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心不全の治療法-日常生活の注意点とは?

心不全の治療法-日常生活の注意点とは?
JR札幌病院 循環器内科 内科診療部長 長谷川 徹 先生

JR札幌病院 循環器内科 内科診療部長

長谷川 徹 先生

目次
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心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなることによってさまざまな症状が現れる状態です。心不全は、主に薬によって治療を行いますが、どのような効果のある薬が用いられるのでしょうか。また、日常生活で注意すべきことはあるのでしょうか。

今回は、JR札幌病院の長谷川 徹先生に、心不全の治療法や日常生活の注意点についてお話しいただきました。

心不全はどうやって発見される?

基本的には外来で診断が可能

患者さんご本人が受診される場合、息切れやむくみなどの症状を訴えて受診されるケースが多いです。病院の窓口では、息切れが現れている場合には呼吸器内科の受診をすすめられ、むくみが現れている場合には循環器内科の受診をすすめられます。

たとえば、(せき)がでたり息切れしたりするといった理由で、呼吸器内科を受診されるケースがあります。呼吸器内科では胸部レントゲン検査を行うため、肺の病気ではなく心不全であった場合には肺の血管のうっ滞や胸水を認め、心不全が発見されると考えてよいでしょう。

歩ける状況の方であれば外来で診断を行いますが、心不全が進行し重症化してから受診された場合には、入院してもらい必要な検査を受けてもらうこともあります。たとえば、心不全が進行すると低酸素状態になることがあります。低酸素状態になると酸素投与が必要となるため入院しなくてはいけない場合が多く、その場合は入院して検査を行うことになるでしょう。

医師 画像

健康診断で発見されることも

また、健康診断で発見されるケースもあります。健康診断の胸部レントゲン検査で心臓が大きいことが指摘されたり、心電図に異常がみられたりすることで、その後の診断につながる場合があります。定期的に健康診断を受けていただくことが早期発見につながるでしょう。

心不全の診断

身体所見・症状の確認

心不全の診断では、心不全に特徴的な症状・身体所見を確認します。たとえば、息切れや、足の甲や脛のむくみが現れているかを確認します。足の甲や脛を指で押して跡が残る場合には、むくみが現れているといえるでしょう。

胸部レントゲン検査

胸部レントゲン検査では、心臓の大きさとともに、肺の血管にうっ滞(血流が滞ること)がないか、肺に水がたまっていないかなどを調べます。通常、心臓の大きさは胸郭(胸の横幅)の大きさの50%以内といわれています。それよりも大きいと心臓が拡大していることになり、心不全の可能性が疑われます。

胸部レントゲン 画像

心電図検査

心電図検査では、主に心不全の原因となる不整脈や、心筋梗塞などの虚血性心疾患、拡張型心筋症や肥大型心筋症などに特徴的な波形の異常がないかを調べます。

血液検査

血液検査では、貧血がないか、腎臓の機能や甲状腺の機能に異常がないかなどを調べます。

また、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)と呼ばれるホルモンの値を確認します。BNPとは、心臓から分泌されるホルモンの一種で、心不全があると特異的に上昇します。そのため、BNPの上昇がみられる場合には、心不全を疑います。心不全が重症であればあるほど、BNPの値は上昇します。

心エコー検査

心エコー検査では、主に心臓の収縮する機能(血液を送りだす機能)と拡張する機能(全身の血液を心臓に戻す機能)や心臓の内腔が大きくなっていないか、心臓の壁の厚さは正常範囲かなどを確認します。また、心エコー検査によって、心不全の原因となる弁膜症がないかを調べることができます。

心不全の主な治療法

食事療法・安静の推奨

心不全の治療では、食事療法によって減塩を行います。塩分を摂りすぎると体液量が増加し血圧が高くなり、心臓に負担がかかってしまう可能性があります。

また、一定の期間、安静にすることも推奨されます。安静にすることが推奨される期間は、心不全の重症度やどれくらい体内に水がたまっているかなど患者さんの状態によって異なります。

薬物療法

薬物療法では、主にβブロッカー、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、抗アルドステロン薬という飲み薬によって治療を行います。

上記3つの薬は、心不全の予後を改善する効果があります。これらの薬を服用している方と服用していない方を比較すると、服用している方のほうが症状の再発が少ないという報告もあります。そのため、薬を飲むことができる方には、服用が推奨されるでしょう。

また、体液が貯留している場合には、利尿薬やほかの血管拡張薬を併用することもあります。

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βブロッカー、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、抗アルドステロン薬の効果とは?

βブロッカーには、脈拍を遅くする効果があります。脈拍を遅くすることによって、心臓の仕事量を減らし心臓の負担を軽減させることができます。

アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬には、アンジオテンシンと呼ばれるホルモンの過剰なはたらきを抑え、血管を拡張し血圧を下げる効果があり、体液の貯留も防ぎます。また、抗アルドステロン薬には、体液の貯留を防ぐ効果が期待できます。

急性期の治療

急性期には、血管拡張薬の持続点滴や、利尿薬の静脈点滴を行います。あるいは、血圧が低いショック状態などの心不全であれば、昇圧剤(強心薬)を使用することもあるでしょう。

酸素療法

非薬物治療では、酸素療法を行うことがあります。酸素療法は、酸素を投与することで低酸素状態を改善し症状をやわらげることが治療の目的です。

酸素療法には、さまざまな方法があり、たとえば、マスク型陽圧換気と呼ばれる方法を行うことがあります。マスク型陽圧換気とは、マスク装着によって呼吸を補助する方法です。

酸素療法は基本的に入院で行う治療ですが、慢性心不全であり酸素療法を継続しなければ状態が悪化してしまう場合には、自宅で行うことができるよう機械を貸しだすこともあります。

持続的血液ろ過透析

また、持続的血液ろ過透析と呼ばれる治療を行うことがあります。持続的血液ろ過透析とは、人工的に血液の浄化を行う治療法です。薬で十分に体液を除去することができないときに、体の余分な水分を除去するために行うことがあります。

運動療法

記事3『心不全に対する心臓リハビリテーションとは?』で詳しくお話ししますが、心不全の患者さんに対しては、心臓リハビリテーションによる運動療法を行います。運動療法では、患者さんのもともとの運動能や心臓の機能を加味しながら歩行訓練を行い、徐々に運動量を増やしていきます。

心不全に並存する病気の治療

記事1『心不全の症状とは-どんな症状が現れたら受診すべき?』でお話ししたように、心不全は何らかの病気が原因となり生じます。原因となる病気には、たとえば、心筋梗塞などの虚血性心疾患や大動脈弁狭窄症などの心臓弁膜症、高血圧などの生活習慣病があります。

そのため、これらの病気の治療が心不全の予防や、重症化を防ぐことにつながります。

虚血性心疾患の治療

心筋梗塞などの虚血性心疾患があれば、冠動脈形成術などステントで血管を広げる手術を行うことが多いです。これは、血管を広げることで血流を再開することを目的として行います。また、病気を繰り返さないよう薬物療法を行います。

さらに、高血圧や糖尿病、脂質異常症がある場合には虚血性心疾患の再発につながりやすくなるので、これらの病気を治療していきます。

心臓弁膜症の治療

大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症などの心臓弁膜症があれば、主にβブロッカー、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬、抗アルドステロン薬や利尿薬によって治療を行います。また、弁膜症が重症であれば適切なタイミングで手術を行うこともあります。

高血圧・不整脈の治療

高血圧に対しては、血圧を下げる効果のある降圧剤によって治療を行います。また、脈拍が速くなる頻脈性不整脈があれば、主に脈拍を遅くする効果のある薬によって治療を行います。

虚血性心疾患:心臓の冠動脈が閉塞したり狭くなったりすることで、心臓のポンプ機能を果たす心筋に血液がいかなくなることによって生じる病気の総称

心臓弁膜症:心臓の弁が正常に機能しなくなることで心臓のポンプ機能に支障をきたす病気の総称

心不全の患者さんが日常生活で注意すべきこと

塩分制限と規則正しい生活を意識してほしい

心不全の方は、塩分制限が大切になります。塩分を摂りすぎることで体液量が増加し心臓に負担がかかり、心不全が悪化してしまう可能性があるからです。

また、規則正しい生活をすることが重症化を防ぐことにつながるでしょう。たとえば、雪かきや庭いじりなど、一時的に過度に動くことで心不全が重症化することがあります。規則正しい生活を意識することで重症化を防いでほしいと思います。

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決められた治療を続けて

心不全の治療薬を定期的に服用してもらうことも大切です。心不全の状態が落ち着いてくると、薬を飲むことを忘れてしまったり、面倒になり飲まなくなったりなど、治療を中断してしまうことがあります。決められた治療をきちんと守ることが心不全の悪化や重症化を防ぐでしょう。

また、1〜2か月ごとなど定期的に病院を受診し、経過を確認することも大切です。

心不全の患者さんは運動できる?

状態によってはスポーツも可能

心不全の状態によっては、スポーツをすることも可能です。スポーツを希望される場合には、運動したときに排出される二酸化炭素の量を測定する心肺運動負荷試験(CPX)を行うことがあります。このCPXの結果をもとに、どれくらい運動してよいか確認することができます。

心不全の患者さんのなかには、ジムに通ったりスポーツをしたりすることを希望される方もいます。そのような場合には、このCPXを行い、無理のない運動の強度を脈拍数や血圧の値から判断し運動制限の指導を行います。