では、肺がんが見つかった段階で病期(ステージ)を評価して、治療方針を決めるための頭部画像検査を実施します。そのため、肺がんの患者さんの転移性脳腫瘍は比較的早期に発見され、早期に治療されやすい傾向があります。

その一方で、たとえば乳がん大腸がんといった肺がん以外の特に脳転移が少ないとされているがんの場合には、頭部の画像検査を受けていない患者さんもいます。また、頭部の画像検査は一度受ければ安心というものではなく、定期的に受けることが大切です。たとえば、肺がんの患者さんの場合でも、初診の検査時に脳転移が見つかることもあれば、その数年後に見つかることもあるためです。

転移性脳腫瘍の早期発見・早期治療のために、定期的に頭部CTやMRIの画像検査を受けることを推奨したいので、主治医または脳神経外科医に相談していただきたいと思います。

転移性脳腫瘍の治療法には、以下の3種類があります。

  • 放射線治療
  • 外科手術
  • がん剤治療

放射線治療とは、腫瘍に放射線を照射することで増殖を抑制して縮小・消失させることを目指す治療法です。

また、外科手術では、開頭して腫瘍を摘出します。抗がん剤治療は、一般的に解剖学的な脳の血管の作りによって脳組織へは薬が行きわたりにくいために、転移性脳腫瘍にはあまり効きません。しかし、近年は薬の研究が進み、以前よりは一定の効果が見込める抗がん剤も登場しています。

これらの治療法の中から、腫瘍の大きさや数、患者さんの状態やご希望によって、それぞれに適した治療法を選択します。

(転移性脳腫瘍の治療法について詳しくは、記事2『転移性脳腫瘍の治療法とは? 放射線治療・外科手術・抗がん剤治療の特徴』をご参照ください)

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