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下肢静脈瘤の治療法

下肢静脈瘤の治療法
メディカルノート編集部 [医師監修]

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下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)の治療に際しては、患者さんごとにいくつかの方法を組み合わせて行います。近年、カテーテルという医療用の細い管を血管内に挿入して行う血管内治療が広く行われるようになりました。

下肢静脈瘤の治療法や合併症などについて解説します。

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下肢静脈瘤の治療法は、大きく分けて、圧迫療法と手術治療の2つがあります。圧迫療法は症状を和らげたり、それ以上の進行を遅らせたりする効果があります。手術治療は根治を目的としています。

圧迫療法とは、弾性ストッキングを着用していただき、足の静脈を圧迫して血流を促す治療法です。軽症から中等症の患者さんに対して行います。シンプルですが症状の改善効果は高く、進行した患者さんの潰瘍(かいよう)(深くえぐれたようになった状態)の治りもよくなります。一方で、着脱にある程度の力とコツが必要ですし、汗疹(あせも)などの皮膚トラブルが問題となります。あくまでも下肢静脈瘤の進行を抑制したり、治療後の再発を予防したりするための一時しのぎとなります。

手術を行うタイミング

下肢静脈瘤が進行し、足のむくみやだるさ、血管の拡張などの症状がみられる場合は、患者さんとよく相談したうえで、手術するかどうかを決定します。下肢静脈瘤は直接命に関わる病気ではないため、患者さんが手術を希望されない場合には、無理に手術をすすめることはありません。

ただし、下肢静脈瘤によって、皮膚のかゆみ湿疹色素沈着、潰瘍が生じている場合は、足の血液循環が著しく悪化している状態といえますから、原則的に手術治療をすすめることになります。

手術治療の変遷と種類

下肢静脈瘤の手術治療には、いくつかの種類があります。典型的な伏在静脈瘤に対しては、古くから“高位結紮術(こういけっさつじゅつ)”や“ストリッピング手術”といった治療が行われてきました。高位結紮術は血管の一部分を糸で縛る手術です。再発率が高いことから現在では特殊なケースを除いては行われていません。ストリッピング手術はストリッパーという針金状の器具を使い、静脈弁が緩んで逆流している伏在静脈ごと引き抜いてしまう手術です。再発率も低く、原理的に静脈瘤治療の基本といえますが、術後の痛みや内出血による青あざが問題となり、近年ではあまり行われなくなってきています。

現時点(2022年現在)でもっとも一般的な手術法は、カテーテルと呼ばれる細い管状の器具を静脈の中に滑り込ませて行う“血管内焼灼術”です。

下肢静脈瘤の手術治療に関して、項を改めて詳しく解説します。

血管内焼灼術は、静脈瘤の原因となっている伏在静脈を内側から焼き焦がして塞いでしまう方法です。傷がほとんど残らない美容的にも優れた治療法で、保険適用もされています。熱源として高周波を用いた高周波カテーテル装置と光を用いたレーザーカテーテル装置がありますが、原理や方法、効果はほとんど同じといわれています。導入されている装置は病院やクリニックによって異なるため、実施にあたっては医師に確認しましょう。

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血管内焼灼術だけでも、むくみやこむら返りといった多くの症状が改善することが知られています。しかし、いったん膨れ上がった血管が縮小するまでには大変時間がかかるため、静脈瘤切除を追加することがあります。これは静脈瘤がある部分を小さく切開して、血管を抜き去ってしまう方法です。見た目を綺麗にするだけでなく、残った静脈内に血栓ができるのを防ぐ意味合いもあります。

血管内塞栓術(けっかんないそくせんじゅつ)は、下肢静脈瘤の手術としては最新のものです。医療用の接着剤を血管内に注入して伏在静脈を塞いでしまう方法です。具体的には、血管内に滑り込ませたカテーテルの先端から接着剤を撒いていきます。カテーテルを使うという点において、上述した血管内焼灼術によく似ています。違いとして、熱を使わないので局所麻酔の量が少なくて済む、術後に必ずしも弾性ストッキングを履く必要がないといったメリットがあり、より日帰り手術に適した術式といえるでしょう。

欧米で十分に研究されたうえで国内でも行われるようになりましたが、新しい治療ということで、再発率を含む中~長期成績については今後の研究が待たれます。

ここまで説明してきたのは、比較的頻度の高い、むくみやだるさなどの症状を伴いやすく時間とともに進行していく“伏在型”の静脈瘤の治療です。下肢静脈瘤には“蜘蛛の巣型”ないし“網目型”と呼ばれるタイプのものがあります。これらのものは“見た目”以外の症状を伴わず、基本的には重症化しませんから、経過観察するか弾性ストッキングによる圧迫治療にとどめることがほとんどです。

硬化療法はこうした静脈瘤に対して、硬化剤と呼ばれる泡状の薬剤を注入することで蜘蛛の巣状や網目状の見た目を目立たなくする治療です。上述の接着剤を用いた血管内塞栓術が台頭したことで紛らわしくなっていますが、治療の目的や対象が異なります。硬化療法は外来診察室のブースでできる比較的簡便な処置ですが、硬化剤が原因でシミができるケースも報告されており、実施するかどうか以前よりも慎重に決めるようになってきています。

血管の手術ですから、術中にまったく出血しないということはありません。それでもカテーテル治療の発達や手術器具の進歩により、術中の出血は限りなく少なくなっています。術後はしばらく弾性包帯で圧迫しますので、出血トラブルは多くありません。

治療後、まれに創部が細菌などに感染することがあります。予防のため、手術の前後に抗生物質を使います。糖尿病で免疫力が低下している方は少し注意が必要です。

血管内焼灼術の合併症として、まれですが深部静脈に血栓ができることがあります。また、その血栓が流れて肺につまる肺塞栓症エコノミークラス症候群)が起きることがごくまれにあるといわれています(約0.05%)。 これらの合併症を予防するために、術後3週間ほど弾性ストッキングを着用していただき、念のため外来で超音波検査を行ってフォローアップします(検査のタイミングは病院によってさまざまですが、当院では術後1週間目と約1か月前後)。

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